りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

真夜中に捨てられる靴

真夜中に捨てられる靴 (ランダムハウス講談社文庫)

真夜中に捨てられる靴 (ランダムハウス講談社文庫)

★★★★

年越しはこのミステリーで。読書の時間が細切れになりがちだったので、短編がちょうどいいかなと思って。

刻々と歪んでいく、隣人たち。落し物の蒐集。娘の復讐。主君への忠誠――狂気に堕ちてゆく男たちの8つの数奇な物語。S・キング、J・エルロイ、D・クーンツ絶賛!

深夜、決まって教会前に捨てられるひと揃いの靴。真新しい紳士靴やハイヒール――毎夜、靴を回収するうちに、やがて靴と犯人探しの虜になってしまった警官を描く表題作『真夜中に捨てられる靴』ほか、謎の箱を死守する南米の将校、若さを渇望する老脚本家、瀕死の父を冷凍保存する息子など、「妄執」とテーマに、狂気に堕ちていく主人公たちを描いた全8篇。エルロイ、キング、クーンツが絶賛する、マレルの奇妙な短篇集。

なかなか面白かった。どの短編にも共通しているのは、作者自身の解説にもあるように、何かに対する強迫観念や執着だ。私も何かに妙に執着してしまうときがあって、そういう時の自分は少し偏執狂的なところがあるようでちょっと怖くなるのだけれど、この作品を読んで、確かにそういう部分がある一線を越えるとそれは確実に狂気になっていくのだな、と思った。それだけに怖くて面白い。そして怖いけれど、あたたかさや切なさがあってよかった。