池袋演芸場3月上席昼の部
3/4(土)、池袋演芸場3月上席昼の部に行って来た。
久しぶりの更新!
落語にしばらく行っていなかったんだけど、お友だちに誘ってもらって鈴本演芸場2月下席・さん助師匠トリを見に行って、それから百栄師匠のネタおろしプレの会に行き、勢いがついて池袋演芸場へ。
このブログもどんなふうに書いていたか忘れてしまっているけど、せっかくなので書いておこう。
・はち水鯉「平林」
・吉好「熊の皮」
・タクト 指揮者形態模写
・美よし「初天神」
・小夢「時そば」
・コントD51 コント
・遊馬「転宅」
・談幸「片棒」
~仲入り~
・ポロン マジック
・米福「稽古屋」
・蝠丸「一眼国」まくら
・喜之輔 紙切り
・夢太朗「らくだ」
コントD51 コント
しばらく落語に行ってない間、めちゃくちゃ見たくなったのがコントD51。
寄席に足繫く通っていた時でもコントD51を目当てに行ったことはなかったんだけど、今回のお目当てはコントD51。
元気かなぁ。前と同じようにやってるかなぁ。
あのおばあさん役の人、「わしゃ85歳」って言ってたからもうかなりよぼよぼになっちゃってるかなぁ。
そんな心配をしながら見て来たんだけど、全然変わってない!元気元気!中腰になっててけてんてんてんてん!って横にずっていくキレも変わらない!
いやでもそこまでの年には見えないよなぁって今wiki見たら、まだ71歳!んもう!嘘しか言わないんだからっ!好き!
談幸師匠「片棒」
代演が談幸師匠っておれ得すぎる!ラッキー。
ふわっとしたまくらで思わず吹き出し、ケチな主人が番頭さんに3兄弟のうち誰が店を継ぐのにふさわしいかという始まりで「やった!片棒だ!」。
まだ演目、覚えてるものですねぇ。よかったー。
大好きなこの噺を談幸師匠で聞ける幸せ。
贅の限りを尽くしたお葬式を意気揚々と語る長男と、それは葬式じゃなくて祭り!なお葬式を語る次男。
おとうさんの人形のカクカクした動きもおかしいし、太鼓や笛の音色が達者なのもおかしい。ちゃんと最後の三男までやってくれたのも嬉しかった。
米福師匠「稽古屋」
すごく楽しかった。やっぱり好きだな、米福師匠。なんとなくとほほな雰囲気を醸し出しつつ、でも音曲入りでタイミングもぴったりで気持ちいい。
蝠丸師匠「一眼国」まくら
わーん、蝠丸師匠、会いたかったよー。って自分が行かなかっただけじゃないかと自分で自分にツッコみつつ、いやでもお懐かしい。お元気そうでほんと良かった。
3月は始まりの季節ということで、3月に二ツ目に昇進する人の話から、今は女性の噺家も増えて…私のところにも女性の弟子が入らないかと今か今かと待っていてもう名前も用意しているんですけど、なぜか私の所には汚らしい男の弟子しか入って来ない、なんていう話から、自分が前座時代に浅草の夜席に行く前に見世物小屋に呼びこみについ付いて行ってしまい、蛇女をたった一人で見た時の話…。
「私は高校を卒業するまで青森を出たことがない純朴な青年で、東京に行くときは村の人たちから”東京は怖いところ”、”だまされて見世物小屋に売られることがある”とさんざん言われてきたので、見世物小屋に入ってしまった時はほんとに恐怖で震えあがりました」の言葉に笑う。
さんざんまくらでもりあがって「本来ですとここから一眼国に入るんですがもうお時間です」。…ええええ?となりつつ、でもまくらで師匠の前座時代の話をたっぷり聞けて嬉しかったなー、と。
夢太朗師匠「らくだ」
トリの夢太朗師匠を見るのは初めてなんだけど、師匠のお酒好きが伝わってくるような楽しい「らくだ」。
さんざん脅されていた屑屋さんが2杯目の酒を飲み終わる頃にはもっと飲みたくて催促して、3杯目を飲み始めたらどんどん怖いものがなくなってきて、アニキ分がたじたじなる…形勢逆転が気持ちいい。楽しかったー。
柳家さん花 真打昇進披露興行
9/25(土)、鈴本演芸場で行われた 「柳家さん花 真打昇進披露興行」に行ってきた。
・小きち「小野小町」
・わん丈「孝行糖」
・翁家社中 太神楽
・さん喬「初天神」
・馬風 漫談
・ニックス 漫才
・正蔵「一眼国」
・市馬「狸賽」
・小猫 ものまね
・一之輔「つる」
~仲入り~
・口上(菊之丞:司会、正蔵、さん花、さん喬、馬風、市馬)
・ロケット団 漫才
・菊之丞「長短」
・権太楼「町内の若い衆」
・小菊 粋歌
・さん花「井戸の茶碗」
わん丈さん「孝行糖」
さん花兄さんは優しくて誰もが大好きな兄さんです、とわん丈さん。
それにさん喬師匠にはすごくお世話になってます。古典はさん喬師匠にお稽古をお願いすることが多いので。
この間もうちの師匠に「さん喬師匠に教わりに行きました」と話したら「お前もか…兄弟子たちもみんなさん喬さんのところに教わりに行って…迷惑じゃねぇか。いい加減にしろ」。
そう言ったあとに師匠が「でもさん喬さんのところのお弟子さんはおれに教わりに来ねぇんだよなぁ」。
…ぶわはははははは!!ちゃんとオチがあるんだ!おかしすぎる!!
そして家で稽古をしていると4歳になる娘がすぐに覚えて真似してしまう。
最近稽古してる「孝行糖」も保育園で披露しているらしく、父親が落語家をやってると知られたくない妻は「せめて(有名な)寿限無にして…」。
そんなまくらから「孝行糖」。
まくらも落語も相変わらずソツがないね。ひゅーひゅー。
テンポが良くて時々独自のくすぐりも入っていて、とても面白かった。
一之輔師匠「つる」
「つる」という噺をほんとに一度も面白いと思ったことがないんだけど白酒師匠の「つる」と権太楼師匠の「つる」には思わずぶわはは!と笑ったことがあって。
一之輔師匠がやると「つる」もこんなに面白いのか。はぁぁぁーーってなった。
テンポが良くてふにゃっとしたところとぐわっといくところの緩急があるから、聞いていて全然だれない。
噺自体を大きく変えているわけじゃないのに言い回しや反応に独自のところがあって、楽しかったー。
口上(菊之丞師匠:司会、正蔵師匠、さん花師匠、さん喬師匠、馬風師匠、市馬師匠)
今回は言い間違えたりそういうこともなくつつがなく…。
馬風師匠が巨人軍の話をしている時のほかの師匠方の表情がなんか面白かった。菊之丞師匠と正蔵師匠が目配せしたり、市馬師匠が笑うでもなく耐えるでもなく微妙な表情をしていたり…。
今回も馬風師匠のどつきで吹き飛ぶさん喬師匠とさん花師匠。
客席にお尻を向けたさん喬師匠が菊之丞師匠に促されて前を向くとマスクをつけていて笑った(芸が細かい!)。
ロケット団 漫才
前回もそうだけど、ワクチンのネタがめちゃくちゃおかしい。
笑ってはいられない出来事をこんな風にブラックな笑いにしてしまうの本当に好きだし元気をもらえる。
書かない方がいいようなネタも多かったけど笑、
「自治体によってスピードややり方も様々でね」
「練馬区はなんでしたっけ。行きつけの病院で優先的に打てるっていうね」
「行きつけの店みたいに言うなよ。かかりつけ医だろ」
に笑った。わかるー。私もつい言っちゃうもん「行きつけの病院」。
さん花師匠「井戸の茶碗」
おお、「真打昇進を祝う会」の時と同じ「井戸の茶碗」。
あの時は時間が押しててわやわやっとした印象だったけど、今回は落ち着いた感じで。
身体も声も大きくて貫禄があるから、お侍さんがとてもお侍さんらしい。お殿様もとってつけたような感じがしないのはすごい。
清兵衛さんは心の声がダダ洩れで「え?きもちわるっ」とか「お嬢様が小判から目を離しません」とか「出たーー」とか言っちゃう。
でもお侍さんに威厳があるからそれはそれでなんというか…庶民で正直で今までお侍さんと接した経験がないとこうなってしまうんだなきっと、という妙な説得力が。
くず屋を探して顔を改める時に、顔を上げたくず屋が妙にいい男っぽく気取ってて「おおっ、いい男だなっ」と言われるところ「このくすぐりやるの毎回恥ずかしい…」とさん花師匠がつぶやいたのがおかしかった。
楽しかった~。
柳家さん花 真打昇進披露興行
9/22(水)、鈴本演芸場で行われた「柳家さん花 真打昇進披露興行」に行ってきた。
月に20回ぐらい落語に通っていた時は当たり前すぎてなんとも思
「時そば」なんてほんとに聞き飽きた噺だけど、
一之輔師匠「加賀の千代」
お千代さんの頭の回転の良さ&ちゃっかりさと、
「あのご隠居はお前さんのこと気に入ってるよ」の言葉通り、
最初から最後までテンポが良くて軽くて明るくてすごく楽しかった
そんな菊之丞師匠を隣に座った正蔵師匠がまじまじと見つめている
「今日真打になるあの男は小太郎と二人…でこぼこコンビでね…
なんかしんみりといい話だったな…。じーんとした。
またまた~!という笑いが起きると「いやあの…
酔っぱらいのろれつの回らなさが尋常じゃなくてもうそれだけでお
…わはははは。さすがです。
楽屋半帖+
9/19(日)、須賀神社社務所で行われた「楽屋半帖+」に行って来た。
・さん助「井戸の茶碗」
・さん助「元犬」
日曜日の午前中はなかなかハードルが高い(出かけづらい…)のだが、以前さん助マニア(笑)のお友だちから「さん助さんの”元犬”、めっちゃ面白かった」と聞いていたので、これは聞かねば!と思い、重い足を引きずりつつ(比喩ではなく最近股関節が痛い…)行ってきた。
さん助師匠「井戸の茶碗」
え?普通に考えたら「元犬」が先なのでは?と思いつつ…。
さん助師匠の「井戸の茶碗」は初めて!と思ったけど、このブログを検索したら一度聞いたことがあったのだった。
私のような記憶薄い人間にブログや日記はほんとに役に立つのう…しょぼしょぼ。
意外にも(!)ちゃんとした「井戸の茶碗」で、くず屋の清兵衛さんの正直さとお侍さんの正直さの違いがくっきり。
清兵衛さんは正直だけど、くず屋という利の薄い商売で家族を養っていかなければいけないからとても現実的。
一方お侍の二人は武士としての矜持が何よりも大事。
二人のお侍さんの意地の張り合いのために行ったり来たりする清兵衛さんのとほほぶりが楽しかった。
さん助師匠「元犬」
「普通は井戸の茶碗をやったらお開き…なんですが、この後続けてやるっていうのもなんか…」とさん助師匠。
え?だから逆にやればよかったのでは?そういう考えはなし?んん?
「でも平気です。そんなことは」。
あ、平気なんですね…ええ。
「せっかく神社でやる会なのでこの噺を」と「元犬」。
満願の日、人間になったシロは裸のまま特に恥ずかしがることもなく立ち上がってみると、お参りにきたかずさやさんを発見。
かずさやさんがご近所の人に会って話をしていると、向こうの方で裸の男が「かずさやさのおじさーん」と呼んでいることに気づく。
「おや、あの人は…裸ですね…」と困惑していると、シロはいつも自分をかわいがってくれてたかずさやさんを見て喜んで近づいてきて「仕事がしたいです!」と叫びながらじゃれつく。
それを見てそっと離れていく近所の人…。
かずさやさんは困惑しつつも「あなたどうして裸…ああ、悪い奴らに身ぐるみはがされたんですね」と言って家に連れて帰る。
家に帰ると女中は旦那様が裸の男を連れてきたことに驚かない。
なぜなら「さっき近所の人が来て、旦那が若い男と抱擁していると聞かされてましたから」。
…ぶわはははは。なんか面白いぞ。
明らかに「変」なシロを見て、「変わった奉公人」を欲しがっていた隠居のところに連れていく。
あとの展開はそのまま、ではあったけど、シロが犬の時も人間に変わってからも特に変化がないのがおかしい。
なんか人間になってからも…何をしでかすか分からないような…はしゃぎすぎて扱いがめんどくさい犬そのもの?みたいな感じ。
この日のさん助師匠はテンション低めではあったけど、これがもっとのりにのってたらますます面白いんだろうな、と思った「元犬」だった。
小んぶの真打昇進を祝う会
8/26(日)、紀尾井ホールで行われた「
・小平太「あくび指南」
~仲入り~
・喬之助「堪忍袋」
桃月庵白酒独演会
2021/8/21(土)、北とぴあで行われた「桃月庵白酒独演会」に行ってきた。
・あられ 「堀ノ内」
・白酒 「鰻の幇間」
~仲入り~
・こはく 「臆病源兵衛」
・白酒 「百川」
あられさん「堀ノ内」
金坊がおっちょこちょいのおとうさんと湯屋に行くとき、何度も通り過ぎて何度も戻ってようやく入れた時に「おとっつぁん…生きづらそうだね」とつぶやいたの、妙におかしかった。
白酒師匠「 鰻の幇間」
亡くなった園龍師匠の思い出話。
雲助師匠のお供で浅草のかいば屋という知る人ぞ知る飲み屋に行っていた時期があって園龍師匠もその店の常連だったのでその当時はよく会っていた。
「骨違い」という噺を師匠から教わったんですけど、本当に嫌~な噺なのでさすがにここではやらないです、と。(聞きたかった~!!!!)
園龍師匠は園生師匠の弟子ですけど自分の師匠について「幇間の噺が面白い。特に下品な幇間が合ってる」と言ってたので、それを思い出しながら…と幇間のまくらから「 鰻の幇間」。
丘釣りしようと訪ねた家が稲葉さんと若林さんで笑う。
若林さん宅の女中さんが袂の膨らみから「〇〇のようかん!」と言ってきて慌てて逃げだすんだけど、自分でしみじみ袂を見て「これで〇〇とわかるとは…」と感心するのがおかしい。
鰻屋でうなぎの前に出てきたのがザーサイなのにも笑ったけど、いろんなところに「元中華屋」の片鱗が見られるおかしさ。
さえない鰻屋の女中がいかにも気だるくやる気がないのもおかしかった。
白酒師匠「百川」
白酒師匠の百兵衛さんが面白くないはずもなく。
ほんとに見事ななまりっぷりで、これでは聞き間違えるのも無理はないと思わせる。
聞き間違えていちいち気取る八五郎もおかしいんだけど、「ああ、そう言ってたぜ」と気取って同意する友だちもおかしい。
こういう時だから、バカバカしい噺を聞いて、ぐわはははっ!と笑いたいぜという希望を100%かなえてもらえて満足だった。
白酒・甚語楼二人会
8/3(火)、お江戸日本橋亭で行われた「白酒・甚語楼二人会」
白酒師匠「平林」
「
でも自動で洗剤を入れるといってもそこに洗剤を入れるのは人間が
テンポがよくて気持ちいい。
「芸歴20周年を祝う 柳家さん助落語会」みたかのば/「田辺凌鶴の会 あれも凌鶴、これも凌鶴」道楽亭
落語に行かなくなり本も読まなくなり代わりに何をしてたかといえ
・おさん「二階ぞめき」
・さん助「佃祭」
お江戸日本橋亭での燕弥師匠との会、回数を減らしたみたいでとても残念。
7/17(土)
五街道雲助一門会
7/31(土)、鈴本演芸場で行われた「五街道雲助一門会」に行ってきた。
久しぶりに聞く白酒師匠の毒吐きが気持ちいい…。
ああ、そうだ。これだよ、これ。これが楽しいんだ、落語は。
やっぱり生の楽しさ。テレビやラジオでは聞けない話。生の声。
そして酒を飲みながら怖がるしぐさが一つの「型」
お稽古ごとのまくらから「汲みたて」。
歌ってみせたりするのもいちいちかっこよくて、
でもそんな半ちゃんのことを男たちが「片栗粉の袋」
雲助師匠、こういう噺が好きだよねぇ…
美人局のまくらから「駒長」。
さん助師匠の「駒長」
ええ、そうです。そういう噺を今からさせていただきます。
そして「勘当になった若旦那が船宿に…」で大拍手。
こういうの、ほんとに楽しい。
「徳と呼び捨てにして」とか「じゃ披露目をやろう」とか、
楽しかった~。
ぼくは落ち着きがない
★★★★
青春小説の金字塔、島田雅彦『僕は模造人間』(86年)、山田詠美『ぼくは勉強ができない』(93年)。偉大なる二作に(勝手に)つづく、00年代の『ぼくは~』シリーズとも言うべき最新作!「本が好き!」連載中に大江賞を受賞したことで、ストーリーまでが(過激に)変化。だから(僕だけでなく)登場人物までがドキドキしている(つまり落ち着きがない)、かつてみたことのない(面白)不可思議学園小説の誕生。
熱心ではない文化部独特の緩めの空気がリアルに伝わってくる。
「部室」という場所があるからこそ集まるメンバー。特別親しいわけでも会話が弾むわけでもないけれど、学校の教室で居心地の悪さを感じる人たちの避難所。
主人公の望美は、誰もが何かの役を演じてるように感じ、定型文的な会話に感じる安心感と違和感を感じている。
特別輝いたり涙があったりするわけじゃないけれど後から考えればあれが青春だったと思うのだろう。
「本を人に勧めるのは何か違う思う」とか「本は役に立つ!」とか「この世界では時々正しい方じゃなく格好いい方が勝つ」とかぐっとくる一文があった。
家族じまい
★★★★★
札幌近郊の美容院のパートとして働く智代は、子どもたちが独立したいま、夫とふたりで暮らしている。夫にも自分にも老いを感じ始めたある日、妹から母が認知症になったという電話が。横暴な父から離れるため、実家とは長らく距離を置いてきたが、母の様子を見に行くことになり――。別れの手前にある、かすかな光を描く長編小説。
痴呆で子どもに返ってしまった母親、その介護に苦しみながら助けを求めることのできない父親、親にされた仕打ちを忘れることが出来ず距離を置く長女、苦しい生活で張りつめた状態から解き放たれたことでむしろ見たくないものが見えて酒に逃げ込む次女。
しんどいけれど目をそらすことが出来ず一気読み。
物語に救いも答えもなく、自分はどんな老後をむかえどんな風に死んでいくのだろうと考える。
唯一分かるのは最後は一人なのだということと家族をお仕舞いにする選択もあるということだった。
持続可能な魂の利用
★★★★
「どうして親は私に殺しのテクニックを叩き込んでくれなかったのだろう」会社に追いつめられ、無職になった30代の敬子。男社会の闇を味わうも、心は裏腹に男が演出する女性アイドルにはまっていく。新米ママ、同性愛者、会社員、多くの人が魂をすり減らす中、敬子は思いがけずこの国の“地獄”を変える“賭け”に挑むことに―。「おじさん」から自由になる世界へ。
読み始めた時はSFなのかと思いきや、語られるのはまさに今私たちが生きている世界。
「おじさん」が作る「おじさん」だけが、自分たちだけが得をする世界。
「おじさん」というのは中年男性だけではない。若い男もいれば女だって「おじさん」になる。
そして少女の未熟さやかわいらしさを消費する「おじさん」たち。そんな世界に少女や女性たちが…。
政治家が実は日本をたたもうとしていた、というのはリアルすぎて鳥肌。あ、そうだったのか、と思ってしまった。
これは日本版の「キム・ジヨン」だという感想も目にしたが、確かに…。
自分が思い出したくない過去を思い出さずにいられないような作品だった。
さん助ドッポ2020
10/17(土)、深川江戸資料館小ホールで行われた「さん助ドッポ2020」に行ってきた。
2か月ぶりの落語会。
在宅勤務になって通勤がなくなったことと、あつ森(「あつまれどうぶつの森」というゲーム)にはまって森にこもりっきりになって、すっかり出不精になってしまった。
あんなに落語会や寄席に通っていたのが嘘のように家にこもってゲームして、radikoで深夜ラジオ聞いたりyoutubeでゲーム実況見たりの日々。
こちらの会はコロナで延期になっていたのがようやく開催。さすがにこれに行かないわけにはいかないでしょう。
・さん助「十徳」
・おさん「猫と金魚」
・さん助「安兵衛狐」
~仲入り~
・さん助「ねずみ穴」
さん助師匠「十徳」
「下足番のさん助です」という挨拶に笑う。
確かにさん助師匠が扉の所にいて開けて出迎えてくれていた。
扉を開けたままにできるストッパーがあったので、これを挟めばいいのに…と思いつつ私はそのまま入ってしまったんだけど、親切なお客さんがそれを設置してくださったらしい。
「私一人ではできませんでした…下足番も満足にできてないですね…」
江戸っ子は宵越しの銭を持たないというまくらから「十徳」。
宵越しの銭を持たないのとこの噺って結びつかなくない?あれ?ほんとは違う噺をしようと思っていて変えたとか?違うかな。
ご隠居がいかにも人が良くてざっくばらんでいい感じ。
「なんで十徳っていうんです?」と聞かれて「知らない」と答えると「だめですよ。ご隠居がそんなんじゃ。あたしとは出来が違うんですから。何か意味があるでしょう?しぼりだして!」と懇願するのがおかしい。
仕方なく隠居が「こじつけだよ」と言って話すのだけれど、全く理解せずに「それでどういう意味なんです?」と繰り返すのも、指を折って「そういうことか!」と納得した様子を見せても、ほんとは分かっていないのでは?という風にも見えるのがさん助師匠らしい。
最初から最後までばかばかしくて楽しかった。
おさん師匠「猫と金魚」
さん助師匠は自分の2年先輩で前座を2年ほど一緒にやってとてもお世話になってます、とおさん師匠。
お世話になってますって言っても…まぁあの…いろいろごちそうになりました、と。
で、いろんなお店に食べに行ったんだけど、二人とも全然喋らなくてただ黙々と食べるのであっという間に食べ終わってしまう。
食事の後は喫茶店に入ってコーヒー。喫茶店っていうのはゆっくり飲み物を飲みながら話を楽しむ場所だと思うんですけど、ここでもお互い何もしゃべらず。そしてさん助師匠はコーヒーもせっかちにすぐに飲んでしまうので、そのペースに合わせないといけなくて猫舌の自分は結構きつかった。
そんなまくらから「猫と金魚」。
番頭さんのまぬけぶりがわざとらしくなくてなんともいえずおかしい。
「猫にとって屋根なんてもんは庭みたいなもんだ」と言う主人に「お言葉を返すようですが、屋根は猫にとっても屋根です」と大真面目に返すのも、笑ってしまう。
旦那のたとえ話にいちいち引っかかって言い返すのがおかしいんだけど、その中で「たい焼きにはあんこ」と言われて「クリームもあります」はツボにはまって笑った。
テンポがよくてバカバカしくて楽しかった。
さん助師匠「安兵衛狐」
源兵衛がひねくれている自分のことを「いやな性分だな」と言うのが独特。
墓を見ながら酒は案外陽気で楽しそう。
源兵衛に幽霊のおかみさんができたことを知ってうらやましがる安兵衛は確かに「ぐず安」で愚痴っぽい感じ。
安兵衛がお墓に行って狐を捕まえた男に声をかけるあたりからなんか少しテンポが悪くなった感じでなんとなく楽しさが薄まってきたのはなぜだろう。
長屋の連中が怪しがって安兵衛宅を訪ね「お狐様じゃないですか」と言うと、あっという間に狐に戻って出て行ってしまう。
それを聞かされた安兵衛が出会った場所を訪ねて行って再会するんだけど「もどってきてほしい」と言うと首を横に振る狐。安兵衛が諦めて「短い間だったけど楽しい時間だった。ありがとう」と言うのに、ちょっとうるっときてしまった。
さん助師匠「ねずみ穴」
店が焼けて商売の元を貸してもらおうと竹次郎が家を訪ねて行った時の兄がもういかにもそういうことを言いそうっていうか、ああ、やっぱりこの兄はそういう人物だったんだなと感じさせる。
さん助師匠、意外とこういう意地の悪い人物が似合う。
もともとあんまり好きな噺じゃないせいもあるけど、全体的にもっさりした印象。
できれば違う噺が聴きたかったな。
御社のチャラ男
★★★★★
社内でひそかにチャラ男と呼ばれる三芳部長。彼のまわりの人びとが彼を語ることで見えてくる、この世界と私たちの「現実」。すべての働くひとに贈る、新世紀最高“会社員”小説。
タイトルが秀逸。
最初、この男は「チャラ男」ではないだろうと思いながら読んでいた。もっと悪質じゃないか、と。でも読み進めるうちにこの人を「チャラ男」と呼ぶのは、今の日本の社会の生ぬるさであり優しさであり生きる術でもあるのかもしれないと思えてきた。
会社で働く空気を巧みに伝えているし、人は一方から見ただけでは分からないということや、今の日本が「ヤバい方向」に進んでいることや、この後起こるであろう「とんでもないこと」を予言もしているすごい小説。
だけど思わず吹き出してしまうようなユーモアにも満ちている。読みながら何度も「うまいなぁ」と思った。
ここに登場する人たちは、見たくないものに焦点を合わせないようにして自分の陣地を守ろうとしながらも、誰かのことを大事に思ったり心配したりもしている。絶望と希望、両方を感じた。めちゃくちゃ面白かった。