りつこの読書と落語メモ

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百年の散歩

 

百年の散歩

百年の散歩

 

わたしは今日もあの人を待っている、ベルリンの通りを歩きながら。都市は官能の遊園地、革命の練習台、孤独を食べるレストラン、言葉の作業場。世界中から人々が集まるベルリンの街を歩くと、経済の運河に流され、さまよい生きる人たちの物語が、かつて戦火に焼かれ国境に分断された土地の記憶が立ち上がる。「カント通り」「カール・マルクス通り」他、実在する10の通りからなる連作長編。

★★★★

ベルリンの街を「あの人」を待ちながら歩く。詩人の亡霊と対話をしたり目に留まる人や物に思いを巡らせ、不穏な歴史や未来を目にしながら…。

なんとなくゼーバルトの「アウステルリッツ」を思い出した。

多和田さんらしい言葉遊びも多く、時々ぷっと笑いたくなるんだけど、でも私ぐらいの知識では理解できなかったりおもしろさが分からなかったりするところも多く、読み終わるまで時間がかかってしまった。

最後の方まで読むと私が待っている「あの人」が誰かがわかり、わからないで読んでいた時よりももっと寂しくなった。

 

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/24(土)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。

・金太郎「天狗裁き
~仲入り~
・夏丸「懐かしのCM」
・夢花「二人旅」
・コントD51 コント
・富丸「?(幼稚園のかわりに老人園みたいな噺)」
・伸治「だくだく」
・南玉 曲独楽
・南なん「寝床」


夏丸さん「懐かしのCM」
今日もきもちよ~く歌う夏丸さん。隣の列に座ったおじいさんが、最初は不機嫌な感じで聞いていたのに、徐々に身を乗り出してきて、本当に嬉しそうに一緒に口ずさんでいるのが微笑ましかった。
またしても自分の武器を自由自在に使いこなす夏丸さんを見たなぁ。寄席の夏丸さん、いいなぁ。でも独演会で緊張感いっぱいで大ネタをやる夏丸さんも見たくなった。

夢花師匠「二人旅」
店のおばあさんが、ダメなときのさん助師匠のようなエキセントリックすぎる人物像…。ってこれじゃどちらにも失礼になっちゃうか。
夢花師匠、大好きなんだけど、早口すぎて聞き取りずらいのと、エキセントリックに走りすぎるところが少し残念。

富丸師匠「?(幼稚園のかわりに老人園みたいな噺)」
4日連続で毎日寸分たがわぬ同じまくらで、笑いがおこらないと「お分かりにならない方がいる」「分からない人は置いて行きますよ」。
ダジャレがわからないわけじゃなくおもしろ…もごもご。
毎日置いて行かれっぱなしだった。


伸治師匠「だくだく」
しーんとなってしまった客席を、出てきただけで和ませる。この芝居、ずっとこれを目撃し続けているなぁ…。ここに伸治師匠が入っていてほんとによかった。
「待ってました!たっぷり!」と声がかかると「嬉しいですねぇ。そんなこと言っていただけると。でも私のこの出番ね、ひざ前っていうんですけどね、たっぷりはできないんですよ」とにっこり。

そしてそんなまくらから「だくだく」。
大好きな噺を大好きな師匠で聴ける幸せ。あれこれ言われては「おまえねぇ…」「しゅーっと出てる、そのしゅーっとは描けないよ」とあきれながら笑う「先生」が素敵。
楽しいだけじゃなくて幸せな気持ちになれる。最高。


南なん師匠「寝床」
噺家はいろんな習い事をします。
私も習いました。最初は小唄。お師匠さんが女性でね、まぁまぁきれいな方で。習ってたんですけど「個性的な歌い方ですね…」と言われ、そうこうしているうちに師匠が患ってしまって、やめました。
次が長唄。これも女性の師匠。ここでも「なんでそんな歌い方なんですか」と言われて…そうこうしているうちに師匠が患ってしまって、やめました。なぜかあたしが習うと師匠が患っちゃうんですね。
その次に行ったのが踊り。ここの師匠は気の強い人でね、ものさしで背中をぴしーっと叩いてくるんですよ。「そうじゃない!」ってんで…。そうしてるうちに、あたしの方が患っちゃいまして…。

そんなまくらから「寝床」。
長屋を一回りしてきた清三を待ってる旦那が声慣らしをちょこっとするだけで、ものすごくて笑える。
清三さんが次々言い訳をするんだけど、それがとても怯えていておかしい。一方の旦那はどんどん顔が険しくなっていく。
言い訳を出し尽くした清三に旦那が「お前は?お前はどうなんだ?」と言う時の顔がわなわなしていてめちゃくちゃおかしい。
こりゃまずいとなって番頭が旦那にあれこれくすぐるようなことを言うと「え?〇〇みたい?それは誰が言ってたんだ?」と身を乗り出す旦那。

長屋の人たちが集まってきて料理を食べているところ。「酒飲んで神経を麻痺させなきゃ」「義太夫が始まると食べ物の色も変わっちゃうから今のうちに食っておかないと!」と大慌てなのがばかばかしくて笑ってしまう。

そして実際に旦那が歌いだすところ…想像以上の迫力でおかしすぎる…。もう南なん師匠がひたすらバカバカしく攻めてくるこの噺、楽しい!!

最初から最後まで笑い通しだった。幸せ!

末廣亭6月下席昼の部

6/24(土)、末廣亭6月下席昼の部に行ってきた。


・緑助「つる」
・喬の字「出来心(前半)」
・ストレート松浦 ジャグリング
・天どん「ハーブをやっているだろ!」
・馬遊「牛ほめ」
・小菊 粋曲
・あんこ「初天神ウルトラマンかっぽれ」
・志ん輔「宮戸川(上)」
・にゃん子金魚 漫才
・圓丈「ランゴランゴ」
・伯楽「猫の皿」
・アサダ二世 マジック
・小里ん「棒鱈」
~仲入り~
・さん助「胴斬り」
・一風・千風 漫才
・種平「忘れ物承り所」
・小ゑん「吉田課長」
・紋之助 曲独楽
喬太郎「極道のつる」

 

緑助さん「つる」
面白くしよう、笑わせてやろうというのはわかるんだけど、そのせいで散漫な印象。確かに面白くもなんともない噺なんだけど、普通にやれば笑いが起きるところも起きないのは、間がよくないからだと思う。
ってえらそーにごめん。でもうけよううけようとする前座さんは苦手。


天どん師匠「ハーブをやっているだろ!」
出囃子が流れてきて「え?天どんさん?!」。どうやら一之輔師匠の代演らしい。
二階席まで満員のお客さん、なんかそんなに笑わないなぁ…という印象だったんだけど、天どん師匠の自虐的なまくらで笑いがどんどん起きてきて、そのまくらの続きのような「ハーブをやっているだろ!」で大爆笑に。
すごいすごい。それまでの重たい空気をがらっと変えた!ちょっと鳥肌もんだった。


圓丈師匠「ランゴランゴ」
「台詞を忘れちゃうんだよ」と目の前に釈台を置いて…。
前は苦手だった圓丈師匠、最近好きになってきた。
シュールで面白い噺だなぁ。タイトルだけ聞いたことがあって前から聞いてみたいとおもってたんだ。
「えーっとどこまでいったかな」と台本をめくるのも落語の一部みたいでおかしかった。


伯楽師匠「猫の皿」
いつも自分の本の宣伝をするから好きじゃなかったんだけど、「猫の皿」がすごくよくてびっくりしてしまった。
茶店で休んでいる時の景色が目に浮かんできて、そこで目にした猫の皿、店の主人とのやりとり。さらっとしていてでもとても落語らしくて素敵だった。


さん助師匠「胴斬り」
ずっと聞きたいと思っていたさん助師匠の「胴斬り」にようやく遭遇!わーーい!
好きなんだよねぇ、この噺。
辻斬りにあって、上半身と下半身が真っ二つになってしまった男。上半身が天水桶の上に乗っかって「どうにかしないと」と困っていると友だちが通りかかり、声をかけるとびっくりしながらも家に連れて帰ってくれる。
上半身をおんぶして下半身と手をつないでってその状況も相当シュールなんだけど、そうなりながら「おめぇ、いつまでもぷらぷらしてるからこういうことになるんだぞ。ちゃんと働け」って説教するっていうのがおかしすぎる。
そして家に帰ってきてからの奥さんの反応も、ぎゃーーって驚きながらも「お前さんが酒飲んでいつもふらふらしてるからだよ!」って…。そっち?!

上半身、下半身別々に奉公に出て、両方の様子を見に行く友だち。
下半身の方が就職先でバカに評判がいいのがおかしい。
そして下半身が話をする様子を、人差し指と中指のちょこちょこした動きで表現するばかばかしさったら!

いやぁ楽しかった!


種平師匠「忘れ物承り所」
この代演はうれしい。
肩の力が抜けたゆる~いまくらがすごく楽しい。なんか芸協の師匠みたいだな、このゆるさ。
他の噺も聴いてみたいな。


小ゑん師匠「吉田課長」
楽しかった!
バーコードとあだ名のついた吉田課長が、単身赴任先のアメリカから心機一転!とばかりに金髪のカツラをかぶって帰国。
もうそのハゲネタのおかしいことったら。
上の方が薄くなって、サイドの髪を上に持って行ってふわっとさせるしぐさがもうおかしくておかしくて。
またその言い草が(「本来あるべき場所に戻してやっているだけだ!」)最高。

最初から最後まで大笑いだった。


喬太郎師匠「極道のつる」
「つる」で始まって「極道のつる」で終わるという集大成感がたまらない。
もう喬太郎師匠がキレキレで極道の親分、若頭、爆発的にバカな若い衆、とやるのがたまらなくおかしい。
「じゃーーーと飛んできて、るっととまる」って…天才か(笑)。

笑った笑った。最高だった。

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/23(金)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。


・夏丸「代書屋」
・夢花「そば清」
・マグナム小林 バイオリン漫談
・富丸 漫談
・伸治「ちりとてちん
・南玉 曲独楽
・南なん「居残り佐平次

 

夏丸さん「代書屋」
「代書屋」といえば権太楼師匠なので、それと違う「代書屋」だとすごく新鮮。
突き抜けたバカもうまいんだな、夏丸さんって。

途中、五木ひろしの歌が入って、それがもう無駄にうまいしフルコーラスだしおかしくておかしくて。
夏丸さん、自分の魅力をフル活用だなー。すごい。


マグナム小林先生 バイオリン漫談
時々色物にこんな風に代演がはいるといいなー。毎日まったく同じネタが続くとさすがに笑えなくなってくるので…。


伸治師匠「ちりとてちん
今まで見た中で一番楽しい「ちりとてちん」だった。もう伸治師匠もノリノリで、自分も一緒になっていたずらに参加している気分。
存在だけで客席全体を和ませてくれて、毎日噺を変えてくれて毎日面白いって…。たまらん。


南なん師匠「居残り佐平次
南なん師匠の「居残り佐平次」は何回か見ているけど、前に見た時と違ってるところがあって、ああ、師匠、いろいろ変えて試してるんだな、と思う。

最初、仲間を連れて品川に繰り出すところでは近所の若い衆の兄さんっぽい雰囲気を出している佐平次が、居残りを始めて店の若い衆を煙に巻くところでは胡散臭い感じに。それが店で居残りとして働き始めると、人懐っこい憎めない感じになって、大旦那に呼ばれたところではまた胡散臭くなり、最後の若い衆とのシーンではちょっと詐欺師っぽくなる。

この噺、いつも見終わると、結局佐平次ってどういう人だったんだろうなぁ、と考えてしまうんだけど、南なん師匠の「居残り」を見ていると、答えなんていうものはないのかもしれないな、と思う。

そのなんともいえない後味がとてもよかった。

私をくいとめて

 

私をくいとめて

私をくいとめて

 

 ★★★★

黒田みつ子、もうすぐ33歳。一人で生きていくことに、なんの抵抗もない。だって、私の脳内には、完璧な答えを教えてくれる「A」がいるんだから。私やっぱり、あの人のこと好きなのかな。でも、いつもと違う行動をして、何かが決定的に変わってしまうのがこわいんだ―。感情が揺れ動かないように、「おひとりさま」を満喫する、みつ子の圧倒的な日常に、共感必至!同世代の気持ちを描き続けてきた、綿矢りさの真骨頂。初の新聞連載。  

え?これが綿矢さん?と戸惑うほど、いつものピリピリと張りつめたような緊張感がなく、かわりにゆったりしたユーモアで満ちている。

逼迫したタイトルと裏腹に、どこにでもいるような「おひとりさま」のアラサー女子の日常。
唯一おや?と思うのは、彼女が脳内で話しかけるAという名をつけたもう一人の自分の生々しさ。それだってそれほど異常なことではないように思えるのだが、でももう一人の自分とは思えないほど客観的だったりかけてくることばが的確だったりするのがちょっと面白い。面白いのと同時にちょっと怖くもある。

居心地のよい自分の安全な領域を飛び出す主人公にエールを送りつつ、でもこれから先(アラサーの先)の人生の方がますますしんどくなるわけで、またAが必要になるかもね、とも思う。

酷評も多いようだけど、私は好きだったな、この作品。

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/22(木)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。


・夏丸「英会話」
・夢花「そば清」
・コントD51 コント
・富丸「?(スチューワーデスがどうしたこうした…)」
・伸治「お菊の皿
・南玉 曲独楽
・南なん「笠碁」


夏丸さん「英会話」
この噺、あんまり面白い噺じゃないなぁと思っていたんだけど、すごく面白かった!
まくらでもちょっとシュールなダジャレみたいのを連発していて、その流れからのこの噺で、この昭和チックな嘘英語が力が抜けてて楽しいのだ。

夏丸さんって自分の会だとなんかデリケートな傷つきやすい感じがするけど、寄席で見るとふてぶてしいくらい堂々としていて、そのギャップが素敵だ。


伸治師匠「お菊の皿
もうほんとに毎日この位置に伸治師匠!という喜びをかみしめる。出てきただけでぱーっと明るくなる。こういう師匠、協会にはいないよなぁ。

お菊さんをきゃーきゃー言いながら見に行って喜んでる若い衆と楽しそうな伸治師匠が重なってもう楽しい楽しい。
大好き。(←なんか毎日同じこと言ってる気が…)


南なん師匠「笠碁」
すごくよく笑うお客さんでその客席と南なん師匠の「笠碁」が気持ちよくマッチして楽しい楽しい。

おじいさん同士の意地の張り合い。
笠をかぶってポストのところで考え込んでいるおじいさんと、来てくれてうれしいのに怖い顔をして煙草を吸うおじいさん。
その顔がもうおかしくてかわいくて大笑い。

南なん師匠もとても楽しんでやっているのが伝わってきて、この一体感が最高だー!と思う。
南なん師匠って、お客さんが陽気だとか陰気だとかそういうのを超越している感じがあって、かといってお客さんの事をまったくなんとも思ってなくてちゃんと感じていくれていて、その孤高な感じと温かさがたまらなく好き。

寄席の後、落語のお友だちと二人で飲みに行き、南なん師匠はなんていいんだ!と語り合いながら飲む幸せ。
酔っぱらって終電なのに全然手前の駅で降りてしまいタクシーで帰ることになったのはちょっと余分だった。とほほ。

 

浅草演芸ホール6月下席夜の部

6/21(水)、浅草演芸ホール6月下席夜の部に行ってきた。

 

・夏丸「洗濯物」
・夢花「そば清」
・コントD51 コント
・富丸 「(幼稚園ならぬ老人園?みたいな噺)」
・伸治「初天神
・南玉 曲独楽
・南なん「夢の酒」
 
夏丸さん「洗濯物」
電車に乗って自分の隣の席が空いているとき、駅で人が乗って来てきれいな女性が席をちらりと見ても立ち止まることはなく、座ってくるのは必ず汚いおっさん、と言う夏丸さん。
逆に自分が空いてる席を探してきれいな女性の隣に座っていい気分でいると、必ずその女性は次の駅で降りていき、かわりに座ってくるのはやっぱり汚いおっさん。
これはきっとそういう協会がありますね。
「夏丸の隣に汚いおっさんが座る芸術協会」っていうのが。
 
そんなまくらから「洗濯物」。
おおお、この噺は前に米丸師匠で聴いたことがある。さすが夏丸さん、フツーの落語はやらない(笑)。
淡々としてるけど表情豊かでなんともいえないおかしさが。楽しい!
 
夢花師匠「そば清」
早口すぎて若干聞き取りにくいところもあるんだけど、面白いなぁ。
こういう噺、ほんとに好きだなぁ。これぞ落語って感じがする。
 
伸治師匠「初天神
ビミョーになった空気を心の底から楽しそうな笑顔でもとに戻してくれる。大好き。
「私、結構有名なんですよ。地元では」と言って、近所で子どもに話しかけられてなぞなぞを答える、という話。前にも聞いたことがあるけど、何度聞いても笑ってしまう。しかもそれを言う時の師匠がうれしそうで、もう…!
 
そんなまくらから「初天神」。
子どもの生意気な返しに思わず…といった感じに笑ってしまうお父さん。伸治師匠とお父さんが重なって見えてなんともいえず楽しい。
飴のやりとりや団子のシーンはあっさりしていてちょうどほどがいい感じ。
楽しかった。
 
南なん師匠「夢の酒」
いつもの「あたしの後は掃除です。先着3名様に高級箒をお貸しします」と言ったあとに、「この間これを聞いてほんとに残ったお客様がいらっしゃって、あたし会場の人に怒られちゃった」。
…ぶわははは。
 
夢に師匠が出てくるまくらから「夢の酒」。
初めてのお客様が多かったみたいで、夢の話を聞いて本気で怒り出すお花さんに笑いが起きる。なんかこの初々しい空気、いいなぁ…。
寄席って通えば通うほど、特定の噺家さんのファンかつ落語マニアみたいになって、純粋に噺の内容を楽しむというところからは離れてしまうので、それがちょっとさみしい。
でもそのかわり何度も聴いているから、あ、ここが前と違ってるとか、この時の大旦那の表情が好きなんだよなぁ、という楽しみ方もできる。

南なん師匠の「夢の酒」は他の誰がやるよりも大旦那が優しい。お花さんは実の子じゃなくてお嫁さんなのに、夢の中に行ってご新造に釘を刺して来てくださいと言われると「ああ、女だねぇ…。私はそういうところは気が付かなかった」と目を細めるところがとても好きだ。
楽しかった~。
 
 

ナオユキ・天どん二人会

6/20(火)、HACOで行われた「ナオユキ天どん二人会」に行ってきた。
 
・天どん「自慢探偵」
・ナオユキ スダンダップコメディ
~仲入り~
・ナオユキ スダンダップコメディ
・天どん「佃祭」
・ナオユキ&天どん アフタートーク
 
天どん師匠「自慢探偵」
ナオユキさんとの会はいつも楽しい、と天どん師匠。
楽屋で話していてもすごく楽しくて「あー芸人になってよかったなぁ」って思う。そういうことって案外なくて、他の芸人といると「あーこの仕事向かねぇ」と思う。
たいてい芸人ってすごい自慢するんだけど、ナオユキさんはそういうところがない。
 
たいてい一緒に出る人のことをぶちぶち言う天どん師匠が一切毒を吐かないのって確かに珍しい。
 
自慢する人同士が話をしてると喧嘩になりそうだけどそんなことなくて、誰から「俺〇〇だったんだぜ」と自慢すると聞いてる相手が「俺なんかもっと〇〇」って自慢して、どんどん盛り上がって二人できゃっきゃ言ってる。
 
そんなまくらから「自慢探偵」。
男が二人で話をしていて、片方が「この間俺さ」と話しかけると「ちょっと待った!」と割って入ってきた男。
「これから自慢をしようとしているな?私は自慢を取り締まっている!」
何者かと思っていると、この探偵の助手が「この方はどんな自慢も取り締まる自慢探偵だ」と説明。
 
「この間」というワードがすでに自慢だという。そこから「こんなにすごいことがあった」とそう続くんだろう、と。
いやそんな話じゃないと言っても「だめだ」。
「じゃいつなら自慢じゃなくなるんだ」と聞くと「あれはいつだったか…もう覚えてない」ならいいという。
 
そんな感じでどんなワードにも自慢を見つけ出す探偵との会話、というとてもシュールな新作(笑)。
探偵の助手がとてもエキセントリック?な人物像で、わけわからないんだけど笑った笑った。
 
ナオユキさん スダンダップコメディ
久しぶりのナオユキさん。大好きなんだよねぇ、ナオユキさんの世界。
久しぶりだったからほとんど全部のネタが新しくて新鮮だった~。
相変わらず、酒場にいるめんどくさい人たちを語ってるんだけど、前にはなかったキャラが!
四方八方に向かって語りかけるおじいさんがおかしくておかしくて。このおじいさんは…歯がないんですね?!打ち上げの時にナオユキさんに聞いたら、ほんとにそうだったので笑った笑った。いるよね、歯を治すぐらいならその分酒飲むわ、って抜けっぱなしにしてるおじいさん。
 
あと自信満々の大阪のめんどくさいおねーさん。これももう目に浮かんでくるし、ほんとにそういう人が言いそうな言葉がツボでもう笑った笑った。
 
ナオユキさんの語りって音楽なんだよなぁ。それがとても心地いい。
繰り返しで生まれてくる高揚感がたまらない。
楽しかった!
 
 

なかの・らくご長屋  極め付け雲助独演会

6/17(土)、なかの芸能小劇場で行われた「なかの・らくご長屋  極め付け雲助独演会」に行ってきた。
そういえば最近雲助師匠を聞いてないな、とふと思ったのが火曜日。鈴本の夜の部に出てらしたからそれを見に行こうかなと思いつつ、いやでももう少したっぷり聞きたい…で、かわら版を見たらこの会があったので早速予約。
落語って見たいと思ったらこんな風にわりとすぐに見られるから幸せだよなぁ、コンサートだったらこうはいかないもんなぁ。あ、でもそれもこれも東京に住んでいるからなのか。毎日寄席があっていろんなところで小さな会や大きな会があるってほんとに恵まれてるな…。


・ひしもち「元犬」
・雲助「大山詣り
~仲入り~
・雲助「厩火事

雲助師匠「大山詣り
噺家というのはたいていこんな時間(12:30開演)から仕事はしないので、まだ目が覚めきってない。
そういえば昔、本牧亭の昼の部に行くと、客もまばらで…それもほとんどおじいさんで、それがぺたーっと壁に張り付いていて、自分も壁際に座ろうとすると「そこは〇〇さんの席!」なんて怒られたりして、仕方なく前の方の真ん中に座ったりして。
昼は講談で、講談師の先生方が汗だくになって話をしているのに、客の方はみんなへたーってなってる。一生懸命やってるんだから聞けばいいのにと思ってると、終わったとたんに、そのおじいさんたちが拍手。
…なんだ、聞いてたんだ?!

…この、おじいさんたちが真顔になって拍手をする様がやたらとおかしくて大笑い。
表情、しぐさ、リズム、身体のちょっとした動き、それらで爆笑を呼ぶんだな。すごい。

そんなまくらから「大山詣り」。
蚊帳をあけた女中の反応がたまらなくおかしい。
雲助師匠のやられる女の人ってほんとに最高だな。
表情もそうだけど、ぱっと体を引いたり、口元を袖口で隠したり、そういうしぐさのタイミングがおかしくて、わかっていても毎回大笑いしてしまう。
楽しかった!

雲助師匠「厩火事
私の雲助師匠の女の人っておもしろい!の気持ちを知ってるかのように「厩火事」。
いちいち混ぜっ返すおさきさんと、それに眉をしかめる大家さんが楽しい。
二人のやりとりを師匠がとても楽しそうにされていて、見ていて幸せな気持ちに。

落語って音楽的な楽しみ方もあるよなぁ、ってしみじみ。

 

赤坂倶楽部 第三回小はぜの一本釣り

6/16(金)、赤坂会館で行われた「赤坂倶楽部 第三回小はぜの一本釣り」に行ってきた。


・小はぜ「みょうばん」
・小はぜ「加賀の千代」
・小はぜ「富士詣り」
~仲入り~
・小はぜ「巌流島」


小はぜさん「みょうばん」
回を重ねるごとにお客さんがどんどん増えてきているこの会。「今日は今までで一番のお客さまでして…下駄箱を見て驚いてました」と小はぜさん。
前の二回が雨で…今日は珍しく晴れたから、そのせいかな?とか、でも私は大変な雨男なので今日も夕方から徐々に曇り始めて雷も鳴ったりしているのでもしかすると帰るころには…とか、ぐじゅぐじゅ言ってる小はぜさんがかわいい…。

そして、いつもは3席なんですが、今日はそれに加えてとても短い噺をやりますので、お土産代わりに持って帰ってください、と。

なんでも学校寄席のお仕事をいただいたらしく、今まで前座として行ったことはあるけれど二ツ目になってからは初めて。
鳴り物教室をやることになっているんだけど、ちょこっとだけ高座もあるかもしれない、でも持ち時間はとても短いと言われて思い出しのたがこの噺。

昨年末にニツ目が全員出る会というのがあってその時に持ち時間が5分から10分ぐらいだから何か短い噺を…と思ってニツ目の兄さんに教えていただいた。
それぐらいの時間だと漫談であがる兄さんも多いけど自分は漫談なんかできない。10分持ち時間があったら9分落語やってあとの1分で出入りをするぐらい。
だからどうしてもこの短い噺が覚えたかったのだ、と。

これがとってもかわいい噺で。

主人が定吉を呼んで、金魚の水を替えたのか?と聞くと、替えました、と定吉。
どこの水を入れた?と聞くとやかんの水を、と。
それは水じゃなくてお湯だろう!なんで井戸の水にしなかったんだ?と言うと、井戸の水が濁っていたから、と言う。
ああ、夕べの雨で井戸の水が濁ったんだな。そういえばこの間井戸の水をきれいにするにはミョウバンをいれておくといいと言われたんだった。お前、薬局へ行ってミョウバンを買って来い。
そう言われた定吉がミョウバンミョウバン言いながら歩いているとくまさんにばったり。
「あ、くまさん。あのね、私ね、今晩は旦那にお芝居に連れて行っていただけるんです。それでね、お芝居も楽しみなんですけどね、もっと楽しみなのは今晩出していただけるお弁当なんです。豪華なんですよ。いいでしょ?羨ましいでしょ?」
そんな軽口を叩いてから別れてまた薬局へ向かう定吉。今度は「こんばんこんばん」口ずさみながら…。

小噺というにはちょっと長めの確かにかわいらしい噺。

話し終わったあとに「今度行く学校が女子校なんです。中学か高校かはわからないんですけど、でも女子校ですから。きっと落語なんかわからないでしょうし。だからこれぐらいのかわいらしいわかりやすい噺がいいかな、と思って。それで私なんかはめくりもないでしょうから、名前もわからなくて。定吉さーん、なんて声をかけられたりして。」

てへへっと笑いながら妄想を語る小はぜさんに、「そんなこと、多分ないと思うよ…。でもあるといいね、そんなことが…」と、私以外のお客さんもみな思っているのが伝わってきて、なんともいえずいい雰囲気に。


小はぜさん「加賀の千代」
夏休みの話をまくらでし始めたので「お、これはこの間聞いた…そうだ、朝顔が出てきて…加賀の千代か!」とわかってしまう私は相当な小はぜ通。
漫談というのが苦手とおっしゃってる小はぜさんだから、まくらもあらかじめ考えてくるんだろうけど、これがすごく微笑ましいっていうか、じんわりと効いてくる感じでセンスの良さを感じる。

「加賀の千代」、鶴川の時同様、甚兵衛さんのかわいらしさが際立って、見ていてにこにこしてしまう。
あっさり二十円出してくれる大家さんに戸惑って「ちがうんです」ともごもご言う甚兵衛さん。ネタ晴らしをして大家さんが「そうかい。手数がかかるね」と10円を出してきたときの満足そうな笑顔のかわいいこと。

梅雨のこの季節に「加賀の千代」。いいな。


小はぜさん「富士詣り」
お山のまくらから「富士詣り」。
先達さんに頼りっぱなしの若い衆たちが楽しい。
先達さんが、休憩をしながら若い衆を脅かして懺悔話を聞いて楽しもうというのが今回は伝わってきた。

自分のおかみさんにちょっかい出されたと聞いても、しょうがねぇなぁ!と許してくれる先達さんの人間の大きさよ…。


小はぜさん「巌流島」
これはもう何回も聴いているし、小はぜさんの得意ネタなんだろう。
聴くたびにどんどん面白くなっていくし、人物がくっきり。
気持のいい船頭さん、えばりくさった若侍、わいわいがやがやの若い衆、威厳のある年をとった侍。
特に侍がとても堂々としていて侍らしく、噺がぴしっとしまる感じ。

きっと「加賀の千代」も「富士詣り」も何度もかけるうちに、またどんどんよくなっていくんだろう。
楽しみだなぁ。
小はぜさんは素直なかわいらしさを持ちながらも、頑固というか自分の信じる道をゆっくり歩いて行こうという姿勢がうかがえるから、これからがほんとに楽しみ。小はぜさんに関しては見守る楽しさを噛みしめる私である。

立川談幸「愛づらか百撰」第49回

6/15(木)、日暮里サニーホールで行われた『立川談幸「愛づらか百撰」第49回』に行ってきた。
・幸之進「つる」
・談幸「汽車の白浪」
・談幸「鉄拐」
~仲入り~
・談幸「一つ穴」

幸之進さん「つる」
ニツ目に戻れて(!)とってものびのびした印象。
ところどころが違っているのは幸之進さんの味付けなのかな。
面白かったんだけど、でもそうすると全体的に散漫な感じになってしまうのがちょっと残念。ま、「つる」だからいいんだけど。

談幸師匠「汽車の白浪」
珍しい噺、めったにやられない噺をやるというこの会、ニツ目のころからされていて今回が49回目。毎回2席はネタ卸しをしているから次回でついに100席になる。

「珍しい」といってもランクがあって「ほんとに珍しい、誰もやらない噺」から、「たまに聞くちょっと珍しい方の噺」まで。
今回ネタ出しされていた噺は2つとも、まず聞くことがない噺。私も今日やるのが初めてでみなさまも聞くのが初めて…そしてもうこの先二度と聞くことがないかもしれない…。

昔はテレビがなかったから娯楽といえば寄席でみなしょっちゅう寄席に通っていた。
そうすると飽きられちゃいけないっていうのでその時はやっているもので新しく落語を作ってみたりしてどうにか目先を変えようと考える。
不思議なことに、そういう新しく入れたものってあっという間に古くなってしまう。
「汽車の白浪」も、当時「汽車」といえばハイカラな新しいもの、それに「白浪」っていう昔の怪盗の名前が入るから、そのアンバランスさがよかったんだろうけど、今となっては「汽車」というのも古めかしい。

そんなまくらから「汽車の白浪」。
大阪の商人が商用で横浜に行った帰り、終電に乗って新橋まで行こうというのだが、電車は一人も客がいない。ちょっと怖いなぁと思っていると、おつな年増が乗り込んできて奥の方の席に座った。
旅は道連れとばかりに女に話しかけ意気投合。すると途中で目つきの悪い男が汽車に乗り込んでくる。
ああいうのには気をつけなきゃいけないと言いながら二人で新橋で降りたのだが、そこで目つきの悪い男の仲間がいてみんなで女を連れて行ってしまう。
助けようとしたのだが突き飛ばされて腰を痛め、泣く泣く宿へ戻り、懐に入れていた財布がないことに気づく。
さてはあの男たちが盗んだのだなと思っていると、次の日その男が訪ねてきて…。

確かに談幸師匠が最初に言っていた通り、なんともいえず昔っぽい…昭和?明治テイストなのかな。
でも好き好き、こういう噺。「たいして面白くない」なんておっしゃらず、やってほしいなぁ…これからも。


談幸師匠「鉄拐」
これはどこかで一度だけ聞いたことがあるような…。ブログに書いてなかったから、音源で聞いたのかなぁ…。
談志師匠が好んでやられていた噺とのこと。

上海に店を構える問屋が毎年お客様を招いて行うパーティの席で毎回出し物をやっていたのだが、年を重ねるごとにハードルが上がって困り果てた主人。奉公人に「何か珍しい芸をするものを連れて来てくれ」と送り出すのだが、早々珍しい芸をするものになどで会えない。
困っていると山中で迷子になってしまい、そこで分身の術を使う鉄拐という仙人と出会う。
拝み倒して来てもらうと、素晴らしい芸だ!と大評判。鉄拐は寄席にも呼ばれ大看板となる。

弟子もとって増長してしまった鉄拐は寄席をさぼったり酒を飲んだりどんどん評判を落としてしまう。
もっといい仙人がいないかと山に入って行くと、張果老という瓢箪から馬を出す仙人に出会い、スカウトして寄席に出てもらうことに。
これが評判になり、面白くない鉄拐仙人。馬を盗んでやれと張果老の寝込みをおそい…。

…こういう噺、大好き~。
奇想天外だけど結局はばかばかしいっていうのがたまらない。
楽しかった!


談幸師匠「一つ穴」
悋気のまくらから「一つ穴」。
旦那が浮気をしているからと権助に旦那の後を追わせたおかみさん。権助が突き止めた妾宅のもとへ乗り込んでいく。
女中が、しらを切ろうとしたのだがおかみさんは家に上がりこんでしまう。
気持ちよく眠っていた旦那は目が覚めておかみさんがいるのでびっくり。
あれやこれやと見え透いた嘘を並べるのだが、おかみさんが負けずに言い返すので、いよいよどうしようもなくなり居直ることに…。大喧嘩になったところに権助が心配してあがりこんできて…。

…これは面白い!
特に旦那がおかみさんに見え透いた嘘を言うところがたまらなくおかしい!
確かにちょっとどぎついかもしれないけど、でも面白いよ!寄席でもかけたらいいのに。

「これは違うんだ。〇〇くんの知り合いで無理やり連れてこられたんだ」
「当人の〇〇さんがいらっしゃらないのはどういうわけですの?」
「あれ?ほんとだ。…先に帰っちゃったのかなぁ…」
「なんで枕が二つ並んでいるんです?!」
「それはあれだ、この家の者が心配性なんだな。枕から頭が落ちたらどうしましょうっていうのでもう一つ置いてくれたんだ」

談幸師匠の軽くて落ち着いた語り口でそらぞらしい嘘が次々出てくる楽しさったら!

話がおわったあとに談幸師匠が「こういう時はどんなにそらぞらしくても嘘を突き通すのがいいんです。絶対に認めちゃだめなんだそうです」と語ったのがめちゃくちゃおかしかった。
そうなのか!なるほど!勉強になるなぁ(笑)。

浮遊霊ブラジル

 

浮遊霊ブラジル

浮遊霊ブラジル

 

 ★★★★★

初の海外旅行を前に死んでしまった私。幽霊となって念願の地を目指すが、なぜかブラジルに到着し……。川端賞受賞作「給水塔と亀」を含む、会心の短篇集!

面白かった!
どれもみなふわっとした物語なのに地に足がついてる感があるのがとても津村さんらしくて好きだ。

うどんの話に始まって海外旅行に気を残す浮遊霊の話で終わる楽しさ。
物語好きには「地獄」はたまらない世界。「物語消費しすぎ」が大罪なのであればこりゃ私も間違いなく地獄行きだわ…。

漂うように生きて死んだ後も漂う。そんな世界が繰り広げられていて、とても楽しかった。

丁庄の夢―中国エイズ村奇談

 

丁庄の夢―中国エイズ村奇談

丁庄の夢―中国エイズ村奇談

 

 ★★★★★

本書は、「生と死が対話する」という構造を持った悲劇の物語である。この物語は「死者」である一人の少年の口から次から次へと語られる。象徴と現実の間で、作者は稀有の想像力を駆使し、叙述の起伏に沿って物語の哲学を構築している。これは単に「エイズ村」の悲劇というだけでなく、中国の大地で生きている八億の農民の共通した戸惑いなのである。1990年代の中国河南省、政府の売血政策で100万人とも言われるHIVの感染者を出した貧農の「エイズ村」を舞台に繰り広げられる、死と狂気と絶望と哄笑の物語。「現代の魯迅」と評される第一級の反体制作家が書下ろし、たちまち15万部を売り切ったスキャンダラスな傑作。  


貧しさから脱却したい一心で国が勧める売血政策に乗って売血をした人たちが次々熱病(エイズ)にかかって死んでいく丁庄の村。
この売血を先頭に立って行い人一倍金儲けしたのがこの少年の父親でそのことに恨みを抱いた村人によって少年は毒殺されてしまうのだが、この死んだ少年によって丁庄の村の悲劇が語られる。

これ以上の感染を防ぐためにと役人から言われた祖父が、学校を熱病患者の最後の住処にと解放すると、熱病にかかった人たちはようやく安住の地を得たよう。しかし平和な日々は長くは続かない。学校の中で人のものを盗む者が出てきて、さらに自分だけが利益を得ようする者たちが祖父を追い出しにかかる。
学校の中で生まれた熱病患者同士のロマンス。男の方が叔父だったものだから祖父は恥辱を受け学校を追われてしまう。

金儲けしか頭にない父は売血で村が壊滅状態になったことに何の反省もしないばかりか、さらには政府から支給される棺桶を独り占めにし、死後の伴侶探し等の商売で財を成す。
そんな息子の行為に胸を痛め怒りを抱きながらもなすすべのない祖父。

墓を暴いてでも盗もうとし、死後の幸福を得たくて村中の木を切り倒す人間の浅ましさ。
家族から見放され学校に入れられて、誰からも後ろ指をさされる「賊愛」をおかしてしまった二人。絶望しかない中で心を通わせあった二人に唯一救いを感じた。

凄まじい物語だがそれでも単なる「告発」ではなく、文学に昇華されているのが凄いと思った。

さん若挑む!(第14回)

6/12(月)、無何有で行われた「さん若挑む!(第14回)」に行ってきた。
寄席やさん喬一門会で見て、好きだなと思っていたさん若さん。近くでこんな会をされていたとは。

柳家さん若「締め込み」
・鈴々舎八ゑ馬「胴乱の幸助」
~仲入り~
・ 鈴々舎八ゑ馬「青菜」
柳家さん若「小言幸兵衛」

 

さん若さん「締め込み」

昨日まで地方の「子ども寄席」に行って来たというさん若さん。
「子ども寄席」だから「初天神」でもやろうかなと思って出かけて行ったら、楽屋に主催者からの注意書き?が置いてあり、「もう今まで何度もやられているので『初天神」』はやめてください」と。
 
な、なんだって?と思って今までのネタ帳を見てみると、たしかにこの「子ども寄席」、毎回場所はいろいろ変わっているんだけど、毎回「初天神がきっちりやられている。
…それも全部うちの師匠!
そうなんです、うちの師匠、学校寄席や子ども寄席っていうと必ず初天神」って決めてるみたいなんです。
 
…わはははは。最高だ。
そんなまくらから「締め込み」。
テンポもいいし、身のこなしがいいので、見ていて気持ちいい。
間とか表情もおかしいんだよなぁ。好きだな、さん若さんの落語。明るくて軽くて爽やかで。
泥棒が出てきてからの「…そこです」の言い方も絶妙で笑った笑った。
 
八ゑ馬さん「動乱の幸助」
八ゑ馬さんも地方に行ったときの話。
高座の他に落語教室で「先生」もやってくれと頼まれたのだが、そこは毎回落語をやりに来た落語家が「先生」を務めるということで、結構長く通っている人もいる。
で、ある男性が「初天神」をやったんだけど、すごく丁寧にしぐさをやっていて、子どもともずーっと手をつなぐしぐさをしていたので「ずっとしぐさをやってると疲れるでしょう。だからちょっとやったらしぐさを続けなくても大丈夫ですよ。」「それにこの噺はもともと上方では父親が天神様に行くと言ってほんとは女遊びに行こうとしていて、それをおかみさんが気が付いて、だからわざと子供を連れて行ってくれ、っていうところから始まっていて。そんな父親だからそんなにずーーっと子どもの手を引かなくてもいいんですよ」と教えた。
「で、ちなみに今のしぐさはどなたに?」と聞くと、なんとさん喬師匠!
慌てて「そ、そのまま、丁寧なしぐさ、続けてください」と頭を下げた。
 
…ぶわははは。ここにもさん喬師匠が!
すごいな、いろいろと。
 
そんなまくらから「動乱の幸助」。
初めて聞いた噺だったんだけど、めちゃくちゃ面白かった。
私もともと上方落語大好きなのですごいツボで笑い通し。八ゑ馬さん、いいな!
 
八ゑ馬さん「青菜」
おお、これは上方版の「青菜」。前にも誰かで見たことがあって、その時は正直違和感を感じたのだった。
というのは私にとって青菜といえば小三治師匠の青菜なので、お屋敷の旦那のなんともいえず上品な感じとか、それに植木屋さんが少年のように憧れるところとか、それを自分の家でやってみて全然さまにならないところとか、そこがすごく好きなので、上方版の「青菜」の旦那もなんかがちゃがちゃしていて、植木屋さんもべらべらしゃべりすぎて…っていうのがちょっと「ちがう」と思てしまったのだった。
ももう二回目だったので、「これは上方でやるとこうなる」っていう感じに納得して見られたので、これはこれでおもしろかった。
青菜を確かめに押し入れにもう一度入るのがたまらなくおかしかった。
 
さん若さん「小言幸兵衛」
話し始めてすぐに「お、小言幸兵衛」と気が付いた。これはもしかすると三三師匠から教わった?違うかな。
なんかこの出続ける小言がね…ちょっと疲れちゃうんだよね…この噺自体があんまりおもしろいと思えないの。
 
でも最近芝居のところまでやって「ばかばかしいお噺で」とサゲる人が多いのに、最後までやってくれたのはうれしかったな。私はこっちの方が好きだな。
 

不機嫌な女たち

 

 ★★★★

初めて夫に欲望を感じた妻が夫の本心を知る「幸福」。不慣れな外国で出会った親切な老人との午後の行方は…「小さな家庭教師」。不穏なお迎えが老女を怯えさせる「まちがえられた家」。裕福な女が夫の一言で、貧しい女に嫉妬の炎を燃やす「一杯のお茶」。夫の友人の熱情を弄ぶ人妻を描く「燃え立つ炎」。小さな幸せを、思わぬ言葉で打ち砕かれる独身女性「ミス・ブリル」。大人社会そっくりの歪んだ人間関係にからめとられた少女たちの「人形の家」など、選りすぐりの十三篇。感情の揺れを繊細にすくいとり、日常に潜む皮肉を鋭く抉り出す、短篇の名手キャサリンマンスフィールドの日本オリジナル短篇集。新たに発見された未発表原稿「ささやかな過去」収録。  

面白かった~。女たちが不機嫌になる理由は様々だが、自分のあしもとがぐらつくような不安や危機に対面したとき、人は不機嫌になるのだろう。
今まで自分が拠り所にしていたものがこうとたやすく壊れるものだと気付いた時のショックは大きく、すがりついたり取り繕う前に「不機嫌」になってしまうのだ。

意地悪で皮肉で…でも繊細で知的。キャサリンマンスフィールドを読んだのは初めてだがそんな印象を持った。

「幸福」「ガーデン・パーティ」「ミス・ブリル」「見知らぬ人」「小さな家庭教師」「蠅」が特に好き。