読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

末廣亭8月中席昼の部

春風亭柏枝 三笑亭夢丸 桂南なん 落語

8/20(土)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・かん橋「寿限無
・夏丸「開眼式」
・章司 江戸売り声
・柏枝「地獄めぐり」
・夢丸「しわいや」
コントD51 コント
・遊馬「転失気」
・伝枝「壺算」
・真理 漫談
・圓丸「初天神
・紫「出世の馬揃い」
・ひでや・やすこ 漫才
・南なん「不動坊」

 

夏丸さん「開眼式」
すごく素直なお客さんで噺に聞き入ってサゲに「おおっ(なるほど!)」となったのがおかしかった~。いいなぁ、こういうの。寄席って楽しい!って思う瞬間。

柏枝師匠「地獄めぐり」
お寺で落語をやってきました、というまくら。本堂でやったんだけどああいうところって横幅が広くできている。檀家の人たちが自分の高座の横に回り込むような形で座って自分の前にはお供えの茄子やかぼちゃ。ところでこの日の私の落語、自分で言うのもなんですが素晴らしい出来でした。思うに私は非常に緊張しいなので、目の前にお客さんがいると緊張してしまう。でもこの日は茄子やかぼちゃだったので良かったのではないか、と。なので今日は目の前にお客様がいますが…私これを茄子やかぼちゃが並んでいると思って落語をやらせていだたきます。

そんなまくらから「地獄めぐり」。初めて聴く噺だったんだけど面白い!
遊びに飽きた若旦那が芸者や幇間を連れて地獄へやってくる。観光気分の若旦那。地獄の観光案内所で地獄のことをあれこれ教えてもらう。
まじめに聴いてるとただのダジャレの連発でひたすらにバカバカしい。「ええ?そういう噺なの?」と思っていると「これからもこんな感じで続きます。展開とかしませんから」と。
わはははは。
毎回違う噺で毎回なんか予想の上をいってくるので、この師匠が出てくるとすごくわくわくするなぁ。楽しかった。

夢丸師匠「しわいや」
毎回出てくるたびに毎回うれしい夢丸師匠。そしてやっぱり毎回違う噺をしてくれるんだよなぁ。それが嬉しい。
この芝居、南なん師匠目当てで通っていたけど、夏丸さん、伯枝師匠、夢丸師匠も楽しみだったなぁ。

遊馬師匠「転失気」
この代演はうれしい。好きなんだ、この師匠も。
尊敬していた和尚がもしかして知らないで聞き出そうとしていたのではと気づく小僧がかわいい。はしゃぎすぎない渋めの「転失気」。よかった。

南なん師匠「不動坊」
南なん師匠の「不動坊」、楽しいなぁ。お湯屋で浮かれる吉さんがかわいすぎる。それを見ながら「うめてやれ」「水くさいってよ」「まだ埋まらないよ」と声をかける江戸っ子の優しさよ。
そしていちいち困って確認する前座がかわいい。
ああ、次は南なん師匠、どこに見に行こう。9月の上野広小路亭のトリ、全部平日の昼で有休とろうとしたら「待った」がかかってしまったのが悔しすぎる。うううー。

尻尾と心臓

伊井直行 国内あ

 

尻尾と心臓

尻尾と心臓

 

 ★★

回り道を通してしか、見えないことがある。仕事にも、人生にも。未知の経験を求めて転職した女と社命を帯びて出向した男が、会社の“闇の奥”に見つけ出したものとは―?仕事とは何か?を問う、文学の新たな試み。傑作長篇小説!  

 ところどころがかなりリアルな会社員小説。リアルなだけに会社嫌いな私には全く楽しくない小説だった…。

下町ロケット読んだときはこんな夢物語、けっ!と思ったが、これを読むとこんなものを本でまで読みたくはないわ!と思ってしまう。私には合わなかったなぁ。

小三治独演会 めぐろパーシモン大ホール

柳家小三治 柳亭こみち 落語

8/16(火)、めぐろパーシモン大ホールで行われた「小三治独演会」に行ってきた。

・こみち「安兵衛狐」
小三治「転宅」
~仲入り~
小三治「青菜」

こみちさん「安兵衛狐」
わーい、こみちさん。
出てきたときに渋いお着物!すてき!と思ったら、座るなり「演歌歌手のような着物ですみません。自分でわかっております」と。
今の家を決めるとき、自分も亭主も家で稽古をするのでそこは大事なポイントでお互いに地声で稽古をしてみてそれを別の部屋でどれぐらい響くかチェックしたりしていた。
一応楽器不可という家だったのだが見学に行ったとき明らかにピアノの音がしていた。
それで大家さんに「ええと、ここは楽器不可ですよね?私たち家で稽古をするのでそれは大丈夫でしょうか」と確認すると「楽しければいいですよ」と言われた。

あら、なんてアバウトな基準。
楽器不可だけどピアノの音は楽しいからOKってことなのか。
というわけで私は家では人情噺は稽古できません。

そんなまくらから「安兵衛狐」。
こみちさんは女性がとてもかわいらしくて色っぽい。
それがほんとに気持ちのいい色っぽさで、見ていてうきうきしてくる。
お酒をかけてもらってお嫁に来た幽霊に、助けてもらってお嫁に来た狐。
両方ともかわいらしくて思わず「そうですか。じゃいてください」っていう気持ちもわかる。

小三治師匠「転宅」
オリンピックの話をしているうちに政治のことを言いかけて「あーこの話はやめましょう」とやめ、でもやっぱりちょっと言いたくて言ってはやっぱりやめ…。
なんかわかる気がする…。でも正直もう政治の話は聞きたくないので(気持ちがざわざわするだけだから)話さないでくれてよかった…。
というかまだ小三治師匠は同じ気持ちでいるから「ああ、同じだなぁ」と思えて安心するんだけど、好きな人が明らかに自分と反対の方向を向いていることが分かると結構なショックだからほんとにそういう話は聞きたくないと思ってしまうんだよな…。

やっぱりこの話はやめましょう!と言って泥棒のまくらに入りつつまた戻りつつやはりやめ…「今日は小三治はダメです。こりゃ大惨事だよ!」と言いながら「転宅」へ。

この日はなんと一列目で師匠が上下を振ったときの目線の位置にいたので、まるで自分がお菊さんになったみたいな気がしてドキドキ。
いやぁもう小三治師匠のまぬけな泥棒がほんとにチャーミング!つねられて「よせよう」とにへぇと笑われた時はもうめまいが…くらくら。
泥棒を親戚と間違えて家に入れたタバコ屋さんが奥にいる奥さんに向かって「ばあさん、ふとんを出しておくれ」と言うだけでぶわははは!と笑ってしまう。
楽しかった!

小三治師匠「青菜」
出てきてすぐに扇子で仰ぎだしたので「青菜だ!」と分かる私は相当な小三治通。ほほほ。
植木屋さんのおかみさんの愚痴がおかしい。
「うちの恥を外にまき散らす」って…いいなぁ。
そのおかみさんが帰ってきた植木屋さんに「何踊りながら帰ってきてるんだい。いわしが冷めちゃうよ!」。このタイミングが思ってるよりすぐに来るのでいつも不意打ちで笑ってしまう。
最後油断したのかちょっとだけもやっとしたけど、楽しい青菜だった。

鈴本演芸場8月中席夜の部 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集

柳家さん助 柳家三三 柳亭市馬 露の新治 落語

8/15(月)「鈴本演芸場8月中席夜の部 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼特選集」に行ってきた。

・さん助「夏泥」
・ダーク広和 マジック
・正朝「ん廻し」
・三三「加賀の千代」
・市馬「狸賽」
ホンキートンク 漫才
喬太郎「純情日記渋谷編」
・露の新治「源平盛衰記
~仲入り~
・権太楼「疝気の虫」
・正楽 紙切り
・さん喬「白ざつま」

さん助師匠「夏泥」
昼に南なん師匠の「置泥」、夜にさん助師匠の「夏泥」を両方見られる幸せよ!
さん助師匠の「夏泥」落語協会でほかの人たちがやってるのとは形が違っている。ほかの人がやってる形の方が笑いはとりやすいと思うんだけど、ほんとひねくれてるなぁ。ぷぷっ。

こちらの方の男は博打で全部すられたばっかりで「あーなにもかもなくなっちゃった」と開き直ってる。
だから泥棒が入ってくるのを面白がって見ている。
あぶねえなぁ、そこはどぶ板が腐ってるぞ。あ、ほら、落っこちた。そこをそのまま上がってきちゃだめだって。危ないって。ああ、そうじゃない!ほら、言わないこっちゃない!
かわいらしさはなくてふてぶてしいんだけど、基本的にからっと明るい。そこが魅力。

ダーク広和先生 マジック
いつもとはまた違ったマニアックなマジック。
最後のカッター?の刃をどんどん口に入れてくマジック、いったいどうなってるんだろう。
地味だけど楽しい。そしてすごい!

三三師匠「加賀の千代」
寄席に出てくる三三師匠はほんとにいつも余裕で楽しそうでのびのびしていていいなぁ。
ふんだんにギャグをちりばめた楽しい「加賀の千代」。
時々ぼそっと言う文学的表現がおかしい。

市馬師匠「狸賽」
狸が化けたサイコロを持って博打をする男のかわいらしさよ…。
「だめだよ、かわいそうだろ」
「しょんべんするぞ」
やさしさがにじみ出ていて好きだなぁ。

露の新治師匠「源平盛衰記
素敵な師匠だなぁ…。
ギャグたっぷりの地噺なんだけど今風のギャグを入れても物語を壊すことなく引っ張り続けてくれてそれでいて疲れない。
地噺って気が散るからあんまり得意じゃないんだけどこの師匠のだったら何時間でも聴いていたい。
上手なのに押しつけがましくなくて楽しくてこれっぽっちも下品じゃなくてでも全然気取ってない。
すごい。

さん喬師匠「白ざつま」
3本の指に入るぐらい嫌いな噺(笑)。
生で見たら少しは好きになれるかと思ったけど無理だった。
特に嫌いなのが若旦那が番頭を脅すところ。
いやらしい男だなぁ…。だめ。嫌悪感しか持てないなぁ、この若旦那には。

こういう噺もあるよねという軽い気持ちで聞いてくださいと師匠はおっしゃっていたけど、ついついのめり込んで聞いてしまい、いらいらっときてしまうワタシであった。

それにしても超満員のお客さんですごいなぁ、この二人の師匠の人気は。
席が真ん中の方だったので、前の人の頭が邪魔でよく見えず、一生懸命隙間を探してみていて、えらい疲れた…。

末廣亭8月中席昼の部

桂夏丸 三笑亭夢丸 春風亭柏枝 瀧川鯉昇 桂南なん 落語

8/15(月)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・喜之輔「出張中」
・夏丸「開眼式」
・章司 江戸売り声
・柏枝「時そば
・夢丸「山号寺号」
・ひでや・やすこ 漫才
・伝枝「目薬」
・歌助「桃太郎」
・真理 漫談
・円丸「お菊の皿
・鯉昇「粗忽の釘(ロザリオ編)」
東京ボーイズ 歌謡漫談
・南なん「置泥」

喜之輔さん「出張中」
今丸師匠のお弟子さんと言っていたような…。ということは紙切りの前座さんなんだな。落語家でなくても前座さんは落語を覚えてやらないといけないから大変だよなぁ。明らかに落語で入った人よりたどたどしくてドキドキするんだけどある意味貴重なものを見られた!という喜びが。
喜之輔さん、落語の前座さんに比べるとたどたどしいんだけど、「ディズニーシーがあるならディズニーAやBはあるのか」「あるよ。ディズニーAはアメリカ、ディズニーBはブラジル、ディズニーCは千葉だ」でウケてちょっとうれしそうだったのが印象的。

夏丸さん「開眼式」
いろいろな地方の名産を次々に挙げていく、これってなんの噺だったっけ?「鹿政談」?いやでもまさかこの時間で「鹿政談」をやるわけはないか。
「奈良と言えば鹿。私も一度行ったことがあります。修学旅行で」と言ったあとに「これなんですけどね」と中学時代の集合写真を懐から取り出したのには笑った。

そこから大仏様の眼が崩れて関係者がどうしようかと困っていると現れた親子連れが自分たちに直させてくださいというのでやらせてみると、息子が大仏の中に入って行って眼を直し、鼻の穴から抜け出してくる、という噺。
初めて聴いた!面白い~!!
夏丸さんって見た目とのギャップがあってそこが魅力だなぁ。この芝居で通っているうちにどんどん夏丸さんが好きになってきた!

柏枝師匠「時そば
夏に「時そば」とはちょっと季節外れ?と思ったのだが、これがべらぼうに面白い「時そば」だった。
一人目の客のところはすーっと渋くやっておいて、二人目の客のとほほぶりが顔芸も含めて激しくて大爆笑。
特にうどんのような太いそばを口に入れてぶちゅーっと食べる様子がおかしくておかしくて。
やっぱり計り知れないわ、この師匠。

夢丸師匠「山号寺号」
前にほかの人で聴いて「つまらない噺だ」と思ったのだが、夢丸師匠がやるとこんなに楽しいのか!
客席にお子さんがいたからこの噺にしたのかもしれないな。わかりやすくてお子さんもけらけら笑ってた。

円丸師匠「お菊の皿
沸々とした気持ちを落語らしい落語で落ち着かせてくれる。ほっ。
これがサゲだねと客席が拍手をしたら「え?まだ終わりじゃないんだけど、なに?終われってこと?あ、そうか。ふつうはここでサゲだもんね。でも私の場合はまだ続くんです。やってもいいでしょうか。あ、拍手…していただくほどのものじゃありません」
そう言ってやられたサゲが確かにちょっと一ひねりしてあって面白かった。

鯉昇師匠「粗忽の釘(ロザリオ)」
出囃子が鳴って「ええ?まさか!!」と驚いているとほんとに鯉昇師匠が!わーい!
いつものように熱演はしないまくらから「粗忽の釘」。
何度も見てるけど毎回笑ってしまう。
体の使い方がとってもうまくてちょっと体を斜めにして「ええ?」と驚いたり、目をぎょろっと開けて二度見したり、それだけでどっかんどっかんウケる。すごいなぁ。

南なん師匠「置泥」
南なん師匠の「置泥」はほんとに南なん師匠の魅力が前面に出ていると思う。ほかの誰のとも違う「置泥」。
泥棒の人のよさはほかの噺家さんでも見ることができるけど、入られる方の男をこんな風に魅力的に描かれているのは見たことがない。

最初はほんとに生きる気力も失っていたかのような男が泥棒からお金をもらって徐々に頬に赤みを帯びてくる。
相手に付け込んでるというよりは、甘えられる相手を見つけてほっとしてる感じがして、なんだか憎めない。

最初に合口をチラつかせて脅し文句を言う泥棒が「そう言ってたよな。だから殺してくれ」と言われると「やめろよ。あれは俺たち泥棒の決まり文句なんだよ」と答えるのがなんともかわいい。
しぐさの一つ一つ、言葉の一つ一つが楽しい!

末廣亭8月中席昼の部

落語 桂夏丸 三笑亭夢丸 神田松鯉 桂南なん

8/13(土)、末廣亭8月中席昼の部に行ってきた。

・楽ちん「手紙無筆」
・夏丸「つる」
チャーリーカンパニー コント
・柏枝「牛ほめ」
・夢丸「勘定板」
・京太・ゆめ子 漫才
・伝枝「反対俥」
・松鯉「谷風の情相撲」
・真理 漫談
・紫「井伊直人出世物語
東京ボーイズ 漫歌
・南なん「へっつい幽霊」

夏丸さん「つる」
この芝居では「つる」をかけ倒すおつもりか(笑)。「つる」という単語が出てこずに「鶴岡雅義と東京ロマンチカ」で歌を歌いだす、というのが夏丸さんのアロハマンダラーズの「まくら」代わりになっているのかな。

柏枝師匠「牛ほめ」
この師匠のちょっと冷めた外した落語が私は好きなんだけど、合うお客さんとそうじゃないお客さんがいるのかもなぁ、という感じがした。
この日のお客さんはどちらかというともう少しわかりやすい笑いを求めている感じ。

夢丸師匠「勘定板」
そうそう、この感じ(笑)。まさにこの日のお客さんには夢丸師匠の人懐っこい笑顔とこのわかりやすい噺が合ってたなぁ。

 

京太・ゆめ子先生 漫才
まじなのか芸なのかがわからないスリリングな漫才!ドキドキ!

 

松鯉先生「谷風の情相撲」
この代演は嬉しい。何回か聞いているはなしだけれど、講談こそ何度も聴いてより楽しめるものなのかもしれない。初めて聞くときはストーリーを追うのに一生懸命だけど、何回か聴いてると調子を楽しめるようになるんだな。
松鯉先生の講談、好きだなぁ。男らしいけど基本が穏やかでゆったりしてるから肩に力が入りすぎなくて楽しめる。

 

南なん師匠「へっつい幽霊」
出囃子が鳴って南なん師匠が出てきたときの胸のときめきよ(笑)!
南なん師匠はこういうことが多いのだけれど、ほとんどまくらをやらずにいきなり噺に。出てくる時にこれをやろうと決めてらっしゃるんだな、きっと。

博打で儲かって「ありがてぇなぁ」と喜ぶ男。まとまった金ができたからなんか買おうじゃねぇか、そうだへっついを買おう、と道具屋へ。
これにしようと思ったへっついは10両すると言われ、さすがにそんなに高いのは…というと1両のものをすすめられるのだが、そっちはあきらかに見劣りする。
見ればすごくいいへっついが置いてあるのに気付いて「これはいくら?」と聞くと、これは訳ありで売ることはできないと言われる。
聞けば2両で仕入れて3両で出すとすぐに買い手はつくのだが、みな次の日に返しに来る、と。
2両で引き取るので毎回1両儲かっていい買い物しちゃったなと思ったんですけどね、と店主が見せる笑顔がかわいい。
店の評判が悪くなるので壊そうと思ってると聞いて「おれは返しに来たりしねぇよ」と約束してへっついをもらってくると、真夜中時分にへっついから赤い炎がゆらゆら出てきて幽霊が…。

幽霊に動じない男と、人のいい幽霊との会話がとにかく楽しい。
男の言いなりになって「ええ。そうなんですけどね」「ええ?そんなに取るんですか?」「…じゃぁいいですよ」と少し抵抗しながらも受け入れる幽霊がとってもかわいい。
南なん師匠のちょっとの間がお客さんとぴったり呼吸があってそのたびにどっと笑いが起きるのが気持ち良くてものすごい一体感。

「へっつい幽霊」ってこんなに楽しい噺だったんだ!
師匠目当てで見に来た甲斐があったなぁ。満足。

未成年

イアン・マキューアン 海外マ

 

未成年 (新潮クレスト・ブックス)

未成年 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

輸血を拒む少年と、命を委ねられた女性裁判官。深い余韻を残す長篇小説。法廷で様々な家族の問題に接する一方、自らの夫婦関係にも悩む裁判官の元に、信仰 から輸血を拒む少年の審判が持ち込まれる。聡明で思慮深く、しかし成年には数か月足りない少年。宗教と法と命の狭間で言葉を重ねる二人の間には、特別な絆 が生まれるが――。二つの人生の交わりを豊かに描きながら重い問いを投げかける傑作長篇。  

 宗教上の理由から輸血を拒む少年の裁判という極めて難しい判決を行わなければならない女性裁判員のフィオーナ。
難しい案件に頭を悩ませているフィオーナに長年連れ添った夫ジャックから信じられないような言葉を投げつけられる。彼女との結婚生活は今まで通り続けるつもりなので職場の若い女との不倫を認めてほしいと言うのだ。「最後のチャンスなんだ」という身勝手な言葉に呆然とするフィオーナ。

仕事で幾組もの夫婦の離婚に立ち会ってきたフィオーナだが、いざ自分の身に降りかかるとどうすればいいのかわからず右往左往してしまう。
怒りにまかせて鍵を替えてしまったり、謝罪の言葉を期待して何度もメールをチェックしたり。
しかしそんな状態にもかかわらず彼女は難しい裁判に真っ向から挑み、その少年アダムに会いに病院に出向いて行く。

彼女の下した判決は素晴らしいものだったと思う。アダムの生命の危機は彼女の判決のおかげで救われたわけだが、それまでは狂信的な宗教心の中である意味無菌状態で生きてきたアダムにすれば、一人荒野に放り出されたようなもの。
今まで宗教を無心に信じてきたように、今度はフィオーナに救済を求めてしまうもの、無理からぬことにも思える。

しかしフィオーナ自身も個人として見たら完璧な人間ではなく、夫との問題や自分が子どもを持たなかったこと、これからどんどん老いていくことに苦しんでいる。
彼女に自分の未来を全て託そうとするアダムの気持ちを受け止めきれなかったことは彼女の罪ではないけれど、罪悪感はきっと消えることがないだろうし、その痛みを抱えながら生きていくことになるのだ。

人間が人間に与えてしまう影響の大きさ。一歩踏み出してしまったために生まれる悲劇。
マキューアンらしい苦い物語だった。