りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

パワー

 

パワー

パワー

 

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ある日を境に、女たちが、手から強力な電流を発する力を得る。最年少かつ、最強の力を持つ14歳の少女ロクシーは母を殺された復讐を誓い、市長マーゴットは政界進出を狙い、里親に虐待されていたアリーは「声」に導かれ、修道院に潜伏する。そして、世界中で女性たちの反逆がはじまった―。オバマ前大統領のブックリストや、エマ・ワトソンフェミニストブッククラブの推薦図書となった男女逆転ディストピア・エンタテインメントがついに邦訳! 

女だけが無敵のパワーを持ったらどうなるのか。
母親が目の前でレイプされ殺されるのを目の当たりにしたギャングの娘ロクシー。里親に虐待を受けていたアリー。常に知事(男性)から圧力をかけられ続けていた女市長マーゴット。ロクシーは最強のパワーを持ち無敵となり、アリーは修道院に潜伏し教祖になり、マーゴットは先にパワーを持ってしまった娘から力を与えられそのことを隠しながら政界進出を狙う。
またそれまで酷い虐待を受けてきた女たちが狂った戦士になり男を襲いレイプして殺す。
残虐な描写には目を覆いたくなるがそれは今の世界で実際に起きていることでもある。ここで描かれいてるのは現在の男性優位の世界のミラーリングなのだ。

性別の違いで「政治に向いている」とか「低く扱われても仕方ない」のではない。あくまでもパワーの違いなのだ。
女性が政治を行えば今よりも暴力的でない優しい政治になるのではないかというのは幻想であるということがこの小説を読むとわかる。

ある考古学者(男性)が売れっ子の作家(女性)に「史実に基づいた小説を書いたので読んでほしい」という手紙とともに送ってきたのが、この作品という構造になっている。
この作品を読んだ作家は、女性がメインであることが当たり前の社会にあって、過去には男性が兵士として戦い政治を行っていた時代があったのだとする考古学者の言葉を独特のユーモアと評して一蹴する。
パワーが逆転するというのはそういうことなのか、と思う。

例えば女性がレイプされたとき、誘惑するような服を着ていたからだとか、一緒に酒を飲んでいたのだから同意したのだとか言われたりする。
また痴漢して女に声をあげられると「誰がお前みたいなブスを触るか」と開き直る。
そんな現在があるからこそ、ここに描かれている女がパワーを使って男を虐待する描写を爽快に感じてしまう。

後半になってロクシーが襲われるシーンを読んでいた時「男なんかを信用するからこういう目にあうんだ!」と激高してしまった。
自分の中にそういう感情があることに驚いたのだが、女であることで「こうしなければいけない」とか「こういう振る舞いはみっともない」というのは私の中にも呪いのように存在しているのだと思った。

アリーの中の声が語る「だれが悪くてだれがよいのか。こういう質問はみんなまちがっている」という言葉、そしてこのタイトル。「侍女の物語」を思い出すなぁと思ったら解説にも言及されていた。

厚さに怯むがリーダビリティが高いのであっという間に読めてしまった。
面白かった。