りつこの読書と落語メモ

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活弁への招待 第五回

4/12(金)、日暮里サニーホールで行われた「活弁への招待 第五回」に行ってきた。


無声映画「太郎さんの汽車」(1929年横浜シネマ商会)説明=坂本頼光
無声映画「瘤取り」(1929年横浜シネマ商会)説明=坂本頼光 伴奏=清元延美幸
無声映画「血煙荒神山」(1929年 辻吉朗監督・大河内傳次郎主演)説明=坂本頼光 伴奏=清元延美幸
無声映画「サザザさん 第五話」説明=坂本頼光
~仲入り~
無声映画「鳥辺山心中」(1929年 松竹下加茂撮影所 冬島泰三監督・林長二郎(後の長谷川一夫)主演)説明=坂本頼光 伴奏=清元延美幸

 

無声映画「太郎さんの汽車」(1929年横浜シネマ商会)説明=坂本頼光さん
「電車の乗り方(マナー)」を子供に教えるための教育映画とのこと。
最初と最後が実写で、途中にアニメーションが入る。背景は絵でそこに切り絵を少しずつ動かしてアニメを作ったということだけど、味があっていい!
なによりも頼光さんの活弁が入ることで、古い映画が「いま」のものになるんだなー。
汽車の中の動物のやりたい放題を止める車掌の太郎さんがかわいい。

 

無声映画「瘤取り」(1929年横浜シネマ商会)説明=坂本頼光さん 伴奏=清元延美幸さん
伴奏が三味線というのがこの映画にとても合っている。というかおそらく伴奏が決まってから作品を選んでいるのかもしれない。
おなじみのこぶとり爺さんだが、絵もいいし、三味線が物語にマッチしていて、そこに頼光さんのユーモラスな説明が入るので、とても楽しい。
コブを取られるシーンに結構迫力があった。


無声映画「血煙荒神山」(1929年 辻吉朗監督・大河内傳次郎主演)説明=坂本頼光さん 伴奏=清元延美幸さん
清水次郎長物。
面白いなぁと思ったのは、次郎長と吉良の仁吉の二役を演じている大河内伝次郎。ハンサムで無声映画の時は大人気だったらしいのだが、トーキーになったら、東北弁の訛りが酷くて脇役に追いやられるようになった、とのこと。漫画みたいな話だなぁ。

任侠ものってどうも私にはあまり魅力を感じられなくて、やや目がうつろに…(笑)。

無声映画「サザザさん 第五話」説明=坂本頼光さん
待ってましたの「サザザさん」。いやもうこの第五話…最高…。あかんて(笑)。
頼光さんも「この後素晴らしい作品をやりますので。これ見てあきれて帰らないで…」と言っていたけど、確かに酷い。物置にあったふるーいインスタントラーメンを食べたタラちゃんのおなかが痛くなり下痢…なんてもんじゃなく、そこからおそろしい虫が出てきて…というストーリー。
なんでそんなものを食べさせたんだ?とみんなに責められるマツオさん。タマに「プロポーズに来た時から人間性に疑問を持ってた」って言われて「ええ?そんなにさかのぼるの?」って言ったのがおかしかったー。
めちゃくちゃ面白い。笑った笑った。

 

無声映画「鳥辺山心中」(1929年 松竹下加茂撮影所 冬島泰三監督・林長二郎(後の長谷川一夫)主演)説明=坂本頼光さん 伴奏=清元延美幸さん

原作が岡本綺堂
この映画では三味線だけでなく歌も入り、それがこの救いのない物語に彩を添える。

それにしてもひどい話や…。いじめやないかい。主人公には全く非はないのに、騙されて貶められてそれが原因で母親が自害。それに対して抗議することもできず、怒りに駆られて決闘し張本人を殺すことはできたけれど、自分も女とともに心中って…。えええー。
でも調べたら歌舞伎でやられているのとはストーリーが違っているような。 
最後まで見終わって頼光さんの活弁がどうだったという感想が全くなかったところを見ると完全に映画の世界に引き込まれていたのだと思う。

それにしても長谷川一夫のきれいなこと。びっくりするほど美しかった。

国宝

 

国宝 (上) 青春篇

国宝 (上) 青春篇

 

 

国宝 (下) 花道篇

国宝 (下) 花道篇

 

★★★★★

1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」―侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。

歌舞伎に詳しくないので素直に楽しめた。これが落語だとなまじ好きなだけに些末なところが気になってしまうんだよな…。

国宝になるまで芸を極めてしまうと、見ている景色が変わって異世界へ入ってしまうものなのか…。

喜久雄と俊介という対照的な二人の主人公始め、登場人物が生き生きと魅力的で惹きつけられるし、語り口が朝ドラのナレーションのようで場面展開も鮮やかで、魅力的なドラマを見るように夢中になってその世界に浸れた。

楽しかった~!

ナオユキ三夜 第二夜

4/9(火)、道楽亭で行われた「ナオユキ三夜 第二夜」に行ってきた。

・ナオユキ スタンダップコメディ
・頼光「ジャックと豆の木
・頼光「弥次喜多尊王の巻」
・ナオユキ&頼光 トーク
~仲入り~
・ナオユキ スタンダップコメディ

ナオユキさん スタンダップコメディ
いきなりネタに入る。それもなんだろう、ちょっとシュールなネタ。
夕暮れの街の風景、そこに見える人間模様。
ちょっとわかりにくいのか笑いが少な目でナオユキさんの緊張感が上がっていく感じ?

頼光さん「ジャックと豆の木
トークなしでネタに入ったナオユキさんのことを「シャイだからナオユキさんは笑点に出てことをおっしゃらない」と。
ナオユキさんと頼光さんの接点は繁盛亭らしい。ちょっと意外。
色物の楽屋でベテランの漫才師の先生から「あれに似てるわ、あんた、あれに。ほら。歌手の。ほら。クスリで逮捕された。あれ。」
わからないでいると前座さんが「もしやチャゲアス?」「そう、それや!」
いや似てないし!と思ったけど、先生は「これ舞台で絶対言った方がええわ!」と言われ、えええー?似てなくて楽屋の反応もこんな感じ(シーン…)なのに舞台で言ってもスベるやろ!と思いつつ、でもせっかくの先輩のアドバイス…いやしかし…。
そんな話のあと、今回は原点に戻って…って新作のほうじゃなく、古典をやります。

ということで「ジャックと豆の木」。
こちらは私は三回目。
客席の反応を見て入れるギャグを変えたり、音声が大きかったのをささっと自分で直したり、ものすごい冷静で頭の回転が速いんだなぁ。
同じピン芸だけどある意味ナオユキさんとは対照的。この組み合わせ面白い~。

頼光さん「弥次喜多尊王の巻」。
幕末、子どもたちの歌う俗曲を口ずさんだ弥次さんと喜多さんは、幕吏に捕らえられてしまう。
たまたま通りかかった喜多の妹とその恋人の安田。安田が二人を助けてくれたものの、後からやって来た幕吏たちに加勢され、今度は安田が囚われてしまう。
二人は安田を助けようと屋敷に忍び込むのだが、そこで大泥棒の山嵐に脅されてそちらを先に助けてしまう。
事情を聞いた山嵐はそれなら自分も一緒に助けに行こうということになり…。

かなり古いフィルムで(それをDVDに焼いている?)画像が震えがひどいシーンは目が回りそうになる。
でもそんな古い作品なのにちゃんとばかばかしく面白いというのに驚く。
また頼光さんが絶妙なツッコミを入れるからそれがおかしくてその世界にストンと入れる。
面白いなー。活弁
活弁士は現在10名。そのうち活動している弁士は5名。絶滅危惧種じゃありません。もう危惧されてませんから。絶滅種です」と。でも面白いし映画も公開になるしこれからどんどん人気が出そうな予感。

ナオユキさん&頼光さん トーク
トーク苦手そうな二人だけど、頼光さんの方が断然仕切りが上手(笑)。
なぜ活弁をやろうと思ったのかという質問に、小学校の時の担任の先生が小学1年生に文学作品や黒澤映画を見せてしまうような先生で、そこから自分も映画好きになったという頼光さん。
中学校で無声映画活弁に出会い、そこから…というのだから、すごい。
聞けば聞くほど凝り性でどんどん深いところまでのめり込んでいくタイプというのが伝わってくる。
グズグズになってきたナオユキさんをなだめる頼光さんが面白かった。

ナオユキさん スタンダップコメディ(寄席風景)
「さっきはなんの話もせんといきなりネタに入ってみたんだけど、思ってるより重いんだもん。まいったわー」とナオユキさん。
今度は飲みながらゆるりと。

頼光さんが話してくれたから、と笑点に出た時の話。
思いのほか自分の親だとか高校の友だちだとか地方でお世話になってるお店の人とか…いろんな人が喜んでくれて、それはよかったなぁ、と思っている、と。
笑点ってすごい番組で会場がちゃんと「寄席」の空気になってる。だからとてもやりやすかったし不思議と緊張しなかった。
それよりもこちらで寄席に初めて出させてもらえるようになった時の方が緊張した。
いろんな決まりやしきたりがあってそれが自分はよくわからない。
でもできるだけそういうものには敬意を表したいし従いたい。

初めて浅草演芸ホールに出た時はにゅーおいらんずの興行だったのだが、楽屋にいろいろな差し入れが入っていた。
自分が出る前に「お酒があるよ」と声をかけてくれた師匠がいて、うわっどうしよ!と思いながら、でもすすめてくれたんだからいただこうと飲んだ。その師匠の高座を袖で見させていただいて挨拶をして引き上げようとしたら、またお酒をすすめてくださる。二杯目も飲んでええもんやろか思いながら飲んだら、今度は寿司があるから食ってけとおっしゃる。
楽屋を見ると若手は誰も食べてない。その師匠も食べてない。
こ、これは何かのトラップか?!と思い、しかしせっかく言ってくださってるのにいったいどうしたら…と考えて、そうだ、師匠にとってあげてから自分も食べよう!と思い、「師匠は何がお好きですか?」と聞いてみた。すると師匠が「おれは喧嘩が好きだ」。
えええ?なにその答えー?と思いながら、寿司をぐると見渡して「ケンカ…あるかなぁ…」と言ったら、どかん!とウケた。どうやらこれでよかったらしい。

…ぶわははは。おもしろーい。
確かにそういうしきたりはと全く無縁なところから入って来た人は気を遣うよなぁー。
でもナオユキさんえらーい!たとえ正解じゃないとしても、ちゃんとリスペクトの気持ちがあったら大丈夫な気がした。
噺家さんって面白い。というのは、落語という芸に対しての愛情がものすごく強いから、売れたいとかじゃなく、落語をこうやってやって食っていければいい、と考えてる人が結構たくさんいて、それだけに純粋というか変わった人が多い。そこが我々と違うところで面白いなぁと思う。

その後は、自分の親の話。
かなりぶっとんだ話が多くて、えええ?と驚きながらも、なんか笑ってしまう。
いつものネタではないナオユキさん。スペシャルでよかったなー。

 

小んぶにだっこ

4/8(月)、落語協会で行われた「小んぶにだっこ」に行ってきた。

・小んぶ「町内の若い衆」
~仲入り~
・小んぶ「寝床」


小んぶさん「町内の若い衆」
自分はよく「何を考えてるかわからない」と言われることが多い、と小んぶさん。
最初、師匠からそう言われたときは、もっと気を使えとかもっとお世辞を言えという意味なのかなと思ったけど、そうじゃなくてほんとに師匠は私が何を考えてるかわからなかったみたいです。
弟子にしてください!とお願いして入って来たやつが何を考えているかわからないって…師匠も大変ですね…。

自分ではそんなつもりはないけど、いろんな人から「何を考えてるかわからない」「心がない」って言われます。
言われ続けていると自分一人がおかしいとは思いたくないので、他に自分と同じように心のない人はいないかな?と同類を探します。そうしたらいました。花いちです。
で、心がない人間って…ってほんとはありますよ、私にも心は…でもそう言われる人ってえてして感じがいいんですね。人当たりがいいから話しやすい。話を真剣に聞いてくれそう。そう思われるみたい。
そのせいか私も結構初対面でいきなり相談されたりします。
3月終わりごろから寄席に出たり連雀亭に出たりしてその後ニツ目同士でご飯を食べに行ったりしたときに、いろんな人が相談してくるんですよ。あなた誰ですか?っていう初対面の人まで。
ニツ目って感情が上がったり下がったりする生き物なんです。仕事があれば上がる、なければ落ち込む、ウケれば上がる、けられれば落ち込む…。で、どうもここ数週間会ったニツ目がみんな落ち込んでる人ばかりで、面識もないような人からも重い相談を受けまして。
そうすると心のない人間はどうなるかっていうと、頭真っ白になっちゃうんですね。へらへらしちゃう。で、相手にがっかりされる。

でも私にも決して心がないわけじゃなかったんですね。自分も気持ちが落ち込んできてついに声が出なくなりましたから。
で、噺家ってよく声帯ポリープになるんです。私も絶対それだ!と思いましてね。耳鼻咽喉科に駆け込みました。それで内視鏡で見てもらったんですけどね。当然声帯やられてるでしょ!と思ってたらね、声帯はきれいだったんですね。すごく。で、その上にある呼気っていうのが腫れてたみたいです。私は声帯ポリープって言ってほしかったのでその時点でもう帰りたくなりました。

…ぶわははは。
小んぶさんが自分で「心がない人っていうのは」っていうのがおかしくておかしくて。
でもなんか少しわかる気がする。小んぶさんも花いちさんも優しそうで感じいいけど、もう少し踏み込もうとすると親しくなれない感じがにじみ出てる。おそらく冷たいわけじゃなく人にあんまり興味がないタイプ?(笑)
でもそれが落語の面白さにもつながってる気がするんだよな。そのちょっとつかみにくいところが。

あと、先月は大須演芸場に5日間出ました、と。
新真打の披露目だったんだけど、大須では前座が出ないので自分が開口一番。で、これがもうウケない。自分は名古屋のお客様には合わないんだな…と毎日落ち込んで下がる。そのうち笑いが起きると「え?なんで?」とまで思うほどに。
そんな場に一緒にいた勧之助師匠がなぜかtwitterで「今小んぶが面白い」とつぶやいてくれた。
自分はtwitterをやっていないので知らなかったのだが、わざわざそれを教えてくださったお客様がいらした。
ええ?あの大須の高座を見て「面白い」って書いてくれた?どこが面白かったの?なんで?
そして勧之助師匠こそ「何考えてるかわからない」人。
先輩と打ち上げ行ったりするといかにその先輩に気を使うかみたいのが芸人にはあるけど、あの人はそういうことを一切しない。全くしない。それで、ニツ目の市弥くんの顔をじーーーっと見つめて「イケメンだなぁ」と言ったりしてる。変な人なんです。
でもtwitterは嬉しかったしありがたかった。でもそのお礼をメールや手紙で送るのもおかしいので…私なりにどうやって感謝の気持ちを表現しようかと考えて…今日は勧之助師匠の手ぬぐいを使わせていただいてます。

…ぶわはははは!見た見た!勧之助師匠のそのつぶやき!すごく嬉しかった!
外から見ると勧之助師匠ってソツのない、できる男っていうイメージなんだけど、やっぱり何考えてるかわからない人なんだ?面白い~!

そんなまくらから「町内の若い衆」。これは正朝師匠に教わったのかな。そんな印象。
待ち受けるおかみさん。ガタイの大きな小んぶさんが横座りして煙草を女っぽく吸うしぐさがインパクトありすぎて大笑い。
一番笑ったのが「お前、それでも女かよ」と言われたおかみさんが、「あたしゃ女だよ」と言いながらなぜか胸の前でハートを作る。なにそれ?なんなの?と、腹筋が崩壊するぐらい笑った。小んぶさん、頭おかしい!(←ほめてます)。
友だちも玄関先でおかみさんを見て「うわっ、いた」って怖がるのがおかしい。
そして太ったアブラムシがネズミ並みの大きさというのにも笑った。
ネタ卸しだったのかな?あんまりまだやってない感じはあったけど、回数を重ねたら小んぶさんの爆笑噺になると思った。面白かった。

小んぶさん「寝床」
先月の一門会のまくらから「寝床」。
大旦那の声慣らしが激しすぎて意味不明でおかしくておかしくてひっくり返って笑った。
小んぶさんもやっているうちにテンションがおかしくなってしまったみたいで、あれこれいろんなパターンの声慣らし。全然繁蔵が帰って来ない(笑)。
ようやく繁蔵が帰って来て話していても、旦那がすぐに声慣らし。旦那、どうやらこれで精神を落ち着けてるらしい。わははははは!!

誰も来ないと聞いて気を悪くした旦那が「長屋をもう一度まわっておいで」と言われた繁蔵。「勝訴の紙を持って?」には笑った。
でも何より笑ったのが追い詰められた繁蔵が「旦那の義太夫きらい」「義太夫聞きたくない」。それを聞いた旦那が「それは言っちゃだめだよ」「えええ?言わないでどうにかするっていう話だろう?」。ぶわはははは!このやりとりが小んぶさんらしい~。さからわない。頑張らない。繁蔵さえも。
旦那の義太夫が始まって「褒めろよ」「どこを褒めるんだよ」のやりとりの後にも「ひどい!」って無理して褒めてないのもおかしい。
あまりにも声慣らしが激しすぎて最後わやわやになってたけど、ひっくり返るほどおかしい「寝床」だった。笑った笑った。

ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ

 

ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 上

ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 上

 
ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下

ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ 下

 

 ★★★

精神分析医のアナ・フォックスは、夫と娘と生活を別にして、ニューヨークの高級住宅街の屋敷に十カ月も一人こもって暮らしていた。広場恐怖症のせいで、そこから一歩たりとも出られないのだ。彼女のなぐさめは古い映画とアルコール、そして隣近所を覗き見ること―。ある時、アナは新しく越してきた隣家で女が刺される現場を目撃する。だが彼女の言葉を信じるものはなく…。 

サスペンス好きならとても楽しめる作品だと思う。
私は苦手なんだー。特にこういうだれも自分を信じてくれなくて追い詰められていく系の話。

自分は隣の家の奥さんに確かに会って話をしているのにその人じゃない人間が「奥さん」ということになってしまう。殺人現場を覗き見したのにだれも信じてくれない。それどころか自分で自分を信じきれない。読んでいてもどかしくて「もうワイン飲むなー!」「その状態で出かけて行ってもなんにもならんどー!」とイライラし通しだったが、途中で明らかになる真実で読んでる側も「もしやこれは彼女の妄想なのでは」と思わされる。

サスペンス映画へのオマージュもたっぷりで、確かにこれは映画化したら面白そうだ。(私は見ないけど) 

圓橘一門会 ~四代目三遊亭小圓朝を偲んで~

4/6(土)、深川東京モダン館で行われた「圓橘一門会 ~四代目三遊亭小圓朝を偲んで~」に行ってきた。

・まん坊「狸札」
・朝橘「うなぎ屋」
・好太郎「ちりとてちん
~仲入り~
・圓橘「三味線栗毛」

まん坊さん「狸札」
この日、自分の師匠・萬橘師匠が来られないということを告知するまん坊さん。
決して具合が悪くなったとかではないのでご安心ください。そのかわり、苦情も受け付けません、に笑った。
まん坊さんの落語、まだ拙いところもあるけれど明るくてテンポがよくて楽しい。好きだな。


朝橘師匠「うなぎ屋」
今日は兄さんから教えてもらった噺をやります、と朝橘師匠。
兄さんには噺もたくさん教えていただきましたけど、噺だけじゃなくいろんなことを教えていただきました。
兄さんは東京生まれの東京育ちで一緒にいると「え?」と驚くようなことをポロっと言われたりするんですよ。
例えば一緒に飲みに行ったとき「おい、七色取ってくれよ」。
え?七色?なに?レインボー?と思ったら七味のことだった。かっこいいじゃないですか。
稽古の後は必ず飲みに連れて行ってくれた。
「うなぎ屋」を教えてくれた時は赤羽のうなぎ屋に飲みに行きました。まだ午後の3時だけど店は満員。カウンターに座って日本酒を飲みながらつまみをあれこれ。うなぎ屋だけど絶対うなぎは頼まないんです。ここのうなぎ屋食えたもんじゃないから、って言って。
満員の客を見回して「平日の3時だぜ。仕事もしないでなにしてんだろうな、こいつら」。
思わず「それは私たちもそうじゃないですか!」と言うと「あ、そうか。しかしなにしてるやつらなんだろう」「俺たちと同じ、噺家じゃないですか」「あ、そうか」。…いえ、そんなわけないです!
そんなまくらから「うなぎ屋」。


実は朝橘師匠の落語は初めて聞いたんだけど、多分あんまり好きなタイプじゃないんだろうなと思っていた。
というのはtwitterでは時々見かけていて(フォローはしてないけどリツィートでまわってくる)、twitterで語りすぎる噺家さんが苦手なのだ。って自分はパーパー語りまくってるくせになんや!って話だけど、でもやっぱり芸人がtwitterで芸を語るのは野暮に感じてしまうんだな。
多分暑苦しい落語なんだろうなと思っていたけど、意外にもそんなこともなく、とても面白かった。
テンポがよくてメリハリがあってたまに入るギャグも落語の邪魔になってなくて楽しい。
おおお、やっぱり先入観を持つのは良くないなぁ。楽しかった~。

 

好太郎師匠「ちりとてちん
圓朝師匠とはとても親しく付き合っていた、という好太郎師匠。
子どもの年齢が近いこともあって家族ぐるみで付き合っていて、毎年のように一緒に海水浴に行ったり旅行に行ったりもしていた。
身体の具合を悪くしてお酒をしばらくやめて復帰して行った独演会での「芝浜」素晴らしかった。
その時に、今度噺を教えてくれよと言われて「俺のでいいの?いいよ。じゃ今度な」と答えたのだが、結局その後教えることはなく亡くなってしまった。
そんなまくらから「ちりとてちん」。

この師匠も初めてみたんだけど、穏やかな語り口がどことなく扇遊師匠に似ていて、とても素敵。
ふわっとしてるんだけど、時々入るクスグリも楽しくて、明るく楽しい落語。
楽しかった~。
大好きな萬橘師匠が師匠と一緒にいるところを見たいという気持ちもあったけど、そのかわりに好太郎師匠を見られたから満足だ。
円楽党はなかなか見られないのでラッキーだったな。

 

圓橘師匠「三味線栗毛」
先ほど、まん坊がやった「狸」も朝橘がやった「うなぎ屋」も小圓朝が教えたものです。聞いているとそこかしこに彼らしさが出ていました。
好太郎がやった「ちりとてちん」は小圓朝に教える約束をしていた噺。
私もいずれ小圓朝に教えようと思っていた…一門の噺をやります。

大名の子どもに生まれても後を告げるのは長男だけで、次男や長女は継げない。財産や待遇など雲泥の差。
大名の次男、酒井角三郎は、父親から疎まれて、下屋敷で家臣同然の暮らしを強いられている。
こういう扱いを受けたら誰でも恨んだりくさったりするものだが、この角三郎、鷹揚な性格をしているのか「まぁこの方が気楽でいいや」と荒れることもなく淡々と暮らしている。
夜は書物を読んで勉強をしているのだが、ある時肩が凝ったので通りかかったあんまを呼び入れた。
このあんまの錦木、物知りで話し上手なので角三郎の良い話し相手になる。
ある時、錦木が角三郎の療治をしながら「あなた様はお殿様のお身内ですか」と尋ねる。
角三郎は「家臣だ」と嘘をつく。
すると錦木は「家臣の方が出世してお殿様になることはありますか」と聞く。
「動乱の世であればそのような出世もあるかもしれないが、今のように太平の世の中では決してそんなことはおこらない」と角三郎が答えると「そうですか。おかしいなぁ。あなた様の骨格は大名の骨格なのですが」と言う。
それを聞いた角三郎は「もし万が一私が大名になるようなことがあれば、そなたを検校に取り立ててやろう」と約束する。
錦木はそれを聞いて喜び、「角三郎様が大名になれますように」とお参りに通う。
しばらくすると錦木は風邪をこじらせ倒れてしまう。
長屋の人たちがみなで世話をしてくれて、ようやく少し病がよくなるが、療治にも出られずお金もなく風呂にも入れずすっかり弱気になった錦木が泣きごとを言うと、長屋の者が「そんなに嘆いちゃいけない。お前さんだっていつ運気が向くかわからない。下屋敷に住んでいた侍は大名の次男だったが父親から疎まれてあんなところに追いやられていた。その父が隠居して継ぐはずだった長男が病死。父親は養子を取ろうとしたが、親戚一同が次男坊がいるのに養子をとるとはけしからんと意見し、角三郎様が跡取りになることになった。こんな風に出世することもあるのだなぁと世間では評判になっている」。
それを聞いた錦木は「角三郎様が大名に…こうしてはいられない」と屋敷を訪ねる。
汚らしい身なりではあったが、角三郎の側近の名前を出すとお目通りを許された錦木。久しぶりに再会した錦木に角三郎は…。

…うおお。これは前に三三師匠で聞いたことがある。
そうなのか、これは圓橘一門では大切な噺だったのか。
これ喬太郎師匠が「錦木検校」というタイトルでやっているのは救いがない噺だけど、「三味線栗毛」の方はそうじゃなくて私はこちらの方が好き。
圓橘師匠の重みのある語りにぴったりで、とてもよかった。じーん…。

 

圓橘師匠の一席が終わると全員が出てきて、ご挨拶。
圓橘師匠は小圓朝師匠に宛てられた手紙を読み…そこに亡くなる直前に小圓朝師匠がやった「芝浜」がとても素晴らしかったとあって、「小圓朝、聞こえてるか」と言って涙ぐまれて、見ているこちらも涙涙。
「私は小圓朝の酒を止めろと言ったことはありませんでした。でも好太郎はこの数年かなりきつくたしなめてくれていて、それでしばらく酒を止めていた時期もあったようです。私も酒好きですけど、あいつも酒好きで…。萬橘も朝橘もまん坊も…多分あいつの酒で迷惑をこうむったこともあったと思います。でも弟子たちは偉くて…一度もそのことを私に言ったことがありませんでした。おそらくそれだけあいつのことを慕っていたのだと思います」。
またこの後に、小圓朝師匠の息子さんを呼んで挨拶をさせて、「芸人ですから最後は三本締めで」と三本締め。
こんな風に弟弟子に慕われて師匠にも悲しまれて…なんだかたまらない気持ちになった。

末廣亭4月上席昼の部

4/4(木)、末廣亭4月上席昼の部に行ってきた。

・小はだ「まんじゅうこわい
・わさび「たらちね」
・ストレート松浦 ジャグリング
・一琴「牛ほめ」
・圓太郎「強情灸」
・楽一 紙切り
・藤兵衛「出来心(花色木綿)」
・小はん「親子酒」
・紋之助 曲独楽
・志ん輔「豊竹屋」
・権太楼「町内の若い衆」
・アサダ二世 マジック
小満ん「宮戸川(上)」
~仲入り~
・勢朝「袈裟御前」
・にゃん子・金魚 漫才
・小さん「長短」
・南喬「ちはやふる
翁家社中 太神楽
・一九「厩火事

小はださん「まんじゅうこわい
長屋のまくらから「まんじゅうこわい」。ん?つながりがおかしいような?これも長屋と言えば長屋なのか?もしかして長屋の噺をしようと思ったけど季節柄「長屋の花見」が出るかもしれないと思って急遽方針を変えたか?
どちらにしても妙におかしい「まんじゅうこわい」だった。楽しかった。

 

わさびさん「たらちね」
今日は大変いいお客さま、とわさびさん。
反応がよくて前座の時からちゃんと聞いて笑ってくださる。
だから小はださん、すれ違った時ドヤ顔でした。「どうだ!お前、ちゃんとつなげるかい?」みたいな。
フツウ前座は全然ウケなくて申し訳なさそうに降りてきて「…おさきに勉強させていただきました」ってうつむきながら言うものなんですが。

それから「何より不思議なのはご夫婦の縁」と言ってから、今の時代は出会いの場がいろいろあるという話になり、自分のような独身者が言うのもなんですが民法ってなんなんですか、と。
「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」こう書かれているんですよ。
こんなことを強制されるって嫌じゃないですか?
「勉強しなさい」と言われると勉強したくなくなるように「協力し扶助しろ」と言われるとしたくなくなる。だから離婚が多いんじゃないか。
だから法律はこう変えるべき。「協力し扶助できたらいいね」。

そんなまくらから「たらちね」。
まくらが長かったから刈り込みながらの「たらちね」だったけど、わさびさん風味でなんともいえずおかしい。
笑った笑った。

 

一琴師匠「牛ほめ」
台所の床柱の件はなく、家を褒めて牛を褒めていとこのお姉ちゃんを牛で褒める形。
なんか不思議な切り取り方で新鮮だった。

 

藤兵衛師匠「出来心(花色木綿)」
間抜けな泥棒が貧乏長屋に入ってふんどしを盗んだところに部屋の主が帰ってきて、この泥棒を家賃の言い訳に使おうと大家さんを呼ぶところから。
この切り取り方も珍しい。
大家さんと泥棒に入られた男のやりとりが楽しい。
もともと男は泥棒に入られたことを使って家賃を待ってもらえればよくて、大家さんの方はちゃんと盗難届を出せば品物が返ってくるんだからという善意からの「持っていかれたものを言ってみろ」。
あきれながらも真に受けてツッコミを入れる大家さんに優しさを感じる。よかった。


小はん師匠「親子酒」
小はん師匠の「親子酒」は本当に楽しい。
今日は「大阪なおみさま」と「チコちゃんに怒られますよ」のセリフもあり。
抜群の面白さ。

 

権太楼師匠「町内の若い衆」
若手の時に金馬師匠と海外公演に行ったときのまくらがおかしい。
落語の後、ご飯を食べようと店に入り、4人でステーキを指さし注文。
その後に韓国人の8人グループが隣の席に座ったのだが、レシートを見るとそこのテーブルの分も合算されている。
これはちゃんと言わなきゃいけない!となったとき、金馬師匠が「俺に任せろ」。
で、ウェイターを呼んで、べらぼうな英語で自分たちと隣は別だ!というのを訴えた結果…。
わははは!楽しい!そして「代書屋」じゃない!うれしい。

 

南喬師匠「ちはやふる
楽しい~。最初から最後までほんとに楽しくて笑いっぱなし。
南喬師匠の大きなしぐさ、豊かな表情とえもいわれぬおかしさ、好きだー。
楽しかったー。

一九師匠「厩火事
トリの一九師匠を初めて見たけどとてもよかった。
おさきさんと相談に乗るご隠居、そして何を考えてるんだかわからない亭主、この3人がくっきりしていてとても面白い。
亭主に惚れているけど惚れているからこそ心配する女心が丁寧に描かれていて、とてもチャーミングだった。

蒼猫のいる家

 

蒼猫のいる家 (新潮文庫)

蒼猫のいる家 (新潮文庫)

 

 ★★★

家庭で居場所を失ったキャリアウーマンが年下の男と出会って……。意外な成り行きに大人の孤独がにじむ表題作の他、未体験の快感と美容効果を保証する、謎の無脊椎動物が巻き起こす騒動を描く「ヒーラー」、借金まみれのカメラマンが、山奥で雌犬の〝ヒモ〟となる「クラウディア」など。濃厚な物語世界に、動物たちの凛々しさや人間の愚かさを凝縮した絶品の五篇。『となりのセレブたち』改題。 

久しぶりに読んだ篠田節子。ぞわぞわとくる話が多くて、こういう作風だったっけ?とちょっと戸惑ったのだが、そういえばあんまり短篇は読んだことがなかったかもしれない。

表題作、私には相当痛い。「ヒーラー」「人格再編」もリアルだ。近い未来、ほんとにこういうことが起きても不思議じゃない。こういう方向に流れそうな今の日本…私たち…。「クラウディア」はここにおさめられているなかでは一番ぶっとんでた印象。

面白かったけど好きかどうかといえば微妙。今度は長編を読んでみたい。

白い足袋の会

4/1(月)、らくごカフェで行われた「白い足袋の会」に行ってきた。

・おさん&花いち トーク
・おさん「本膳」
・花いち「雛鍔
・おさん (花いち作新作)おさん菌にかかった女性の噺
・花いち (おさん作新作)おさんが花いちのために新作を作る噺
~仲入り~
・緑君「明烏

おさん師匠&花いちさん トーク
この日、新元号が発表されたのだが、このことにまるで触れない二人。
というのを、緑君さんがまくらで触れて、そういえばそうだな!と気づいた。いいよいいよ~そういうところが好きよ~。
今回二人がやる新作。おさん師匠は神保町のベローチェで作ったらしい。
「ていうか、ほんとに俺たちよく喫茶店行くよな」
「ですね。いろんなところ行ってますね。一度はすごい高い店行ったじゃないですか。」
「ああ、行ったな。落ち着かなかったな。やっぱり落ち着くのはベローチェだな」
「そ、そうですね。この新作もこの間の花緑の弟子の会の時におさん兄さんが”間に合わないから今から抜けて作ってくるわ”って言って出て行って。私が終わってから行ってみると、灰皿に吸い殻が20本近く溜まってて…ああ、兄さん、こんな長い時間作ってたんだな、って」
「半分は携帯灰皿に入ってたやつを捨てたんだけどな!」
「あ、ああ、そうなんですね…」

かみ合ってるようでかみ合ってない二人の会話がおかしい。2人ともふんわりしていて「いつもこうですよね。私たち。普段はもっと会話と会話の間に間がありますよね」「間、だな!」。
…うーん。いい(笑)。


おさん師匠 (花いち作新作)おさん菌にかかった女性の噺
医者の前に現れた女性。
「先生、検査の結果はどうだったんでしょうか」
「うん、そのことなんだがね。そこの顕微鏡を覗いてみなさい」
顕微鏡をどう覗いていいかわからなくて遠くから顕微鏡全体を見る女性に「いやいやいや。顕微鏡を覗くっていうのはそうじゃなく。レンズから見てみなさい」
「あ、ここですか。ええと…」と言って覗いた女性。
そこで何か激しいしぐさをするおさん師匠。(なんだこれは!!わはははは!)
「きゃーーー。あ、暴れてる!」
「いやそれは暴れてるんじゃないんだ。恥ずかしがってるんだ」
「え?先生、これはなんですか?」
「おさん菌だ」
「お、おさん菌?」

おさん菌に侵されると、おさん師匠みたいになっちゃうのだ。話している時のしぐさがやたら大きくなったり、声が大きくなったり…。
おさん師匠本人が「おさん菌」の噺をするってめちゃくちゃシュールで最高におかしかった。もう笑った笑った。
花いちさんの作る新作ってやっぱり面白いなぁー。
また普段古典では見せない弾け方を見せるおさん師匠もおかしかったー。


花いちさん (おさん作新作)おさんが花いちのために新作を作る噺
前に人の作った新作を結構変えてやったら、それを見たお客さんからえらい非難されたことがあったという花いちさん。
なので今回はおさんあにぃが作ったまんまやります。これちょっとなぁ…と言いながら。

内容はトークの時のまんま。
花いちさんがおさん師匠がいるベローチェに行き、「わー兄さん、すごい吸い殻の量じゃないですか。じゃ、できたんですね、新作?」
「できてない!」
「え?でも少しはできたんですよね?」
「うん。女が二人出てくるんだ。そのうち一人はすごい尻軽なんだ。で、もう一人がそれを直そうとする。どうやって尻軽を直すかというとお尻を重くすればいいと気が付いて、飯をたくさん食べさせる。おわり!」
「え?それで終わりじゃ…」
「じゃあ、…」

おさん師匠がなんか突飛なことを言って「終わり!」って言う、っていうだけの新作だった(笑)けど、これも妙におかしかった。
仲のいい兄弟弟子だなぁ。楽しかった。


緑君さん「明烏
テンポがよくてメリハリもあって面白かった。
どことなく勧之助師匠を感じた。きれいなところとか、ちょこっとくだけたギャグを入れてくるところなど。

師匠は苦手だけど(すすすすびばせん!)弟子には好きな人がいるというのも落語の世界独特で面白いなと思う。

 

 

柳家さん喬一門会 昼の部

3/31(日)、鈴本演芸場で行われた「柳家さん喬一門会 昼の部」に行ってきた。

・小はだ「転失気」
・小んぶ「安兵衛狐」
・喬の字「片棒(真打披露編)」
・小平太「粗忽長屋
・さん喬 踊り
・左龍「崇徳院
~仲入り~
・小傳次「犬の目」&バイオリン
・さん助「手紙無筆」
・ダーク広和&小平太 マジック
・さん喬「寝床」


小んぶさん「安兵衛狐」
この間地方の落語会に行って、私の最高記録を更新しました。6回です。6回。
高座中に携帯が鳴った回数です。
1,2回はたいてい鳴るんで驚きはしないんです。
私が落語に入る前に今みたいに無駄っぱなしをしていましたらね、鳴ったんです。携帯が大きな音で。しかも鳴らしたお客様が何もしないので、どういうことになるかというと…電話をかけてる相手が諦めるまで鳴り続けるんです。
小さな会場に30名ぐらいのお客様がぎっちり入ってましてね。50代ぐらいの女性が一番後ろの席に座っていて明らかその人の携帯なんですね。思わず私が「大丈夫ですか」と聞いたらその女性「大丈夫です」と答えましたけど。大丈夫じゃないです。
その後、花火がパンパンあがるみたいに他のお客さんの携帯もなりましてね…。
そして舞台の上に七夕飾りがしてあったんですが、おそらく短冊が少なくて寂しいと思ったんでしょうね。主催の方がバルーンアートを飾ってたんですけど、これがパン!!と割れまして。
私、そこにバルーンアートがあることを知らなかったものですから、「撃たれた」と思いましてね。あれ?でも血は出てないぞと思っているとまたパン!
落語って上下切って喋りますからどうしてもあの音の正体が気になってぐいっと頭を傾けて七夕飾りを見て「ああ、風船か」とほっとしたんですけどね。私目がいいんで短冊の文字も見えまして、たまたま見えたのが「静かに暮らしたい」。

…ぶわはははは!!!小んぶさん、最高。
お客さんにもどっかんどっかんウケてて、小んぶさんファンとしたらほんとに嬉しかったよー。
そんなまくらから「安兵衛狐」。
どことなくやっぱりおかしな小んぶさんの「安兵衛狐」。
なんかふわっとハズすところがあってそこでもお客さんがどっとウケていて、嬉しかったー。
そうなんだよー小んぶさんヘンなんだよ。おもしろいんだよ。わーー。


喬の字さん「片棒(真打披露編)」
自分は小平太師匠の真打披露目の時番頭を務めてつつがなくこなした。
今回自分が真打になるにあたって誰に番頭をやってもらおう。普通は自分より1つ下の後輩にやってもらうんだけど、何もそれにこだわらなくてもいい。うちの一門には小太郎、小んぶ、やなぎと3にんの後輩がいる。このうちだれに番頭をやってもらえばいいだろう?先輩に相談すると「じゃお試しになったらいかがです?」。
というわけで、「片棒」の真打披露目編。
最初に呼ばれた小太郎さんはパーティをやたらと盛大にやろうと言う。
二番目の小んぶさんは披露興行の方に力を入れるために、やたらと楽屋見舞いを豪華に。
三番目はやなぎさん…。
なかなかにブラックでおかしかった。せっかくなら二番目が「豪華」じゃなく、祭りっぽい展開だったらもっとよかったかな。
それにしても一門会でこういう噺をしてしまえる(「パーティではうちの師匠が頼まなくてもくさい挨拶をしてくれるはず」)んだから、自由なのね…この一門って。

小平太師匠「粗忽長屋
微妙な空気をなんのまくらもなしに普通に「粗忽長屋」をやって、いい空気にかえたのはさすが。
いいなぁ、小平太師匠。
余計なものは何も入ってないけどちゃんと面白い。


さん助師匠「手紙無筆」
前方のバイオリンで微妙な空気になった中の登場。
「な、なんですか、この空気は」。
…そうだよー。相当つらいよー。がんばれー。
フォローしたかったのか、自分も踊りを習っている時に、市馬師匠の会に呼ばれて踊ったときの話を。
そこまでするなら「虫のうごめき」と言われ「二度と踊るな」と言われたところまで話さないと!
「手紙無筆」前半は面白かったんだけど、後半失速した感じ。そうなるとどんどん動揺してわやわやに。
ガンバレー。


さん喬師匠「寝床」
最近のさん喬師匠の「寝床」は、大旦那のえづきのような声鳴らしが激しい爆笑編。
サゲも定吉の号泣ではなく、おっかさんの代わりに来た息子の義太夫語りで。
とっちらかった空気をぎゅっと凝縮する技が見事だったなぁ。

のれん噺

3/30(土)、社会教育会館で行われた「のれん噺」に行ってきた。
こちらの会に伺うのはとても久しぶり。開場時間過ぎてから入ったらお客さんがたくさん入っていたのでびっくりした。でも考えてみたらこのメンツだもんね。そりゃ集うよね。

 

・ひしもち「元犬」
・小燕枝「道灌」
・一朝「蒟蒻問答」
~仲入り~
・雲助「花見の仇討」
・志ん橋「大工調べ」

 

小燕枝師匠「道灌」
花冷えのこの日「朝から桜の下には大勢の人が頑張ってお酒を飲んでいました」に笑う。
小野小町も入るたっぷりめの「道灌」。
小燕枝師匠の穏やかな口調でこの噺、楽しいなぁ。はっつぁんも口は悪いけどのんびりした会話を楽しんでいる感じ。
楽しかった。


一朝師匠「蒟蒻問答」
噺家も昔はいろんな職を経て、もう他になるものがなくてなる人が多かった。
先代のさん助師匠はもやし屋。もやし屋なんて商売知ってましたか?
自分の師匠は三越…を面接で落ちたらしい。まぁあんな人が売り子やってたら大変です。「ナンダチキショー買わねぇってのか?!」。
そんなまくらから「蒟蒻問答」。
こんにゃく屋の大将も坊主になる男も元は江戸でやくざ稼業をしていただけのことはあって、威勢がいいカラっとした悪党。
寺男権助はのんびりした田舎の人だけどこれも結構な悪党。
問答の坊さんが来て、こりゃ寺を追い出されることになるなということになったとき、権助が「おらぁおめぇさんが気に入っただ。口は悪いけど腹にはなーんもねぇさっぱりした気性だ。おらが村はええところだから一緒に行くべ」と誘うのがおかしい。
売り払ってずらかろうとするところを訪ねて来たこんにゃく屋の六兵衛さん。「ここにあるものはおめぇたちのものじゃねぇんだ」とちゃんと道理を説くけれど、問答の坊主なんか無言で追っ払っちゃおう。それでもだめなら煮え湯ぶっかけて殺して裏に埋めよう」とけろっというのもおかしい。
問答の坊主は威厳があって大きな声で血気にはやっていて、六兵衛さんはしれっとしている、この対比がおもしろい。
勢いがあってピリっとしているけどばかばかしくて楽しかった。


雲助師匠「花見の仇討」
今朝、上野に花を見に行ったという雲助師匠。
着いたのが7:30。コンビニで缶ビールを買って花見をしたけど、あまりの寒さに「こいつはいけねぇ」と、とっとと撤収。8:30には家に帰った、というのに笑ってしまう。
そんなまくらから「花見の仇討」。
花見の趣向で亭主を馬にしてその上に乗ったおかみさん。周りから褒められていい気になって反り返る、そのまくらでもうおかしい。
というか、このまくらで桜が咲き乱れた公園とごった返す人の様子が目に浮かんでくるんだよなぁ。

最初から最後までたっぷり楽しい。
趣向で仇討をやろうという4人組のいい加減さと、たまたま出くわしてしまった侍のドタバタのおかしさ。
耳は遠いけど目は良くて頑固なおじさんのことを「古今亭志ん橋のような」と言ったのもおかしかったー。
ああー春だなぁーという気分にたっぷり浸れた。幸せ。


志ん橋師匠「大工調べ」
あまり好きな噺じゃなくて前半はちょっと長く感じたりもしたが、後半からの流れがとても楽しくて、お裁きの場面ではスカッと溜飲が下がる。
大工の棟梁と与太郎の掛け合いがとても好き。口の悪い江戸っ子だけど苦労人の棟梁とぼんやりした与太郎。この与太郎に目をかけて「バカだけど腕はいい」「母親想いの親孝行」とかばってやって、説教しながらも面倒をみてやる関係性が素敵だ。
「細工は流流仕上げを御覧じろ」のまくらからの「大工調べ」。サゲまできっちりで気持ちよかった!

 

夏丸谷中慕情

3/29(金)、chi_zu2号店で行われた「第9回・夏丸谷中慕情」に行ってきた。

・夏丸「味噌倉」
~仲入り~
・夏丸「賢明な女性たち(宇宙戦争)星新一・原作)」

 

夏丸師匠「味噌倉」
新真打から相談を受けることも多いという夏丸師匠。みんなやっぱりお金の心配をしていて自分もそうだったからよくわかるけどどうにかなるものだから、と。
それから自分が前座で入った時に披露興行をしていた真打は誰だったかとか、その時の番組に出ていたのと色物がほとんど変わってないとか、いろいろな話。
マニアにはたまらないけど、たまたま来てみたこのお店の御常連さんはどうだったんだろうとちょっと心配になったり。

そんなまくらから「味噌倉」。
もしやネタ卸し?そんなこともないのかな。夏丸師匠はポーカーフェイスだからわからないけどなんとなくまだ話し慣れていないような印象があったかな。


夏丸師匠「賢明な女性たち(宇宙戦争)星新一・原作)」
なんじゃこりゃ?!な昭和テイストの新作。
新しいけど古めかしい。このヘンテコな感じが夏丸師匠にはぴったりで笑った笑った。

あとで聞いたらこれは米丸師匠の新作らしい。
前座の頃に習ったけどもちろん前座でこんな噺ができるはずもなく14年ぶりにやってみたってすごい貴重な高座を見られてしまった(笑)。

楽しかった。

中野新橋寄席

3/28(木)、八津御嶽神社で行われた中野新橋寄席に行ってきた。


・小はぜ「人形買い」
・今松「松竹梅」
~仲入り~
・今松「石返し」


小はぜさん「人形買い」
最初から最後までたっぷり。前に聴いた時より格段におもしろくなってるし、占いも講釈もお見事。
でもちょっと長いかなぁ…。
私のようなマニアは通しで聴けてうれしいけど…。それほど笑いどころのある噺じゃないからもう少し刈り込んだ方がいいような気もしたな。

今松「松竹梅」
この日のこの会、落語の後に何か別の会がある関係で、普段はない机が置かれて、ふだんと違う雰囲気。
会議の席で体を斜めにして講師の話を聞いてるような雰囲気。
それを見て「ちょっといつもと感じが違いますね」と言ってから「でもいいです。みなさんこちらを見て下さってますから」。
ニツ目の頃にやったバス旅行の仕事では、バスの中で小噺やなぞなぞ。これはまだいい。みんながこちらを見てくれているから。
宿に着いてからの宴会の席での落語。これがやりづらい。これもね、酔っぱらいはまだいい。こちとら慣れてますから。
噺をしている間に鍋が運ばれてきたのにはまいった。みんな鍋の方に目が行っちゃって落語どころじゃない。鍋には勝てない。

それから結婚式の司会の仕事をした時の話。
あれはどうしてああも胡散臭いのか。そんなまくらから「松竹梅」。

不器用な松さんが思いのほか表情豊かで驚く。そうかー。淡々と話しているように見えるけれど、ちょっとした動きや表情がとても豊かなんだ。だから伝わるんだ。
コンパクトで軽くて楽しい「高砂や」だった。


今松師匠「石返し」
初めて聴く話。
与太郎が父親に言われて汁粉屋を始める。
大通りを流しても汁粉なんか買ってくれる客はいない。できるだけ裏通りに回れと言われ、ばかに寂しい通りで「しるこー」と売り声をあげると、屋敷の上の方から侍が声をかける。
「全部買ってやるから今からおろす鍋の中に汁粉を全部入れて餅は蓋の上に乗せてくれ」。
与太郎がそうすると、するするすると鍋を引き上げた侍。
お代をもらおうとすると「こちらまで回ってくるのは大変だろうから、門の所に門番がいるからそいつからもらえ」。

門番の所に行ってみると、「あそこに住んでるのは人間じゃない。狸。下ろしてきたのは鍋じゃなく狸の金。狸に化かされたんだからその金をおれが払ういわれはない」とけんもほろろ
最後はどやされて家に帰る。
父親に話をすると「そこは番町鍋屋敷というところだ。たちの悪い侍がそうやってただ食いをするからあそこに売りに行く商人はいないのだ」と言う。
よしじゃ仇を売ってやるから一緒に来い、と父親はそば屋の荷物を持って出かける。
そばの売り声にまた屋敷の上から同じ侍が「全部買ってやるから鍋の中にそばを入れろ」とおろしてくる。
父親はそこにそばのかわりに…。


「石返し」(意趣返し)なんていうからちょっと色っぽい噺なのかなと思っていたら、ごくバカバカしい噺だった。楽しい~。
今松師匠の与太郎、ニコニコご機嫌でかわいいなぁ。なんか手をグーにしてあげるしぐさもやけにかわいくておかしかった。

海苔と卵と朝めし: 食いしん坊エッセイ傑作選

 

 ★★★★★

思い出の食卓、ウチの手料理、お気に入り、性分、日々の味、旅の愉しみの六章からなる二十九篇のエッセイと「寺内貫太郎一家」より小説一篇を収録。ちいさなこだわり、忘れられない味。幼い頃の食卓の情景から病気が治ったら食べたいもののリストまで、向田邦子の真骨頂。 

 読んだことがあるエッセイもあったけど、気取らない内容と歯切れのいい文章で読んでいてとても楽しい。

物や食べ物のない時代を生きてきた人独特の執着やこだわりがすがすがしくて、自分は食べることだけじゃなく、いろいろなことを雑に流しているなぁと思ったりもした。

漂う昭和の香りも懐かしく、長生きしてもっともっとたくさん書いてほしかったなぁと思う。

末廣亭3月下席夜の部

3/27(水)、末廣亭3月下席夜の部に行ってきた。

・圓馬「短命」
・ねづっち 漫談
・談幸「茶の湯
・幸丸 漫談
~仲入り~
・可風「やかん」
青年団 コント
・柳好「新聞記事」
・歌春「たらちね」
・ポロン マジック
・蝠丸「徂徠豆腐」


圓馬師匠「短命」
ご隠居の奥歯に物が挟まったような説明に対してくまさんの反応のあけっぴろげなこと。「あーーーわかった!爪から毒が」に笑ってしまう。
この強弱のバランスが好きなんだな。
帰ってからのおかみさんの男らしい振る舞いにもスカっとする。楽しい~。


ねづっち 漫談
寄席にこのゆるいダジャレと謎かけがちょうどいい。
それにしてもねづっちのおかみさん、すごい(笑)。笑った。
そしてお題をもらってから「整いました」までのスピードの速いこと。すごい。


談幸師匠「茶の湯
そしてまたこの位置で「茶の湯」を最初から最後までやってしまう談幸師匠。
切り取る技術もさることながら、話すスピードも速くできてさらにそれが聞き取りやすいというのがすごい。

風流だー風流だー言いながらお腹を壊して労わりあうご隠居と定吉がかわいい。
そして飛んで火にいる夏の虫を迎えるご隠居の満面の笑み。最高だ。

 

蝠丸師匠「徂徠豆腐」
お代は払えないと言っているのに謝ってくれたと言って喜ぶお豆腐屋さんお豆腐屋さん。出世払いでいいですよという優しさが沁みるなぁ。
蝠丸師匠の「徂徠豆腐」はなんといってもおかみさんがかわいい。「あたしを借金の形に連れて行くんだよ」とまんざらでもない風なのがおかしい。
今回は最後にねづっちも登場するサービス精神がたまらない。

楽しかった~。