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りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

柳家小三治独演会 調布グリーンホール

5/18(木)、調布グリーンホールでおこなれた「柳家小三治独演会」に行ってきた。
 
・一琴「平林」
小三治「長短」
~仲入り~
・一琴 紙切り
 
小三治師匠「長短」
77歳になって新宿区から祝い金が届いたという話。
その金額が7千円だったか8千円だったか。どうなんですかね。77になった祝いだっていってその金額は。どうせ祝いだっていうならね、7千万円ぐらいもらえれば…。
でもくれない区もあるらしいんでね。新宿区は都庁もあるから…あれですかね、面目ねぇっていうんでくれたんでしょうか。
そういえば東京都の水はうまいんですってね。ほんとですか。そんなこと聞いたことありますか。
私は生まれも育ちも新宿区だけどそんな話聞いたことない。
神田川が流れてますけど、あそこの水がうまい…わけがない。あぶねぇから飲んじゃいけないとは言われたことがありますけど。
それもね、今のお姉ちゃんじゃなくて、その前の前の…石原とかがやったんですかね。それがもう胡散臭い。しかもその水、都庁の地下で売ってるっていうじゃないですか。ますます胡散臭い。
…あー…この話はやめましょう。楽しい話をしましょう。
 
私は明日なにするかといえばね、病院に行って検査です。
いろんな病気で病院行きますけどね、明日はリュウマチの検査。
50歳の時に発症してね。最初は肩が痛かったから五十肩だと思った。小沢昭一に相談したら「五十肩はある日寝ているときに寝返りを打つと、ぐわぁーーーって…のたうつほどの痛みが襲ってきて、次の日けろっと治る」っていうんでね。その日が来るのをずっと待ってたんです。
でも2年たっても5年たってもこない。ずっと痛い。
「なおんねぇぞ」って小沢さんに言ったらね「そんなに長い五十肩はない。病院に行け」って言われてね。
それならそうと最初から言えよ!
 
で、病院行ったらリウマチだっていうんです。
もうそれからずっとですね。
今は薬もずいぶんよくなってきてますし。私のはたいしたことないんです。痛いだけですから。
 
それからあさっては中学の時のクラス会ね。
まだやってるんですよ。
楽しみなのはね…あ、まさかこの中にあさってクラス会に行くやつはいないでしょうね?
男どもはどうでもいいんです。女の中にね…まだこう…胸もちゃんとこうあって、しゃんとした女性がね3名ほどいましてね…。ふふふ。その中の誰が目当てなのは…内緒です。
ま、それだけの話です。
 
…話が政治の方に行きそうになったけど、行かなくてよかった。
小三治師匠も「この話をするとみなさんも私も嫌な気持ちになる」って言っていたけどほんとにそうだから。
それで楽しい話っていうのが病院と同窓会っていうのもおかしいけど、でもそっちの話の方が聞きたかったからよかった。
そしていまも色気のある師匠がすてき。
 
そんなまくらから「気が合わないけど友だちっていうのがいる」と言って「長短」。
長さんの沈黙が長いけどにこーーっと笑ったり深刻そうな顔になったりして表情がとても豊か。
小三治師匠の「長短」、前は長さんが好きだったけど最近は短さんが好きだなー。
ってそんなに回数を見ているわけじゃないけど。
いらいらっとなりながらも長さんのこと嫌いになれない、大切な友達っていう感じがにじみ出てるからだろうか。
噺の魅力がたっぷり伝わる「長短」だった。
 
一琴師匠 紙切り
一琴師匠が紙切りをされることは聞いていたけど、実際に見たのは初めて。
思っていたよりスピードがあるしクオリティが高いのでびっくりした。
またほしい人って言った時、ちゃんと後ろの方の人にも目を配ってたのにもちょっと感動。
 
いろんな気性の人がいて、誰一人同じ人間はいない。
よく「あの人は変わってる」って言ったりするけど、考えてみればみんな変わってる。変わってない人なんかいない。
みんな違うから面白い。
なのに自分と似たような考え方の人だけ集めてそうじゃない人間はのけ者にしたりバカにする人がいる。ああいうのは嫌だ。なんで群れたがるんだろう。
 
小三治師匠のこういうところがほんとに大好き。
だからなんの接点もない雲の上の人だけど、全然遠い感じがしなくて、もしチャンスがあって話をしたらきっと気が合うんじゃないか、なんて妄想してしまうんだな。ふふ。
 
そんなまくらから「粗忽長屋」。
ほんとに落語らしい噺で大好き。
こんな勘違いはどう考えてもありえないんだけど、くまの遺体を他の人に持って行かれちゃいけない!と前に出る粗忽な男が憎めない。善意しかないんだもん。
「またあの人戻ってきちゃったよ」という面倒を見てるおじさんの弱りぶりが楽しい。
何回見ても楽しい小三治師匠の「粗忽長屋」、大好きだ。

夢のなかの魚屋の地図

 

夢のなかの魚屋の地図 (集英社文庫)

夢のなかの魚屋の地図 (集英社文庫)

 

 ★★★★

書けないときに思い出す、小説家だった父の「とにかく二時間、机の前に座ってみろ」という言葉。「誰よりも美しい妻」だった母。古本屋である夫との、驚きと嘆息に満ちた結婚生活。友人たち、食べることへの情熱、家事をしながら聞く音楽、ストーリーを考えながらする家事、仕事部屋に忍び込んでくる愛する猫。そして、書きつづけることへの決意…。直木賞作家・井上荒野の軌跡を知る、初のエッセイ集。  

面白かった。井上光晴のドキュメンタリーを見たことがあったので、余計に面白かった。
あんな強烈な人が父親だったら家族はどんなに大変だっただろうと思っていたが、案外冷静に?作家としての「父」と家庭におさまりきらなかった「父」を受け入れてるように見えた。きっとそれはお母様に依る所が大きいように感じた。
あのドキュメンタリーで、井上氏の文学教室に通う元文学少女の頭いいけれどあまり色気がないような(失礼!)女性たちが、井上氏に「女性」として認められてみな夢中になっているように見えたが、奥様もまさにそういう方だったんだな。貪るように本を読み献身的に尽くした奥様は、井上氏の才能に惚れ込んで彼の欠損も全て受け入れていたような印象を持った。実際はきっとそんな生易しいものではなかったかもしれないが。

お母様の影響なのだろう、荒野さんの食べることへの意欲が凄くて、その食い意地の張りように何度か吹きだした。読んでいていろんなものを飲み食いしたくなった。

浅草演芸ホール5月中席夜の部

5/16(火)、浅草演芸ホール5月中席夜の部に行ってきた。
 
・小蝠 漫談
・とん馬「小言念仏」
宮田陽・昇 漫才
・歌春「鈴ヶ森」
・正二郎 太神楽
・蝠丸「昭和任侠伝」(「任侠への道」)
 
伸治師匠「まんじゅうこわい
なんて楽しい「まんじゅうこわい」なんだろう。
この噺がこんなに面白いなんて!と思ったのは、夢吉さん(今の夢丸師匠)のを見た時以来かもしれない。
あれがこわいこれがこわいと言われた時の兄貴分の反応がすごく楽しそうで、さらに理由を聞いてそれがくだらないダジャレだったりするのがもうばかばかしくて楽しくて。

まんじゅうをほおばるときのうれしそうな顔とうきうき弾む(ほんとに座布団の上で弾んでる!)様子が見ていてほんとに楽しい。
たのしくなさそう~にやる前座さんやニツ目さんは伸治師匠の「まんじゅうこわい」を見た方がいいよ(笑)!
 
蝠丸師匠「昭和任侠伝」(「任侠への道」)
「私が若いころは映画の全盛時代でして、時代劇や任侠映画を夢中になってみたものです。当時人気があったのは…」と「旗本退屈男」、「遠山の金さん」の話をたっぷり。

遠山の金さんはね、二つの顔を持ってるんですよね。遊び人の顔とお奉行様の顔。それで前半はまず遊び人で悪いやつが集まってるところに行くんですよね。そこでね、肩のところから背中にかけて桜吹雪のね、彫り物があってね、それをちらっちらっと見せるんですね。で、後半になって悪者をお白州に呼び出してね、悪者たちは最初しらばっくれるんですよね。そこで「遊び人の金さんが知ってるぞ」って脅すと「誰でしたっけそれは」って悪者がすっとぼけるんですよね。

そうすると奉行様が「この桜吹雪が見えねぇか」ってね、脱ぐんですよね。
でもね、桜吹雪見る前に気付かないのかって話ですよね。顔見てわからないんですね。悪者にはね。
子ども心に、悪いことをすると記憶力が悪くなるんだなって思ってましたね。
 
旗本退屈男」は「額にね、黄色い傷があるんですよね。まるで書いたみたいにね。で、その傷がいつまでたっても直らないんですね。よっぽど傷の治りが悪い人なんですね」。
蝠丸師匠の淡々として口調でこういうことを言われるともうおかしくておかしくて大爆笑。
 
「それからね。これはあんまり話したことないんですけどね。私、映画に出たことがあるんですよ。山田洋二監督がたまたま寄席に来ていてね、この役はあなた以外に考えられないって直々に電話がかかってきましてね」。
薬師丸ひろ子が出たという映画に出演したという蝠丸師匠。この話もおかしかった~。
 
「なんであたしがこういう話をいつまでもしてるかっていうとですね…今日やる噺、短いんです」。
そんなことを言いながら、がらっと声の調子が変わって落語へ。
うわっ!かっこいいっ!
なのにまた声を戻して「あのー落語に入りましたよ」と言うのがおかしい~。ほんとにこの師匠は自由自在というか…上手なのに「うまいだろ」っていうところが全然なくて肩の力がふわっと抜けていて素敵。
 
健さんの映画を見てすっかり健さん気分になって真似をしながら帰ってくる八百屋の息子。
「私なんかも一日中高倉健さんの映画を見てると映画館を出るときは目つきが変わっててね」と話していたまくらが効いていて、その姿が目に浮かぶ。
風呂屋へ行く時、後ろから女に声をかけられて、健さん気分でかっこつけて振り向いたものの、たんに手拭いを落としていたのを教えてくれただけだったり、刺青を入れようと彫り物師のところを訪ねるも、ちょっと触られただけで痛い痛いと大騒ぎ。
やっぱりムショに入らなきゃ!と八百屋でバナナを一本盗むのだが「お前、八百屋のせがれじゃねぇか!」とあきれられる。
 
…とにかく最初から最後までばかばかしくて、でも健さんになりきる様子がさまになっていて、楽しい~。
珍しい噺を聞けて満足満足。

******
実はこの日、満員のお客さんだったんだけど、おじいさんおばあさんが多くていつも以上にざわざわした雰囲気。
私の隣に座ったおじいさんが、「寄席はこういうもんだ」と勘違いをしているのか、一緒に来ているおじいさんに「通」なところをアピールしたいのか、まくらにいちいち大声で野次を飛ばす。
「それじゃつまんねぇぞーーー」「いいぞーーーー」「〇〇じゃなきゃだめだぞーーーー」。
 
…場末のプロ野球じゃないんだから…。これがずっと続くのはとても耐えられそうにない…。帰ろうかな…と思いかけたんだけど、考えるより先に手が動き、おじいさんの腕をつかんで「シーッ」。
初めて寄席で他のお客さんに注意しちゃった。

おじいさん、酔っぱらってるわけでもなかったので、それから少し静かになってくれて、でも野次を飛ばしたくて仕方がなかったみたいで、前座さんが座布団を変えに来るたびに「いいぞーー」「がんばれーー」の野次を飛ばしていた。
 
人に注意するって本当に苦手なんだけど、素直なおじいさんでよかった…。
でもおじいさん、噺の最中には野次を飛ばせないからつまらなくなっちゃったみたいで、静かになったなと思ってみたら寝ちゃってた。
楽しみを奪っちゃってごめんね。

連雀亭日替わり夜席

5/15(月)、連雀亭日替わり夜席に行ってきた。
小はぜさんの名前があったから行ったんだけど、全員がタイプが違っていてそれぞれに面白くて満足~。これで千円なんて申し訳ないっ!
 
・ふう丈「電気家族」
・小はぜ「やかん泥」
・小辰「夢の酒」
・志獅丸「青菜」
 
ふう丈さん「電気家族」
好きだな、ふう丈さん。無駄に声が大きくてすごく明るくふるまってるけど、ほんとは案外内向的な人なんじゃないかなという気がする。
いつもの「二枚目」のまくらから、今このあたりでやっている神田祭の話。
ちょっと話し出してから「あ、落語には何も関係ないまくらですよ!片棒とか持ってねぇし!」って言ったのがおかしかった。
 
神田祭の御神輿に駆り出された話。
連雀亭に出てるニツ目に声がかかったんだけど、私なんかまさに!うってつけな人材じゃないですか!
何がって…何も考えてなくてパーパーしてるバカ。
で、集まってきたのが見事にそういうバカばかりで。
ってみんな先輩なんで差しさわりがありまくりですけど、今の発言。
 
まずは様子を見ていようっていうことになって見てると、そいやっそいやっ神輿を担いで10メートルほど進むとそこでおろして三々七拍子をやって食べ物をもらってなんか飲んでる。
またそいやっそいやっ担いで10メートルほど行ってまた飲み食い
おいおい!もっと長い距離行かないと!
そう思ったんですけど、いざ自分がやってみてわかった。これはきつい。この状態で長い距離は無理。
 
と言いながら。
イメージとしたら神輿の棒みたいなやつが肩にぐーーーっと食い込むって感じじゃないですか。
それが、私とか一緒に担いだ兄さんとか170~175cmぐらいなんですけど、棒が自分の肩よりちょっと上にあるんですよ。
だから食い込むことなくこう…手を添える?感じ?
なんかずるしてる感じがして、女の子も見てるし、これじゃいかん!と思って無理やりこう食い込ませようと棒をこう…おろしてですね、ぐいーーっと自分の肩に食い込ませるとですね…まわりの人に無駄な負担をかけてしまうという…。
 
…ぶわはははは。
ふう丈さん、おかしい~!!
まくらうまいな!さすが新作派。
「あとから出てくるのはみんな本寸法ですから、私は色物っていう扱いで…軽く聞いてください」と、「電気家族」。
 
彼女にプロポーズしようと言う息子に「それはいいが、うちの家系のことは話したのか?」と父親
なんと彼ら、血液だけじゃなく電流も流れる家系。
「話せるわけないだろ!」と言う息子に「ちゃんと話さなきゃだめだ!」と父。
二人のデートに無理やり乱入してきて…。
 
すごくばかばかしいんだけど、扇子の使い方とか激しいしぐさとかがすごく効いてて面白い。
もうおかしくてげらげら笑い通しだった。
 
小はぜさん「やかん泥」
前にも見たどろぼうのまくらで「お、やかん泥だね」と思ったんだけど、なんかちょっとやりづらそうな?ふう丈さんの新作で調子を崩したのか?
 
とちょっと心配しながら見ていたんだけど、この日の「やかん泥」がすごく面白かった!

なんだろう。親分と一緒に仕事に行けるっていうので子分が喜んでウキウキしてるのがもうすごくかわいくて。
はしゃぎっぷりがまたすごく楽しくて。
小はぜさんがどんどんのってきて、お客さんとの波長もあって…楽しかった!

 
小辰さん「夢の酒」
扇辰師匠のお弟子さんらしいなぁという印象。
丁寧で端正な落語。
お花さんがやきもちを焼いてきぃーーーってなるのがかわいらしい
若旦那が明らか鼻の下伸ばしてるからなぁ(笑)。若奥さんならやきもちやくかも。
 
そして止めに入った大旦那がお花さんの剣幕にどんどん押されていくがおかしい。
夢の中に入ってから、大旦那が出されるお酒を心底楽しみにしているのが面白かった~。
 
志獅丸さん「青菜」
初めて見る噺家さん。志らく師匠のお弟子さんなのか。
なーんにもなかった地元駅にようやく「鳥貴族」ができて、一人でふと飲みたくなり行ってみると満員のお客さん。カウンターに一人通されて大好きなバスケの試合をiPadで見ながらビール。
「おれ貴族?」とつぶやきながらも俯瞰してみるとちょっと寂しい。
そんなまくらから「青菜」。
 
「鳥貴族」で「おれ貴族?」とつぶやきながら飲む志獅丸さんと、お屋敷で感動した旦那の言動をそのまま真似する男が重なってなんともおかしい。
大きな身体だけと、押すだけではなくてちょっと引くところもあるので、そこが楽しくて笑いが起きる。
奥様が青菜があるかどうか確かめにいったん部屋を出るんだけど、これが、奥さんが真似するときに2倍楽しくて大爆笑。このためにそういうふうに作りかえたんだろうか。
とっても楽しい「青菜」だった。
 

浅草演芸ホール5月中席夜の部

5/11(木)浅草演芸ホール5月中席夜の部に行ってきた。
 
・鷹治「つる」
・圓馬 漫談
・ひでや・やすこ 漫才
・伸治「お菊の皿
・笑遊「看板の一」
・うめ吉 粋曲
・蝠丸「井戸の茶碗


圓馬師匠 漫談
漫修学旅行生がいたからかなぁ、漫談だけだった。残念…。
 
伸治師匠「お菊の皿
笑顔で出てきて本当に楽しそうに落語をされるんだよねぇ。座布団の上でふわふわっと身体が弾むように浮くのがもうかわいくて楽しくて。
最初にお菊さんが出てくるところで鳴り物が入るんだけど「あーーびっくりした」「びっくりしたなぁ」「三味線に太鼓まで鳴るんだもん」ってにこにこ言ったのがおかしかった~。
 
笑遊師匠「看板の一」
修学旅行生にロックインして、何かと固まって座っていることや席がこんなに空いてるのにそんなに後ろに座らされて…と攻撃が続くので、ひやひや。
落語はノリノリではっちゃけててすごくおかしかったけど、個人攻撃はされる方もつらいし見ていてもつらいからやめてほしいなぁ。
 
蝠丸師匠「井戸の茶碗
笑遊師匠のことを噺に何回か登場させて「ありゃひどい」とつっこむのがおかしくて大笑い。
そういえば前にも同じようなことがあったなぁ。確か末廣亭で蝠丸師匠がトリの時に、桟敷席の団体客がお弁当を食べているのを笑遊師匠がいじり倒して…あとから出てきた蝠丸師匠がさんざんそれをけなしたんだった。けなしても実際は仲がいいことも伝わってくるし全然嫌な感じじゃなくて、すごくほっとしたんだった。
 
蝠丸師匠の「井戸の茶碗」はこれで二回目だけど、清兵衛さんが正直な人だけれどいかにも「庶民」らしく、お侍さん二人とくっきり身分の違いが出ている。
千代田様の暮らし向きは厳しいんだろうねと高木氏に言われると、遠慮なくパーパーその貧乏ぶりについて語ったり、千代田氏に向かって五十両受け取りなさいよと言う時も「ここのお宅は我が家よりひどい」と言ったり。
落ちぶれてしまってもプライドだけは高い侍と、貧しいけれどそれを受け入れて気楽そうな屑屋さんと、どちらの方が幸せだったんだろう、なんてことを思いながら、あっさりしていて楽しい「井戸の茶碗」だった。

 

 

 

ゼロヴィル

 

ゼロヴィル

ゼロヴィル

 

★★★★

「映画自閉症」の青年ヴィカーは、映画『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトエリザベス・テイラーを、自分のスキンヘッドに刺青している。フィルム編集の才能が買われ、ハリウッドで監督作品を撮ることになるが…。『裁かるゝジャンヌ』、『めまい』、『ロング・グッドバイ』…映画と現実が錯綜する傑作長篇!

 映画自閉症の青年が主人公のこの物語は前半はエリクソンらしくもなく?時空間がぐにゃぐにゃになったりしない普通の展開なので、戸惑った。
短めのセンテンスで印象的なシーンを重ねていくのは映像的で、ヴィカーと一緒に次々映画を見ているような感覚。

ここに出てくる映画の内容を知らなくても小説自体は楽しめるけど、知っていたらより楽しめることは間違いない。

わかりあえそうでわかりあえない人との出会いと別れを繰り返してきたヴィカー。
彼の本当の気持ちを私は理解できた気がしないのだが、最後モンゴメリーと対話できたヴィッカーはしあわせになれたのだろうか。

桃月庵白酒 25周年記念落語会 銀座2DAYS 2日目

5/9(火)、博品館劇場で行われた「桃月庵白酒 25周年記念落語会 銀座2DAYS 2日目」に行ってきた。

・はまぐり「つる」
・白酒「突き落とし~アニマルハウス発端~」

~仲入り~
・ヘルシー松田 パントマイム
・白酒「大山詣り
 
はまぐりさん「つる」
ご隠居に「粗茶」をすすめられて飲んだ八つぁんが「なるほど、粗茶だ!」と叫ぶのがおかしい。
隠居の噂が出てましたよと目の前にしてパーパー悪口を言うのも面白かった。
 
白酒師匠「突き落とし~アニマルハウス発端~」」
開口一番「〇〇病院はクソ」と毒を吐く白酒師匠。
血痰が出たので慌てて〇〇病院に駆け込んだのだが誤診をされて、もらった薬を飲んでもちっともよくならない。
別の病院に行って検査をしてもらうと「肺炎」と診断され、それからようやく回復に向かったらしい。
 
そういえばうちの次女ちゃんも保育園時代急性肺炎にかかったことがあったんだけど、熱もそんなに出なかったから「ただの風邪」と診断され、でも一向に良くならないしぐったりしているのであれこれ調べて「肺炎じゃないか」と別の病院に行って調べてもらってわかったことがあった。
あの時は入院して点滴受けてようやくよくなったんだよなぁ…。
白酒師匠もおもしろおかしく話していたけど、相当まいっただろうなぁ…。
15周年の独演会2Days、いざとなったら休んで弟子に出てもらおうと思った、なんて言ってたけど、必死になおしたんだろうな。
というかおそらく完全な状態ではなかったんだろうけど、ちょっと弾けきれてないな、ぐらいにしか感じなかったから、すごい。
 
この日のテーマは「アニマルハウス」。
おそらくこの日来ていたお客さんは特に映画に詳しいというわけではなく、白酒師匠の独演会を見に来ていた人が多かったんだろう。
かく言う私も「アニマルハウス」見たことないし、白酒師匠があれこれ名前を出してもほとんど「???」で申し訳ない。
 
大学生の劣等生集団が優等生集団にぼこぼこにされて、あの手この手を使って最終的には勝つという話。
劣等生集団たちはとにかくもうどうしようもないんだけど、でもとんでもない不良というわけじゃなく、ただまあ下の方にいる連中。
その人たちがとことんバカをやって暴れまわるのが爽快なんだ、と白酒師匠。
 
僕も大学時代は落研なんか入って、いわゆるオールラウンドサークル(この言い方懐かしい!)と比べるとあきらかに底辺グループで、僕はいつも甚五郎と部室に寝泊まりしてくすぶってたんだけど、俺らだってテニスの一つもやろうじゃないか!とあるとき落研でテニス合宿に行ったことがあったけど、浴衣を尻っぱしょりして「こんなかな」って適当にボールを打ち合って、コートを管理しているやつに白い目で見られてこともあった。
ああいうのもスケールは違うけどやっぱり同じような精神。だからこそ「アニマルハウス」を見て爽快に感じるんでしょう。
 
落語にもそういう噺っていうのがあって…といって「突き落とし」
金のない男たちが集まって吉原に行ってどんちゃん騒ぎをしてお金を踏み倒して帰ってくる方法を画策。
兄貴分が計略を立て、それをみんなで実行する、というただひたすらにばかばかしい噺。
初めて聞いたんだけど、こういうバカバカしい噺大好き。
そしてサゲがちゃんと「アニマルハウス」につながってた!
 
ヘルシー松田先生 パントマイム
急きょ決まったゲスト。
いやもう一目見てハートを射抜かれたわー。好き好き。
完成度が高いもの、そうでもないもの(笑)、「そっち?!」という驚きと、じわーとくる感動と。
楽しかった~。また見たいなぁ。
 
白酒師匠「大山詣り
ちょっといつもの調子じゃないのかな、というのを感じた一席。
でも嘘をつくととたんに擬音が多くなる熊がおかしい。

「くまの野郎には日ごろからバカにされてなんか仕返しをしてやりたかったんだよ」
「決めたことだから頭を剃られるのは仕方ないけど、何も置いて行くことはないじゃねぇか。」
この台詞に先達さんに内緒でこっそり頭を剃って置いてけぼりにした二人の男の気持ちと、あれほどまでに怒ったくまの気持ちが出ていると思った。

集められたおかみさんたちが実にかわいらしくておかしくてぱーーっと場面が明るくなる。
こういうところが白酒師匠の強味だなぁ。ただただおかしいもの。
 

 

池袋演芸場5月上席夜の部

5/8(月)、池袋演芸場5月上席夜の部に行ってきた。
 
・ひでや・やすこ 漫才
・鯉栄「扇の的」
・可龍「粗忽長屋
宮田陽・昇 漫才
・圓馬「小言幸兵衛」
 
鯉栄先生「扇の的(上)」
砕けたまくらで笑わせて、話に入るとがらっとテンションが上がる。このギャップがたまらない。
たたたたたーっとたたみかけたあと、「これ、何言ってるかわからないでしょ」とぶっちゃけて説明してくれるのもいいなぁ。
せっかくだから最後まで聞きたかったけど途中まで。ちょっとまくらが長かった?それともいつも前半で終わらせるのかな。
 
可龍師匠「粗忽長屋
現代的な感じがするんだよな、可龍師匠の落語って。そこは好き嫌いが分かれるところなのかもしれない。
しょっちゅう聞いてる噺なだけに新鮮に感じた。
 
宮田陽・昇先生 漫才
ネタが一新してる!さすがです!
 
 
圓馬師匠「小言幸兵衛」
笑点のまくらはテッパンネタなのかな。別にやらなくてもいいのに…という気がしないでもないけど、「セコな仕掛け」っていうところがいつもツボで吹き出してしまう。こういうセンスが好き。
 
「小言幸兵衛」はそんなに好きな噺じゃないけど、楽しかった!
小言を言い通しの幸兵衛さんとそれに対してべらんめぇな豆腐屋さん、丁寧な仕立て屋さんの対比が楽しい。
妄想がどんどん激しさを増してきて、歌を歌ったり芝居を始めたり…。それが圓馬師匠の独特なリズムと相まってめちゃくちゃ楽しい

淡々としているっていうんでもなく、でもメリハリがすごーくききすぎているのでもなく、声とリズムと調子が本当に心地よくてほどがよくて楽しい。

時々、独自のクスグリと毒がちょこっと入るのが楽しかった!
 

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

 

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議

 

 ★★★★

日本サブカル界の叡智が人類を代表して交わした“知と恥”の集中論議。その全記録がここに―。全30テーマを収録。  

基本的にバカバカしいんだけど時々「おおっ」っと胸を打つ言葉が出てきたりするので油断できない、この二人の対談。
とんでもないワードが大きめのフォントで出てきたりするのでそちらも油断できない(笑)。

成功しても相変わらず下らなくてB級感を漂わせているクドカンが好きだ。
性欲が衰えてきてからさらに新たな扉が開くとか、もうモテようという欲がなくなったと言いながら、そうするともしかしてモテるようになるんじゃね?と期待するみうらじゅんが好きだ。 

前作同様、まじめに男のエロを語り、まじめにふざけてる。

連雀亭GW特別興行 第一部

5/2(水)、連雀亭GW特別興行 第一部に行ってきた。

・かゑる「都々逸親子」
・昇々「つる」
・正太郎「権助魚」
・まめ平「紙入れ」
~仲入り~
・羽光「教科書の主人公」
・昇吾「ちりとてちん
・竹千代「五重の答」
・三朝「愛宕山

かゑるさん「都々逸親子」
twitterでつぶやきを見ていて、多分苦手だろうなぁと思っていたら案の定苦手だった(笑)。
つぶやきを見て「いいな」と思ったからといって落語が好きとは限らないのだが、つぶやきを見て「うーん…」と思ったらたいてい落語も好きじゃないんだなぁ…。
この日は出演者が多くてまくらが短めだったのでちょっと助かった。


昇々さん「つる」
なんでいつもああいうしゃちこばった喋り方なんだろう。
昇々さん、嫌いじゃないけど、あの口調で古典はちときつい。


正太郎さん「権助魚」
うまいし面白いと思うんだけど、好きじゃないんだよな。
でもめざしの説明には爆笑した。藁を通していてていてて言うのがおかしかった。


昇吾さん「ちりとてちん
今日は私、鬱入ってますから…次に出てくる竹千代さんが明るい人で明るい落語やりますから、こういう人間もいてもいいでしょ、ってことで、って…。
そういう態度ってどうなのよ。いやべつに暗くても鬱でもいいけど…客を引かせるようなことを言って、誰が得をするんだろう。なぞ。


竹千代さん「五重の答」
前に出た羽光さんと二人、落語会の二大エロ担当みたいな言われ方をしてしまっていてやばい。今、検索で「竹千代」って入れると続けて「女好き」って出てしまう。そのせいで自分はよく「女好きなんでしょ?」と言われるんだけど、誰でも人からよく言われることってありますよね。
そんなまくらから「五重の答」。これがすごく面白かった。

お見合いパーティの席で、名前のことや職業のこと、誰からもまったく同じことを言われるのが耐えられない!と思った女が、同じことを答えなくていいように洋服によく聞かれることの答えを貼りつける。そして「それはよく言われる」のポーズと、「それはめったに言われない。ナイス!」のポーズ、この二つだけで会話をする。

すごくバカバカしいんだけど、主人公がすごい女性っぽいのと、男が軽薄な男~って感じがおかしくてツボだった。


三朝師匠「愛宕山
日程が合わずお披露目に行けなかったので、こうして見られて嬉しい。
愛宕山」は三朝師匠の真打が決まってから落語協会で行われている会で見たことがあって、「あ、きっとお披露目でやるんだろうな」と思っていたから、どんぴしゃり。
一八の調子の良さとテンポのよさで気持ちのいい高座だった。

池袋演芸場5月上席夜の部

5/2(火)、池袋演芸場5月上席夜の部に行ってきた。
この間の上野広小路亭ですっかり客いじり恐怖症に。仲入りが寿輔師匠だったので、仲入り後に入場。


・ひでややすこ 漫才
・鯉栄「羽黒の勘六」
・可龍「つる」
・コント青年団 コント
・圓馬「花見の仇討」


鯉栄先生「羽黒の勘六」
貞寿先生のお披露目に通って今までになく大勢の講談師を見て、改めて鯉栄先生を見て思う。
…とても男らしい、と。ここまで男らしい講談師は男の中でもそうはいない。
胸のすくような啖呵に大きな音で叩く張扇。かっこよかった~。


可龍師匠「つる」
「つる」をこんなに面白くできるって可龍師匠ってすごい。笑った。

圓馬師匠「花見の仇討」
せっかくだから?違う噺が良かったけど、二回目だからじっくり見ることができて、それはそれでよかった。
圓馬師匠ってすごくリズムがよくて、それが後打ちっぽい…軽く前に出てからぱっと後ろに下がる、その後ろの方にリズムが乗ってる感じがあって、そこが私は聞いていて気持ちが良くてしょうがない。
声もいいしリズムもいいし、だけどもちろんそれだけじゃなくて、明るくて軽くて端正でちょっと毒があって…。
私はこの師匠の落語のどこにこんなに惹かれるんだろうと、しみじみと見つめてしまった。

好きな人のどこが好きかをあれこれ考えるのってほんと幸せだなぁ。
上席、あと二回ぐらい行けるかな。

ふたつの海のあいだで

 

ふたつの海のあいだで (新潮クレスト・ブックス)

ふたつの海のあいだで (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

イタリア南部、ふたつの海を見下ろす小高い丘に、かつて存在した“いちじくの館”。主の血を引くジョルジョ・ベッルーシは、焼失した伝説の宿の再建を夢見ていたが、ある日突然、逮捕される。身勝手な祖父ジョルジョの言動に反発を覚えながらも、次第に心を動かされていく孫フロリアン。数世代にわたる登場人物の声により、この土地の来歴を説き明かす、スリリングな長篇小説。  

以前読んだ「風の丘」もそうだったが、なかなかにバイオレンス。太刀打ちできないほどの巨大な暴力…これはゴッドファザーに通じるものがあるかも。

積み上げてきたものが暴力によって粉々にされる。しかし何度壊されても主人公フロリアンの祖父ジョルジョはくじけない。暴力に暴力で応酬したり投獄された後もまた「いちじくの館」の再建に乗り出す。
そんなジョルジョのことを「狂人」と思う人もいれば、「英雄」と思う人もいる。

しかしこの物語の魅力はそういう力強い部分だけではない。
大人になってもまだ父親ジョルジョの関心をひきたいフロリアンの父クラウス。
またジョルジョから見れば友情に熱いハンスもフロリアンから見れば身勝手で情がない、親になりきれなかった男でしかない。

善人悪人と両断することはできない人間の複雑さも描かれていてそれがこの物語の厚みを与えている。

好きなタイプの物語ではないけれど面白かった。

第十二回落語協会大喜利王選手権

4/29(土)、池袋演芸場で行われた「第十二回落語協会大喜利王選手権」に行ってきた。
開場前の16時45分頃に行ってみるとすでにものすごい行列が。ひぃーー。前の方の方たちっていったい何時から並んでいたんだろう。こここれは夏の小三治師匠のトリよりもすごいのでは。人気なんだねぇ、文蔵師匠の大喜利王選手権。
結局席はかろうじて一番後ろに座ることができたけど、席取りの剣幕にちょっと心が折れかける、るるる…。

Aチーム、Bチーム、Cチームの3つに分かれて、問題は3問。これって全部文蔵師匠が問題も考えてきてるんだよねぇ、すごい。

印象に残ったことをつらつらと。

・扇遊師匠が大喜利に出るっていうのも凄いけど、まったく肩に力が入ってなくてマイペースなところも素敵~。時々答えに下ネタが入ったりするところもいいなぁ。
・さすがに扇遊師匠をハリセンでたたくわけにもいかないので、そのたびに文蔵師匠の隣に座った南湖先生がばしばしやられて痛そう~。
ジョーカーを引いたのでA~Cチームすべてに参加の花飛さん。落語やつぶやき@twitterは苦手なんだけど大喜利はほどがよくて面白かった。文蔵師匠も「お前、面白いな」と何回も言っていた。そして最終的に優勝!
・楽一さんが参加?!って驚いたんだけど、なんとお題に紙切りで答えるという新しいパターン。これがすごくいい!そもそも参加する心意気にぐっときちゃうんだけど、決勝の時は扇遊師匠にスケッチブックを持たせちゃったのも面白かった。ただものじゃない。

米粒写経のおふたり。サンキュータツオさんのいけすかなさと、一平さんのほどのよさのギャップがすごい(笑)。
・丈二師匠はさすが優勝経験があるだけあって、時々「うおっ!」っという面白い回答。やはり新作派は大喜利に強い。
・百栄師匠は回答が早いし回答数も多いししかもどれも面白い。才能があふれだしちゃってる。
・たまさんも頑張ってた!でもちょっと頭がよすぎる回答で、ショート落語には向いてるけど大喜利向けではない?
・ぴっかりさん、攻めてた(笑)。


・玉の輔師匠の徹底した下ネタ。面白いんだけどそのたびに文蔵師匠の隣に座ったさん助師匠がハリセンで叩かれるので、途中から憎くなってきて「もうやめれーー」と心の中で叫んでしまった。
・心配でしょうがなかったさん助師匠はちゃんと答えてた!っていうか、なんかすごくいい味出してて決勝にも残ってすごい!でもハリセンで叩かれると、覆うもの(髪の毛)がないだけに、痛そうで痛そうで…。それだけが見ていて辛かった。
・一之輔師匠はさすがにソツがない!テングと言われてもそんなの痛くもかゆくもない太さが素敵。ちゃんとツボを押さえていて安定した面白さ。
・一之輔師匠が抜擢されて真打になったことをいじられてるとき、さん助師匠が「私、抜かれました!」と叫ぶと、文蔵師匠が思わずさん助師匠をハグ。笑った~。
・きく麿師匠の変な中国人みたいな口調が最高におかしかった。決勝をやってる時も客席側の扉から顔を出したりして、楽しい~!

次回はもっと広い会場でもいいかも。
前売りを買って座れないのはちょっと悲しい。長丁場だからゆっくり座って見たいよね。

一龍斎貞寿 真打昇進披露興行 番外編

4/29(土)、お江戸日本橋亭で行われた「貞寿真打昇進披露興行~番外編~」に行ってきた。
まさか講談のお披露目に三回も通うことになるとは。我ながらびっくり。
でも貞寿さんが本当にチャーミングだし、出てくる先生方も本当に豪華だし、なによりもあたたかくて朗らかな雰囲気に満ち溢れていて、ついつい行きたくなっちゃうんだよなぁ。

 

・いちか「渋川伴五郎の頓智」
・南左衛門「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵の婿入り」
・愛山「就活物語」
・貞心「次郎長と伯山」
~仲入り~
・口上(愛山·貞寿·貞心·南左衛門)
・貞寿「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」


南左衛門先生「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵の婿入り」
自分が弟子入りした時、師匠は毎日一升酒を飲んでいて、夜飲んだ酒も午前中ですっかりなくなって、午後からまた元気に飲みだすという塩梅。
自分が初めて師匠のもとにおけいこに伺ったとき、午後の1時ぐらいだったんだけど師匠が「お前、稽古の前に酒を飲みたい?それとも稽古が終わってから飲みたい?」と聞いてきた。初めてのことなので「さ、酒?」と驚きながらも「稽古が終わった後にいただけましたら…」と答えると、師匠が明らかに機嫌が悪くなってしまった。これはいかん!と思い「で、では稽古の前に」と言うと「そうかそうか」ととたんにニコニコ顔になり、最初はビール、次は日本酒。あてに出てきたのがインスタントみそ汁。え?汁物?と驚いていると、師匠は味噌汁のわかめを食べてはちびり、お麩を食べてはちびり。自分も真似しながらやっているとそのうち「なんかもう少し食べたいな。じゃ三平のポテトチップスを食べるか」。
三平というのは師匠宅のチワワなんだけど、いったいどうしたらこんなにチワワが大きくなるのかと思っていたら、なんとこの三平、ポテトチップスが大好物。毎日あげてたらこんなになった、と。その三平のポテチがしけないように缶に入っているので、それをつまみに酒。
私の初日の稽古は講談じゃなく酒の稽古でした。

そんな酒飲みの師匠の弟子で自分も酒飲み。
で、貞寿さんが私のところに稽古に来たのが7年前。女流の講談師に稽古をつけたことはなかったので緊張して弟子を全員家に呼び寄せて、弟子がまわりをぐるっと囲んだ中での稽古。
そのあとに親睦もかねて飲みに行くことにしたのだが残った弟子二人が下戸。4人で飲みに行ったのだが、弟子たちはむしゃむしゃ食べてお腹いっぱいになったらぼーーっとしている。
何かいろんな話をしてほしかったから呼んだのに!
一方貞寿さんは酒が好きで話題も豊富で気が付いたら二人で飲んで話をしていて、なんだ、弟子なんか呼ばなくても良かった!

いやぁもう楽しい楽しい。話しはじめた途端に「大好きだーー!」と思った。
表情豊かで明るくて朗らかで優しくて。お稽古に熱心に通ってきて人懐こくてお酒の付き合いもいい貞寿さんをかわいがっているというのが伝わってきて、幸せな気分になる。
トリで貞寿さんが「赤垣源蔵徳利の別れ」をやられるそうなんで、話がつくのはあまりよろしくないですが、源蔵の人となりがわかってよりトリネタが映えることを期待して…と「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵の婿入り」。

赤垣十内の娘のおとくは、背が低くてずんぐりむっくりで「カボチャ娘」と陰口をたたかれていて、お婿さんが来ない。父の十内はそのことに胸を痛め、本人も気にして家に籠っている。
桜の季節になりお花見にでも出かけろと勧められ嫌々ながらでかけたおとく。帰りに酒に酔った浪人者にからかわれ、剣術の心得もあったのでかんざしで応戦すると、頭に血が上った浪人が剣を抜いた。なすすべもなくいるところを、通りかかった若侍が助けてくれた。これが塩山源蔵。
それ以来彼に恋い焦がれやせ細ってきたおとくを心配し事情を知った十内は、出入りの刀屋の与平に間に入ってくれるように頼む。
まとまらなくても10両、まとまれば50両いただけると聞いた与平が脇坂家を訪ね、兄に話をすると…。

もちろん初めて聞いた話だったんだけど、面白い!まるで落語のよう。
そして上方落語が聞きやすいように、上方講談ってすごく聞きやすいんだなぁ。笑いっぱなしで楽しかった~。


愛山先生「就活物語」 
顔も怖いしきっと堅~い講談をされるんだろうなと思っていたら全然そんなことはなくて、まくらも楽しいし、話もなんと新作!
毎日新聞をやめて就職活動の指南をしている中田先生から聞いた話を講談にしたという実話講談。
ちょうど長女が就職活動中ということもあって興味津々で聞いていたのだけれど、いいなぁ…なんかすごくよくわかる。そうだよなぁ、結局は人間を見ているんだよな、企業は。そうであってほしいという想いもあるし、長年勤め人をしている側からすると結局はそこが一番肝心なんだよなとも思う。

まくらでサラリーマン川柳(「サラリーマン やる気はないけどいる気はある」)を紹介されたんだけど、そうそう!わかるわかる!と笑ってしまった。
楽しかった!
きっと苦手と思い込んでいた愛山先生、こんなに面白いとは。もっと見てみたくなった。


貞心先生「次郎長と伯山」
講談師・京伝が次郎長宅を訪れる。着ている着物もぼろぼろで見るからにおちぶれている。博打が好きで身をもちくずしていたのだが、次郎長のことを書いた本が出たことを知っていてもたってもいられずに訪ねたのだという。
それを聞いた次郎長が、今からでも遅くないから、私のことを講談にして私の前でやってくれ、と言う。京伝は「必ず作ってみせます」と約束をする。

それから一生懸命、次郎長のことを講談にしてみるのだが、芸があまり良くないものだからやってみてもお客の反応も良くなくて、出番ももらえず、下足番になりさがってしまう。
そのころ売出し中だった伯山という講談師のもとを訪ねた京伝。自分が書いた次郎長伝をどうか作り直して高座にかけてくれないか、ともちかける。
言われた伯山は快諾し、自分の家の近くに京伝の家を借りてやり何かと面倒をみてやりながら、次郎長の話をあれこれ聞くのだが、ある時女ともめ事を起こした京伝は面目なかったのか書置きを残していなくなってしまう。

それから何年もが過ぎ、次郎長伝を高座でかけるようになった伯山。
熱海で落ちぶれた京伝と再会し、京伝の前で新しい次郎長伝をかける。そして宿の主人に京伝の世話をしてやってくれと金を渡すのだが、しばらくすると京伝は亡くなってしまう。

淡々としたところと、息もつかせぬ迫力のあるところの対比が見事で、じーーーっと集中して聞き入ってしまった。
貞心先生、素敵だなぁ…。特に最後、伯山が次郎長伝を読み始めるところでは、鳥肌がぞわぞわ~。すばらしかった。


真打披露口上(愛山先生:司会、貞寿先生、貞心先生、南左衛門先生)
司会の愛山先生がちょっとブラックで、でも愛嬌があるっていうか愛情があるっていうか…すごく楽しい口上で。
南左衛門先生も自分の弟子のように貞寿さんをかわいがっているのが伝わってきて。
それを聞いて貞心先生がちょっと張り合って見せるのがまたかわいくて。

すごく楽しくて素敵な口上。
三回行ったけど三回ともカラーが違っていて素晴らしかったなぁ。


貞寿先生「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」
この三人が口上に並ぶってすごいでしょ!!と貞寿さん。今回の番外編を心の底から楽しんでいるのが伝わってくる。
好かれたかったら好きになるのが一番なんだなぁ、と貞寿さんを見ているとしみじみ思う。こんなに手放しで尊敬して好きでいてくれたら、そして講談が大好きで熱心で稽古ではすっぽんのように食いついてきてくれたら…そりゃこわもての先生でも思わずにっこりしちゃうよなぁ。

貞心先生から二ツ目になった時に教えてもらったという「赤穂義士銘々伝 赤垣源蔵徳利の別れ」 。
今自分ができることを精いっぱいやろうという気合十分で、迫力があって、でもしんみりと悲しくて…とてもよかった。泣いてしまった。


みんながにこにこ顔の口上。

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月刊少年ワサビ 第97号

4/28(金)、らくごカフェで行われた「月刊少年ワサビ 第97号」に行ってきた。


・わさび「道灌」
・わさび「メイドのクイズ」(神対応ミケランジェロ、敗者復活戦)
~仲入り~
・わさび「転宅」


わさびさん「道灌」
この見た目のせいかよく人に軽く見られるというわさびさん。「苦労知らずでしょう」と言われることも多いし、後輩にもなめられている。
木りんさんという後輩がいるんですけど、背が2mあって顔もハンサムで能年ちゃんに似てる。
この間楽屋で一緒になったら「兄さん、BS笑点出てますよね。すごいですね」と言われたので謙遜の気持ちで「あー運がよかったんだよ」と答えたら「そうっすね。あにさんってほんとに運がいいですね」。
え?なに?その言い方?いやでも別に嫌味な気持ちで言ってるわけじゃないのか、と思っていると「ほんとに運がいいですね。運だけは」とダメ押し。

あと協会ちがいますけど宮治さん。この人は年季は結構下なんですけどなにせNHKの新人演芸大賞取ってますから、いつもあからさまになめてるなぁって態度なんです。
この間もとある会で一緒になって、私は前方で彼はトリ。出番が終わった私に「今日はどんなお客さんですか」と聞いてきた。あら珍しやと思い「よく笑って下さるお客様だよ。どちらかというとわかりやすい噺の方がうけるかんじ」と答えると「初天神にするか蒟蒻問答にするか迷ってるんですよ」と言ったあとに、「うーん…でもあれだな、初天神は…蒟蒻問答は…うーん」と自分の世界に入ってしまった。
言ったタイミングも悪かったんだと思いますけどそこで私が「蒟蒻問答より初天神の方が…」と言ったら、宮治さんが「はぁ~?!」。
はぁ?ですよ。心底バカにしたような顔つきで。ほんとにもう…。

…ぶわははは。
わさびさんがそういう態度をとられるってすごくよくわかるなー。見るからに気弱そうだからなー。でもわさびさんって実はすごくスペックが高くて、ああいう大喜利でも抜群にセンスがいいし、気遣いもすごくできるし、一本筋が通ってるんだよね。
なめちゃいけない。

そんなまくらから「道灌」。
特に何か大幅に変えたりはしてないオーソドックスな「道灌」で、なぜ今道灌?とちょっと思いながらも、柳家らしい道灌であった。


わさびさん「メイドのクイズ」(神対応ミケランジェロ、敗者復活戦)
毎月三題噺を作ってくるっていうのをずっと続けているのもすごいし、それが毎回ちゃんと「聞ける」レベルのものになっているっていうのもすごい。
メイドカフェメイドさん。いつも激しくダメ出ししてくるお客さんにへこみがち。
あの人は開店当初から来ていて、歴代のメイドさんのいいところだけ(マイさんの美貌、エリちゃんのアニメ声、シズさん(60歳)の大人の対応)抽出した理想のメイド像が頭の中で出来上がってしまっているから、それと比べるとどうしても文句が出てしまうんだよ、と店長。
そうだ。彼が答えられないようなクイズを出してヘコませればプライドが高いから来なくなるかもしれない。
と考えて、ミケランジェロのクイズをつくって…。

最初の客は初めてで素直、二人目はオタクで変な感じ、三人目がその問題のダメ出しする常連。この造詣がすばらしい(笑)。特にオタクの変な感じがすごくリアルでおかしかった!


わさびさん「転宅」
ネタ卸しとは思えない完成度。
泥棒が色仕掛けされたとたんにかっこつけだすのがたまらなくおかしいし、お菊さんはちゃんと色っぽい。
そこかしこにわさびさんっぽさがちりばめられていて感動。