りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ

★★★★★

とにかくタイトルが秀逸だ。
お気に入りの読書系ブログでタイトルと表紙の写真を見た時から気になっていた。
作者が早大生っていうことを聞いて、そんなに期待せずに読み始めたんだけど、これが思いのほかよかった。いやぁよかった。私好きだ、これ。すごい好き。

バレー部の「頼れるキャプテン」桐島が、突然部活をやめた。それがきっかけで、田舎の県立高校に通う5人の生活に、小さな波紋が広がっていく…。野球部、バレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部。部活をキーワードに、至るところでリンクする5人の物語。第22回小説すばる新人賞受賞作。

若いからなんでもできる。今が一番良い時。目の前には輝かしい未来が広がっている。君たちは真っ白なキャンバスだ。
おとなは高校生に向かっていろんなことを言うけれど、当の高校生は、自分たちの作り上げたせまーい世界の中でうまくやることだけでいっぱいいっぱいで、全然自由でもないし可能性も感じられてない。

見た目がいいことや運動ができることで作られる根拠の無い階級。
「上」の方にいながらも時々感じる違和感や焦燥感。
「下」の方にいることを自覚して目立たぬようにしながらも、自分の好きなことやわかってくれる友達と過ごすときに感じる幸福感。
自分が見る自分と他人が見る自分は微妙に違っていて、自分も他人のことをわかっているようで何一つわかっていない。

そんなことがきちんと簡潔な言葉で描かれていて、読んでいてとても清清しい。
未熟さとか狭量さとかそういうの全て含めて若さっていうのはやっぱり素晴らしいなぁと思える。
すごく素敵な小説だと思った。出会えてよかった。読めてよかった。