女が嘘をつくとき
- 作者: リュドミラウリツカヤ,沼野恭子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/05
- メディア: 単行本
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お人よしで思いやりがあり頭の良い女性ジェーニャ。離婚や再婚を経験し息子を育てながら働く彼女の恋愛・仕事・成長を縦糸に、人生のその時々に出会った女たちが語る「嘘の話」を横糸に織りなされる物語。—夏の別荘で毎晩ポートワインを飲みながら波瀾万丈の辛い人生を語るアイリーン。ところがその話はほとんど嘘で、彼女は結婚したことも子供を亡くしたこともない…。真実を知って打ちのめされるジェーニャ。しかし不幸のどん底に落ちた彼女を絶望から立ち上がらせたのも、無神経だが信心深い女の「嘘かもしれない話」だった。6篇からなる連作短篇集。
以前読んだ「ソネーチカ」は好みではなかったのだが、このタイトルと表紙に惹かれて読んでみたら、これは良かった!とっても好きだった。
連作短編という形でそれぞれの章に嘘をつく女たちが出てくる。
とりとめもない嘘、すぐにバレる嘘、いかにも嘘のような真実とまさかそこが?と驚くような嘘。
女たちはなぜ嘘をつくのだろう。
酷い現実を忘れるために、生きていくためについたのかもしれない。
自分がいつも夢見ていたこと、想像していたことを、話している間だけ一瞬でも「ほんと」に思えたのかもしれない。
退屈な日常を一瞬忘れたかったのかもしれない。
嘘は多かれ少なかれ相手を傷つけてしまうのだが、しかし嘘をついた彼女たちのことを憎む気持ちになれない。
むしろ「なんかわからなくはないわ」とちょっと苦く笑ってしまう。
そして、確かにそれは嘘だったけど、その嘘にこそ彼女たちの真実があったような気がしてくる。
満たされない自分。本当はなりたかった自分。そんなものが見えてくる。
全章通して出てくるのがジェーニャという女性。
1章ではまだ3歳の一人息子を連れて寄る辺ない感じでバカンスを過ごしているが、 2章では息子は二人に増え、6章では何人目かの夫がいる。
傍観者的な立ち位置にいたジェーニャに、スポットライトがぱっとあたるような構成も見事だし、彼女が主役となる最終章がものすごく良い。
散漫にも思えたこれらの物語をこうやって収束させたというのが、素晴らしい。