りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

また会う日まで

また会う日まで 上

また会う日まで 上

また会う日まで 下

また会う日まで 下

★★★★★

最近DSのポケモンにはまっていて全然本が読めません…。あほだよなー時間の無駄だよなーと思いながらも、やめられない止まらない。子どもの目がなければ、おそらく会社を休んで一日中あほのようにやり続けられると思う…。あーやばい。
と言いながらようやく順番が回ってきた「また会う日まで」。大好きなアーヴィングの期待の新刊!

逃げた父はオルガニスト。刺青師の母は幼子とともに後を追って北海の国々へ。父を知らぬ息子は、やがて俳優になり――。最長最強の大長篇、待望の翻訳。

自分たちを捨てた父親ウィリアムを追って旅をするジャックと母アリス。「お嬢アリス」と呼ばれる刺青師の母は同業の仲間を頼って町から町へ。ホテルで客引きをしたり行く先々でウィリアムが関係を持った女と問題を起こしながら、ジャックを連れて旅をする。しかしジャックが5歳になった時、母はウィリアムを追うことをすっぱりとあきらめ、ジャックを女子校に入学させる。「女の方が安心だから」と言って…。

父親譲りの美少年ジャックは幼年期から児童虐待すれすれのセクハラを受けるんだけど、不快な感じは全くなくて、むしろユーモアたっぷりで面白悲しい。特に女子校に入って出会うエマとのエピソードは最高だ。幼稚園児たちのお昼寝の時間にエマたちが語る物語は、幼児期に聞かされたらトラウマになるようなストーリーの数々。襲ってくるコウモリや再婚した親の物語に双子の姉妹が毛布を激しく吸い付くシーンなんかはもうおかしくておかしくて…。

でもどちらかというと前半は少しもったりした感じがしていた。ちょっと今までのアーヴィング作品らしくないのでは?と。しかしこれがジャックが30歳を過ぎて、自分が母に教えられてきて覚えている物語と実際の出来事との間にかなりのギャップがあることを知って、母と2人でした旅をもう一度なぞりはじめるあたりから、今まで長々と語られてきた物語の別の一面が次々明らかになっていくというミステリー的な味わいも出てきて、面白い面白い!

いつも冷めていて常に演技をしているようだった(だからこそ俳優になれたわけだが)ジャックが、初めて本物のジャックになるシーンがもうたまらなくて涙涙…。ジャックのことを子どもの頃から見ていただけにいつしか母のような気持ちになっていたんだなぁ。そしてここまで読んで前半の少しだらだらしていると感じられたエピソードも全て意味があったのだなと気づかされるのだ。ううーうまいなぁーアーヴィング。そしてエロやグロがあっても結局のところ最後は「愛」で包括されてしまうのだ。
アーヴィングは愛を信じている作家だなぁと思う。だから全てそれでいいのだと思えるのだ。最後まで読んだ時に。