りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

悪い娘の悪戯

悪い娘の悪戯

悪い娘の悪戯

★★★★★

50年代ペルー、60年代パリ、70年代ロンドン、80年代マドリッド、そして東京…。世界各地の大都市を舞台に、ひとりの男がひとりの女に捧げた、40年に及ぶ濃密かつ凄絶な愛の軌跡。ノーベル文学賞受賞作家が描き出す、あまりにも壮大な恋愛小説。

すばらしかった!
主人公リカルドは15歳の時に出会ったチリからやってきたリリー(後にニーニャ・ラマと名乗る)という娘に夢中になる。
美しくエキゾチックで大胆で野心のかたまりのようなニーニャ・ラマはまさに「ファム・ファタール」そのもの。
一方リカルドはコツコツ勉強して通訳になってパリに住むほかは特に野心や目的も持たず、自分の身の丈にあった生活に満足する平凡な男。
そんな平凡なリカルドが、会うたびに名前や経歴を変えて男を食い物にしてのしあがっていくニーニャ・ラマに何度も酷い目に合わされながらも40年間愛し続ける、という物語。

誤解と妄想が恋愛を長持ちさせる秘訣なのだろう。
そういう意味では、謎めいていて気まぐれで冷徹だけど時々すっと身を摺り寄せてくるニーニャはまさに恋愛の天才。
だけどニーニャ自身は決して誰のことも愛さず、愛だの幸福だのといったことは鼻から信じていない。
目的のためならためらうことなく身体を差し出すけれど、それは彼女にとってはただの道具でしかなく、決してよろこびを伴わない。
信じられるのはお金だけ。とてつもない権力とお金と野心を持った男しか私は興味ないと言い切る。

裏切り続ける悪女を憑かれたように愛し続け翻弄されるリカルドは哀れで滑稽でもあるのだが、一方とても強くもあって、またその時々かけがえのない友情も得ていて、決して不幸ではない。
そしてこの悪女!読んでいて「もう許せない!二度と信用しない!」と思いながらも、惹きつけられずにはいられない。

愛に正しいも間違っているもなく、人生も然り。
これはこれでいいのだ。これも完璧な愛なのだ。
ラストがとても素晴らしく、最後まで見届けてこんなにもあたたかい気持ちになれるとは。
リョサ恐るべし。一生ついていきます、と誓って本を閉じた。ブラボー。