りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

[ベルンハルト・シュリンク朗読者

朗読者 (新潮文庫)

朗読者 (新潮文庫)

★★★

よかったのかよくなかったのか、自分でも感想が持ちづらい小説だった。

主人公ミヒャエルは、具合が悪くなって通りで嘔吐してしまう。具合の悪さとショックで打ちひしがれる彼を助けてくれた女性ハンナ。母親ほど年の差がある彼女と彼は性的な関係を持つようになる。
彼女は彼に本を朗読することをのぞみ、彼は彼女にのぞまれるまま朗読するようになる。
ある日突然姿を消してしまった彼女と再会したのは、裁判所でナチスドイツの時代の戦犯裁判のときだった‥。

主人公が彼女に対して最後まで朗読者という立場でありつづけていたことが、読んでいて歯がゆいような薄ら寒いような感じがしてしまった。
もちろん彼は十分苦しみ、ハンナのことを理解するということに、人生のほとんどの時間を費やしていたことは明らかなのだが。

全てを知りながら彼女が戦犯として判決を受けるのを傍観していたのはなぜなのか。
彼女を助けるべきではなかったのか。
でも彼がただの傍観者であったことが、非常にこの小説をリアルなものにしていることも確かなのだ。