りつこの読書と落語メモ

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隼人・はる乃 二人会

1/18(土)、横浜にぎわい座で行われた「隼人・はる乃 二人会」に行ってきた。

・真山隼人(沢村さくら)「日本銀次 風流木遣り節」
・国本はる乃(沢村豊子)「遊女の国旗」
~仲入り~
・国本はる乃(沢村豊子)「将軍の母」
・真山隼人(沢村さくら)「徂徠豆腐」

 

真山隼人さん(沢村さくら師匠)「日本銀次 風流木遣り節」
前から一度聞いてみたいと思っていた隼人さん。
「今日は23歳と24歳の二人の会なんですがとても見た目からはそう見えないという…ぼくなんかどう見ても40代のおっさんですからね…」に笑う。
奈々福さんのお手伝いで「阿呆浪士」の代演に行ってきた、という話から。戸塚祥太さんとの絡みがあったということでその秘話など。すごいいい経験してるなぁ。
確かに見た目からはそんなに若い感じはしないけれど、いざ浪曲に入ると若さと勢いが前面に出てきて圧倒される。

ゴジラモスラみたいな内容です」と説明して「日本銀次 風流木遣り節」。
銀次のセリフと木遣りが実にかっこいい。
悪役の大名火消しの不細工ぶりにも笑ったー。

国本はる乃さん(沢村豊子師匠)「遊女の国旗」
内容はあまり好みではなかったんだけど、はる乃さん、声に伸びがあって明るくてかわいくて素敵ー。
これはおじいさんたちが夢中になるのも無理はない(笑)。
私の前にいたおじいさん、隼人さんの時はいかにも古くからの浪曲ファン(ちょっとやそっとのことでは俺は感心しねぇぞ)という風だったんだけど、はる乃さんが出てきたとたんに「たっぷり!!」。終わったときには「日本一!」。
あ、若い子は誰も認めねぇっていうわけじゃないのね。とちょっと笑ってしまった。

 

国本はる乃さん(沢村豊子師匠)「将軍の母」
これは講談では「桂昌院」。何度か聞いたことがあるけど大好きな話。
浪曲だとまたユーモラスなところや酷いセリフも笑えて楽しいなぁ。
はる乃さんにぴったりでものすごい盛り上がった。楽しかったー。

真山隼人さん(沢村さくら師匠)「徂徠豆腐」
すごく良かった。迫力だけじゃない…人情味というか、心に秘めたる思いみたいなものも出ていて。
確かに若い人には難しい演目だと思うけれど、体当たりでぶつかっていこう、という姿勢が見えて清々しい。
とてもよかった。

 

短編画廊 絵から生まれた17の物語 (ハーパーコリンズ・フィクション)

 

 ★★★★★

米国を代表する名画家、エドワード・ホッパー(1882‐1967)。作家ローレンス・ブロックは、ホッパーの作品は「絵の中に物語があること、その物語は語られるのを待っていること」を強く示唆していると語り、ホッパーの絵から物語を紡ぐこの短編集を考えついた。彼の呼びかけに集まったのは、スティーヴン・キングジェフリー・ディーヴァーマイクル・コナリー、リー・チャイルド…といった錚々たる顔ぶれ。各々の個性を遺憾なく発揮した華麗なる文豪ギャラリーが、ここに幕を開けた―。2017年アンソニー賞Anthology部門最終候補。2017年MWA賞受賞(L・ブロック作『オートマットの秋』)。

○収録作品

「ガーリー・ショウ」ミーガン・アボット 小林綾子
「キャロラインの話」ジル・D・ブロック 大谷瑠璃子
「宵の蒼」ロバート・オレン・バトラー 不二淑子 訳
「その出来事の真実」リー・チャイルド 小林宏明 訳
「海辺の部屋」ニコラス・クリストファー 大谷瑠璃子
「夜鷹 ナイトホークス」マイクル・コナリー 古沢嘉通
「11月10日に発生した事件につきまして」ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子 訳
「アダムズ牧師とクジラ」クレイグ・ファーガソン 不二淑子 訳
「音楽室」スティーヴン・キング 白石 朗 訳
「映写技師ヒーロー」ジョー・R・ランズデール 鎌田三平 訳
「牧師のコレクション」ゲイル・レヴィン 中村ハルミ 訳
「夜のオフィスで」ウォーレン・ムーア 矢島真理 訳
「午前11時に会いましょう」ジョイス・キャロル・オーツ 門脇弘典 訳
「1931年、静かなる光景」クリス・ネルスコット 小林綾子
「窓ごしの劇場」ジョナサン・サントロファー 矢島真理 訳
「朝日に立つ女」ジャスティン・スコット 中村ハルミ 訳
「オートマットの秋」ローレンス・ブロック 田口俊樹 訳

*エドワード・ホッパーの絵画18点をフルカラーで挿入

 

面白かった!バラエティ豊かなアンソロジーであるとともにエドワード・ホッパーの絵から生まれた物語だからなのか…独特の不穏な空気感が流れる物語が多い。
エドワード・ホッパーの絵には語られるのを待っている物語があることを示唆している、というのがこの本の編者ローレンスブロックの言葉だが、確かに物語を秘めているような絵だし、物語を読んでから改めて絵を見ると、もうそうであるとしか思えなくなるというのも面白い。

好きだったのが「宵の蒼」(ロバート・オレン・バトラー)、「海辺の部屋」(ニコラス・クリストファー)、「夜鷹」(マイクル・コナリー)、「アダム牧師とクジラ」(クレイグ・ファーガソン )、「映写技師ヒーロー」(ジョー・R・ランズデール)、「夜のオフィスで」(ウォーレン・ムーア )、「窓ごしの劇場」(ジョナサン・サントロファー)、「オートマットの秋」(ローレンス・ブロック)。
よく読んでいる作家…ジェフリー・ディーヴァースティーヴン・キングジョイス・キャロル・オーツの作品もどの作家のカラーが出ていて面白かった。

最後に収められた編者ブロックの作品「オートマットの秋」がこのアンソロジー全体をきちっとあるべき場所におさめた印象があってさすが!

 

緑太・市童 二人会

1/15(水)、らくごカフェで行われた「緑太・市童 二人会」に行ってきた。
 
・ 緑太&市童 落語ラップ「七段目」
・ 緑太&市童 トーク
・ 緑太「たけのこ」
・ 市童 「四段目」
~仲入り~
・ 市童 「洒落小町」
・ 緑太「締め込み」
 
 
緑太さん&市童さん  落語ラップ「七段目」 &トーク
前から来てみたい、そして聞いてみたいと思っていたお二人の落語ラップ。
今回は映像が間に合わなかった?ということで、映像は歌舞伎で歌&歌詞が流れるパターン。
いやこれすごい。すごいうまい。素人のラップってとかく聞いていて恥ずかしいけど、それがない。
ものすごい言葉選びがうまいんだな。韻も踏んでるしちょっと笑えるしハイセンス!
ご本人たちは今回は不本意な出来だったらしく「だめっす」「いやもうだめ」と途中で出てきて「無理でした」「七段目。無理」とおっしゃってたけど、なんのなんの。
 
というわけでトークに突入。
いやこれがもうめちゃくちゃ面白くて。
でもこれはみんな書かない方がいいね、という内容。
ぶっちゃけ話、最高に面白かった!
 
緑太さん「たけのこ」
武家様がとても武士らしい…背中がピンとしている感じ。それでいて洒落もわかる、っていうのがとてもチャーミング。
うひゃー。なんか緑太さんの落語、しゅっとしてはる。いい!
 
市童さん「四段目」
旦那にあれこれ問い詰められて一生懸命ほんとらしくうそをつくんだけど、それがなんかとても子どもらしくてかわいい。
市童さんって永遠の定吉感あるなぁ。純粋。
怒っていた旦那が定吉が蔵の中で刀を出して…とお清さんから聞かされて、番頭に「なんで間に入らなかったんだ!」とか「夕飯を持って行ってやらなかったんだ!」と怒るのも、旦那の人柄の良さが出ていて好きだな。
たっぷりの「四段目」楽しかった。
 
市童さん「洒落小町」
初めて聴く噺。
口から生まれたような女房が大家さんに呼び止められて世間話。
最近亭主はどうしてる?と聞かれて、亭主が浮気をしていた!ということをしゃべるんだけど、この女房、口から先に生まれたような女性でべらべらべらべらよくしゃべる。人の話も混ぜ返す。
そんな女房に大家さんが「それじゃ旦那が浮気するのも無理はない」と言って、亭主が家に帰ってきたくなるように歌を詠めとか言うんだけど、彼女にはまるで通じない。
だったら言われたことを洒落で返したらどうだ?面白くて亭主も喜ぶだろう。
洒落なら得意です、と大家さんの言うことにいちいち洒落で返すんだけど、これがもうすごくばかばかしい。
このおしゃべり女房がいかにもこうパーパーしていて悪気がなくて口が悪くて察しが悪くて…それが市童さんにはまっていてめちゃくちゃ面白い。
もう笑いっぱなし。楽しかった~!
 
緑太さん「締め込み」
きりっとした「締め込み」。
なんだろ。テンポかな、声の出し方なのかな。きりっとしてるとかしゅっとしてはるとかそういう風にしか表現できないんだけど、いいな。
 
とても楽しかった。2人のタイプが違っているのもいい。また行きたい。

短篇集ダブル サイドA

 

短篇集ダブル サイドA (単行本)

短篇集ダブル サイドA (単行本)

 

 ★★★★★

帰郷した「僕」がタイムカプセルを掘り起こし…「近所」。老年の夫婦を描いた抒情的な「黄色い河に一そうの舟」。騒音の抗議に来た上階の男と迎える「最後までこれかよ?」。前世はマリリン・モンローだった「僕」と宇宙人の「“自伝小説”サッカーも得意です」。驚嘆の作品集。

面白かったーーー。好き好きパク・ミンギュ。
リアルな物語とぶっとんだSFの振り幅が大きいけれど、どちらもハートをぎゅっと鷲掴みしてくるようなシーンや描写があって、ぐっとくる。LPレコード時代へのオマージュというだけのことはあって、テンポの良さと独特のリズムがグルーヴ感を出していて、読んでいて気持ちいい。

「近所」
両親を亡くし叔父夫婦に育てられた青年。大学に進み一流企業に勤めていたが病を得、命の期限を告げられている。
故郷では同級生たちが歓迎してくれるがこの町から大学に行ったのは彼一人。
彼が突然戻ってきたことに戸惑いながらも何回か集まる間に、離婚してシングルマザーの女性と親密になるが…。

彼が彼女からの電話を切ってからの気持ちの変化が、ほんの数行なんだけど、一瞬霧が晴れるような…視界が開けるような…独特の余韻があって、鳥肌ぞわぞわ。
ポップだけどとても繊細。ぐっとくる。

「黄色い河に一そうの舟」
長年仕事仕事で家庭を顧みなかった夫が妻が認知症になり罪滅ぼしの気持ちで介護をしている。
子どもが二人いるが彼らとて自分たちの暮らしに精いっぱい。金銭的な援助を期待され微妙な距離感がある。
仕事にかまけてきたと言っても仕事の方も決して安穏と過ごせていたわけではなく、どうにか危険を回避しつつ生き延びた、という感。出世の船に乗りそびれた昔の先輩から怪しげな健康食品を勧められ、それを断ることもできない。
かわいがっているほうの娘から金の無心をされ彼が起こした行動は…。

これももうとても身につまされるし絶望しか感じないんだけれど、認知症になった妻の思いもかけない反応に深刻な中でちょっと笑ってしまうようなユーモアがあって、思わずにやりとしてしまう。
ここに流れる曲は知らないけれど、なんとなくメロディが浮かんでくる。


「グッバイ・ツェッペリン
飛行船って絵になるし物語を呼ぶ何かがあるように思う。
ちょっと異様でユーモラスでバカバカしくてでもなんか空しくなるようなあの姿。
大型スーパーの仮面ライダーショーで始まるのがすごい既視感でもうそのシチュエーションだけで「これは私の知ってる世界」と感じさせる。
起死回生をねらった飛行船作戦。
制御不能の飛行船を主人公と「先輩」が追いかけていくのだが、その小さな旅の中で「先輩」の印象が変わっていく面白さ。
ちゃんと向き合ってこそわかる姿がある。人間って簡単じゃない。

「深」
世紀2387年、深さ1万9251メートルの海溝が生まれ「ユータラス」と命名される。ユータラスの底に到達できる人間「ディーバー」たちが、それぞれの事情や想いを抱えながら深く深く沈んでいく…。その先にあるものは…。

これまでの3作とまるっきりテイストが違うので戸惑う。ドSF?!ああ、でもそうだ、パク・ミンギュの「ピンポン」も最後とんでもない展開になっていったじゃないか。SFもこの作家の得意分野なのだ。
最初の3曲がメロウでずっしりした曲調で油断していたら、4曲目にいきなり全く違う…弾けた曲が入ってきた、みたいな感じだ。


「最後までこれかよ?」
地球最後の日。アパートの上階に住んでいる男が騒音の苦情を言いに部屋を訪ねてくる。
二人は男がコレクションしている酒を飲みながら最後の時を待つ…。

主人公の真の姿が徐々に明らかになっていくところはホラーのようで、しかしこれが地球最後の日なのだとしたらもうどうでもいいことなのか?と思いつつも、でもこれでほんとに最後にならなかったら?という不安も残る。

 

「羊を創ったあの方が、君を創ったその方か?」
このわけのわからない世界。そうなった理由も今の状況も何もわからないまま望楼で閉じ込められている(かどうかも実際はわからない)、「ゴ」と「ド」。
この世界のルールを少しでも知ろうとするがよくわからない。でも逃げようとするとサイレンが鳴って何かよくわからない物たちが集まってきて攻撃(?)してくるので銃で応戦しなければならない。
そのうち「ド」の方が狂ってきてついにこの均衡が破れる時が…。

この謎の生き物たちの正体が分かったときの脱力感。なんだなんだなんだったんだ。
緊張と緩和のギャップが大きすぎて笑ってしまうんだけど、おかしいだけじゃない怖さも。


「グッド・モーニング、ジョン・ウェイン」「<自伝小説>サッカーも得意です。」
思わず笑ってしまうフレーズや「え?なに?」ってもう一度読み返さないとわからない文章が出てきたりして、次々いろんなものが出てくるおもちゃ箱みたいで面白い。
特に「<自伝小説>サッカーも得意です。」の世界観は「ピンポン」に通じるものがあるように感じる。

「クローマン、ウン」
特権を与えられた「ネッド」と下層階級で生きることもままならない「ユン」という2つの階級に分けられた世界。
知恵を絞り必死に生き延びようとするクローマンがある日ウンという少女と出会い…。

クローマンとウンの物語は「これは、とある地球の物語である」と小さい文字で書かれているんだけど、この緊迫した物語の後に、「これも、とある地球の物語である」とあって続くのがギャンブル狂いのビンスの物語。
え?これはなに?入れ子になってる?


なになに?って頭がはてなでいっぱいになる物語もあったけど、わからないのも含めて面白い。最高だ。
SIDE Bも読まなければ!

国立演芸場1月中席

1/11(土)、国立演芸場1月中席に行ってきた。

・りょう治「子ほめ」
・紅純「秋色桜」
宮田陽・昇 漫才
・柳好「つぼ算」
・一矢 相撲甚句
・幸丸「正月風景&売り声」
~仲入り~
・紅「母里太兵衛」(黒田節の由来)
・南なん「転宅」
・今丸 紙切り
・茶楽「品川心中(上)」


紅純さん「秋色桜」
貫禄出てきたなぁ。紅先生のところに移ってから明らかに伸び伸びやってるように見えて、なんか嬉しい。
とてもよかった。


宮田陽・昇 漫才
いつものネタから新しいネタまで最初から最後まで楽しくて笑いっぱなしだった。
陽先生の何を言い出すかわからない感じと、昇先生のなんでも包み込んでくれる感じのバランスがたまらなく好き。

柳好師匠「つぼ算」
最初は陰気っぽく始まるのに、まくらでもだんだんテンションがあがってきて、噺に入ると動きも大きくてメリハリがあってすごく楽しい。
買い物を頼んだ弟分が最後までからくりに気づいてないのがおかしくて、瀬戸物屋の番頭が「あなた、私の顔をじっとみて首をひねるのやめてください!」と言うのもすごくおかしかった。


幸丸師匠「正月風景&売り声」
正月に関するぼやきというか愚痴というか毒…なんだけど、毒とぼやきとそれに対する客席の反応への反射が絶妙で笑い通し。
最後には売り声も披露。お正月らしくて楽しかった。


南なん師匠「転宅」
噺家になる前、いろいろバイトやりました。
最初はパン工場でパンにチョコレートをつけるバイト。これが熱いんですよ。もう汗が止まらない。それに神経も使うし。…1週間でやめました。
次にやったのが遊園地のバイト。面接した人が私の顔をじーーっと見て「あなた…採用です」。一発で採用されてよかったなーと思っていたら、お化け屋敷でお化けの役…。生首の役です。井戸から顔を出して顔から血を流してるんです。
でもこれ…お客さんが女の子だったりすると「きゃーーー」って言ってハンドバッグでひっぱたかれたり、雨の日だと傘で突かれたり…。…3日でやめました。
それから次にやったのが警備員。病院に配置されて深夜の病院を巡回しないといけないんですけど。私、臆病なんですよ…。一人で真夜中の病院を巡回していると…。

…ぶわははは。初めて聞いた!楽しい~。
そんなまくらから「転宅」。
間抜けな泥棒がお菊さんにだまされて鼻の下を伸ばすのがとってもかわいい。
表情が豊かなんだなぁ。
そしてコンパクトだ。南なん師匠の落語は。ぎゅっと詰まってる。
久しぶりに見た南なん師匠、楽しかった。

茶楽師匠「品川心中(上)」
噺が始まって「品川心中」だ!と分かったときの胸のときめきよ!
この噺大好きだし、茶楽師匠で聴けるなんて嬉しい~。

お染がとても色っぽい。もうこんなみじめな思いをするくらいならいっそのこと死んじまおうと帳面をめくって馴染み客の品定めをするところ…きれいで肝の座った花魁の姿が見えてくる。肩の落とし方とか身体づかいがやわらかくてきれいなんだなぁ。
貸本屋の金ちゃんは能天気で、お染が「死のうと思ってる」と言うと「お前一人で死なせるもんか!」と心中をけろっと請け負うんだけど、飲んだらすっかり忘れちゃうし、「喉は急所だからやめよう」とか「俺は泳げねぇから」とか全然本気が感じられない。

それでも二人で品川の海に出るところ、暗い海が浮かんできて、いいなぁ…。私、この場面がとても好きなんだよね。いや金ちゃんにしたら笑いごとじゃないけど。

突き落とされた金ちゃんがざんばら髪で海から上がってくるところ、声をかけられて俥屋がびっくりするところ、犬に追いかけられて這う這うの体で逃げていくところ。
情けないようなおかしいような絵が広がってくる。

兄貴分の家を訪ねてからのドタバタも楽しくて、大笑い。
楽しかったー。そしてすごく素敵だった。茶楽師匠、かっこいいなぁ…。
よかった。

世界は終わらない

 

世界は終わらない (幻冬舎文庫)

世界は終わらない (幻冬舎文庫)

 

 ★★★★★

書店員の土田新二・32歳は、後輩から「出世したところで給料、変わんないッスよ」と突っ込まれながらも、今日もコツコツ働く。どうやったら絵本コーナーが充実するかな? 無人島に持って行く一冊って?1Kの自宅と職場を満員電車で行き来しながら、仕事、結婚、将来、一回きりの人生の幸せについて考えを巡らせる。ベストセラー四コマ漫画
 

普段の暮らしでなんとなくもやもやっとするところをほんとに素敵に表現するなぁ。

今の自分の人生を「こんなはずじゃなかった」とは思わないし「こんなもんだろう」とも思わない、とか、「人と比べてまだまし」と思うのはなんか違う、とか。
宇宙兄弟」が好きだった孫を想う祖父母にかける言葉や、叔父さんの形見分けの時に返す言葉の優しさ。
あと「いいじゃないすか、頑張ってください」と他人事の後輩にルフィの名セリフで返すところもいい。
土田くん、好きだー!

そしてミリさんは文章だけより、漫画の方が魅力が倍増すると思ってる。
帰りに読む本がなかったので駅前の本屋さんで買った本。あたり!

セロトニン

 

セロトニン

セロトニン

 

 ★★★★

巨大化企業モンサントを退社し、農業関係の仕事に携わる46歳のフロランは、恋人の日本人女性ユズの秘密をきっかけに“蒸発者”となる。ヒッチコックのヒロインのような女優クレール、図抜けて敏捷な知性の持ち主ケイト、パリ日本文化会館でアートの仕事をするユズ、褐色の目で優しくぼくを見つめたカミーユ…過去に愛した女性の記憶と呪詛を交えて描かれる、現代社会の矛盾と絶望。 

 親の遺産があるから働かなくてもそれなりの暮らしは送れるものの、仕事への意欲は失せ、同棲相手にも嫌悪しか感じず、抗うつ剤の副作用で性欲もなくなり、失った恋人のことを引きずりながら、生きている主人公フロラン。

何もかも放り出して蒸発を試み、数少ない古い友人を訪ね歩くも、友人もみなどん詰まり状態で、慰めを得ることも彼らを救うこともできない。

自由貿易のおかげで自国の農業は瀕死の状態。医学の進歩で寿命は延びたが何にも楽しみを見いだせず抗うつ剤でどうにか生きている。
衰退する世界と老い衰えていく自分。

主人公の露悪的な言動に嫌悪を抱きつつも、時々身につまされて、うっ…となる。
この閉塞感と孤独感と他人事感が妙にリアル。
陰鬱だけどちょっと笑えて笑う自分にぞっとする。

好きではないけど…そしてきちんと理解できていないけど、それでもなんか惹かれてしまう、ウエルベック作品。

いるいないみらい

 

いるいないみらい

いるいないみらい

  • 作者:窪 美澄
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/28
  • メディア: 単行本
 

 ★★★★★

未来の選択に直面した人たちの、切なくもあたたかな物語。

話題作『トリニティ』『じっと手を見る』著者最新作!

いつかは欲しい、でもそれがいつなのか、わからない。

夫と二人の快適な生活に満足していた知佳(35歳)。しかし妹の出産を機に、彼の様子が変わってきて……「1DKとメロンパン」
妊活を始めて4カ月が過ぎた。時間がないとあせる妻に対し、夫の睦生(34歳)は……「無花果のレジデンス」
独身OLの茂斗子(36歳)は、単身者しか入居していないはずのマンションで子どもの泣き声を聞いて……「私は子どもが大嫌い」

子どもがいてもいなくても……毎日を懸命に生きるすべての人へ、
そっと手を差し伸べてくれる、5つの物語。

 結婚したからといって必ず子どもができるわけではないし、望んでいてもできない場合もあるし、また子どもを作らないという選択もあれば、養子をとるという選択もある。

夫と妻の考えが必ずしも一致するケースばかりではないとは思うけれど、お互いに歩み寄って理解しあえたらいいよね。

特に好きだったのが最終話の「金木犀のベランダ」。
お互いを思いあって暮らしていけたら…今が幸せなら、恵まれていなかった子ども時代なんてただの過去。そのことで劣等感を持つ必要なんかない。
最後まで読んで涙がぽろり

とてもよかった。

小んぶにだっこ

1/6(月)、落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。
 
・小んぶ「初天神
~仲入り~
・小んぶ「明烏
 
小んぶさん「初天神
あけましておめでとうございます、と小んぶさん。
私はお正月だからって何か想いを新たにしたりするような人間じゃないんですがお客様はきっとそうじゃないでしょう。お正月という気分でいらしているでしょう。
ですから私…こちらに花を活けさせていただきました。
 
この日、黒門亭の高座の横にお正月らしく大きなお花が活けてあったんだど、しれっとそう言う小んぶさんに大笑い。
「んなわけないですけどね。今日来てみたらこんなものが置いてあってですね…うわっとびっくりして、とりあえず動かしたりして何か外れたりしたら戻せないですから…触らないように気をつけて高座を作らないといけなくて…正直迷惑でした」。
 
それから一昨年の暮れから新年にかけてはインフルエンザにかかってしまったため、入門以来初めて師匠のお宅に伺わずに自宅で過ごすお正月を懐かしく思い出しつつ…喬太郎師匠のスズナリに出させてもらった時の話。
やなぎさん、小太郎さん、小んぶさんの3人が毎日交代で出させてもらって、それも喬太郎師匠の弟弟子への愛。熱い人なんですよ、あの方は。
スズナリだってね、兄さんだったらもっと大きなハコでもいいところを、あのハコが好きだから3年前から丸々1か月押さえておいて、自分の好きな人を日替わりでゲストに呼んで自分の大好きな落語をやるという…それをお客さんが頑張ってチケットを取って見に来るっていう…すごい空間ですよ。
そこに私のように何の熱さもない人間が出させてもらってね…。
で、小太郎兄さんが…あの人はしごく真っ当な人間ですから。「兄さんに恩返しがしたい」と言い出してね…3人でお金出し合って帯をね…帯を選べる券を贈ることにしたんですよ。千秋楽に。
で、小太郎兄さんと話し合って、打ち上げの時に渡そう、と。
人がいるところだと兄さんも気づまりだろうから、兄さんがタバコ吸いに出たところをねらって二人で行ってね…渡したんですよ。
そうしたら兄さんがね「おまえら!こんなこと!!」ってね。第一声が怒った声だったんで、あちゃーーしくじったーって思ったんですけど、あたしは。
そしたら兄さんの目から涙がぽろりって。
それを見て小太郎兄さんも泣いちゃって。
おれ一人、ええええ?なに?ってなって。ほら、心がないから。おれ。いやでもこれはまずい、二人が泣いてるからここは泣くところだ!って。それぐらいはねもう40になってるから経験則としてね。
でも泣け!泣け!って思っても全然泣けない。で、そうなると人間どういう行動に出るかって言うと、…笑っちゃうんですね。あはははははー。
もう明らか、サイコパスですよ、あたし。
 
っていう話をね、この間連雀亭に出た時にしたんです。まくらで。
小太郎兄さんもその日出番があって楽屋にいたんですけど。
で、帰りに二人でカレー食ったんですけど、小太郎兄さんが無言なんです。あれ?なんか怒ってる?って思いながらももう10年の付き合いですから。ま、そういう日もあるよねーなんて思って、くだらない話を一人でぱーぱーしてたんです。
そしたら兄さんがポツリと言ったんです。「あーーおれもサイコパスになりてぇなぁ」。
 
10年の付き合いですから、これが嫌味じゃないってわかるんです。小太郎兄さんって本気でサイコパスになりたがってるんです。それを知ってますから…「いや、兄さん、サイコパスですよ。立派な」って言ったんです。そしたら「俺のは…なりたいと思ってわざとやってるだけ…。お前のは本物だもん。かなわねぇよ」。
そう言われました。
 
…ぶわはははは!!!おかしい!!
そしてそんなまくらの後に「私…こうやって日常にあったことをまくらで話すんですけど、ここから落語に入りづらいです。もっと江戸前なまくらを振ってすっと噺に入ればいいんでしょうけど。それができないから、まくらから噺に入った時、笑いが起きちゃうんですけど、これ全然いらない笑いですから!」
そういったあとに「小児は白き糸のごとし…」と言ったので、大爆笑!ごめんごめん、いらない笑いって言ってたのにどうしても我慢できなかった!
「今のは…私のせいだけじゃないですよ。お客さんの責任も半分ぐらい…」
…ごめんなさい!!
「……あの…初天神やります!」
 
…ぶわはははは。なにその宣言。もうおかしすぎる。
そんな宣言からの「初天神」。
小んぶさんらしくひねりのきいた「初天神」。
言うこときかなかったら川におっぽりこんじゃうぞと言われた金ちゃんが「え?かっぱ?…でもほんとにかっぱが出てきてかじられてたら父ちゃん助けてくれる?」。
「…あ、ああ…助けるよ!もちろん助けるよ!」
飴も買おうとするとお金が足りなくて金ちゃんが自分で出したり…。普通になったり普通じゃなくなったりのバランスが絶妙でめちゃくちゃ楽しい「初天神」だった。
 
小んぶさん「明烏
今度はまくらなしで「 明烏」。
こちらはとてもちゃんとした「 明烏」だった。本寸法。
源兵衛と太助のコンビもいいし、若旦那の純情な感じもチャーミング。
小んぶさんが何年か後に真打に昇進した時、やるのかもなぁ…なんて思いながら聴いていた。
ちょっと照れがあったかな。でもそこも小んぶさんらしくていいな。
 

アタラクシア

 

アタラクシア

アタラクシア

 

 ★★★★

擦り切れた愛。暴力の気配。果てのない仕事。そして、新たな恋。ままならない結婚生活に救いを求めてもがく男と女―。芥川賞から15年。危険で圧倒的な金原ひとみの最新長編。 

美しさを武器に刹那的に生きてるように見える由依。由依に夫がいることを知りながら会い続ける瑛人。浮気を重ねる夫と反抗的な息子、文句ばかりの母に苛立つ英美。DV夫から離れられず息子を心配しながらも不倫を重ねる真奈美。そして真奈美からは優しい愛人に見えた荒木も…。

恋愛して結婚して幸せに暮らしました、めでたしめでたしではない。結婚はゴールではないし、お互いの事情も変われば関係性も変わっていく。

自分のその時の感情で突っ走ってしまったり、どうにかしなければと思いながらも身動きができなくなったり、自分で作った家族なのに何もかも放り出して逃げたくなったり。人間というのはほんとに弱くて愚かなものだな。

この内容でなぜタイトルが「アタラクシア」なのか。考えてしまう。

梶原いろは亭 新春特別興行

1/4(土)、梶原いろは亭 新春特別興行に行ってきた。


・幸七「やかん」
・鳳月「代書屋」
岡大介 カンカラ三味線
・楽之介「藪入り」
~仲入り~
・橋蔵「馬のす」
・扇「松竹梅」
・だるま食堂
・圓馬「妾馬」


鳳月さん「代書屋」
鳳楽師匠のお弟子さんとのこと。
一門で忘年会をやったときのこと。酔ってくると師匠の小言が始まるんだけど、なかなか弟子の名前が出てこない。「おい、お前、そうだ、鳳笑…じゃない、鳳志…じゃない、鳳月!」
何度かやった後に師匠が「全くもうみんな鳳が付いてわかりにくい!」
…いやいや、師匠がつけた名前じゃないですか、には笑った。

そんなまくらから「代書屋」。好きな噺じゃないんだけど、とっても面白かった。代書屋さんがそんなに嫌味じゃないからかな。頼みに来た男がぴかーっと明るくて自信満々で楽しい。笑った笑った。


岡大介さん カンカラ三味線
二回目かな。若いのに昭和歌謡や昔の演歌(こぶしじゃなくて演説しながら歌う方)への愛がたっぷり。旦那のおとうさんが聴いたら喜びそうだな、と思いながら聴いてた。


だるま食堂
こちらも二回目。
あの狭いハコで目の前で見ると迫力満点!すごく楽しくてノリノリになって「ウーサンバ!」とこぶしを振り上げるの楽しかった!


圓馬師匠「妾馬」
おめでたくてきれいでいいなぁ…。
八五郎が口はぞんざいだけど優しくて気が良くて気持ちのいい人物。
酔って歌うのも色っぽくてきれいで素敵だった。
落語初めが圓馬師匠って嬉しい~。…ほんとの落語初めは幸七さんだけど(笑)。

2019年・年間ベスト

2019年、読んだ本が154冊、行った演芸が196回。
昨年が読んだ本が129冊、行った演芸が249回だったので、本が増えて演芸が減ったな。って196回も落語(講談、活弁浪曲含め)行ってるのかー。
昨年から始めた誰の高座を何回見てるか、まとめ。


1位 さん助 96回
2位 小三治 23回
3位 雲助 21回
4位 圓馬 19回
4位 凌鶴 19回
5位 小んぶ 16回
6位 圓橘 15回
7位 頼光 14回
8位 はん治 13回
8位 夏丸 13回
9位 琴調 12回
9位 きく麿 12回
9位 さん喬 12回
10位 小はぜ 11回 

ちょっ…。さん助96回って…。2018年が65回でそれにも驚いたのにさらに増えたのがすごすぎる。「楽屋半帖」が毎回3、4席と高座数が多いことと、鈴本のトリに通ったことが勝因(勝ったのか?)。
でも今年はもう少し減りそうだなー。ドッポも終わっちゃったし、「楽屋半帖」もあと何回かで終わるし。

2位が小三治師匠で、だいたい毎年これぐらいの高座を見ているんだけど、それって結構すごいこと。というのは小三治師匠の会はチケット取るのが大変なのだ。逆に言うとチケット取るために頑張ってるのは小三治師匠ぐらい、かな。

雲助師匠は落語を見始めたときから大好きな師匠だけど、やっぱり会に行かないと!という気持ちを新たにまた見に行き始め、行ってがっかりすることがまったくなかったので今年も積極的に見に行きたい。

講談、活弁を見に行くようになって、また世界が広がったなー。今年もいろいろ見に行こう!おー!

で、年間ベスト。まずは海外編。

 

1位 フィフティ・ピープル (チョン・セラン)

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)

フィフティ・ピープル (となりの国のものがたり1)

 

年間ベスト、毎回順位を付けるのが大変。
こうして読んだ本の感想を律儀にアップしているけど基本的に私の場合「面白い!」「好き!」「ん?なんかよくわかんない」というような、ざっくりした読み方。
で、1年間の「面白い!」「好き!」の中から順位を付けているんだけど、「面白い」にもいろんな種類の「面白い」があって、それに順位を付けるというのも意味があるようなないような。
順不同でもいいんだけどそれじゃつまらないという思いもあり。

2019年も韓国文学をたくさん読んでどれもすばらしい作品だったんだけど、特にどれが好きだったかなと考えると、これかな。
韓国の首都圏の大学病院の周辺に住む51人の物語。どの人もいろんな問題を抱えながら、一生懸命日々を暮らしていて、ああ…同じだなぁと思う。人種とか国とかそういうの…私たちには関係ないよ。国同士いざこざがあってもそこに住んで暮らしている人たちはわれわれと同じ、優しくされれば嬉しいし蔑まれれば悲しい…同じ感情を持った人たち。
なによりも作者の視線が優しくてユーモアがあって好きだったなぁ。
図書館で借りて読んでいてすぐに「これすき!」となって昼休みに本屋さんに駆け込んで、同じ本を2冊抱えて帰ったのも、いい思い出(笑)。


2位 ブッチャーズ・クロッシング(ジョン・ウィリアムズ)

ブッチャーズ・クロッシング

ブッチャーズ・クロッシング

 

 ジョン・ウィリアムズはいい。
人間では全く太刀打ちできない自然の凄まじさ。希望や野望が絶望に変わる瞬間を静かなタッチで描きながら、それでも生きていかなければいけない人間の弱さと強さ。
ストーナー」とは全く違った物語だけれど、やぱり同じようにずどん!と心にくるものがあって、寡作だけどすごい作家だなぁと思う。

 

3位 掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集

 

これはきっと今年のtwitter文学賞で1位間違いなしだろうと思うから私は安心して3位に。
作者自身がアル中のシングルマザーという破滅的な面もあるのだけれど、それ以上に直に心臓に触れてくるような…ここに書いてあるのは私のことだ!と言いたくなるような…独特の切実さがあって、たまらなく良かった。
翻訳家さんが惚れ込んで訳した本を読める幸せ。ありがとうありがとう。

 

4位 回復する人間 (ハン・ガン)

回復する人間 (エクス・リブリス)

回復する人間 (エクス・リブリス)

 

これもいい短編集だった。
自分が負った傷や打撃からうずくまり立ち直ることができない人たち。まわりから人がいなくなっていって独りぼっちになっていくのがリアルだけど、時間が薬。新たな痛みを感じたときが「回復」なのかもしれない。
ハン・ガンは以前「菜食主義者」を読んだけれど、それよりも好みだったなぁ。


5位 ある一生(ローベルト・ゼーターラー)

ある一生 (新潮クレスト・ブックス)

ある一生 (新潮クレスト・ブックス)

 

読むものに迷ったら新潮クレストを読め、は2019年も。
幼くして母を失い、母の義兄に育てられたエッガー。アルプスの厳しい自然と時代の荒波に揉まれ幸せとは程遠いように思える人生を送るが、エッガーが老人になってからいたる境地には驚きと感動があった。
読み終わって時間が経ってもその感動が薄れるどころか、じわじわと増していくような作品。


6位 何があってもおかしくない(エリザベス・ストラウト)

何があってもおかしくない

何があってもおかしくない

 

「私のなまえはルーシー・バートン」の続編のような作品だったが、断然こちらのほうが好きだった。
思い出すのも辛い過去や目を背けたくなるような現在を生きている人たちが、それでも時々立ち寄ったり差し伸べられる手に、ほんの一瞬でもほっとして肩の力が抜ける瞬間。わずかな希望に救われる想い。

エリザベス・ストラウトの連作短編はほんとにいいなぁ。

 

7位  なにかが首のまわりに(チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)

なにかが首のまわりに (河出文庫)

なにかが首のまわりに (河出文庫)

 

風習や常識が違う国に住む人々の暮らしや感情の動きを読むことができるのが海外文学を読む楽しさなのかもしれない。
きっと私がこの先行くことはないであろう国。でもそこに暮らす人たちの感情の揺れは私となんら変わるところはない。
越えられない壁をみずみずしく描いた表題作、すばらしかったなぁ。

 

8位 娘について(キム・ヘジン)

娘について (となりの国のものがたり2)

娘について (となりの国のものがたり2)

 

普通の「善い人」として生きてきた母親が、娘の同性愛を恥ずかしく思い、育て方を間違ったのか教育を与えたことがかえって悪かったのかと悩む。
しかしそんな彼女自身、職場で上司の不興を買うような行動をとってしまい、職を失ってしまう。
普通ってなんなんだろう。世間の「常識」が本当に正しいことなんだろうか。
そんなことを考えながらもやっぱりどうしても娘には「普通の幸せ」をつかんでほしいと願わずにいられない。
じんわりと心にしみこんでくるような作品でとてもよかった。

 

9位 SMALL GREAT THINGS :小さくても偉大なこと(ジョディ・ピコー)

([ひ]4-1)SMALL GREAT THINGS 上: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

([ひ]4-1)SMALL GREAT THINGS 上: 小さくても偉大なこと (ポプラ文庫)

 

 一時期、出たら必ず読んでたジョディ・ピコー。久しぶりに読んだけど、相変わらずのリーダビリティ。でもとても重い内容だった。
白人が人種差別を描くのはとても難しいことなのだろうと思う。反発もあるだろうし批判も間逃れられない。でもそこにあえて挑んだ作者の気概を感じる。
「無知もまた特権」という言葉は重い。

 

10位 愛なんてセックスの書き間違い (ハーラン・エリスン)

愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学)

愛なんてセックスの書き間違い (未来の文学)

 

なんていかしたタイトル。これは最後の二編の中に出てくる台詞。
暴力的な話が多かったけど切実な寂しさが際立って好きだったなぁ。
図書館で借りて読んだ本だったけど、神保町のブックフェスティバルの時に国書刊行会のワゴンで見つけて購入。なにかと目の敵にされる図書館だけど、私の場合、図書館で借りて読んでよかったから買うというパターンが多いので許してほしいー。

後は順不同で良かった本。

ショウコの微笑(チェ・ウニョン)

ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)

ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)

  • 作者:チェ ウニョン
  • 出版社/メーカー: クオン
  • 発売日: 2018/12/25
  • メディア: 単行本
 

 
外は夏(キム・エラン)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

外は夏 (となりの国のものがたり3)

 

 

帰れない山(パオロ・コニェッティ) 

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)

 

 
カササギ殺人事件(アンソニーホロヴィッツ)

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件 上 (創元推理文庫)

 
カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

カササギ殺人事件〈下〉 (創元推理文庫)

 

 
三つ編み(レティシア・コロンバニ)

三つ編み

三つ編み

 

 
波 (ソリーナ・デラニヤガラ)

波 (新潮クレスト・ブックス)

波 (新潮クレスト・ブックス)

 


マンハッタン・ビーチ(ジェニファー・イーガン)

 

マンハッタン・ビーチ

マンハッタン・ビーチ

 

 
パワー(ナオミ・オルダーマン)

パワー

パワー

 

 
ピュリティ(ジョナサン・フランゼン)

ピュリティ

ピュリティ

 

 
赤い髪の女(オルハン・パムク)

赤い髪の女

赤い髪の女

 

 

国内編。

1位 火宅の人(壇一雄) 

火宅の人(上) (新潮文庫)

火宅の人(上) (新潮文庫)

  • 作者:檀 一雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/07/28
  • メディア: 文庫
 
火宅の人 (下) (新潮文庫)

火宅の人 (下) (新潮文庫)

  • 作者:檀 一雄
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1981/07/28
  • メディア: 文庫
 

 2019年はなんといっても「火宅の人」!いつか読もうと思っていてようやく重い腰を上げて読んだんだけど、思っていたよりずっとずっと面白かった!勝手に毛嫌いして読んでいなかったことを後悔するけど、だからこそ今読んでこれだけ楽しめるんだからそれはそれでよかったのかも。

これがほぼ実話であるならば作者自身たいがいなクソ男だと思うけど、溢れんばかりの生命力と破滅的な生き方とそれらを俯瞰して見つめる冷徹さにクラクラした。
すばらしかった。


2位 檀(沢木耕太郎

檀 (新潮文庫)

檀 (新潮文庫)

  • 作者:沢木 耕太郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2000/07/28
  • メディア: 文庫
 

 「火宅の人」を読んで、妻の側から見た物語も読んでみたいと思っていたら、あったのだ。妻ヨソ子さんが檀一雄が亡くなって17年経ってから檀一雄のことや結婚生活について語るという内容。

「火宅の人」ではかなりひどい言われようだった妻ヨソ子だけれど、怒りながらも作家として人間として壇一雄をそれでも尊敬し見放さなかったところに凄みを感じた。
天晴れとしか言いようがなかった。


3位 屋根屋(村田喜代子

屋根屋

屋根屋

 

読めば読むほど好きになる村田喜代子さん。
これはほんとにどこからどこまでも好みだった。

ふとした会話がきっかけで屋根屋職人と夢のなかの旅に出かけるようになる、というシチュエーションも最高だし、夢の中で待ち合わせして一緒に空のたびに出るというのがもうたまらない。
そして二人の分かりあえなさもロマンティックというかリアルというか。
あと、屋根屋の喋る九州弁がいだてんファンの私からすると萌えポイントだった。
ほんとにまだまだ自分好みの作家さんがいるんだなぁ、ということを知れた喜び。

 

4位 熱帯(森見登美彦

熱帯

熱帯

 

千一夜物語、物語の中の物語、繰り返しながら少しずつ変化していく世界…と、私の好きな要素がぎゅっと詰まった小説だった。

現実と幻想がらせん状になってぐるぐるぐるぐる繰り返す楽しさ。
モリミーを読むのは久しぶりだったけど、読んでる間ほんとにわくわくした。よかった!


5位 あちらにいる鬼(井上荒野)

あちらにいる鬼

あちらにいる鬼

 

井上光晴ドキュメンタリー映画を見たことがあったので、あれはいったいどういうことだったのか、また当事者やその家族はどう感じていたのか、そういう下世話な興味もあって読んだんだけど、恨みがましいところがひとつもなくすがすがしい作品ですばらしかった。
火の玉のような男を挟んだ女性二人の魅力的なこと。書くことと書かないこと。別れることと別れないこと。
これをモラルでどうこう言ったりするのはほんとにバカバカしい。天晴れじゃないか。こんな人生。

6位 飛族(村田喜代子)

飛族

飛族

 

国境沿いの島に住む二人の老女の魅力的なこと。
祈りとともにある暮らし。鳥踊りをする二人の姿がいつまでも目に焼きついている。
これから親もそうだし自分もどんどん年をとっていくけれど、年をとったからといって何もかもを諦めたくないし諦める必要もない。そんな希望も見えるところが素敵。

 

7位 夢見る帝国図書館中島京子

夢見る帝国図書館

夢見る帝国図書館

 

 物語の中で展開する「夢見る帝国図書館」という物語には、図書館を訪れる文豪や歴史に翻弄される図書館の歴史が語られるのだがこれがとても魅力的。
本好き、図書館好きにはたまらない内容だった。

8位 蜜蜂と遠雷(恩田陸)

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

買った本はなかなか読まずそのうち文庫版も出てしまう、というのがいつものパターンなんだけど、これもまさにそれ。
読もう読もうと思っているうちに何年もたち、あれ?また最近話題になってるのはなぜ?と思ったら、映画化されていたのだった。

音楽を表現する言葉がこんなにも豊かであることに驚いた。
そして音楽への圧倒的な信頼と尊敬の念に満たされた物語だった。


9位 愛が嫌い(町屋良平)

愛が嫌い

愛が嫌い

 

読書メーターで絶賛している人がいたので手に取ってみた本だったんだけど、とてもよかった。
人間をフラットに全く別の視点から見ようとしているような…でもそれが奇をてらっていなくて…自分にも覚えがある部分…身につまされるところがたくさんあって、心地よさと居心地の悪さ、両方がある読後感。
面白いなぁ。若い人にもまだまだ知らない面白い作家さんがいるんだなぁ。


10位 体温(多田尋子)

体温

体温

  • 作者:多田 尋子
  • 出版社/メーカー: 書肆汽水域
  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: 単行本
 

これはちょっと自分が貼り付けておいてなんなんだけど、実際に読んだのはこの本じゃなくて講談社で出ていた方で、収められている短編も共通するのは「体温」だけなので、書影に偽りあり、なのだけれど。ものすごくよかったので。

男女の描き方が今ではちょっと「古い」と言われてしまいそうな気もするんだけど、ここに描かれている女性はみな凛としていて強い。
とても揺さぶられたし魅力を感じたので、この書影に出ている本はすぐに買って読もうと思う。


後は順不同で良かった本。

 

私小説―from left to right(水村美苗

私小説―from left to right (ちくま文庫)

私小説―from left to right (ちくま文庫)

 

 

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)(東畑開人)

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)

居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)

 

ある男(平野啓一郎

ある男

ある男

 

 

不意撃ち(辻原登)

不意撃ち

不意撃ち

 

 

 とめどなく囁く(桐野夏生

とめどなく囁く

とめどなく囁く

 

 

圓朝(奥山景布子)

圓朝

圓朝

 

 

文豪お墓まいり記(山崎ナオコーラ)

文豪お墓まいり記

文豪お墓まいり記

 

 

居た場所(高山羽根子)

居た場所

居た場所

 

 

死にがいを求めて生きているの(朝井リョウ

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

 昔より読むスピードは遅くなってきているし、なかなか頭に入らない、なんてこともあるけど、やっぱり本はいい。今年もたくさん読めますように。



 


 

 

殺意・鬼哭

 

殺意・鬼哭(新装版) (双葉文庫)

殺意・鬼哭(新装版) (双葉文庫)

 

 ★★★★

殺人事件の被害者と加害者。双方から事件について語られる、異色のミステリー。
「エンターテインメントの域をはるかに越え出た力業である」と評され、事件の当事者の心理に深く食い込み、
それらを圧倒的な描写力で表出させる著者の真骨頂が発揮された傑作。

「殺意」は、中学生の頃の家庭教師でその後長いこと憧れの先輩、それから大人になってからは「親友」として付き合ってきた的場を殺した真垣の独白。
「鬼哭」は殺された的場の最期の3分間の精神世界。

「殺意」を読んでいて、真垣がなぜ的場から離れなかったのか…逃げようはいくらでもあっただろうにと思ったのだが、途中から真垣自身の異常性のようなものも垣間見えてきてぞぞぞ…。
そして「鬼哭」を読むと的場も可愛そうな人間に見えてくる。

誰かをはけ口にしてはいけないし、はけ口にされていると思ったら離れたほうがいい。
真垣が的場から離れなかったのは自分の中の殺意を熟成させるためだったのかもしれないと思うと、寒気がする。

夜の九時落語

12/28(土)、UNA galleryで行われた「夜の九時落語」に行ってきた。


・さん助師匠「御慶」


今年はいったい何回さん助師匠を見に行っただろう。
いいさん助もあれば悪いさん助もあった(笑)。

めでたく「ぎょけいっ!」で落語納め。「永日ーーー!」

末廣亭12月下席昼の部

12/28(土)、末廣亭12月下席昼の部に行ってきた。

 

・志ん弥「浮世床
・白酒「権助魚」
・美智・美登 マジック
小満ん「宮戸川
~仲入り~
・ぴっかり☆「宗論」
笑組 漫才
・才賀「カラオケ刑務所」
・小里ん「にらみ返し」
仙三郎社中 太神楽
・はん治「妻の旅行」


途中から。
満員でぎゅうぎゅう。桟敷席の真ん中あたりで。
いかにも寄席らしくて楽しかった~。