りつこの読書と落語メモ

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昼八ツ落語会

9/15(日)、UNA galleryで行われた「昼八ツ落語会」に行ってきた。

・さん助 ご挨拶
・さん助「動物園」
・さん助「めがね泥」


さん助師匠 ご挨拶
鈴本8月下席はご来場いただいてありがとうございます、とさん助師匠。
私の田舎からも日曜日にバスをチャーターして30名近く来てくれました。
本当にありがたかったんですが、親が呼んでくれたのでかなりの高齢者。
到着は16:30頃ということだったので、終演後よりその時にお礼に伺って写真を撮ったりしようと思ってました。
一人一人に挨拶する時間はないだろうと思って親から名前を聞いて礼状を用意して渡そうと思って、これは我ながらいい考えだと思ったんですが。
バスに入って名前を呼んだんですが誰も手を挙げてくれない。マイクを借りてみたんですけどこれでもだめ。なので名前を呼びながら一番後ろまで行くとようやく後ろの方が手を挙げてくれた。で、渡したんですが、これが別の人。で、次の名前を呼ぶとまたなかなか手が挙がらない。「あ、おれだ」と手が挙がったんで渡すとこれもまた別人。
こんなことをやっていたら30分かかちゃった。
で、バスから降りて撮影ってことになったんですが、これがまた降りるのに時間がかかるし勝手にトイレに行こうとするしまたここでも時間がかかり…。大変でした。でもほんとにありがたかったです。

…それから最終日に「七度狐」をやって、それまでノリノリだったお客さんを引かせてしまった、という話。
げらげら笑うと「今笑った方はその場にいた方だと思いますが。私そういえば真打の披露興行の時も千秋楽…国立のトリの時に”家見舞い”をやってしまってお客さんにドン引きされまして…あとで師匠に怒られました。”お前ねぇ、こういうときに家見舞はないよ”って」。

…ぶわはははは。そんなこともありましたね(笑)。


さん助師匠「動物園」
これは二ツ目になったばかりの頃に教わってそれから2回ほどやって塩漬けにしていた噺です…本当に久しぶりにやるので緊張してます、大きな噺です、というまくらから「動物園」。え?大きな噺?
これがまた始まり方がなんかいつも聞いてる「動物園」と違う。なにがどうっていうのはよく覚えてないんだけど。
「お前は長い付き合いだから知ってると思うけど、俺、頭悪いんだよ」「かといって身体も強くない。虚弱体質。」「で月収百万円ほしい」
言われた友達が「そんな仕事あるわけねぇだろう!」と言った後に「あったわ。あったあった。他の人に取られるのは悔しいから早速行こう」。
連れていかれたところにいたのが怪しいおじさん。妙にハイテンションで…き、気持ち悪い(笑)。

で、そのおじさんがライオンのやり方をレクチャーするんだけど、これが…下手(笑)!えええ?なんか変じゃない?そのしぐさ。ぶわははははは。
さらに無理やり毛皮を着せられた男、檻の中に閉じ込められちゃう!「ライオンの気持ちになっていただかないと。一度家に帰ってしまうとライオンの気持ちがいったん消えちゃいますから」。

珍獣動物園が開演して口上があって幕が上がるときの歌がまた…!!え?あがた森魚?もうさん助師匠のおずおずした歌声、たまらん(笑)。
一生懸命「がおーがおーーー」やるのも…ほんとに勢いがあって…やりながら「こういう小さい会場でやる噺じゃなかったな」「よくトリとれたな」つぶやくのがおかしい。

聞き飽きた噺なのに本当におかしくて楽しかった!へんてこりんな「動物園」、笑ったー。


さん助師匠「めがね泥」
新米泥棒を呼びつけて親分があれこれ話をするんだけど、「お前この近所の情報に詳しいか」と聞くと新米は「得意中の得意っす。どこの夫婦が不倫してるとか離婚しそうだとか全部耳に入ってます!」。
それじゃ頼もしいと「札を持っていそうな家はどこだ」と聞くんだけど、これがもうどれもとんちんかん。しかも場所を説明するのに必ず焼き芋屋が基準。もうこれがおかしいおかしい。
そして近所の道具屋に盗みに入ろうと親分、中堅の子分、新米の三人で出かけて行って、中を覗き込むのだが…。

めったに聞くことのない噺。生で聞いたことがあったのは一之輔師匠だけ。
すごくばかばかしくて楽しい!!
これはこれから寄席でたくさんかけてほしいな。

あーーー楽しかった。この会では普段めったにやらない噺をやることが多くて嬉しい。満足~。

末廣亭9月中席夜の部

9/13(金)、末廣亭9月中席夜の部に行ってきた。

・扇生「無精床」
・正朝「替り目」
・夢葉 マジック
・文生 漫談
・小ゑん「吉田課長」
~仲入り~
・志ん陽「猫の皿」
翁家社中 太神楽
・彦いち「長島の満月」
・木久扇 漫談
・白鳥「実録・鶴の恩返し」
・正楽 紙切り
・きく麿「二つ上の先輩」


扇生師匠「無精床」
きびきびしていて明るくて軽くてすごく楽しい。
好きだななぁ、扇生師匠。好きな噺家さんが多すぎてなかなか行けてないけど、また独演会に行きたいなぁ。


小ゑん師匠「吉田課長」
吉田課長がバッサーっと髪をかきあげるしぐさがおかしい。
とってもデリケートで傷つきやすい吉田課長がチャーミングで、ひたすらおかしいんだけどほんの少し悲哀も感じられて好きだな。


志ん陽師匠「猫の皿」
この位置で「猫の皿」!うれしい。
この噺、大好き。のんびりしていて風景が浮かんできて季節が感じられる。よかった。


きく麿師匠「二つ上の先輩」
大きな拍手に迎えられたきく麿師匠。
なんの噺かなぁとわくわくしていたら「二つ上の先輩」。
「二個上だぞ」とえばったり「仕事と二個上の先輩とどっちが大事なんだよ?仕事がそんな大事かよ?」と言ったり「悩みがあるなら俺に言えよ。俺、顔広いから」と言う先輩。
いったいこれはどういうシチュエーションなんだ?と思っていると、明らかになる3人の年齢。
前半の「ん?ん?」からの後半のどっかんどっかん!がたまらない。緊張と緩和(笑)。
怒涛の怪談話にげらげら笑いどおしだった。楽しい!

最後は立ちあがって寄席の歌。完璧。

 

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寄席の歌、の時間だけ撮影可能。



ヒョンナムオッパへ:韓国フェミニズム小説集

 

ヒョンナムオッパへ:韓国フェミニズム小説集

ヒョンナムオッパへ:韓国フェミニズム小説集

 

 ★★★★★

『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者による表題作を収録!各世代の女性の共感を呼ぶ、7名の若手実力派女性作家の短篇集。

[目次]
「ヒョンナムオッパへ」チョ・ナムジュ
「あなたの平和」チェ・ウニョン
「更年」キム・イソル
「すべてを元の位置へ」チェ・ジョンファ
「異邦人」ソン・ボミ
「ハルピュイアと祭りの夜」ク・ビョンモ
「火星の子」キム・ソンジュン 

「ヒョンナムオッパへ」チョ・ナムジュ
「82年生まれ、キム・ジヨン」同様、あーなんだ思ったほど酷くはないじゃん、普通じゃんと思った後で、これを普通と思う自分にドキッとする。
「頼りがいがある」「私のためにやってくれている」が、自分に都合のいいように操っているだけ、と気づく主人公。
あからさまなDVではなくても、こんな風に誰かの行動や人間関係を制限するような関係性は日常的にある。それに気づくことが自立への第一歩なのかもしれない。

 

「更年」キム・イソル
身につまされたのが「更年」。主人公が感じる違和感は他人事ではなくて読んでいて痛かった…。でも彼女が感じる違和感や罪悪感は間違っていない。ラストは苦いけれどほんの少しの清々しさも。

そのほかにもノワール小説あり、バトルロワイヤル(!)あり、SFあり。
フェミニズム小説とあるので少し警戒しながら読んだけれど、バラエティに富んだ作品でとても楽しかった!
韓国の小説、ほんとに面白い!何を読むか迷ったら韓国小説を読もう、というのが最近の私。

柳家小三治独演会

9/12(木)、北とぴあで行われた「柳家小三治独演会」に行ってきた。

・一琴「平林」
小三治「野ざらし
~仲入り~
・一琴 紙切り
小三治厩火事

小三治師匠「野ざらし
今日は少し涼しくなりましたね。涼しくなって少し楽です。ですから今日の私は能弁ですよ、と小三治師匠。

昨日の新聞にこんな記事がありました。78歳の老人が…ああ、78歳は老人ですかね、私78歳ですけど。なんか自分で言って引っかかりました。老人かよ、って。ああ、その78歳がイノシシを見ようと思って…だったかな、山に登ったんですね。そこで蜂に刺されて…78か所刺されて大変だった、という記事でした。
蜂と聞けば黙っちゃいられない。好きですから。私は。スズメバチだったんですかね。あいつらは…こちらが何もしないと思えば何もしないです。でも驚いたり手で払いのけようとしたりしたらだめです。毒液を出すんですよ。ぼわっと。これを付けられると取れない。で、この匂いを頼りに仲間が寄ってきます。で、寄って来た仲間もまたぼわっと出す。それを頼りにまた仲間が…。全力で走っても追いかけてきますから。あいつらと闘っちゃいけない。
蜜蜂は刺さないんですよ。基本的には。もちろんこちらが不用意な動きをしたりすれば自分の身を守るために刺してきます。

…といって、養蜂場に行ってミツバチを手ですくいあげた話やハチミツの話やアフリカのサバンナに動物を見に行った話や歯(インプラント)の話や…。
次々と面白い話が浮かんできては「だめだ、この話をし出すと今日はこれだけで終わっちゃう」「これもよしましょう」「好きなことの話になると我を忘れちゃうから」「なんのためにここに来たかわからなくなっちゃう。ま、それほどの使命感もないんですが」とかいろいろ言いながら途中でやめる師匠。ほんとだ、今日の師匠は能弁だ(笑)。

道楽のまくらから「野ざらし」。
この日の「野ざらし」はとても自由な野ざらしで。
なんだろう。心の赴くままに即興でやってる、みたいな…変拍子っていうかジャズっていうかそんな感じ。
さいさい節が本当に楽しいんだよなぁ。能天気なんだけど、無理してはしゃいでる感じが全くないから、置いてけぼりにならないのだ。
やっぱり「野ざらし」は小三治師匠だなぁ。

普段は鼻に釣り針が引っかかるところで終わりだけど、なんとこの日は太鼓持ちが家に訪ねてくるところまで。そうか、ここまでやろうと思っていたから、長いまくらを封印したのかな。
女が来ると思って待ちわびていた八五郎太鼓持ちが入ってきて「なんだこりゃまた変なのが入って来ちゃったなぁ」というのがおかしいし、なんだかんだ言いながら迎え入れるのもおかしい。楽しかった!


一琴師匠 紙切り
見るたびに切るスピードが上がっているのがすごい。しかも今回は注文を取ったら「野ざらし」。うわーーどうするんだーーと思っていたら、なんと小三治師匠の似顔絵。鼻に釣り針が引っかかっているところ。頓智も効いてないとだめなんだなー紙切りは。すばらしい。


小三治師匠「厩火事
縁のまくらから「厩火事」。
相談されたご隠居が「今日という今日は別れないっていうセリフ、今日が初めてじゃないよ」「お前さん、まだ未練があるんだな」。ご隠居、確信をついてる!
わりと刈り込んでいておさきさんが未練たっぷりな場面はなかったのに、まだまだ旦那に心があることがちゃんと伝わってくるのがすごい。

旦那が茶碗が割れてぎゃあぎゃあ言った後にしばらく黙ってから「怪我でもしちゃいねぇか?」。ここで客席からほっとしたため息が漏れたのに鳥肌。
完敗だ、この旦那には。かなわない。くーー。

穴の町

 

穴の町

穴の町

 

 ★★★

ニューサウスウェールズ中西部の消えゆく町々』という本を執筆中の「ぼく」。取材のためにとある町を訪れ、スーパーマーケットで商品陳列係をしながら住人に話を聞いていく。寂れたバーで淡々と働くウェイトレスや乗客のいない循環バスの運転手、誰も聴かないコミュニティラジオで送り主不明の音楽テープを流し続けるDJらと交流するうち、いつの間にか「ぼく」は町の閉塞感になじみ、本の執筆をやめようとしていた。そんなある日、突如として地面に大穴が空き、町は文字通り消滅し始める…カフカカルヴィーノ安部公房の系譜を継ぐ、滑稽で不気味な黙示録。 

 全体的に倦怠感が漂ってどんよりした印象。

消えゆく町についての本を書いている主人公。
訪れた町は特になんという特徴もなくその町の歴史について書かれた本もない。
ある日この町に「穴」が現れ、それはどんどん広がっていくのに、なすすべもない町民たち。見ないふりをしたりあえて論点のずれた議論をしたり…。

何か重大なことが起きているのに見ないようにしていればそのうちなんとかなる…多分そこまで酷いことにはならないだろうという根拠のない無関心。自分に覚えがないわけじゃないので、ぞぞぞ…。

登場人物はユニークでそれぞれのエピソードは面白いのだが、観念的で正直きちんとは理解できなかった。

八光亭春輔独演会

9/9(月)、赤坂会館で行われた「八光亭春輔独演会」に行ってきた。

・一猿「武助馬」
・春輔「普段の袴」
~仲入り~
・春輔 幸田露伴「 幻談」&踊り

一猿さん「武助馬」
昨日の謝楽祭では、一朝一門でお店を出しました、と一猿さん。みそ田楽と一門グッズ。試しに作って食べてみようということになってこんにゃくを茹でてはみたものの…どこをどう探してもないんです…味噌が。味噌がないとどうにもなりませんから。パニックですよ。で、とある兄弟子が「大丈夫だから」と一言。おそらくおかあさんかおとうさんが届けて来てくれたものと思われます…どうにか味噌が到着し事なきを得ました。

そんなまくらから「武助馬」。これ、そんなに面白い噺じゃないと思うんだけど、一猿さんは特に独自のクスグリを入れたりしていないのに、ちゃんと面白かった!聞きやすいし間がいいからちゃんと笑えるんだな。いいなぁ、一猿さん。楽しかった。


春輔師匠「普段の袴」
自分の師匠、彦六師匠の思い出話。これが本当に面白い。木久扇師匠もよく彦六師匠の物まねをするけど、春輔師匠の話からもその様子が浮かんできて、ああ…こういう師匠だったんだろうなぁ、と想像できる。
毎朝7合の水をごくごく飲み(健康のため)、彦六体操をし(水を飲んだままじーっとしていると水が中で湯になってしまう、という彦六師匠独自の理論により)、それから仏壇の前に座って一通りお経をあげる。自分のお世話になって作家の先生、家族親戚、門弟…全員の健康と幸せを祈るところまでが、朝の儀式。

それからとってもせっかちで旅行に行く時は何時間も前に家を出てホームでずっと立って待ってたり…などのエピソードを紹介。楽しかったー。笑った笑った。

そんなまくらのあとに「普段の袴」。
独特の喋り方というか独特の調子があって、ああ、これが林家の芸なのかなぁ、と思う。全然違うんだよね。語り方が。でもそれがとっても面白くて楽しくて癖になる。
いろんな協会があっていろんな一門があってそれぞれの芸風があって…。この多様性が落語の魅力だなぁ!とっても面白かった。


春輔師匠 幸田露伴「幻談」
この「幻談」という噺は彦六師匠がやっていて、師匠が亡くなってからは誰もやっていなかった。自分の会をやる時に主催者から「やってみたらどうか」と言われ、いやこれは難しい噺だから…といったんは断ったものの、「合ってると思いますよ」とまで言ってもらったので、ではやってみようかということに。やるにあたっては勝手にやるわけにはいかない。作者の許可をもらわないと…ということで、現在幸田露伴の作品の管理をしている方に連絡をとったら「それならば会ってお話をしましょう」ということに。その家を訪ねて行って…という話がとても面白かった。もうそれだけで一つの文学作品のようで素敵。
幸田露伴 幻談

お話として淡々と語りながら、巧みな情景描写…そして物語が動くところは独特の間でもってたたみかけてくるので一瞬自分が落語を聴いていることを忘れ、物語の世界に引き込まれる。うおおお。これは…またとても面白い。笑いどころのない噺だけれど、こういう作品も落語としてみることができるというのは、すごく新鮮だし嬉しい。そして先代の彦六師匠というのはこういう芸だったのかなぁとぼんやり思う。他の誰とも違う落語。すごい魅力的だ。

そして怖い噺だったから…なのかな、最後に踊りも披露してくださって楽しくお開き。

これが凌鶴あれも凌鶴

9/8(日)、道楽亭で行われた「これが凌鶴あれも凌鶴」に行ってきた。


・凌鶴「正直な講談師」
・凌天「一心太助 喧嘩仲裁屋」
・凌鶴「牡丹燈記
~仲入り~
・凌天「山内一豊
・凌鶴 「大村智


凌鶴先生「正直な講談師」
昔はよく職務質問を受けました、と凌鶴先生。
池袋の名画座の近くを歩いていた時、パトカーが来たんです。ただでさえごちゃごちゃした狭い路地にごみ箱があって曲がれないみたいだったので、私それをどけて通れるようにしてあげたんですね。そうしたら警官がやってきまして。てっきりお礼を言われるのかと思ったら「この辺りで凶悪な犯罪が多発しているのでご協力ねがえますか」。
ああ、そうなんだ。そりゃもちろん協力しますよ。「こういう人を見かけませんでしたか」と写真を見せられたりするのかなと思っていたら「カバンの中身を確認させてください」。
え、えええ?おれ?おれを調べるの??
仕方なくカバンの中身を見せると「おやー?なんでこんなに新聞が入ってるんですか?」
「いや…あの私…仕事で使うんで」
「仕事で?!しかもこれ今日の新聞じゃなくて古い新聞じゃないですか!」
「いやあの…講談師なもので…こういう新聞の記事を読んで、新作講談を作るんです」
「公団?公団に新聞は関係ないでしょ?!」
いつまでたっても全く話がかみ合わないまま、今度は財布を見せろと言われまして。
財布なんか見たってそこにナイフとかピストルとかそんなものが入れられるわけもないし、と言うと「いや、覚せい剤を隠し持ってるということもあるもんで」。

凌鶴先生が何年か前まではよくされていたということは、長髪で怪しい雰囲気だったのか?今の凌鶴先生からは想像がつかないけど。
でも職質されても穏やかに丁寧に対応される姿が浮かんでくる。素敵。そんなまくらから「正直な講談師」

ある日、職質を受ける講談師・凌鶴先生。
まくらでおっしゃっていたように財布の中身まで調べられるが、警官が「きみ…相当困窮しておるな」。
気の毒に思った景観は凌鶴先生に10万円くれる(!)。
また別の日、自分の会が終わってみると、お客さんの忘れ物。中に同じ名刺が何枚も入っていたのでこれが本人に違いないと思い、凌鶴先生がその住所を訪ねると、取次の者が出てくる。
「こちらをお忘れになってはいないでしょうか」と渡すと、どうやらそこの家の奥様の物に相違ないとのこと。
取次の者が「奥様があなたにお礼にこちらを渡してくれということなので、聞こえるようにお礼申し上げろ」。
それを聞いた凌鶴先生が、自分はお礼をもらうために届けにきたわけじゃない。本人が出てくることもなく礼を言えとはなにごとだ!と怒ると、奥から奥様が出てきて「申し訳ございません」と謝る。なんとこれが今の首相の奥さん。そして凌鶴先生の講談を聞いて感銘を受けたので何かお礼をしたい、と言い出して…。

これはつまり…凌鶴先生のシンデレラストーリー!
次々繰り広げられる妄想がすごくおかしくて大笑い。凌鶴先生がこんな新作も作られるとは!すごく楽しかった。笑いっぱなしだった。


凌鶴先生「牡丹燈記
圓朝の「牡丹灯籠」の元になった話とのこと。
中国のお話。最愛の妻に先立たれ寂しく暮らす男がある日お供を連れた美しい女を見かけてふらふらと後を付ける。付けられていることに気が付いた女に声をかけられ、二人を家に誘った男。女はこの地に身よりも知り合いもいないというので、それなら我が家を訪ねておいでなさい、という。それから毎晩女が訪ねてくるようになるのだが、ある日隣に住む易者がこの様子を見て…。

なるほど。もとはこういう話だったのか。どちらにしても間違った女に恋心を抱かされると大変なことになるということなのだ…。ふっふっふ。

 

凌鶴先生「大村智
ノーベル賞を受賞した大村智さんの一代記。
大村智さんについてはわりと年をとってからノーベル賞をもらったんだな、ぐらいのことしか知らなかったのだが、最初は定時制高校の先生をしていたとは知らなんだ。そこで教えた経験から、自分も働きながらもっと勉強ができるのではないかと考えて研究生になり、そこから研究の道へ進むことになったとは。すごいな。聞いていると、とても柔軟性のある考え方のできる人なんだろうなと思う。

難しいかなと思いながら聞いていたけれど、わかりやすくて楽しかった。
大村さんが社会人経験もあるからなのか考え方が柔軟でアイデアマンなのも面白いなと思った。

第二百四回 にぎわい座 名作落語の夕べ

9/7(土)、「第二百四回 にぎわい座 名作落語の夕べ」に行ってきた。

 

・南太郎「転失気」
・圓馬「菊江の仏壇」
~仲入り~
・小袁治「お神酒徳利」

 

圓馬師匠「菊江の仏壇」
病人を見舞うのは嫌いだと頑としてお花の見舞いに行かない若旦那。
大旦那が出かけて早速遊びに出ようとするのだが番頭に止められる。
番頭が遊んでいることに気づいていることを若旦那に言われ、挙動不審になるのがおかしい。固いように見えるけど実はそうではないことがうかがえる。
今日は絶対に外に出てはいけません、どうしても…というのならその女性をこちらに呼んではどうでしょう?と番頭。
そういわれて、そうか、それならいっそ店を早じまいにして店の者にも好きな物をとらせてやって酒を飲もう、と若旦那。
長いことやるわけじゃない、みんなでわっとやってそれで寝ちまおう、と。

好きな物を言えと言われた店の者がそれぞれに食べたいものを言うのだが、そのバラエティに富んでいること。最初は遠慮がちだったのがどんどん楽しくなってきてお酒も入って陽気になるのがとても楽しい。

そうかー。若旦那は困った人だけど店の者からしてみるとその気まぐれのおかげでめったに食べられないものが食べられてお酒も飲めて…嬉しいご褒美みたいな夜だったんだなぁ。

呼ばれて来た菊江は最初からちょっと居心地悪そう。若旦那が本当はお花の病状を心配しているんでしょう?ということをちらりと言うのがいいな。この一言だけでなんか菊江が好きになる。

その後の展開もとても落語らしくて楽しかった~。
お花と若旦那のところがあまりに深刻だと、このサゲとのギャップが大きすぎて、え?ってなるけど、最初から最後まで落語の世界なのでサゲのばかばかしさも無理なくなじむように感じた。


好きじゃない噺を圓馬師匠がどんなふうにされるのか興味津々だったんだけど、圓馬師匠らしい…ニュートラルな落語の世界。とても楽しかった!
同じ噺でも噺家さんによってこんなに印象が違うの、面白いなぁ。


小袁治師匠「お神酒徳利」
自分が入門したきっかけは小三治師匠。まだ小三治師匠が二ツ目の時に落語を教わりに行っていた。それで落語家になりたいと話したら、自分はまだ二ツ目で弟子はとれないから自分の師匠のところに入門したら?と言われた、と。
そうだったんだ!!知らなかった!

それから小さん師匠の話や先代の文楽師匠の話など。こういう話は本当に聞いていて楽しくてずっと聞いていたくなるなぁ。

そんなまくらから「お神酒徳利」。
お神酒徳利はいろんな形があるけれど、小袁治師匠のは八百屋さんが女中への意趣返しで徳利を隠して騒ぎになったところで出て行って「そろばん占い」で見つけ出す。それから旦那に説得されて旅に出て泊った旅館で五十両がなくなり旦那が「この先生は失せ物を探す名人」と言ってそこでも占いをしないといけなくなる、という話。

窮地に追い込まれた八百屋さんが夜逃げの準備をするところがおかしかった。
あと自分がやりましたと訪ねてくる女中は結構いい女なんだね(笑)。

今回は出演者二人で長講たっぷりだったんだけど、満足感が高かった!

アーモンド

 

アーモンド

アーモンド

 

 ★★★★★

扁桃体(アーモンド)が人より小さく、怒りや恐怖を感じることができない十六歳のユンジェは、目の前で家族が通り魔に襲われたときも、無表情で見つめているだけだった。そんな彼の前に、もう一人の“怪物”が現れて……。「わが子が期待とは全く違う姿に成長したとしても、変わることなく愛情を注げるか」――出産時に芽生えた著者自身の問いをもとに誕生した、喪失と再生、そして成長の物語。 

失感情症で怒りや恐怖を感じることができないユンジェ。母と祖母の愛情をたっぷり受けて育つが、ある日家族に悲劇が訪れる。
一方、幼いころ親とはぐれ手の付けられない不良になったゴニ。
「怪物」と呼ばれる二人の少年が出会い、火の玉のようなゴニはユンジェにどうしようもなく惹きつけられていく…。

感情や共感は大事なことだと今まで思って生きてきたけれど決してそうとばかりも言えないのかもしれない。自分の感情を過信しているとどうしても自分の見たいようにしか人を見ることができない、自分が望むような反応をしない人を排除してしまう、そういう面もあるのかもしれない。
感情を持たないはずのユンジェがこんな風に優しいのは、受けてきた愛が彼の心にちゃんと栄養として積み重なっていったからなのかもしれない。

人間たらしめているものはなんなのかという問いに答える作品でもあり、少年の成長の物語でもある。面白かった。 

それにしても韓国文学の面白いことよ。
いろいろな小説がこうして次々翻訳されて読むことができるのは至福だ。

これから真打に昇進する柳家わさびのパーティがわりの規模大きめの落語会

9/6(金)、日本橋教育会館一ツ橋ホールで行われた「これから真打に昇進する柳家わさびのパーティがわりの規模大きめの落語会」に行ってきた。

・わさび ご挨拶
ファンキー末吉 一番太鼓
・わさび 100コマわさび
・一之輔「鈴ヶ森」
小満ん「目黒のさんま」
・対談 高田文夫松村邦洋、わさび
~仲入り~
・口上(一之輔、ファンキー末吉、わさび、さん生、小満ん)
・さん生「親子酒」
・わさび「臨死の常連」

 

ファンキー末吉さん 一番太鼓
舞台にドラムセットが置いてあったので何事か?と思ったら、爆風スランプのドラマー・ファンキー末吉さんが一番太鼓をたたくのであった!
袴姿のファンキーさんが硬い表情で一番太鼓を叩くという…相当シュールな図。ぶわはははは!最高!

 

わさびさん 100コマわさび
わさびさんの生い立ちから落語家になって真打昇進を迎える現在までを100コマで紹介。
いまだに少年のようなわさびさん。とてもかわいがられて育ったことがわかる。
あれ、また見たいな、どこかで。

 

一之輔師匠「鈴ヶ森」
明日が沖縄で落語会、前乗りしてたっぷり遊ぼうと楽しみにしていたのに!と一之輔師匠。
「なんだよ、おれが前座かよ」と言いながら、「鈴ヶ森」。テッパンで客席をぐわっと温めたのはさすが。
しかしこの噺、全然面白くないのに一之輔師匠だと笑っちゃうから不思議だ。

 

小満ん師匠「目黒のさんま」
そうか。小満ん師匠が大師匠なのだ!ということはこれからもお披露目で口上に上がる小満ん師匠を見られちゃったりするのか。ぬおお。

今年初の目黒のさんまが小満ん師匠という幸せよ。洒落っ気たっぷりでとても楽しかった。

 

対談 高田文夫さん、松村邦洋さん、わさびさん
高田文夫さんとは大学の落研の先輩ということでお付き合いがあるのか。
スピードと毒気に終始たじたじのわさびさん。
あれこれ毒を吐きながらもわさびさんのことを紹介して応援している?高田さんだった。
「俺が連れてきたゲスト…ビートたけし」と紹介されて出てきた松村邦洋さん。物まねをいろいろ披露。わさびさんのことは全然知らないみたいだった(笑)。

 

口上(一之輔師匠、ファンキー末吉さん、わさびさん、さん生師匠、小満ん師匠)
まだ披露興行が始まってないからまだ真打じゃないんだ、とわさびさんのことを紹介する一之輔師匠。
初めて口上に上がってめちゃくちゃ緊張しているファンキーさん。
小満ん師匠の口上は小満ん師匠らしく洒脱で軽くて素敵~。
さん生師匠は弟子が真打になる喜びに溢れていて見ていてじーんとした。

 

わさびさん「臨死の常連」
なんと新作。しかもしょっちゅう臨死してしまう男が主人公の話。
おめでたい席で臨死?(笑)

驚いたりショックを受けると臨死状態に陥り地獄の入り口に着いてしまう吉田さん。もうすっかり地獄の連中とも顔見知りで、閻魔様とも軽口を叩ける仲。
そこで閻魔様にポイントを貯めると願い事がかなう、さらに人の命を助けるとポイントがぐっと稼げる、と聞いてがぜんやる気をだした吉田さん。
自分と同じように臨死状態に陥った人を一生懸命励まして、この世に戻すということをやり始めた。
あと10ポイントで閻魔様に言われたポイントに達するという時に…。

臨死って?と驚いたけれど、これが実はとてもおめでたい噺で…こういう席でこの噺を選んだというところにわさびさんの強い決意を感じた。
特別な会を見にいけてとてもよかった。満足。

愛が嫌い

 

愛が嫌い

愛が嫌い

 

 ★★★★★

日常の中にも、一瞬先のカタストロフ。自我の輪郭があやふやなぼくは、愛と生活を取り戻せるのだろうか。交錯する優しい感情。新しい関係の萌芽を描く、パラレル私小説3部作。芥川賞作家の新境地。 

わわ、なんだこれは。ちょっと今まで読んだことのない感じ…。「うわっわかるっ」と親し気に腕をつかんだものの、「あっやっぱわかってなかったかも」とそっと離す感じ。
人間をフラットに全く別の視点から見ようとしているような…でもそれが奇をてらっていなくて…自分にも覚えがある部分…身につまされるところがたくさんあって、心地よさと居心地の悪さ、両方がある読後感。

「しずけさ」「愛が嫌い」「生きるからだ」どれもよかった。100%分かり合えているわけではないけど少しの間だけそばにいる。そんな薄い関係も、誰かを少しだけ救っているかもしれない。

他の作品も読んでみよう。

小んぶにだっこ

9/5(木)、落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。

・小んぶ「臆病源兵衛
~仲入り~
・小んぶ「船徳


小んぶさん「臆病源兵衛
昇々さんとの落語会で九州に行ってきた、という話から。昇々さんのことはあまり知らなったんですけど、変わった人ですね。私も変人呼ばわりされますけど同じぐらい変人ですね。
主催者の人が迎えに来てくれて話していた時に昇々さんが「僕、日々の記憶がないんですよね」と言っていて。日々の記憶がないってなんだろう?と思ったんですけど。たまたまその日九州が涼しくて「思ったより涼しいですね」と言ったら「いや、今日はたまたまですよ。昨日までは暑かったですよ。東京は暑いですか?」と主催者。そうしたらそれに昇々さんが「いやぁ…わかんないっすね」。
ええ?東京の天気がどうだったかわかんないの?ああ、確かに記憶がないんだな、と。そう思いましたけど。
それから楽屋で二人で話していて「僕、友だちいないんですよ」と昇々さん。「あ、僕もそうです。いないんです」と小んぶさん。お互いにいかに友だちがいないかを述べあいましたけど…友だちにはなりませんでしたね。

…ぶわはははは!!!おかしすぎる!!
それから真打披露パーティのお手伝いに行った話や新真打の記者会見を見学した話。これもおかしかったーーー。小んぶさんはたぶんべたべたした付き合いをしない人なんだと思うけど、いろんな人から好かれていると思うなー。前回のことがあるからまくらは短めにおさえて(笑)「臆病源兵衛」。

源兵衛の怖がり方がドスが聞いていてすごく可笑しい。地の底から湧き出るような声で「うわあぁぁぁぁーーーー」と言うのがいちいちおかしくておかしくて。
兄貴分も八五郎も小んぶさんがやると迫力がある。
源兵衛が八五郎を殺しちゃったと思い込んだ兄貴分が「まぁいいよ。捨ててきなよ」とけろっと言うのもおかしいんだけど、源兵衛が「一番怖いのが兄貴だな…」とつぶやくのもおかしい。

自分が死んじゃったと思いこんだ八五郎が、おでに貼られた三角の紙を「貼っておこう」ともう一度貼りなおすのもおかしい。
何がおかしいって台所に酒を探しに行った源兵衛が酒の徳利と間違えて持ったものが…もう不意打ち過ぎてひっくり返って笑ったわーこの独自のセンスがたまらないなぁ、小んぶさんは。いやぁ楽しかった。笑った笑った。


小んぶさん「船徳
さっきの「臆病源兵衛」は雲助師匠に教えていただきました、と小んぶさん。
みなさん私が勝手にやりすぎてるとお思いでしょうけどそんなことないんです。雲助師匠に教わった時に師匠から言われたんです。「この噺は源兵衛がキャーキャー言ってるだけになりがちだけど、そうじゃいけない」って。だからあれは雲助師匠に教わった形なんです。
なにせ私は雲助師匠が大好きでして。師匠が寄席に出てるときは必ず袖で聞くようにしてるんです。師匠が冷房の効いた店に入って風が当たることをこんな風に話してた、という話も面白かったー。
好きな噺家さんが誰に教わったとかこの師匠が好きとかいう話を聞くとほんとに幸せを感じるなぁ。

そんなまくらから「船徳」。
徳さんの非人間ぶりがめちゃくちゃおかしい。
おかみさんがお客に「あいつ、船頭だろ」と徳のことを言われて「え?あなた、あれが見えます?」とか「毎日やってきてあんなふうに船頭みたいなふりをしてるんですよ」とかいうのがおかしい。
徳がはちまきをするしぐさや竿を振り上げるしぐさも芝居がかっていておかしい~。
川に出て橋に芸者がいるのを見つけた徳が「お客さん、ちょっとかがんでください。あの二人、あたしの追っかけなんです」って言ってすごく気取って漕いで見せた後、ちらっとウィンクしたのがもうもう…!
漕ぐのがいやになって突然「着きました」と言うのもおかしいし、はちゃめちゃで楽しい「船徳」だったー。

死者の饗宴

 

死者の饗宴 (ドーキー・アーカイヴ)

死者の饗宴 (ドーキー・アーカイヴ)

 

 ★★★

その刹那、わたしの眼に映った息子の顔に浮かんでいた恍惚の表情は美しかったが、同時に年老いてもいた…少年と彼に取り憑いた正体不明の存在“あれ”との顛末を妖しく語り、読者の想像を超える衝撃的な結末を迎える代表作中篇「死者の饗宴」のほか、“サトレジ号でたぶん1898年だった”という謎の言葉と不気味な子供に翻弄される男を描く狂気に満ちた怪異談「ブレナーの息子」、ビルマの神秘な力を持つ宝石と護符をめぐる奇妙な物語「煙をあげる脚」など、知られざる英国怪奇文学の名手による異形のホラー・ストーリー、幽霊物語、超自然小説を厳選した全8篇。 

付いてくる船、神経に障る子ども、思い出せない顔。何が起きているのかはっきりとわからないのだけれど、わからないだけに想像をかきたてられて怖い。面白かったけど、救いのない物語ばかりでちょっとぐったり…。幽霊には逆らえないのね…。
一気に読まないで時間をかけて少しずつ読んだ方がよかったかもしれない。

面白かったのは「悪夢のジャック」「永大保有」「ブレナーの息子」「使者の饗宴」。

 

談四楼・伸治二人会

9/3(火)、上野広小路亭で行われた「談四楼・伸治二人会」に行ってきた。

・縄四楼「真田小僧
・伸治「禁酒番屋
・談四楼「浜野矩随」~仲入り~
・談四楼「人情八百屋」
・伸治「鰻の幇間

伸治師匠「禁酒番屋
ニコニコ笑顔で出てきて座布団に座って笑顔で客席をぐるーっと見渡してにっこり。
「今日みたいな日に来てくださって本当にありがとうございます。暑いでしょうー。蒸すしねぇ。こういう日に出かけるの嫌だよねぇ。私も嫌だもん。あははは。しかもこの時間ね。早いよね。お仕事されてる方はお仕事を急いで終わらせていらしたんでしょう?私なんかね、家にいてテレビ見たりごろごろして遊んでいて夕方になって出かけてくるんだから。全然違いますよ。みなさんとはね。本当にありがとうございます」。

…こういう小さい小屋で伸治師匠がニコニコ笑顔でこんなことを言ってくれたら、もうほんとにそれだけで来てよかったー!っていう気持ちになるなぁ。ほんとに素敵。

「談四楼さんはね、実はそんなに知らないんですよ。あはははは。でもこうやって一緒に会ができて、ありがたいですねー」なんていう話をあれこれしたあとに、お酒のまくら。

「私はね、お酒飲めないんですよ。残念なことに。昔ね、東横落語会に前座で行ってた時、先代の馬生師匠が楽屋に入るとね、”ビールちょうだい”って言ってね、ビールをきゅーーーっと飲むんですよ。それで高座に上がってね。終わって帰ってくるとまた”ビールちょうだい”って言って、またきゅーっと飲んで、帰って行くのね。あれがかっこよくてねぇ。」
それから自分の師匠のお酒の飲み方や今の芸協で一番酒の癖が悪いのは誰か、などなど。そんなまくらから「禁酒番屋」。

侍が酒をぐいっと飲んでたちが悪くなっていくのが目に見えてわかる。
遊び心いっぱいで自信満々で番屋に挑む若い衆の楽しさ。
軽くて楽しい「禁酒番屋」。サゲが逆になっちゃったのがまたおかしかった!(しかも師匠は気づかなかった、と)

 

談四楼師匠「浜野矩随」
談四楼師匠の「浜野矩随」は以前聞いたことがある。きれいで淡々とした落語なんだけど、結構えぐるようなところがあって、談志師匠ってこういう感じだったのかな、と思う。

若狭屋の主が矩随に元手は出すから商売をやってみないかと勧めるのは初めて見た気がする。それにしてもお前の彫ったものを私が買っているのは、それが世間に出回って親父の名前に傷がつくのが嫌だからだ、というのはかなり厳しい言葉だなぁ…。


談四楼師匠「人情八百屋」
実はこの後日暮里で一門会があってトリをとらなければいけないので、この順番です、と談四楼師匠。二席目は軽めにやって下がりますねと言って「人情八百屋」。どこが軽めなんや!(笑)
そういえば以前も「軽めにやります」と仲入りで「浜野矩随」だった。この師匠の「軽めに」っていったい…。

八百屋さんが気持ちのいいキャラクターで安心して見ていられる。
子どもを預かった鉄五郎も気風がよくてさばさばしていていいなぁ。
どう考えても酷い噺なんだけど(笑)、お話として聞ける部分があってそこに救われた。

伸治師匠「鰻の幇間
今日はもう落語はやりません!と伸治師匠。「だって落語やると間違えちゃうんだもん!」に大笑い。自分で気づいてなかったんですよ。自然にそう言っちゃった。降りた時に談四楼さんに言われて「え?そうだった?」って。どうも今日のお客さんは楽屋の噂話とか喜んでくださりそうだから、そういう話をしようかな。

袖で聞いていたけど談四楼さんの落語は談志師匠っぽいね。思い出しました。
そういえばニツ目の頃に地方のホテルで落語会に呼んでいただいてもらってるときに、たまたま談志師匠が泊まりに来たことがあった。その時に「おい、お前、俺の前で落語やってみろ」って言われたんですよ。あたし、とんでもない!と思って逃げちゃった。でも今思えばくそみそに言われてもいいから、やってみればよかったですね。いったい何を言われたのか。興味ありますね。

それから太鼓持ちの話。有名な太鼓持ちの逸話、知り合いの太鼓持ちの話、どれも面白い!しかもそんな話から「鰻の幇間」。これがひっくり返るほど面白かった!

調子がよくて軽い一八がとってもチャーミング。鰻屋に入ってきて、子どもが宿題やってる部屋の方が自分たちが通された部屋よりきれいじゃねぇか?と驚いたり、座布団もこんな風に重ねちゃって…と文句を言いながらも、お客が来たらヨイショヨイショ。

酒を飲んだりお新香を食べて「ん?」って顔。そして鰻がもう見るからにおいしくなさそう。「なんかこれは…弾力がありますね」に笑う。
1人で早合点して感心してるんだけど、一杯食わされたとわかってからの反応がすごくおかしい。「払いますよ。だから言わせて。一通り」。そう言って小言が始まるんだけど「聞いてる?あたしの話?お願い、聞いて」とか「お客が入ってくる前に座布団を並べる!これはあなたの役目!」とか「おしめは見えるところに干さないの」とか、小言が細かくておかしい~。
そして一通り言ってからぐるっとあたりを見渡して「うん。もう全部言った」ってもう!!すごいかわいい!!

あんまり好きな噺じゃないのにめちゃくちゃおかしかったー。楽しかった!

外は夏

 

外は夏 (となりの国のものがたり3)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

 

★★★★★

汚れた壁紙を張り替えよう、と妻が深夜に言う。幼い息子を事故で亡くして以来、凍りついたままだった二人の時間が、かすかに動き出す(「立冬」)。いつのまにか失われた恋人への思い、愛犬との別れ、消えゆく千の言語を収めた奇妙な博物館など、韓国文学のトップランナーが描く、悲しみと喪失の七つの光景。韓国「李箱文学賞」「若い作家賞」受賞作を収録。 

喪失感や身の置き場のなさが身につまされる物語たち。
ずっと続くと思った幸せな日常が壊れた時、いったいどうやって立ち直って行けばいいのだろう。受け止めて、いつの日か人のことも自分のことも赦して、いつかは忘れることができるのだろうか。

「ノ・チャンソンとエヴァン」
お金も愛情もほんのわずかしか与えられていない少年が棄てられた犬を拾い、初めて心を通わせる喜びを知るが、犬が衰えていき…。
目を背けたくなるようなしんどい物語で涙が出た。彼が成長すること、生き延びることだけにわずかばかりの希望を感じる。

安易に結論を出したり救いを与えたりはしないけれど、生きていくことにほんのわずかの光を映し出す。素晴らしい短編集だった。