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りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

一龍斎貞寿 真打昇進披露興行 三日目

4/22(土)、お江戸日本橋亭で行われた「一龍斎貞寿 真打昇進披露興行」に行ってきた。


・貞奈「三方ヶ原軍記」
・春陽「の海勇蔵出世相撲
・貞友「出世の大盃」
・南北「THE家族 津軽の恋」
・琴調「出世の春駒」
・貞水「王将」
~仲入り~
・口上(貞友:司会、琴調、貞寿、貞心、貞水)
・貞心「石川一夢」
・貞寿「赤穂義士外伝 忠僕勝助」

春陽先生「の海勇蔵出世相撲
初めて見る先生。
とても軽妙で楽しい。話もわかりやすくて面白いし、軽くてギャグも満載で緊張がほぐれる。
いやぁほんとにいろんな講談があるんだなぁ…。講談の世界も奥が深いなぁ。
落語ファンの方々が次々講談の方にも進出?していく気持ちがわかる。


貞友先生「出世の大盃」
いかにもお酒が好きそうな先生がそれはもう気持ちよさそうにお酒の話をされる楽しさよ。
落語の「備前徳利」みたいな話だなぁと思っていたんだけど、後半にはいかにも講談らしい展開になってそれがまた楽しい。


南北先生「THE家族 津軽の恋」
わーーなんか強烈な人が出てきたー(笑)。
しかも講談も「新作」で、強烈ー。うわーーー。
なんかいろんな意味でびっくり仰天。すごいな、講談の世界も。


琴調先生「出世の春駒」
寄席で見るたびに「好きだ」と思っていた琴調先生。
「出世の春駒」は何回か見たことがあったけれど、こういう会にぴったりだし、ほどよく軽くて笑えていいなぁ。
前から好きだったけど、こうやって見るとすごくかっこいいなぁ。すてき。

貞水先生「王将」
うわ、まさか人間国宝をこういうところでこんなに近くで見られるとは思ってなかった。
小三治師匠もそうだけど、全然えらぶるところがないというか、素のままっていうかべらんめぇっていうか子どものまま大人になったみたいな…とても魅力的な人だなぁ。
そして、こういうおめでたい席だから自分が得意としている怪談話をするわけにもいかないし、赤穂浪士はトリでやるらしいし、さてどうしようと思って…自分でもめったにやらないしおそらく講談好きな人もほとんど聞いたことがない話をやります、と言って「王将」。

阪田三吉というもとは職人だったけれど将棋好きが高じてプロになった男が主人公。
プロになって8年目、関根名人と戦って勝つのだが、この人こそ三吉が素人の時に負けて悔しくてどうしても打ち負かしたかった相手だった。
ねぎらってくれる妻とは逆に「あれは関根名人が勝たせてくれたんだ」「関根名人の将棋には品があるけどお父さんの将棋にはそれがない」と三吉に言い切る娘。
そう言われて怒り狂う三吉だったが次の日妻に「あれが言ったことは本当だ」と認める。
それからまた年を重ね真に名人と呼ばれるようになった三吉。
関根名人の祝いに駆けつけ、二人は初めて腹を割って話をする。

講談にまったく詳しくない私でもこれがとても珍しい話だということはわかる。
将棋も勝てばいいというだけのものではなくて、それはきっと落語もそうだし講談もそうで…芸の道や生き方にもつながる話なんじゃないかなぁと感じた。
初めて見た貞水先生。こんな珍しい話を聞けて本当に来た甲斐があったというか…ラッキーだったなぁと思った。


口上(貞友先生:司会、琴調先生、貞寿先生、貞心先生、貞水先生)
司会の貞友先生が顔をあげてもよろしいですかと客席に声をかけてくれたおかげで、この間と違って顔を少し上げた貞寿さん。
表情が見られるのはとてもうれしい。グッジョブ!

琴調先生の優しさとユーモアに溢れる口上のあとの貞水先生。
今日は珍しい話をやって出来は決してよくなかったんですけどあれをやろうと思ったのには理由がありまして…。
というのは自分が真打になった時を思い出しまして…あの時は講談師の数が今よりもっと少なかったし、いわゆる「名人」と言われるような人たちの中に自分も入って行かないといけないということがとても嫌で、真打になんかなりたくないと泣きながらなりました。
この話を新劇で見た時に、これは講談にできるんじゃないかと思って作者の住所を調べて許可をもらいにいきました。
話をしてみると「私はそもそもあなたがどんな芸をやるかも知らないしそれで許可を出せというのは難しい。まずは講談にしてやってみなさい。見に行くから」と言われました。これはまずはやってみなさいと言って下さったわけでとてもありがたい言葉だった。
そしてその会にこの先生見に来てくださって、「これは全部で三巻まである長い話なんです。ぜひ全部やってください」と言って下さった。

口上が始まって顔をあげていた貞寿さん、貞水先生が「自分が真打になった時を思い出して」と言ったとたん、頭がぐっと下がった。
この日が真打披露目だから自分が真打になった時の気持ちを想いだしてこの話をされたと言われて涙がこらえられなかったんだろう。
私もなんか胸がいっぱいになって泣いてしまった。

挨拶を終えた貞水先生に隣に座った貞心先生が頭を下げてお礼をおっしゃっていて、本当に嬉しそうだったのが印象的で、本当に感動的だった。
そのあとに挨拶をされた貞心先生が貞寿さんに向かって「よかったな」と声をかけ、自分はとても明るく軽い挨拶をされたのも素敵だった。多分泣いている貞寿さんがそれ以上泣かないようにされたんだじゃないかな。

 

貞心先生「石川一夢」
これも初めて聴く話。
いいなぁ、こういう話を自分の弟子のお披露目の席でやる師匠って…。見るほどに好きになるなぁ。貞心先生。
あたたかくて柔らか味のある講談。好きだ。

貞寿先生「赤穂義士外伝 忠僕勝助」
自分の憧れの先生方はこうして口上に並んでくださってこれを幸せと呼ばずに何と言ったらいいのか。
私40過ぎて…ほんとに涙もろくなってしまって…泣かずにいれば大丈夫なんですけど一度泣いてしまうともうだめです。

そう言いながらも「講談には必ずダレ場というのがありまして。今日は…ダレ場です」と笑いに変えるのがさすが。
そして前回までのあらすじから「赤穂義士外伝 忠僕勝助」 。

城を明け渡した大石内蔵助が赤穂から山科に出発するところ。長年仕えていた勝助が挨拶に来て蔵助の形見が欲しいと言う。
勝助と話をしているうちに自分の日頃の行いや忠義から仇討をするだろうと世間で言われていることを知った蔵助が…。

地味だけど蔵助の魅力がたっぷり。とてもよかった。
あーあと2日も行きたいなぁ。昼間なんだよねぇ。くー。

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圓馬社会人倶楽部

4/21(金)、お江戸日本橋亭で行われた「圓馬社会人倶楽部」に行ってきた。
寄席で見てすごく好きになった圓馬師匠の会。芸協はこういう若手真打の会をやっているのが羨ましい。開演時間が早いのがちょっと辛いけど…と言いながら圓馬師匠を二席見たかったのでそ~っと会社を抜け出して行って間に合った!


・双葉「街角のあの娘」
・圓馬「花見の仇討」
・松鯉「名人小団治
~仲入り~
・柳太郎「片棒」
・コント青年団 コント
・圓馬「佐々木政談」


双葉さん「街角のあの娘」
初めて見た双葉さん。この噺は私がかなり苦手なあの師匠の新作ですね…。噺のせいもあるかもしれないけど、苦手かも…。

圓馬師匠「花見の仇討」
協会主催の若手の会ということで…私もまだ「若手」なんですね。まだ「若手」なのかぁって…ちょっと複雑なものがありますけど。
それでも多分この会に出られるのもあと2年ぐらい。あとがつかえてますんで。

前にあがった双葉さんの新作を「私あの噺はいろんな演者で数十回は見てるんですけど…何回見ても途中でなんかわからなくなっちゃうんです。今日も袖で見てたんですけど、やっぱりわからなかった。」

…わははは。
そんなまくらから「花見の仇討」。
最初から最後までテンポがよくてとても楽しい。
待ち合わせ場所に向かう仇を探す役の二人が、松坂屋の角を曲がってABABを通り過ぎてマクドナルドのあたりで侍に出会うというのがおかしい。

聴いているともうこの師匠すごく好きだーと思うんだけど、どこが好きなのかがとても説明しづらい。
例えば南なん師匠だったらあの独特の空気感、話し方、声、表情…とても特徴があるし、例えばさん助師匠もあの内側からぴかーっと輝く明るさとかその一方でひねくれてて暗いところとか…説明ができるんだけど、圓馬師匠のどこに魅力を感じているかというの…どこってまだ自分でもはっきり言えないんだな。

なんだろう。テンポのよさ、押しが強いわけではないけれどメリハリがあるところ、独特の味わいっていうかなんかこうキラっと光る魅力があって、そこに惹きつけられる。あーうまく説明できない!


松鯉先生「名人小団治
最初、中村仲蔵?と思って聞いていたんだけど、あれ?違う?初めて聴く話。
引き上げられたのにチャンスを生かせず破門されてしまった若い役者。自暴自棄になりかけたところを座長になだめられ、自分を破門にした役者の草履を懐に入れて消えてしまう。
それから20年がたち、二人が再会する。上方を後にした若い役者は江戸で小団治と名乗り名人と呼ばれるようになっていた。

これがもうとてもよくて…胸を打たれて泣いてしまった。
いいなぁ。松鯉先生。

柳太郎師匠「片棒」
新作のイメージが強い師匠なので「片棒」はちょっと意外。
ところどころ強烈なギャグが入っていておかしかった~。


圓馬師匠「佐々木政談」
今まで何回も聞いている噺だけれど、当時奉行所で賄賂が横行し佐々木信濃守はこの悪しき風習をどうにかして断ち切りたいと思いながらも表立って注意をするわけにもいかず何かいい手はないかと思っていた、という前置きがあったのは初めてで、それゆえにこの生意気で頭のいい子をわざわざ奉行所に呼んで話をさせたのか!というのがわかって驚いた。
いままでこの噺って育ちは悪いけれど頭が良くて度胸もある子供の出世物語、としか思っていなかったよ。

面白かった~。なんかこの噺の見方が変わった。

一龍斎貞寿 真打昇進披露興行 二日目

4/20(木)、お江戸日本橋亭で行われた「一龍斎貞寿 真打昇進披露興行」二日目に行ってきた。


・伊織「三方原軍記」
・凌鶴「一心太助 旗本との喧嘩」
・梅福「お竹如来
・琴柳「野狐三次 木端売」
・貞山「出世田沼」
・琴梅「秋色桜」
~お仲入り~
・口上(琴柳:司会、貞山、貞寿、貞心、琴梅)
・貞心「真柄のお秀」
・貞寿「赤穂義士本傳 赤穂城大評定~矢頭右衛門七
 
伊織さん「三方原軍記」
言ってる言葉がほとんど理解できず、不安にかられる。
こここりは。こんな調子で講談ばかりがずーーーっと続いて大丈夫だろうかあたし。ひぃー。
 
凌鶴先生「一心太助 旗本との喧嘩」
おおお、面白い。
一心太助という魚屋が魚を買ってもらおうと屋敷に入っていくと、獰猛な犬をけしかけられる。
侍を恐れぬ一心太助、その屋敷の主に刀を抜かれて絶体絶命のピンチになるのだが、そこを通りかかった侍が…。
講談というより落語っぽい話。
凌鶴先生初めて見たけど、独特の軽さがあってとっても楽しかった。好き好き。
 
梅福先生「お竹如来
言いよどみが多くてドキドキしてしまった。あんまり普段やらないはなしだったのかな。
梅福先生は前にも一度見たことがあるんだけど、講談に詳しくないのでなんという話だったのかわからなかったんだよな。
 
琴柳先生「野狐三次 木端売」
琴柳先生は寄席で何回か見ているけど大好き。
こういう孝行の話って結構あるんだな、落語や講談には。
生意気で気骨があって病気の母親を助けようとする子どもが琴柳先生にぴったり。
 
貞山先生「出世田沼」
おお、貞山先生!か、かっこいい。前に松之丞さんが講談は男前じゃなきゃいけない、自分はかなりぎりぎり(やばい)みたいなことを言っていたけど、たしかにこれは…講談顔(え?失礼?)。
武士の話を得意とされているんだろうか。なんかとても重厚感がある語りでかっこよかった。

琴梅先生「秋色桜」
おお、この話は聞いたことがある。こういうのもおめでたい席で好まれる講談なんだな。なるほど。
琴梅先生は初めて見たけれど 重厚感もあるけど軽さもあってあたたかみもあって…講談に通い続けていたらこういう先生を好きになりそうな予感…。


口上(琴柳先生:司会、貞山先生、貞寿先生、貞心先生、琴梅先生)
頭を深々と下げている貞寿さん。落語の披露口上では少しだけ顔をあげるから表情が見えるけど、これだと全然見えない。
初日はかなりにぎやかな口上だったらしいんだけど、この日は司会が琴柳先生だったせいか?あるいは並んでいる先生方のキャラクターなのか、とてもぴしっとした口上で、初めて行った私にはとてもいいメンツだった気がする。
明るくて人懐っこくてひたむきな貞寿さんをどの先生もみな大好きでかわいがっているのが伝わってくる口上。
貞心先生が頭を下げている貞寿さんを時折ちらっと見つめるんだけど、そのまなざしが優しくてじーんとくるし、貞山先生が時々ちらっと貞寿さんを見るのがなんか面白がってる感じが伝わってきて楽しかった。
琴梅先生がこういう場合のご祝儀について事細かく説明したのも、やさしさっていうか思いやりがあってよかったなぁ。
下を向いている貞寿さん、きっとにこにこの笑顔だったんだろうな。
 
貞心先生「真柄のお秀」
初めて見た貞寿さんの師匠。かわいいっ!(笑)
とてもユーモラスな話をすごくいいリズム、気持ちのいい声、そしてあの愛嬌のあるかわいらしい顔でされるから、楽しい楽しい。
私、この先生好きだわ。
 
貞寿先生「赤穂義士本傳 赤穂城大評定~矢頭右衛門七
にこにこ顔で登場。本当に嬉しそうで幸せそうで見ているこちらもうれしくなる。
このお披露目では「赤穂義士本傳」を通しでやります、と「赤穂義士本傳 最後の大評定」。
講談をそれほどたくさん聞いているわけではないので初めて聴く話。
まくらは可愛らしい声の貞寿先生だけど、話が始まった途端に声の出し方ががらりと変わって、それがかっこよくて鳥肌がぞわぞわ…。

特に「矢頭右衛門七」の母とのシーンには涙涙。
気合が入っているけど力は入りすぎてないとても素晴らしい高座だった。


そもそも貞寿さんのお披露目に行こうと思ったのは、連雀亭で見た貞寿さんのまくらと講談がとても楽しかったからと、時々読んでいた貞寿さんのブログがとても好きで…特にこの日の記事を見た時、もう他人とは思えなくて、いてもたってもいられなくなったからだった。

ameblo.jp

講談は寄席で間に挟まっている時に聞くぐらいで、嫌いではないけれどあえて講談だけの会に行くほどではないと思っていたし、講談だけずーーーっと続くのは自分にはちょっときついんじゃないかとも思っていた。
でも行ってみたら講談の中にもいろんな話があって、そしていろんなタイプの講談師がいるんだなぁ、と改めて気づかされて、とても楽しかった。

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これからはあるくのだ

 

これからはあるくのだ (文春文庫)

これからはあるくのだ (文春文庫)

 

 ★★★★

自分が住んでいる町で道に迷い、路上で詐欺にひっかかり、飛行機が嫌いなのに海外旅行に出かけてしまうカクタさん。騙されても理不尽な目に遭っても自らの身に起こった事件を屈託なく綴るエッセイ集。そのボケッぷりとユニークな発想は、少女時代から大炸烈!大人になってよかった、と思える一冊です。  

軽めのエッセイが多いので少し物足りないけれど、安定の面白さ。

相変わらずタイトルが秀逸だが、読み終わってこの言葉にこめられた角田さんのやり場のない怒りがわかると、なんてひどい!とやり場のない怒りにかられるのだが、でもちょっと笑ってしまう。
怒るのが下手で怒られるのが苦手な角田さん。決して笑えるような出来事ではないのだが、でもそれをじっと黙って耐えて、握りこぶしを作りながら「あるく」決意に変える角田さんが大好きだ。

最後に収められた「孤独」についてのエッセイがたまらなく好き。

友と手をふってわかれて上機嫌でベッドへもぐりこみ、幸せな眠りをむさぼって、それでもときおり、ずうずうしい同居人のように部屋に居座った孤独と、しみじみ顔をあわすことがある。まさに自分の位置と同じ質量の孤独である。

 

夜のサーカス

 

夜のサーカス

夜のサーカス

 

 ★★★★★

夜だけ開く黒と白のテントのなか、待っているのは言葉を失ってしまうようなショウの数々。氷でできた庭、雲の迷路、優雅なアクロバット、ただようキャラメルとシナモンの甘いにおい…しかし、サーカスではひそかに熾烈な闘いがくりひろげられていた。若き魔術師シーリアとマルコ。幼いころから競い合いを運命づけられてきた二人は、相手に対抗するため次々とサーカスに手を加え、魅惑的な出し物を創りだしていく。しかし、二人は、このゲームの過酷さをまだ知らなかった―魔法のサーカスは世界中を旅する。風変わりなオーナー、とらえどころのない軽業師、謎めいた占い師、そしてサーカスで生まれた赤毛の双子…様々な人々の運命を巻き込んで、ゲームは進む。世界で絶賛された幻惑とたくらみに満ちたデビュー作。  

 サーカスの物語ってもうそれだけで2割増しぐらい評価が上がってしまう。さらにそれに魔法の要素が散りばめられるとほんとに弱い。

モヤモヤしたところが多く、最後まで読んでも腑に落ちない部分もあるし、小説として焦点が定まりきれてない感じもするけれど、でもそれはそれでいいと思う。

魔法をマジックのように見せる美しい奇術師、彼女の対戦相手である青年との運命の出会い、サーカスの幕開けの日に産まれた双子、そしてサーカスに魅了される人たち…と登場人物が魅力的で生き生きしている。

そして魔法の力で成り立っている夜のサーカスの描写がとにかく色覚的に素晴らしい。作者が舞台美術を勉強してきたことによるものなのかもしれない。

もうこの世界に浸ってるだけで幸せだった。余韻を残すラストも素敵。素晴らしかった。

ふたりらくご

4/17(月)、ユーロライブで行われた「ふたりらくご」に行ってきた。
渋谷らくごに行くのは今回が初めて。始まった当初から何かと話題になっていたし好きな噺家さんも出ていたのだけれど、ふたりらくごの18時開演は早すぎるし、かといって渋谷らくごの20時開演は遅すぎる…というのもあってなかなか行けなかったのだが、今回は大好きな左談次師匠と秋に真打ち昇進が決まっている気になる志ん八さんの組み合わせだったので、満を持して(←大げさ)。

・左談次「五人廻し」
・志ん八「ん廻し」

 

左談次師匠「五人廻し」
志ん八さんが秋に真打に昇進し師匠「志ん五」の名前を継ぐことになっているので、今日のトリは志ん八さんがとります、と左談次師匠。
志ん八さんの師匠の志ん五師匠は日暮里の長屋に住んでいて、自分はほんとに足しげく通っては飲ませてもらっていた。
志ん五師匠の名前はもともとは「志ん三」で志ん朝師匠が「志ん三」と付けていたのだが、5丁目に引っ越しをして「志ん五」を名乗るようになり、志ん朝師匠が「なんて無礼なやつだ」と言っていた(笑)。
その志ん五という師匠の名前を継ぐ志ん八さん。師匠の名前を継ぐというのは本当にすごい名誉なことで…私が談志を継ぐようなもの…そう考えてみるととんでもねぇことだな!
 
…ぶわははは。
左談次師匠のこの軽さと毒とでもちょびっとにじみ出るやさしさがたまらない。大好きだ。
 
そんなまくらから「五人廻し」。
もうこれがすごく楽しい。
特に漢語交りに話す理屈っぽい男の物言いがツボでおかしくておかしくて。
4人目の「〇〇でげす」という男の気持ち悪さも左談次師匠だとカラッとしていてとても楽しい。
大臣の部屋にいた花魁のけだるくさばさばした色気にはちょっとどきっとした。
 
志ん八さん「ん廻し」
仕事を断らないことをモットーにしている志ん八さん。
跳び箱の上で落語をやったというまくらから「ん廻し」の通し。
志ん八さんの古典聞いたのは初めて。
新作はなんかあんまり好みではないんだけど(すみません!)、古典の口調とかリズムが気持ち良くてすごく良かった。軽くてテンポがよくてメリハリがほどよくあって。
うわーーなんかびっくりだなぁ。先代の志ん五ファンの友だちが「志ん八さんの古典、すっごくいいから聞いてほしい」と言っていたけど、たしかに…。

真打披露目も楽しみになってきた!

鈴本演芸場4月中席昼の部

4/16(日)、鈴本演芸場4月中席昼の部に行ってきた。


・たま平「子ほめ」
・小んぶ「浮世床(本)」
・紋之助 曲独楽
・文菊「権助提灯」
・はん治「妻の旅行」
・にゃん子 金魚 漫才
・小里ん「たらちね」
・歌奴「新聞記事」
・夢葉 マジック
・川柳歌で綴る太平洋戦史」
~仲入り~
・ホームラン 漫才
・燕路「初天神
・権太楼「代書屋」
・二楽 紙切り
・さん助「妾馬」


小んぶさん「浮世床(本)」
産院で落語をやったとき。着物姿でうろうろしていたら赤ちゃんを産んだばかりのおかあさんに声をかけられた。
「あの…お相撲さんですよね?お名前は?」
「え、ええと…小んぶです」
「あ、モンゴル人ですか?」

「あの…お相撲さんに赤ちゃんを抱っこしてもらうと丈夫な子に育つって聞いたことがあって…抱っこしてもらえますか」
そう言われて赤ちゃんを抱っこした小んぶさん。なんかお相撲さんらしいことを言わなきゃいけないと思って、赤ちゃんに向かって「…どすこい」。

…ぶわははは。小んぶさん、おかしい~。
そんなまくらから「浮世床(本)」。
本を読んでる男が他の人がやるのと違って素直っていうか逆らわないのが小んぶさんらしい。
鼻から息が抜ける読み方がおかしくて笑い通しだった。

文菊師匠「権助提灯」
おかみさんが妾の家に言ってあげてくださいと言う時の黒い表情が最高。
そうか。おかみさんは旦那を試したんだ。だから「じゃ行ってこようかな」と言った瞬間にもう家には入れてもらえないことが決まってたんだ。

女たちの黒い表情と裏腹に大声あげて楽しそうな権助がおかしい。
戸をたたいて「うぇーーーーー」って叫ぶだけでこんなに面白いとは。昨日見た「権助提灯」とは大違いだった。
好きなタイプの落語をやる師匠じゃないけど隅々まで心が行き渡っていてきれいだし文句なく面白い。

小里ん師匠「たらちね」
最近の前座さんの「たらちね」って、お経じゃなくてネギを買うところまでやるのがスタンダードになっているけど、もしかするとこれが元なのかな?というような「たらちね」だった。
正直聞き飽きた噺をお手本的に淡々とされるのでちょっと気を失いそうになりつつ…でも奥さんの大仰な物言いに威厳があってそこがやけに面白かった。


川柳師匠歌で綴る太平洋戦史」
元気に歌う川柳師匠が見られて幸せ。寄席に行き始めたころに川柳師匠に当たると困惑しかなかったが(「なにこれ?」「え?戦争バンザイ?いや反戦?」「え?ジャズ?なに?」)、今はもう出てきただけで嬉しい。


さん助師匠「妾馬」
まくらなしで「妾馬」。
八五郎がいかにもごろつきって感じなんだけど、それでも根が正直な男というのが伝わってきて憎めない。
支度金の三百両もつかっちゃってて、お金をほしがるわりにあんまりお金に頓着してないというのもけろっとしていていいな。

屋敷に呼ばれてから、殿様が自分と一緒だと気づまりだろうと言って、三太夫と八五郎でつぎの間に下がるというの、他の人では聞いたことがない。でも確かにその方が自然。
すぐに奇声を発する八五郎に声を小さくしろと言い続けていた三太夫が、八五郎がお鶴の生んだ子供の顔も見られないと言った時に「声が小さいですぞ」と言うのがいいなぁ…。

が「あにさん」と声をかけただけで「もう何も言わなくていい」と言う八五郎にじーん…。
はちゃめちゃだけどちょっと泣ける「妾馬」。初めて見た時ははちゃめちゃの方が勝っていたけど、見るたびに人情味が増している気がする。よかった。

***

昨日の広小路亭の客いじりが辛かったので、客いじりのない今日の寄席はそれだけで安心して見ていられて幸せだった。
にゃん金とか正直面白いと思ったことがないんだけど、自分たちのネタをやって爽やかに帰って行ってくれてそれだけですばらしいと思った。

この間、末廣亭に行った時、私の隣の席にいたおねえさんがとてもきれいな人だったんだけど好き嫌いを思い切り態度に出す人だった。
好きな人の時は激しく拍手して声をあげて笑って、そうじゃない人の時はぱらぱらの拍手でつまらなそうに見ていて時々ため息をついて、嫌いな人の時は拍手もしないし一度も顔をあげずに目を伏せるか席を立つ、というのが徹底していて、正直不愉快だった。
やっぱり寄席を見に来てるんだから好きな人の時に大きな拍手をするのはいいとしても、そうじゃない人の時に何もそこまで差をつけなくてもいいじゃないか、と。

目に入れるのも嫌なほど嫌いという人が私もいないわけじゃないけど、それでもやっぱり舞台に目を向けて最初と最後の拍手はしなくちゃ、と彼女の姿を見ていて思ったのだった。

でも昨日みたいなことがあると、やっぱりほんとに嫌だなぁと思う時は席を立った方がいいのかもしれない、と思った。
ほんとはそういうのも含めて楽しめるようになったら一番いいんだろうけど、好き嫌いが激しいし心が狭いからなかなか難しいな。

上野広小路亭4月中席前半昼の部

4/15(土)、上野広小路亭4月中席前半昼の部に行ってきた。


・昇咲「子ほめ」
・金かん「道具屋」
・鯉輪「権助提灯」
・里光「紀州
・一矢 相撲漫談
・夏丸「茄子娘」
・文月「出来心(前半)」
・南玉 曲独楽
・圓輔「夢の酒」
~仲入り~
・紫「中山安兵衛高田馬場の駆け付け」
・京丸・京平 漫才
・遊之介「お見立て」
・南なん「不動坊」
・小天華 マジック
・遊史郎「稽古屋」


昇咲さん「子ほめ」
初めて見た前座さん。昇太師匠の9番目のお弟子さんだそう。
まだ上下もうまくふれてない感じなんだけど、時々ちょっとおかまっぽく?なるのが面白い。きっと新作派だな。


金かんさん「道具屋」
前にも一度見たことがあるけど、さすが金遊師匠のお弟子さん。前座さんなのにどこか渋い。うまいんだけどこれ見よがしなところとか前へ前へ出る感じが全然ない。なんか気になる前座さんだ。


鯉輪さん「権助提灯」
「落語が二つ続いたからみなさんもうお疲れでしょう。私はもう疲れてます」と出てくるなりいきなり愚痴。
そのあともずっとなんかぐずぐず言っていて、途中から入るお客さんがいるとそれにもいちいち声をかけたりいじったり…そのうち最前列に座ったおじいさんをいじったらこの人がもう喋る喋る。収集がつかなくなってしまった。
「もう私はっきりいってやるきありませんから」って…。なんだろう、ギャグのつもり?でも最初から見てるとほんとにそうだとしか思えなくて「でもこのままさがったら私くびになりますから」と言って「権助提灯」。
客いじりなんかしないで普通にやってほしかったな。


里光師匠「紀州
出てくるときに笑い声が聞こえたから多分鯉輪さんからおじいさんのことを伝えられていたんだろう。
その人のことを警戒しながら?でも変にいじったりせずに「紀州」。
ああ、よかった…ちゃんとした空気に戻してくれて。あのままあっちでもこっちでもおじいさんたちがしゃべりだしたらもうせっかく楽しみに来たけど帰ろうかと思ったよ…。
関西弁だと同じ噺でも印象が違う。より笑いやすくなる感じ。
あと歴史音痴なので三役の説明があったのがよかったな。
こういう空気の時に「紀州」をさらっとやる里光師匠、すてきだった。

夏丸さん「茄子娘」
噺家っていうのは変な商売で変な人が多いです、と夏丸さん。
普通の人だったら「前に出てなんでもいいから5分やれ」と言われたら「私はそんなことできません」と断るところを、つらい前座修行を4年位やってまで仕事としてやろうというんですから。変な人ばかりです。
いろんな仕事がありますけど、一番ストレスがかからないのが「農業」だそうです。もちろんいろんな苦労はあるんでしょうけど、広大な敷地で農作物を育てるという仕事自体にはストレスはない。それはわかるような気がします。
そんなまくらから「茄子娘」。これがもうとってもいい。夏丸さんの淡々とした喋りとこの不思議な噺がとても合っていて独特な雰囲気。
高座に向かって話しかけるおじいさんがいたり、反応が控えめなお客さんに演者の方がいらっとするようなシーンもあったりしたんだけど、それがこう涼しい風に洗われるような雰囲気になった。

うおおお、夏丸さん、すごい!
まくらの途中で例のおじいさんが話しかけたんだけどそれを華麗にスルーして、一切客いじりをしないで空気をがらっと変えた。
なんかもともと好きだけど、惚れ直したよ。すごくよかった。
後ろの席にいたおじさんが「才能のかたまりだな」とつぶやいていて、うれしくなった。


圓輔師匠「夢の酒」
初めて見る師匠。
もうまくらから目が釘付けになってしまった。好きだーー、私この師匠、すごく好き。
右手を怪我されていて、なんでも自転車で転んだとか。利き手なので大変でお風呂も娘さんに入れてもらっているとか。
で、年をとるとできものなんかもできるようになって、この間はお尻にできものができてしまった。自分で見ることもできないし家族に見てもらうのも抵抗があるし…。
それで家族が全員出払ったときに「いまだ」と思い、三面鏡の前で膏薬を貼ろうと四苦八苦。鏡の助けを借りてどうにか貼って「やれ安心」と思っていたら。
帰ってきた奥さんが「ちょっと。鏡に膏薬貼ったの誰?」。

…ぶわはははは。もうこれがおかしくておかしくてツボにはまって笑いが止まらない。私、こういう小噺、ほんとに大好き。しかもそれを淡々と言うものだからおかしくておかしくて。

そのあと、豊臣秀吉が聞いた小噺も披露して、そういう噺に入るのかなと思っていると、やきもちのまくらからなんと「夢の酒」。
これがもう…楽しくて楽しくて!
もしかして南なん師匠の「夢の酒」はこの師匠から?違うかな。
でも印象は違っていて、こちらの大旦那は本当の酒好きで、夢の中に入ってからも「お酒を召し上がっていただいて」と言われると、小言そっちのけで「それなら一本いただきましょう」と明らかにウキウキ。
でも「湯が沸くまで一本目は冷やで」と言われると「冷やはいけません。それでしくじってますから。冷やはいけません」。
サゲの一言にも、あー夢なんだったら飲んでおけばよかったなぁ、という酒飲みの実感がこもっていて、おかしかったー。

すごく好きだ、この師匠。また好きな噺家さんが増えてしまった。うひょひょ。


京丸・京平 漫才
笑いが控えめなお客さんに客いじり爆発。
ちょっとネタをやっては「これでも笑わない」「昨日のお客さんは笑ってくれたのに」「ふつう女性は笑うのに」「若い女性が笑ってくれるけど今日は若い人がいない。おばあさん、おばさん、おばあさん…」。
確かに笑わないお客さんだったかもしれないけど、面白ければ笑ってたし、あんなに責められたら苦痛でしかないよ。狭い空間で個人攻撃されてつらかった。
もうほんとに終わってほしくて最後は無理に笑って拍手してようやく帰ってくれた。終わった後、何人かで顔を見合わせてしまった。
うけなかったらネタだけやってすっと帰ってほしい…。地獄のような時間だった。

※ほんとにいやだったなぁ、あれは何だったんだろうと思って検索したら、どうやら客いじりはこのコンビの「得意技」らしい。あれを芸としてやっていたのか?あまりにウケないから度を失ってああなってしまったのかと思っていたたまれない気持ちだったんだけど、あれが芸風?えええ?いやな芸だな(笑)。

南なん師匠「不動坊」
あんなにも笑わないことを責められるとほんとに私たちが悪いんじゃないかという気持ちになってしまうけど「お客さんが来てくれたっていうんで楽屋一同大喜び」といういつもの言葉に救われる。
ううう、楽屋ではきっと「今日の客は笑わないよ」と言いあっているんだろうけど(明らかにそう聞かされた風で強張った表情で出てきた師匠もいた)、でも嘘でもそう言ってくれたらほっとするよ…。

南なん師匠の「不動坊」は何回も見ているけど、いつもよりちょっと陽気な「不動坊」でそれにもなにか慰められた。
攻撃的なところがまったくなくて穏やかで優しくて楽しい南なん師匠の落語。いいなぁ。
どっと笑いが起きなくても、心の底から面白いと思ってるお客だって中にはいるんだから、全体の反応にあんまり左右されないでほしい。そういう意味で南なん師匠は本当に真摯に自分の落語をやってくれるからいつでも安心して見られて幸せな気持ちになれる。


遊史郎師匠「稽古屋」
桜田淳子復活を祝って?変な替え歌。ぶわははは、なんだこれ。妙にうまくてだけどそれが噺に何も関係ないのがおかしい。

鳴り物入りの「稽古屋」。歌がとてもうまくて三味線に合ってて気持ちいいし、踊りのしぐさもとてもきれいでいいなぁ~。こういう噺をトリでやるってすてき。それもこうしんなりしていて気負った感じが全然なくて、ただひたすらに軽くて楽しい。
好きだな、この師匠も。

途中でかなり心が折れたけど最後まで頑張ってよかった。楽しかった。

みなと毎月落語会 柳家小三治独演会

4/14(金)、赤坂区民センターで行われた「みなと毎月落語会 柳家小三治独演会」に行ってきた。

 

・はん治「ろくろ首」
小三治「転宅」
~仲入り~
小三治「小言念仏」


はん治師匠「ろくろ首」
わーい、はん治師匠。「おなじみのおはなしです」と始まったので、「妻」だろうと思っていたら、なんと「ろくろ首」!うれしい~。はん治師匠の「ろくろ首」とっても久しぶり。ほんとにねぇ…もっと古典をやればいいのに、と思うのですよ。面白いんだから。
おじさんになかなか言いたいことを言えない与太郎。「はっきり言ってみろ」と言われても「おもにょにょ…がほしい」。「なんだ?息がもるじゃねぇか。はっきり言え」「じゃあいうけど…およめさんがほしいーーーーーおよめさんがーーー」。
切羽詰まった叫びに大笑い。

婚礼の晩になかなか寝付けない与太郎が、お嫁さんのことをうっとり見ていると、首がのびていくところ…黙って目線が動くだけなのに、とってもこわい。そう、結構こわいんだ、はん治師匠の「ろくろ首」。
とても楽しかった。この噺、大好きなんだよね。


小三治師匠「転宅」
青山高校に行っていたので、このあたりにはなじみがあるという小三治師匠。
高校生の時、屋上に上がってお昼を食べていると、神宮球場のスコアボードが見えた。ちょうど早慶戦をやっていて慶応のピッチャーがその後巨人の監督になった藤田。早稲田の方が…こんな話をしても今日のお客さんはみなお若いからわからないでしょうね。

…いやいや、藤田監督はすごく好きだったので、選手時代は知らないけど知ってます!
思わず身を乗り出してしまう。

それから話はどんどん脱線していき、自分の父親は校長で天皇を「神様」と言い切るような人間で、毎朝庭から皇居に向かって手を合わせていて、自分も付き合わされたこともある、と。一応父親に合わせて手を合わせたもののどうしても気になることがあって父親に向かってある時聞いてみた。
「ねぇ、天皇って神様なんだよね?」
「そうだ」
「だったら、神様はうんこするの?」
自分としてはどうしても気になるポイントだったのだが、父親は答えてくれず頭をポカリと叩かれた。
最近になって天皇にお会いする機会があったけれど私は大人なのであえて聞いたりはしませんでした。「あの…うんこはしますか」なんてね。

人間国宝になってそんなこと聞いたらほんとに驚くわー。
でもまだそんなことをもちろん冗談だろうけど言ってる師匠がかわいい~。

で、「あれ?なんでこんな話になったんだろう?」と言いながら、そういえば赤坂見附の方には池がありましたけど今もありますか?
あそこの池で私はボートを練習してボートがげるようになりました。あと、魚釣りもね。あそこにはせこい魚しかいないんですけど、でもあそこで釣りも覚えました。
あ、そういえば急に思い出しました。おふくろがそれに付きあってくれたことがありました。着物を着てね、一緒にボートに乗って。私は釣りをしたいんでおふくろだけ岸でおろそうとしたんですけどね。ボートを岸につけたらロープで固定しないといけないんですけどそれを知らなくてね。適当な場所につけておふくろだけおろそうとしたら、ボートがふわっと岸から離れだしましてね。おふくろはかわいそうに…池にぼちゃん。着物のまま落ちちゃいまして。
濡れたまま…電車に乗って帰ったんですね。今思えばかわいそうなことをしました。

「で、あれ?なんでまたこんな話をしたんだろう。あ、そうそう。ここのホール。その高校時代に、文化祭でこのホールを使ったんですよ。1年生の時のクラスで演劇をやってそれが『湖の娘』っていう劇で…私は父親役だったんですが、湖のそばに住んでいてそこに復員兵がやってきて二人で酒を飲みながら話すんですが…実はその父親には戦死した息子がいて、その復員兵がその息子の事を知っていて二人で話す…まだ戦争が終わって1年ぐらいしかたってないときでしたから、そのシーンでお客さんがみんな泣きだしてね…あれは忘れられない思い出ですね…。思えばあの時私は役者になりたかったのかもしれない」

とりとめもなく話をしていたけれど、でも本当に戦争は嫌だ、戦争なんかしちゃいけないんだ、という師匠の気持ちが伝わってきて、胸を打たれた。
私は小三治師匠がそういうことをはっきりと言うところが本当に好きだし尊敬できるし同じ気持ちでいることにほっとする。

まくらが長すぎたんだろう。
途中で幕の後ろから何かコツコツ叩いている音が。これはきっと「もう時間が」という合図だったんだろうけど、師匠は気づかず。でもさすがにまずいと思ったのか「転宅」。
この日はすごく席が良かったので表情がつぶさに見られて、どろぼうが鼻の下を伸ばすところがもうかわいくておかしくて…。
やっぱり小三治師匠ってすごく表情が豊かなんだなぁ、と改めて思ったのだった。


小三治師匠「小言念仏」
出てくるなり「みなさんもお気づきかと思いますが…時間がありません。なぜかといえば私が…長く話しすぎたせいで…合図をしてたらしいんですけど全然気づかなかった…。本当にすみません。…ぶわはははは!」

その後も少しだけ話をしてそれから「小言念仏」。おお、ちゃんと二席やるのね(笑)。
隣のおばあさんたちは師匠の「小言念仏」が見たいと言っていたから大喜びだった。
私もこんな近くで「ばぁ~」が見られてうれしかった!

語り手の事情

 

語り手の事情 (文春文庫)

語り手の事情 (文春文庫)

 

 ★★★★

ヴィクトリア朝の英国。性妄想を抱いた男性だけが招かれる謎の館で繰り広げられる奇っ怪な物語の行方は?鬼才が本領を発揮した異色作 

 長年の積ん読本なのだが、こんな内容だったのか!満員電車で読むのはかなり勇気が必要。読んだけど。

エロのようでエロでなく、哲学的なようで結構おバカで、マニアックなようでわりと普通という、なかなか感想が書きにくい小説。

後宮小説」がとにかく大好きなのでそれに比べると劣るけど(私にとったら)、でもユニークな小説を書くひとだなぁという印象。
語り手が変わって急にギャル語?になるのはいかがなものかと思いながらも、面白かった。

私たちが姉妹だったころ

 

私たちが姉妹だったころ

私たちが姉妹だったころ

 

 ★★★★★

幼い日の自分のひと言が家族をばらばらにしたのか。この記憶はどこまで本物なのか。心理学者の一家が直面する、愛と崩壊と再生の物語。

「あたしファーンがこわいの」幼い日の自分のひと言が、家族をばらばらにしたのだろうか――。
ローズマリーはカリフォルニア大学で学ぶ22歳。無口で他人とうまく付き合うことができない。かつては心理学者の父と主婦の母、兄と、双子にあたる姉ファーンのいる、おしゃべりな子だった。だが5歳の時に突然祖父母の家へ預けられ、帰ってみると姉の姿が消えていた。母親は部屋へ閉じこもり、父は酒に溺れる。大好きだった兄も問題児になり、高校生の時に失踪してしまう。ローズマリーがこの大学を選んだのは兄の手がかりを捜すためだった。
アメリカでは1930年代から60年代にかけて、動物を一般家庭に持ち込んだある衝撃的な研究が現実に行なわれ、一家もその被験者だった。この作品は特殊な状況を背景として、家族を失った一家が、家族愛とは何なのかを問い、絆を取り戻そうとする姿を描く。動物と人間、人間の記憶の不可思議さ、きょうだいの愛憎、親子関係の難しさ、友人関係の悩みやいじめ問題など、さまざまなテーマが、幾重にも伏線を張りめぐらして精緻に織り込まれた、愛の物語である。 

 なんの前知識もなく読み始めたのだが、これはほんとにそういう真っ白な状態で読むべき本。
内容的には驚きの連続なのだけどそれが決して奇をてらっていないというか腑に落ちるところがあって、不思議と静かな印象を残している。

結局のところこれは家族の物語で一人の女性の成長の物語と私には思えた。だからこそ、この突飛と思える状況であっても主人公ローズマリーの気持ちはよく理解できたし寄り添うこともできた。

「真ん中から話してみよう」という言葉が何度か出てくるのだが、この小説はまさにその「真ん中から話す」構成になっていて、それがとても効いていて、この物語に静と動を与えているように感じた。

とてもよかった。読んでよかった。久々のクリーンヒット。

赤坂倶楽部 第二回小はぜの一本釣り

4/11(火)、赤坂会館で行われた「赤坂倶楽部 第二回小はぜの一本釣り」に行ってきた。

・小はぜ「一目上がり」
・小はぜ「猫の皿」
~仲入り~
・小はぜ「野ざらし」
 
小はぜさん「一目上がり」
出てくるなり「こんな足元の悪い中お運びいただいて…そして今日もやっぱり雨でしたね」と 小はぜさん。
前回、自分は雨男で「ここぞ」という時はいつも雨、と言っていた小はぜさん。
確かにこのところ雨なんてずーーっと降ってなかったのにこの日は朝から雨で寒くて「あー確かに小はぜさんの言ってた通りだー」と思いながら来たのだった。
「でも物は考えようですから。例えば新しくレインコートを買って、この日におろすとかすると…こんな雨の日もそれほど憂鬱にはならないかもしれません」。

また、今、小八師匠の真打披露目の番頭をやっている小はぜさん。
本当は番頭というのは年季が真ん中ぐらいの人がやるもので、というのはそれぐらいのキャリアがあれば打ち上げはどこのお店がいいとか、楽屋に用意するお菓子も師匠方の好き嫌いを把握していたりして、何かと経験値がある。
でも自分はほんとに二ツ目になったばかり。そういう人間はふつうは番頭には指名されない。
とはいえ一門で上のニツ目というとこみちさんで、もう秋に真打になることが決まっているしお子さんも二人いらっしゃる。
なので自分と小かじさんの二人で番頭をやっていて、足りない分は二人で補い合ってやっている、と。

やはり真打のお披露目っていうのは二ツ目に上がるときとは全然違っていて、自分は番頭をやりながら「ああ、真打っていいなぁー」「後ろ幕は二つほしいなぁ」なんて、もうお客さんの目線で見てわくわくしている。
特にうちの師匠は喜多八師匠とは入門した時期もほとんど一緒で本当に仲がよくて、だから喜多八師匠には会に呼んでいただいたりととてもよくしていただいた。
小八兄さんは一番お世話になっている兄さんなので、その兄さんが真打昇進なのかーとなんか感慨深くもあります。

…研精会の「提灯屋」の時のまくらで、紋について小はぜさんが語っていたときにも感じたけれど、かわいいなぁ、ほんとに。
もうなんていうか感じ方が素直っていうか素朴っていうか、かわいいとしか言いようがないよ!
こういうかわいらしさっていうのは年齢とかじゃないし、取り繕っても出てくるものじゃないんだよね。
このかわいさが損なわれずにいてほしい…と思ってしまう私は完全にハハな気持ち、なのかもしれない。

「一目上がり」はご隠居と八つぁん(?)の会話で始まる噺だけど、前座時代「道灌」をずっとやり続けていただけのことはあって、小はぜさんのご隠居と八つぁんはとても仲がいい。このふたりの会話が心地いいともうずーーっとこの世界に浸っていたくなる。
あとからほんとはこの噺は第一回目の会にしたかったと言っていた小はぜさん。そういう噺への愛着が伝わってくる「一目あがり」だった。よかった。


小はぜさん「猫の皿」
実は自分が初めて聞いた落語がこの「猫の皿」で一番好きな噺もこれ、と言う小はぜさん。
私もこの噺、大好き。「仕事」に対した時のこう…ちょっとずるく振る舞うところと、それを受け流す力の抜け方とか、山の茶店に入ってほっとした時の風とか山の景色とか…そういうのが感じられて、でも基本的にはすごくばかばかしくて…落語の魅力がたっぷりつまっている。でもそれだけに難しい噺なんだろうなとも思う。

小はぜさんの「猫の皿」、茶店で足を休めてほっとした道具屋さんがあれやこれやと語るのがとてもいいんだけど、ちょっと冗長に思えてしまうのは、おそらくまだこの噺を練り切れていないからなのだろうな。
でも何も言いたいことややりたいことがなくてそれなりに器用に上手にこなすより、こんなふうにやりたいことや伝えたいことがたくさんあってでも技術が追い付いてないっていうほうが、見どころがあるっていうかこれから先がとっても楽しみに思えるからいいよね。ってなんなんだあたしは。なにさまかよ。でもそういう楽しみ方もできるからながく楽しめるんだよな、落語て。
大好きな「猫の皿」を小はぜさんがこれからどんなふうに進化させていくのか、とても楽しみ。

小はぜさん「野ざらし」
さきほどの「猫の皿」は小満ん師匠に教わりました、と小はぜさん。実ははん治師匠に「お前、二ツ目になってどんな噺をやりたいんだ?」と聞かれて答えて「生意気だな」と言われたのがこの噺でして…。それでも一番好きな噺なので大好きな小満ん師匠に教わりに行ったんです。
その時に小満ん師匠から言われた言葉。すごく素敵でもうそれを聞かせてもらえるだけで行った甲斐があったなぁって思う。
私はただのファンでたんなるミーハーなんだけど、でも小満ん師匠の素敵なところとか、それを私の好きな師匠や二ツ目さんたちが憧れて教わって力にしているところを見てその素敵さを感じられるっていうの…すごく幸せだなぁって思う。だからこうやって夢中になって見ているんだと思う。

そんなまくらから教わったばかりだという「野ざらし」を。

これがもうほんとにびっくりするくらい素晴らしくて。
私は小三治ファンなので「野ざらし」といえば小三治師匠で、他の誰のを見ても全然満足できないんだけど、小はぜさんのこの日の「野ざらし」はそれに引けを取らないほどの…本当に楽しくて素敵な「野ざらし」だった。
なんていうのか、先生を訪ねてきた女の幽霊を本気でうらやましがる八つぁんの陽気さがぐわーーっとにじみでていて、もう見ていて楽しくて楽しくて。
自分は陰気だと言う小はぜさんにこんな陽気さがあったのかというような…ほんとに楽しい「野ざらし」だった。なのに本人に全然「どうや」「やってやったぜ」感がないところがいいなぁ。

 

さん助 燕弥 ふたり會

 4/10(月)、お江戸日本橋亭で行われた「さん助 燕弥 ふたり會 」に行ってきた。
 
・燕弥「狸札」
・燕弥「長屋の花見
・さん助「質屋庫」
 ~仲入り~
・さん助「浮世床(将棋、煙管)」
・燕弥「蒟蒻問答」
 
燕弥師匠「狸札」
いつもは前座さんが上がるのに燕弥師匠が上がったので驚いていると「実は前座さんを頼むの忘れちゃいまして。ですので今日は私が前座を務めさせていただきます。着流しで一席やって引っ込んで今度は羽織着て出てきます」。
 
わははは。
燕弥師匠ってすごくソツがなさそうで、でもたまにおっちょこちょいなところがかわいい。
しくじりといえばさん助師匠だろうっていう気もするけど、前も燕弥師匠が開場時間を間違えて来なくて、さん助師匠が心配そう~な顔で一人で受付に立っていたこともあったっけ。
 
前座さんらしく「狸札」をさらりと。
「いいよいいよ恩返しなんて」と言う気のいい男が燕弥師匠と重なって見える。
 
燕弥師匠「長屋の花見
やはり春はこの噺をよく聞くなぁ。
幹事の印にビールの栓を使おうとしたりするの…誰かで聞いたことがあったけど誰だったっけ。小満ん師匠?
むしろを幹事二人が担ぎながら骨上げの話をするところ、大好き。
ヤケクソの酔っぱらい方が弾けていてとても楽しそうだった。
 
さん助師匠「質屋庫」
前半がなんかすごく楽しくて「これから面白くなるぞ~」と期待させておいて、後半なんか急に陰気になってしまったのはなんでなんだ?
くまさんが大旦那と喋るシーンがやけに長く感じたなぁ。あそこがもっとコンパクトになったらもっと楽しい気がする。
ってなんかえらそうだな、おい。すすすびばせん。
 
さん助師匠「浮世床(将棋、煙管)」
仲入りで気持ちを切り替えたのか?すごく弾けてて楽しい「浮世床」だった。
さん助師匠が高座にあがって思っているより高めの声で落語を話しはじめると「ああ、好きだなぁ!」と思う。なんなんだろうこれはいったい。なんかこの暗さと明るさ…とくにこの言葉では表現できない明るさがたまらなく好きで期待で胸がいっぱいになる。期待を裏切られることも少なくはな…もにょもにょ…。

浮世床」の「将棋」もいつも聞く将棋と違っていて、ヘボな二人がシャレ尽くしで打ったり、それを見ていて面白がる若い衆が二人の煙管に細工をしたり…こんなの初めて聞いた。誰に教わったんだろう…あるいはまた速記本とかを読んで見つけてきたのか?
煙管のいたずらが小学生男子並みに本当にくだらなくてばかばかしくて最高。やってるさん助師匠がほんとに楽しそうで見ている側も幸せな気持ちになる。
やっぱりさん助師匠は明るくなくちゃ。ぴかーっと。
 
燕弥師匠「蒟蒻問答」
なんとなくこの噺っていい男がやるよりそうじゃない男がやったほうが合ってるような気がしないでもない。ってどちらに対しても失礼か、それじゃ。わはは。
燕弥師匠だとかっこよすぎて、蒟蒻屋の親分がイカした親分に見えて、怪しさがあんまりない。
でも燕弥師匠がすごーく楽しそうで見ていて楽しかった。

私、こういうばかばかしい噺がほんとに好き。

柳家小はぜ勉強会 其の一 ~勉強会ですが、負けませんっ!~

4/8(土)、和光大学ポプリホール鶴川で行われた「柳家小はぜ勉強会 其の一 ~勉強会ですが、負けませんっ!~」に行ってきた。

 

・小はぜ「浮世根問」
・小はぜ「巌流島」
~仲入り~
・小はぜ「提灯屋」


小はぜさん「浮世根問」
地元でこんな素敵な会を開いていただいて鶴川落語会さんには感謝しかありません、と小はぜさん。
今日も出てくるとき、客席に鶴川落語会の方とホールの方しかいなかったらどうしようかと…そこで落語やるとオーディションみたいになっちゃうなぁと心配していたんですけど、こんなに大勢のお客様に来ていただいて…ほんとにありがたいです。
座布団だけで十分だったんですけどこんなふうに…後ろに金屏風まで置いていただいて、こうして私が前に座ると私…鏡餅みたいじゃないですか?

またこの会では3席申し上げるんですがそのうち1席はネタ卸しをすることにしております。
ネタ卸しの緊張感がたまらないという先輩もいらっしゃいますけど私の場合はどちらかというと…ちゃんとやれるかしらという心配な気持ちの方が勝ってしまうので、苦手な方でして。
それを3席やる中でいつやろうかと…一席目にやろうと思います。
私どちらかというと、お弁当なんかでも好きなおかずは最後まで残しておくタイプでして。
最初に梅干しとか野菜とかを食べて、最後に唐揚げとトンカツを残しておいて、一番最後にトンカツを食べてみたら…トンカツじゃなくてよくわからない魚のフライだった、なんてこともあるんですが。

うーん。小はぜさん、かわいい~。
若手研精会でトリをとった時よりはずいぶんまくらにも慣れてきた感じがあるけれど、でもなんていうか初々しくて、だけどまじめでちょっとお茶目な人柄がにじみでていて、これはもう応援したくなるじゃないですか!微笑ましいなぁ。
そんなまくらから昨日あがったばかりという「浮世根問」。

ご隠居のところに遊びに来た八つぁん(?)が、ご隠居を質問攻めにするというだけの噺だけど、なんか今まで聞いたことのない問いと答えがたくさんあって面白い~。時々現代的なクスグリも入って…誰に教わったんだろう?って気になってしまう。

なんでもこたえられるからなんでも聞きなさいと言っていたご隠居。
「松竹梅はなんでめでたいんですか?」という問いに「都々逸でもこういうのがあるな」と答えていくんだけど、それを聞いた八つぁんが「また都々逸ですか。隠居のこたえは都々逸尽くしですね」と言うのがおかしい。

鶴と亀はどうしてめでたいかから始まって、鶴と亀は死んだらどこに行くのかというのを八がどこまでもどこまでもしつこく聞いて、その答えがサゲになるんだけど、なんかばかばかしくてちょっと昭和?っぽくて新鮮!

話し終わったあとに小はぜさんが、自分はこのサゲが大好きで、あと隠居と八の関係性が好きと言っていて、ああ、わかるなぁ…!と。
私もこの二人の会話がすごく楽しくて、もうずっとやってて!と思ったのだった。


小はぜさん「巌流島」
小はぜさんの「巌流島」はこの間連雀亭で聞いたことがあったんだけど、いいなぁ。
若侍、ちょっと年をとった侍、くず屋さん、船頭、若い衆とキャラクターがくっきり分かれているから、人物が生き生きしていて絵が浮かんでくる。
特に私が好きなのは船頭。若侍にキセルが落ちたと言われたときは、わざとのんびりとした受け答えをしていて、岸に若侍を置き去りにすると分かった時には威勢よく返事をする、この対比がとてもおかしくて面白い。

明るくてわかりやすく楽しい。二席目にこれっていうのはよかったのでは。


小はぜさん「提灯屋」
「提灯屋」は研精会のトリのときに見たネタだけれど、あの時よりもぐっと面白くなっていた。
面白いなぁ。どこがどう違ってたかっていうの、私はただ楽しく見ているだけだからわからないんだけど、繰り返しが多い噺だからそこのを少し刈り込んだりテンポをあげたりすると、印象が全然違うのかもしれない。

ご隠居を呼んで広告を読んでもらったときにご隠居が印刷の事についてまったく同じことを言うのを聞いて、兄貴分が「次にまわしますか」というのがおかしいなぁ。

楽しかった~。
次回は6月10日(土)とのこと。行きたい!

煽動者

 

煽動者

煽動者

 

 ★★★★

“人間嘘発見器”キャサリン・ダンス捜査官が「無実だ」と太鼓判を押した男が、実は麻薬組織の殺し屋だとする情報が入った。殺し屋を取り逃がしたとして、ダンスは麻薬組織合同捜査班から外され、民間のトラブルを担当する民事部に異動させられた。そこは拳銃の携帯も許されない窓際―彼女に割り当てられたのは満員のコンサート会場で観客がパニックを起こして将棋倒しとなり、多数の死傷者が出た一件だった。だが現場には不可解なことが多すぎた。観客は会場の外で焚かれた炎の煙で火事だと誤解し、殺到した非常口はトラックに塞がれていたのだ。この惨事は仕組まれたものではないか?人々を煽動し、死へと走らせる何者かがいる。独自の捜査を開始したダンスだったが、犯人はまたもや死の煽動工作を実行した!卑劣きわまりない愉快犯。そして麻薬組織の殺し屋をめぐる捜査。尋問の天才キャサリン・ダンスを二つの難題が追いつめる。二度読み必至、読者に背負い投げを食わせる好評シリーズ第四弾!  

読メを見るとわりと辛口の感想が多いようだけど私は面白く読んだ。
キャサリン・ダンスものはあんまり期待しないで読むせいなのかもしれないが。

パニックを利用した殺人者って…すごくリアルで怖い。
確かに集団になると人間性が失われるということはあって、狭い場所に閉じ込められたり出入り口が1つしかないところで「火事」になったりしたとき、我先にと殺到して、それまでフツウだった人たち(自分も含めて)が、暴徒と化してしまうというのは想像できる。
「煽動者」というタイトル、うまいなぁ!と思う。

警察側の視点と犯人側の視点が語られるいつものスタイルだけど、お互いに「出し抜かれる」時のスリルは相変わらず楽しい。

キネシスクというもの自体に、ほんとに?そんな当てにできるもんじゃないんじゃね?という印象があるだけに、最初の展開には「あーやっぱり!そういうこともあるよね」となる。それが最後まで読むと「そうきたか!ディーヴァーめっ!」となる、この楽しさ。

やーやっぱり楽しいなぁ、ディーヴァー作品は。この徹底したサービス精神。ブラボーとしかいいようがない。楽しかった。