りつこの読書と落語メモ

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ラヴェル

ラヴェル

ラヴェル

★★★★

ラヴェルの身長は競馬騎手くらい、つまりフォークナーくらい低かった。一九一四年、やせっぽちのくせに軍隊に志願したいと思い、まさに体重が少ないということこそが空軍に徴募されるに理想的だと、徴兵官を説得しようとした。この入隊は拒否され、それ以外のあらゆる兵役も免除されたが、それでもしつこく頼むので、冗談のようだが超重量級の部隊に運転手として編入されたのだった。そんなわけで、ある日、シャンゼリゼ通りをものすごく大きな軍用トラックが行き、その運転席にはだぶだぶの青い防寒外套を羽織った小さな姿が、大きすぎるハンドルにようやっとつかまっているのを見ることができたことだろう。」
ひげを剃り髪を撫で付けた「ボレロ」の作曲家モーリス・ラヴェルの、アメリカ訪問に始まる晩年の十年を生き生きと描く、まるで音楽みたいな小説。モーリアック賞に輝く最新作。

ラヴェルの晩年10年を描いた作品。伝記をもとにしているけれど、伝記でも偉人伝でもなく小説というスタイルで伝記小説というものらしい。
とても面白かった。小説なのだけれど、ラヴェルってこういう人だったんだ!とうれしくなってくるような説得力と臨場感とリアリティがあった。

世間からも認められた音楽家。天才ゆえの気難しさ、尊大さ、わがまま、プライドの高さが語られるのだけれど、どのエピソードもみな愛おしく微笑ましい。こってりした小説にちょっと疲れた時に読むのにぴったりな小説であった。