りつこの読書と落語メモ

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恥辱

恥辱

恥辱

★★★★

52歳のケープタウン大学教授デヴィッド・ラウリーは、二度の離婚を経験し、以来、欲望に関してはうまく処理してきたつもりだった。だが、ひとりの教え子と関係をもった時から事態はすっかり変わった。胸高鳴る日々も束の間、その学生から告発されて辞任に追い込まれてしまったのだ。仕事も友人も失ったデヴィッドは、娘がきりもりする片田舎の農場へ転がり込む。誰からも見捨てられた彼を受け入れてくれる娘の温かさ、自立した生き方に触れることで恥辱を忘れ、粉砕されたプライドを繕おうとする。だが、ようやく取り戻したかに見えた平穏な日々を突き崩すようなある事件が…。転落し、自分の人生を見つめ直すことになった男の審判の日々を描く。この作品で二度のブッカー賞に輝く不世出の作家が贈る、落ちゆく人生を彷徨う男の物語。

エロおやじが欲望に負けて女子大生にセクハラしてしまい、それが露呈して恥辱にまみれしまうという話かと思ったら違った…。いや前半は確かにそういう話だったのだが…。
性的な関係をもった女学生から訴えられ職も居場所も失ったデヴィッドは、東ケープ州の田舎に暮らす娘ルーシーのもとに身を寄せる。ルーシーは元ヒッピーで、以前はここに女友達と一緒に暮らしていたようなのだが彼女は去りいまは一人で暮らしている。
隣にはペトラスという黒人(有力者?)が住み、彼の助けを得て、この土地で農場を営んでいる。すっかり田舎の農婦になりさがってしまった娘に落胆を隠せないデヴィッド。しかし彼女の畑を手伝ったり、自分のおかした過ちを振り返ったりして、徐々に立ち直っていくのかと思いきや…。

以下はネタバレです。






そんな二人のもとへある日強盗がやってくる。車、金、電化製品などを盗まれるが、ルーシーはレイプされてしまう。レイプされたことを警察に隠し、なかったことにしようとするヘレンに戸惑うデヴィッド。妊娠してないか、エイズに感染していないか、医者にみせろというのだが、それも拒む。
しかもその後、強盗のうちの1人の少年がペトラスの親戚だったことがわかるのだ。しかもそれを知りながらだんまりを決め込むルーシーに、「もう大丈夫だ」としか答えないペトラス。そしてさらにレイプされた時に妊娠し、その子を産んで、ペトラスの第二夫人になると言うルーシー。そうしなければ白人の女がこの土地で生きてはいくことはできない、と言うのだ。

なぜそうまでしてこの土地に残らなければならないのか。その気持ちがデヴィッドには理解できない。私にも理解できなかった。だめなやつだなぁと思いながらも、気持ちは100%デヴィッドだった。デヴィッドと一緒に怒り狂い、差別の言葉を吐き、犯人たちを叩きのめしてやりたい!と思った。

ただ、ルーシーの場合は、この土地を離れて白人が強者である土地に移って暮らせば、この状態を抜け出すことができるのだから、なぜそういう選択をしたのか?それで生きている意味があるのか?という疑問が生じるわけだが、もし選択の余地がないところでこのような行動をとったのであれば、「ものすごくしたたかで強い女性」という印象を受けたのだと思う。女だからこそこうやって生き延びていくことができるのだ、と思ったかもしれない。

ルーシーの選択の裏には、奴隷として差別されて生きていくしかなかった黒人の歴史があるわけで、ルーシーはある意味その報復を白人の代表として受けているようにも思える。
差別の中で圧倒的な弱者として生きていくこと。辱めを受けても受けてもその場を立ち去らないことが尊い生き方なのか?なんだかいろんなことを考えさせられた。