りつこの読書と落語メモ

はてなダイアリーからブログに移行しました。

柳家甚語楼の会

10/14(日)、お江戸日本橋亭で行われた「柳家甚語楼の会」に行ってきた。


・市若「出来心」
・甚語楼「高砂や」
・ほたる「居酒屋」
・甚語楼「茶金」
~仲入り~
・甚語楼「笠碁」


甚語楼師匠「高砂や」
この仕事をしていると、3年に一人ぐらいの割合でいきなり現れます。熱烈なファンという方が。
突然現れるんです。そしてどんな会にも来てくれる。地方の小さな会にも「ここまで来ちゃいました!」と言って現れる。そして毎度毎度楽屋に手土産を持ってきてくれる。そんなことしなくていいですよと言っても毎回持ってくる。
そのうち見に行くだけじゃ飽き足らなくなるんでしょうか。自分の地元とか実家のあるところとかで会をやろうと思いますが出て頂けますか、と仕事まで下さったりする。
でもふと気が付くと…あれ?あの人来なくなった?と気づく。これがちょうど3年ぐらいの周期なんです。
正直、そこまでしてもらっても我々そんなにうれしくないです。そういうことに慣れてないからどうしていいかわからないんです。
それよりもこうして黙ってきてくださる。来ても何もくださらない。だけどこうして何年も来て下さる。それがなによりありがたいです。だからみなさんも何も持ってこなかったからって卑下することはありません。

…ああ…とても痛いお言葉…。
私は毎回楽屋見舞いを持って行ったり会を主催したり地方まで追っかけたりはしてないけど、大好きな師匠を追いかけるように寄席に通い、人伝に聞いた秘密の会にも伺い、誕生日プレゼントを贈り、師匠に嫌われてしまった経験が…。
好きだからといって通いすぎたり、プレゼントしたりするのは良くないんだなということを痛感。
ぶっちゃけて話してくれてありがとう…甚語楼師匠…感謝。でも痛かった…。本当のことって痛いんだね(涙)。でもきっと来なくなった人の中には、師匠への熱が冷めたせいじゃなく師匠に嫌われてると気づいたからという人もいるんじゃないかな。

そんなまくらから「高砂や」。
この噺がこんなにおもしろいってもう甚語楼師匠最高でしょう!
大家さんとはっつぁんの会話が楽しすぎて、一つ一つのやりとり全部に笑ってしまう。
大家さんの奥さんのことを「古い」と言い放ったはっつぁん。この古い、ばばあ、だけでめちゃくちゃおかしい。
テンポの良さと表情の豊かさと間の良さでほんとに楽しいんだよなぁ。すばらしい。


ほたるさん「居酒屋」
楽しかった!小僧さんがかわいいし、酔っぱらいのめんどくささも許容範囲(笑)。うざいけど、めんどくさくなる一歩手前で引くところがよい。
よかった。


甚語楼師匠「茶金」
これがまたよかった。
こういうお話っぽい落語もきちんと…そしてちゃんと笑いどころもたくさん作って…でもそれが全然邪魔にならない、甚語楼師匠の落語って最高ー。

甚語楼師匠「笠碁」
大好きな噺。
二人のご隠居のチャーミングなこと。
片方は強情、もう片方は我がまま。大喧嘩をしたけど子どもの頃からの友だちでもう近所に残ってる同級生はいなくて…。
二人の友情とへぼな碁でも勝ちたくて一生懸命やってる様子が伝わってきて、楽しかった~。
仲直りのシーンでは涙が出てきた。ああ、仲直りできてよかったーと思って。

まくらも含めて三席ともとても楽しかった。甚語楼師匠、ほんとに面白い!

柳家小はぜ勉強会 其の十

10/13(土)、和光大学ポプリホールで行われた「柳家小はぜ勉強会 其の十」に行ってきた。

・小はぜ「浮世床(将棋、本、戦争ごっこ)」
・小はぜ「目黒のさんま」
~仲入り~
・小はぜ「出来心」

小はぜさん「浮世床(将棋、本、戦争ごっこ)」
前回この会で3席ネタ卸しをしたという小はぜさん。やればできるもんじゃないかと思ったものの、身体は正直。その日の晩に発熱。やはり負担が大きかったらしい。
そしてこんなことを言うといやらしいようですけど、考えてみたらもったいないじゃないですか、ネタ卸ししたものを3席いっぺんにやっちゃうっていうのは。
なので今日はネタ卸しは1席です。


それから「落語心中」に出たという話。
でも出たと言っても違うんです、出演っていうんじゃなくて、例えば登場人物が通るシーンに誰もいないとおかしいじゃないですか。ですからそこに前座の後ろ姿がちらっと映る、その程度です。
なので私はたいていが舞台袖で太鼓を叩いてたりそのポーズをとったりしていたんですけど、撮影所が板の間でしかも座布団が置いてない。そこに直に座って…それが10時始まりで終わったのが夜の10時。修業でした…。

そんなまくらから「浮世床」。
以前は通しでやっていたけど、今回は切り取って。前に聞いた時より冗長なところがなくなって、笑いどころが多くなってる。
きっと結構高座でかけているのかな。


小はぜさん「目黒のさんま」
今日二回目の「目黒のさんま」!
お殿様が初めてさんまを食べるところ。じーっと見つめておそるおそる口に入れてもぐもぐして…おいしくて顔がにこっとするところがかわいい~。
そして恋い焦がれたさんまがつみれの形で出てきた時、「ようやく会えたのう…こんな変わり果てた姿になって」というのに笑った。
楽しかった。


小はぜさん「出来心」
ネタ卸し。ああっ「出来心」。小三治師匠の十八番。小はぜさんは前座で何回小三治師匠の「出来心」を見て来たんだろう、なんてことを思って勝手にじーんとする。いいなぁ、この噺を選ぶところが。

そして小三治師匠の孫弟子らしくもちろん通しで。
まぬけな泥棒のまぬけぶりがかわいい。花色木綿の一つ覚えもいいなぁ。この大家さんとの掛け合いがもっといい間になったらもっと面白いと思う。

小はぜさんの志が見えるような「出来心」だった。これから先が楽しみ。

朝の九時落語

10/13(土)、UNA galleryで行われた「朝の九時落語」に行ってきた。


・さん助「親子酒」
・さん助「目黒のさんま」


さん助師匠「親子酒」
弟弟子の小んぶさんとお寺の落語会の仕事に行った、というさん助師匠。
真打ちになってからこんな風に弟弟子と一緒に仕事という機会も減ったので久しぶりに聴いてみようと思って袖で小んぶさんの落語を聞いていたら、小んぶさん「時そば」をたっぷり30分。そばを食べるところを非常にくさくやっていたらしく、もう汗だく。
でも自分もそういえば二ツ目の時は汗かいて一生懸命やってたなぁと思い出し、やっぱり自分もその気持ちを忘れずに頑張らなきゃと思った、と。

そんなまくらから「親子酒」。
さん助師匠の「親子酒」って初めて聴くし、なんか意外!

息子と禁酒の約束をするシーンはなく、おかみさんに酒をねだるところから。
この大旦那、息子と禁酒の約束をした次の日にもう酒をねだっちゃってる。
そしておかみさんにそのことを指摘されると「あれは私と倅との約束。お前さんとの間の約束じゃない」と屁理屈。
また一杯だけと飲んだのに、さっさと二杯目を要求し、おかみさんが「一杯だけの約束」と言うと、「あれは私の一杯。今度はお前からの一杯」とまたわけのわからない屁理屈。

でもなによりもおかしかったのが、帰ってきた息子がべろんべろんで大旦那もべろんべろん。二人が嬌声を上げてなんか言ってるんだけど、それが全く何を言ってるのかわからない!
それがもうクレイジーすぎて大笑い。
そしてこれがさん助師匠がまくらで言ってた「ニツ目の頃の全力でやる落語」なのかと思うと、それもまたばかばかしくておかしい。
聞き飽きた噺もこんなにおもしろいか、さん助師匠。笑った笑った。


さん助師匠「目黒のさんま」
ここに出てくるお殿様が松江から江戸へ参勤交代で来ているお殿様、と紹介があったのは初めて。
そしてこのお殿様、自分から目黒へ野がけに行こうと家来を誘い、馬に乗って走り出す。また馬がなければ自分の足で走らなければならないと言って家来と駆け比べをするのだが、そこで八百長なしで勝つ。
お殿様が昼食にしようと言うと、後から届ける手はずになっているがまだ届いてない、との返事。
それで待っているのだがそこでさんまの匂いがしてきて、家来が譲ってもらいに行くのだが、家来のエラそうな物言いが気に食わないとお百姓は渡してくれない。
そこへ殿が直々に行って「ご馳走してはくれないか」と頭を下げると、百姓は感心して「それならば喜んで」とさんまを8匹くれる。

殿は一人で全部平らげ城へ帰り、何日かしてから「またさんまが食いたい」「あの時は自分一人で食べて心苦しかった」と言い、さんまを買い占めてきて自分の城で七輪で焼いてみんなでうまいうまいと食べる。

江戸城へ上がった折に、仲良くしている他の殿様にさんまのことを自慢し、その殿様がそんなにうまいものならと房州から取り寄せるのだが、料理人がこれを蒸して骨を抜いてぐずぐずになったものを出したので、この殿様は「さんまとはたいしてうまくないではないか」と思い、次の日これを告げて「そのさんまはどこで求めた?」という展開。

…他の人がやらない形をまた探してきましたね…?
なんかオーソドックスな形の方が面白いような気がしないでもないけど、立派なお殿様でそれはそれで気持ちがいい。さんま食べたくなった!


そしてこの日はさん助師匠の「雑排」がラジオ「真打競演」で流れるということで、お客さんみんなでラジオを聞こうという素敵企画。
よくさん助師匠が承知したなぁと思っていたら、やはり「考えてみたらこれは相当恥ずかしい…」と一番後ろの席へ。
高座にラジオを置いて、ご本人は一番後ろの席にお隠れになり、みんなで前を向いてラジオに耳を傾けるという、かなりシュールな図。
私もそれは一緒に聞いてるこちらも恥ずかしいのでは…と思っていたんだけど、なんか楽しかった。みんなで拍手して面白いところはあはは!と笑って。


地元の方を対象にひっそりやってる会とのことだったけど、twitterで告知してくれたおかげで行くことができてうれしかったな…。
また行ってもいいのかな…。
こうやってブログに書いてよかったのかな…。

 

池袋演芸場10月中席夜の部

10/12(金)、池袋演芸場10月中席夜の部に行ってきた。
里光師匠、初トリ!嬉しい!


宮田陽・昇 漫才
・小助六宮戸川(上)」
・笑遊「くしゃみ講釈」
東京ボーイズ 歌謡漫談
・里光「木津の勘助」


助六師匠「宮戸川(上)」
学校寄席のまくら。休憩のたびに霧吹きで先生が子供たちに水を撒く図を思い浮かべるといつも笑ってしまう。
そして学校寄席の時は持ち時間が1時間でしたが、こちらの持ち時間は18分です。
あとおかしかったのは「落語って知ってる?」と保育園児に聞くと「知ってるー」。
へぇー意外!と思いながら「落語にはいろんなお話があって、面白い滑稽噺」「知ってるー」。
そこまで話して気が付いた。そうかこれぐらいの小さい子ってなんでも「知ってる」って言うんだ!
このまくらもすごくおかしかった。

助六師匠の「宮戸川」初めて聴いた!というか小助六師匠が珍しくない噺をするとそっちが珍しくて驚いてしまう。
お花さんに冷たい半ちゃんが小助六師匠に重なって見えておかしい。そしてまくらで話していた持ち時間がサゲにつながる面白さ。
楽しかった。


笑遊師匠「くしゃみ講釈」
あまり笑わないこの日のお客さんを「いいねぇ。こういうお客さん。やりがいがある」とか「私は粛々と落語をやって帰るだけ」と言いながら「これからくしゃみ講釈という落語をやります。これは権太楼師匠に教わった大好きな噺で…」って…こういう始まり方も珍しくて笑ってしまう。

時間の都合か、覗きからくりを語るところがなかったのは残念だったけど、ハイテンションで楽しい!
講釈の部分がたっぷりでそれが野次るのを忘れて聞き入ってる主人公と重なって面白い。しかも「ほら言えよ」と兄貴分に言われて「あ、ああ。…大丈夫ですか?」に笑う。 


里光師匠「木津の勘助」
上方落語江戸落語の違いについてのまくら。
江戸弁もそうだけど、上方落語で使われる大阪弁も実は独特で関西弁ならなんでもOKというわけではないということを聞いて、目から鱗。そうだったのか。あーでも確かに上方落語を聞いていて耳に心地いい関西弁とそうじゃないのがあるかも。私の中で聴きやすいの最高峰は米朝師匠だなぁ。あれが正しい上方落語大阪弁

「初めてのトリで正直緊張してます」と言いながら、「木津の勘助」。初めて聴く噺。
後で調べたら鶴光師匠がかけられてる噺だった。

材木問屋を営んでいる淀屋十兵衛は、淀橋を自費で作らせるぐらいのお金持ち。そこへある日みすぼらしい身なりをした若い男が訪ねてくる。「十兵衛に会わせろ」と言うその男をあからさまにバカにして適当にあしらおうとする番頭と言い争いをしていると、そこへ十兵衛が現れる。
十兵衛が訳を尋ねてみると、どうやら墓参りの時に隣の小さな墓にひょいと置いた袱紗、中には二十両と印が入っていてそこに「淀屋十兵衛」と書いてある、それでここまで持ってきた、という。
それは御親切に…と十兵衛がお礼に十両を渡そうとすると「これだから金持ちは嫌や」と怒り出す男。
男は、十兵衛が袱紗をひょいと置いた小さな墓がうちの墓や。どんなにみすぼらしくたってうちにとったら大事な墓。それをみすぼらしいからって物置きにするとは何事や、と言う。
それを聞いて十兵衛が「それは大変申し訳ないことをしました」と言って頭を下げるとその男、「さすがこれほどの身代を築いたお方や」と急に態度を軟化させ、自分は木津に住んでいる勘助と名乗り、近くに来たらお茶でも飲みに寄ってくれと言って帰って行く。

それから十兵衛は勘助の家を訪ね、付き合いが始まる。
勘助は貧しいけれどものすごい物知りで知らないことがない。それで十兵衛もなにかと頼りにして相談をしたりと家を行き来して親しく付き合うようになる。
そうこうしているうちに、十兵衛の娘のお直が勘助に恋煩いするようになり、それを聞いた十兵衛は大喜びでお直を勘助の嫁にやる。

お嬢様育ちのお直だったが勘助と暮らすうちに、お百姓のお嫁さんとしての仕事をきちんとこなすようになる。
そうこうしているとある日勘助が世話になった男が米相場で財産を失ったと聞いて真っ青な顔をして帰ってくる。それを聞いたお直は嫁に来るときに実家からもらった金があると言って差し出す。
お金を持たずに生きてきて金持ちをバカにしていた勘助が、知り合いが一文無しになったと聞いてお金があれば助けてやれるのに…と言うと、女房のお直がぽんとお金を差し出し、それを受け取り、さらにその金で大事業を始める、というのも面白い。

上方落語にはこういうどうとらえたらいいのかわからない噺があるなぁ。上方落語の人情噺なのかな。

面白かった!

末廣亭10月上席夜の部 林家たこ平改め林家たこ蔵 真打披露興行

10/10(水)、「末廣亭10月上席夜の部 林家たこ平改め林家たこ蔵 真打披露興行」に行ってきた。

・市馬「粗忽の釘
馬風禁酒番屋
~仲入り~
・真打昇進披露口上(玉の輔、馬風、たこ蔵、正蔵、市馬)
・ニックス 漫才
正蔵「読書の時間」
・歌之介「お父さんのハンディー」
仙三郎社中 太神楽
・たこ蔵「お見立て」


市馬師匠「粗忽の釘
市馬師匠らしいのんびりした穏やかな「粗忽の釘」。
おかみさんにやいやい言われた大工さん、ぶつぶつ文句を言いながら謝りに出かけて行くんだけどちょっとすると「あーかかぁの言う通りだな。おれは落ち着かなきゃなんねぇ。かかぁの言う通りにしときゃまちがいねぇや」。
あがれともいわないのにあがってきた大工さんにお隣さん。
「いや、あがってきちゃったんだよ。しょうがないよ。お茶を出しとくれよ。こういう人みたいだから」。
迷惑そうというより、こういう人なんだな、これから長い付き合いになるなというあきらめにも似た受け入れ体制が見ていて心地いい。
やわらかでふわふわと楽しい「粗忽の釘」だったなー。
私、年々「どや!」な芸が苦手になってきて、ふわっとした落語が好きになっていくな。


馬風師匠「禁酒番屋
まくらなしで「禁酒番屋」。
馬風師匠の落語、初めて見た!
番屋の役人が怖い。震え上がるわ、こんなのが入口にいたら。
近藤氏のところに菓子屋が来たというので怪しんで中を調べようとするんだけど、「ご進物」と聞いて「ああ、そうであろう。おかしいと思ったわ。調べんでもよろしいな」という言い方がとても自然で、あーよかった…とこちらも見ていてほっとしてしまう。
でも「どっこいしょ」と聞いて「待て!」と言うのがまた怖くて、震え上がる~。
そして番屋の役人、油屋が来た時点でかなり酔っていて、3番目が来たときはもうべろんべろん。
「小便」と聞いても「よきものを持ってきおった」とつい言ってしまうおかしさ。
小便とわかって怒鳴りたいけど怒鳴れなくて悔しくてぶるぶる。
余計なギャグとか一切入れない、意外にも(失礼!)ちゃんとした「禁酒番屋」だったー。びっくりした。ええもん見た。


真打昇進披露口上(玉の輔師匠:司会、馬風師匠、たこ蔵師匠、正蔵師匠、市馬師匠)
口上で左から二番目に座る馬風師匠を見たのも初めてでまたまたびっくり。
口上はいつもの通りだったけど、おふざけが少な目だったかも。こういう日もあるんだ!
正蔵師匠が、たこ蔵師匠が自分のことを鈴本で出待ちをして「弟子にしてください」と言ってきた時にいかにも怪しい雰囲気だったけど、話をしてみると目の奥がきらきらしていて純粋なものを感じた、と。また、自分がこぶ平から正蔵になるところを彼は目の当たりしていてそれもあって自分の「蔵」の字をとって「たこ蔵」になりたい、と言ってきたんだろうと思ってとても嬉しかった、と語っていたのが印象的だった。
たこの後ろ幕がとてもかわいいかった!あと、舞台上に置いてあるたこのぬいぐるみも!
この日のお客さんは口上一つ一つに心のこもった拍手…なんかじーんとした。


正蔵師匠「読書の時間」
この日のお客さんにとても合っていたみたいで、すごい爆笑の渦だった。
カバーは「竜馬が行く」だけど中身はエロ本。それを先生に「読みなさい」と言われ「はい」と答えてから読んでびっくりして目を白黒させるのがとてもおかしい。
こういう昭和な新作の方が合ってる気がする、正蔵師匠。


たこ蔵師匠「お見立て」
まくらなしで「お見立て」。
ちゃんとしたところと壊れたところのある「お見立て」で面白かった。
木兵衛はちょっとやりすぎかなぁという気がしないでもなかったけど、花魁はいかにも気だるくていい雰囲気。喜助もいい感じ。
喜助が喜瀬川花魁と木兵衛の間を行ったり来たりしながら「あーもうやめよう、この仕事」「やり直したい。人生やり直したい。明日から」とつぶやくのがおかしかった。
そうは見えなかったけど実は相当緊張してたのかもしれない。なんとなくそんな気がした。

送り火

 

送り火

送り火

 

 ★★★★

159回芥川賞受賞作

春休み、東京から山間の町に引っ越した中学3年生の少年・歩。
新しい中学校は、クラスの人数も少なく、来年には統合されてしまうのだ。
クラスの中心にいる晃は、花札を使って物事を決め、いつも負けてみんなのコーラを買ってくるのは稔の役割だ。転校を繰り返した歩は、この土地でも、場所に馴染み、学級に溶け込み、小さな集団に属することができた、と信じていた。
夏休み、歩は家族でねぶた祭りを見に行った。晃からは、河へ火を流す地元の習わしにも誘われる。
「河へ火を流す、急流の中を、集落の若衆が三艘の葦船を引いていく。葦船の帆柱には、火が灯されている」
しかし、晃との約束の場所にいたのは、数人のクラスメートと、見知らぬ作業着の男だった。やがて始まる、上級生からの伝統といういじめの遊戯。

歩にはもう、目の前の光景が暴力にも見えない。黄色い眩暈の中で、ただよく分からない人間たちが蠢き、よく分からない遊戯に熱狂し、辺りが血液で汚れていく。

豊かな自然の中で、すくすくと成長していくはずだった
少年たちは、暴力の果てに何を見たのか――

 


父親の転勤で東京から津軽に転校してきた歩。男子生徒が5名しかいないという逃げ場のない環境の中で不穏なものを目にしたり感じながらも、とりあえず自分に危険が降りかからないよう、スイスイと泳いできた歩がたどり着いた場所は…。

見て見ぬふりをして「公正」を装っていた自分に向けられた憎悪と暴力。
圧倒的な暴力を前に立ちすくむ歩は自分そのもので、読んでいて胸が苦しくなる。
息子は学校で楽しくやっていると信じて、小遣いを持たせて送り出した両親はこのあとどうなるのだろう…。

以前読んだ「共喰い」もそうだが、好きな話ではないが風景や情景がいつまでも心に残る。
話の内容が好きじゃなくても、小説として好きだなぁ素晴らしいなぁと思うことがある。この作品はまさにそう。

こんなに陰鬱で陰湿な話はまったくもって好みではないし、読み始めてから読み終わるまで「私はなんでこれを読んでいるんだろう」と辛くて仕方なかった。
最後まで読んで「そんな…」と呆然となったけれど、しかしなにか強烈に心に残るものがある。読んでよかったと思ってる。

五街道雲助独演会 横浜にぎわい座

10/9(火)、横浜にぎわい座で行われた「五街道雲助独演会」を見に行った。
そういえば最近雲助師匠を見てないなと先月気づいたら見たくてたまらない。浅草見番に行きたいけど日曜日はちとハードルが高い。と思っていたらにぎわい座で雲助師匠が「品川心中」の通しをやると…!ネットで見たらまだ席があったので購入していそいそと出かけた。

 

・一猿「鮑熨斗」
・雲助「庚申待ち」
~仲入り~
・雲助「品川心中」(通し)

 

一猿さん「鮑熨斗」
できる前座さんなんだろうなぁ、いろんな会で見る一猿さん。
とても面白い「鮑熨斗」だった。
甚兵衛さんがいかにも人が良くてぼーっとしていてかわいい。
おかみさんに50戦借りてきて尾頭付きを買ってきて大家さんの婚礼に持って行って口上を述べたら苦労人の大家さんのことだから1円はくれるだろうと言われた甚兵衛さんが「ああ、これ銭儲けなのか」と言うのがなんともおかしい。
魚屋さんで「お前さんだから60銭のところ50銭にまけとくよ」と言われて、「じゃ俺から60銭で買い取らない?」とそこでも銭儲けをしようとするのは、この件が頭にあったからなんだな、ということに初めて気が付いた。
時間の関係で途中で切ってたけど、通して見たいな。


雲助師匠「庚申待ち」
今日はうちの師匠の法要がありました、と雲助師匠。
命日は今日じゃないんだけどお寺さんとこちらの都合で今日になった。
弟子も10名ほど、中尾彬さんと志乃さんはじめご家族の方も集まって。
3女のことを我々「ちゅんちゅん」って呼んでいて…私が入門した時小学生低学年ぐらいだったか。そのちゅんちゅんがすっかりおばさんになっちゃって…というのを本人に話したら「おばさんだなんて…もう60になって孫もいるのよ」と言われた。
えええーあのちゅんちゅんに孫がーー?!そりゃこっちも年を取るわけだ、へぇーーなんてね。妙に感慨にふけったりして。
で、お坊さんがお経をあげてるとき、我々噺家は後ろの方に座ってたんですけど、ヒソヒソバカ話して笑ったりしていたら、我々の前に総領弟子の伯楽が座ってて「おい、お前らうるさい」なんて注意してきたりして…。そうしたらそのすぐあとに今度は伯楽兄さんの携帯が鳴り始めて…なのに本人が気が付かないんだよ。しょうがないから「兄さん、携帯鳴ってるよ」って教えてやってね。あー考えてみたら兄さんも80近いのか、無理もねぇな、なんて。ほんとにじじいばかりになっちゃった。
弟子はみんな師匠を超えちゃった。超えたって芸で超えたわけじゃない、年がね。

…まくらで近況をしゃべる雲助師匠を久しぶりに見てカンゲキ。いいなぁ、なんかこう…肩の力が抜けていてしゃちこばったところが全然ないんだけど、すごくかっこいい。

それからいろんな風習がなくなってきた、という話。そのかわり昔はなかったのに今では定着したイベントもある。クリスマスなんていうのはそうだし、けしらかんのはバレンタインデー。その日は女から男にチョコを渡すことで愛の告白をするなんて…そんなことしたら誰がもてて誰がもてないか一目瞭然じゃないか。
ま、私は若い時分はこれでもずいぶんもててたくさんもらったものですが、年とともにどんどんもらいが少なくなり…。それで僻んでこんなこと言ってるんじゃないですよ。
さらにけしらかんのはホワイトデー。男から女に返さなきゃいけない、しかも倍返しって…。
もっとわからないのはハロウィン。どういうことをやるかっていうのはわかってます。かぼちゃくりぬいて目の穴をあけたり、コスプレして電車に乗り込んできたり…でもあれをどういういわれでもってやってるのかがわからない。
それでそういうことに詳しい先輩に聞いてみたら、「あれは…なんだ、西洋のお盆みたいなもんだ」と言われました。なるほど!確かに日本の盆でも茄子に足つけたりするから、コスプレもそういうようなもんなのか。
でも西洋のお盆をやるならお盆で日本のお盆をやればいいのに。

そんなまくらから「庚申待ち」。
これ、前に「らくご街道」で聞いたことがある。
庚申の日に宿屋に集まって寝ないでみんなであれこれ話しをしてつなぐ。
どんな話でもいいということでそれぞれが順に語っていくんだけど、怪談噺や講釈のような形で始まり最終的には落とし噺で終わるばかばかしさ。
サゲを言った後に「…若干まだわかってない人もいるみたいだけど、わからない人は家に帰ってから調べてください」と言ったのがおかしかった~。
そしてこれがくまさんのほら話になって「宿屋仇」につながっていく。
やいやいやってる雰囲気がとっても楽しくていくらでも聞いていられる感じ。楽しかった!


雲助師匠「品川心中(通し)」
紋日の金を用意できなくて、もうこんなふうに年をとってどんどんみじめになるなんて嫌だから死んじまおう、一人で死ぬとみじめだから男と死んで心中と浮名を残そうと考えるお染。
心中相手を紙をぺらぺらめくりながら「あーこの人は子どもが生まれたばっかしだから気の毒だよ」「この人は病気のおっかさんの看病をしてるし」「なかなかいないもんだねぇ」って、雲助師匠が斜になって選んでいる、その姿が色っぽくて気だるくて笑ってしまう。
今まで邪険に扱われていたのに「相談したい」と手紙をもらって浮足立ち、お染が「こんなことはお前にしか言ってない」「死のうと思う」と言うと「それじゃ俺も一緒に死ぬよ」とその気になってしまう金蔵が気の毒でもありばかばかしくもあり。
心中の方法を考えるのに、飛び込むのはやめよう、おれ泳げないんだ、とか、実感が全く沸いていないのが伝わってくる。
それでもその晩たっぷりサービスしてもらって夢のような心持で家に帰って家財道具を処分して白装束に匕首を買って親分のところに暇乞い。そこで親分に「品川の女に入れ込んでいるらしいが、金がないから心中してくれと言われるのがオチだ」とぴたりと言い当てられるのがおかしい。

そして私は二人で品川の海に行くシーンが大好き。暗くてさびしい品川の海が浮かんできてドキドキする。
突き落とされた金蔵が実は浅い海であっぷあっぷしてただけで怒りに任せて立ち上がると普通に立てちゃって、ざんばら髪で血を流して頭にわかめが乗ってるっていうのもばかばかしいし、町々で野良犬にほえられながら逃げて行くのもかわいそうだけどおかしい。
金蔵が夜分訪ねてきて、親分の家で大慌てで逃げ惑うのも笑える。

またこの後半の仕返しのところも、わざとらしく虚ろな金蔵がおかしいし、やりすぎないほどのよさが好き。
「びくにされた」のサゲもよかった。ちょっと噛み気味だった?けど私はそういうの全然気にならないから、とても満足。


以前小三治師匠が「粗忽の釘」のサゲを間違えた時、鬼の首を取ったように騒いでるじじいがいたけど(楽屋に「いかがなものか」と言いに行ってやったとえばっていやがった!)、間違えたってわかるってことは正しいサゲを知ってるんだから、自分でその正しい方に置き換えればいいじゃない。
別に子どもの発表会を聞きに来てるわけじゃないんだから、間違えたり噛んだりしたからそれで台無しになるってわけじゃないと私は思うんだな。

白墨人形

 

白墨人形

白墨人形

 

 ★★★★★

スティーヴン・キング強力推薦。
少年時代の美しい思い出と、そこに隠された忌まわしい秘密。
最終ページに待ち受けるおそるべき真相。
世界36か国で刊行決定、叙情とたくらみに満ちた新鋭の傑作サスペンス。


あの日。僕たちが見つけた死体。そのはじまりは何だったのか。僕たちにもわからない。みんなで遊園地に出かけ、あの悲惨な事故を目撃したときか。白墨のように真っ白なハローラン先生が町にやってきたときか。それとも僕たちがチョークで描いた人形の絵で秘密のやりとりをはじめたときか――

あの夏。僕には四人の友達がいた。太り気味のギャヴ、不良を兄に持つミッキー、シングルマザーの息子ホッポ、そして牧師の娘ニッキー。不良たちに襲撃されることも、僕がニッキーへの恋に胸を焦がすこともあったが、この日々が終わるなんて考えたこともなかった。でも町では悲劇に至る不和が広がりはじめていたのだ。僕の母の診療所への反対運動をニッキーの父が煽り、ミッキーの兄に悲劇が降りかかり、少女の妊娠騒ぎが起こり、大人たちのあいだにも僕たちのあいだにもヒビが入りはじめた。そして、あの事件が起きた。あの子が殺された。森で。バラバラになって。見つけたのは僕たちだった。頭部はいまも見つかっていない。

そして現在。白墨人形の絵とともに、あの事件が甦る。あの人が死んだことで、事件は解決したはずなのに。僕はかつての友人たちとともに、あの夏の秘密を探りはじめる……

光に満ちた少年の物語と、痛ましい犯罪悲劇とが交錯し、最終ページに待ち受ける最後の一撃。

ホラーなのかミステリーなのかわからなかったので、不可思議なことが起きるのを受け入れていいのか疑うところなのか、ドキドキしながら読んだ。

子どものころ、世界はわからないことだらけで自分は無力で…でも危険や善悪は本能的に察知はできて、でもそれがはずれることもあるし自分が悪に傾くこともある。現在と過去が交差して謎が次々明らかになっていき、最後であっと息を飲む。
見事!と思ったんだけど、一晩経って考えると、あれは結局誰が?あの謎は?んん?とはてなマークが残る。勢いよく読みすぎたのか、ミステリーとしての緻密さは欠けるのか。

自分が求めているのは答えだと思いがちだ。たが、本当に求めているのは都合のいい考えでしかない。それが人間というものだ。望み通りの真実を得ることを期待しながら問いを発する。問題は、真実は選べないということだ。真実は真実でしかない。人が選べるのは、それを信じるかどうかだけだ。

ミステリーとしての面白さだけではなく、きちんと人間を描いている。そこがとても好き。
文句なく面白かった。

池袋演芸場10月上席昼の部

10/8(月)、池袋演芸場10月上席昼の部に行ってきた。


・一猿「子ほめ」
・あんこ「二人旅」
三木助「人面痣」
・こいる 漫談
・川柳「歌は世につれ」
・源平「試し酒」
・ホームラン 漫才
・さん生「松山鏡」
・馬楽「親子酒」
・二楽 紙切り
・小袁治「女天下」
~仲入り~
・龍玉「駒長」
・馬の助「動物園」&百面相
・橘之助 浮世節
小満ん「湯屋番」


ああだこうだと熱く語ったのだが、コピペミスで記事が消え呆然…。とりあえず演目だけ。

ガルヴェイアスの犬

 

ガルヴェイアスの犬 (新潮クレスト・ブックス)

ガルヴェイアスの犬 (新潮クレスト・ブックス)

 

 ★★★★

巨大な物体が落ちてきて以来、村はすっかり変わってしまった――。ポルトガルの傑作長篇。ある日、ポルトガルの小さな村に、巨大な物体が落ちてきた。異様な匂いを放つその物体のことを、人々はやがて忘れてしまったが、犬たちだけは覚えていた――。村人たちの無数の物語が織り成す、にぎやかで風変わりな黙示録。デビュー長篇でサラマーゴ賞を受賞し「恐るべき新人」と絶賛された作家の代表作。オセアノス賞受賞。

ポルトガルの小さな村ガルヴェイアスにある日宇宙から謎の物体が落ちてくる。爆発が起こり人々は世界の終わりだと思う。しかしその日から七日間豪雨が続き村の人たちは隕石のことを忘れてしまうのだが、村には硫黄の強烈な匂いが満ちパンの味が変わってしまう。
…そんな強烈な発端のあとに語られるのは村の人たちの些末な日常。

不倫もあれば強姦もあり…とかなりひどい。またそれぞれの人たちが繋がりあい物語が一つになっていく。

これらの話が冒頭の隕石とどういうつながりがあるのかよくわからないまま読んでいると、最後人々が隕石のことを思い出し、今度こそこれをどうにかしてやる!という状態になり、物語は終わる。

結局この物語が何を示唆しているのか…終末論なのかなんなのか…わからないまま読み終わったのだが、不思議と読後はさわやかだ。

第51回 伝承話藝を聴く会

10/6(土)、神保町東京堂ホールで行われた「第51回 伝承話藝を聴く会」に行ってきた。


・小燕枝「蜘蛛駕籠
・藤兵衞「しびん」
~仲入り~
・琴柳「祐天吉松 旗本岩田七太夫
・琴柳「朝鮮軍記」


小燕枝師匠「蜘蛛駕籠
最初から最後まで完璧に面白い。テンポがよくて間がいいから全くダレないし飽きさせない。
酔っ払いが突っかかったり謝ったりするのがもう絶妙のバランスでめちゃくちゃおかしい。
また踊りながらやってきた人と一緒に踊ったり歌ったり、やってるうちに楽しくなって来たり…で、「そろそろ御籠に乗ってください」と言われて「乗りたいけれど金がない!」と言うタイミングの良さにぶわははは!と笑ってしまう。
楽しかった。


藤兵衞師匠「しびん」
小燕枝師匠がこれだけお客様をあたためてくれたのにその後に出てきて「しびん」なんという噺をするのは申し訳ないようなんですが、と言いながら「しびん」。
侍が品があって威厳がある。
道具屋でしびんを見つけて「まことに面白い」「結構」と感心して、道具屋が「いえいえ…しびんですぞ」と言うと「しびん焼きと申すか」とまじめに返すおかしさ。
その立派な侍が片手にしびんを持って宿に帰ると、番頭や奉公人が「今片手にお持ちになっていたのはしびん?」「いやまさか。あの方に限って」みたいな噂話をするのがおかしい。
また本屋さんがしびんに関する故事を話すというのも初めて聞いたけれど、町人だけど教養があるのが伝わってくる。

道具屋では近所のおばあさんが寝たきりになった亭主が使うからしびんを借りることになっていて「用意しておくと言ってたのになんで?」と尋ねると、道具屋が「いや、ちゃんと見つけて洗って店で乾かしていたんだけど、それをさっき侍が来て買って行ったのだ」と言う。
5両で売ったと聞いておばあさんがそれがバレたらお前さん命はないよと言っているところに侍が走ってくるのが見えて、慌てて道具屋がおばあさんを布団に押し込める。

怒り狂う侍に道具屋があそこに寝てるのがお袋で長の患いでどうしても5両が必要で…と言うと、侍が「自分も国から出てくるときに母上が”お前は短気だから間違いを起こすんじゃないかと心配だ。怒りを感じることがあったら私の事を思い出してくれ”と言った。40過ぎた自分のことをまだこうして心配してくれる。親というのはありがたいもの」と言って、道具屋に「金も命もくれてやる」と言って店を去っていく。

侍っていうのが違うなぁと思っていると、布団に押し込められたおばあさんも同じことを言う気持ちの良さ。

しびんをありがたがる侍を最初は笑っていたんだけど最後まで聞くと尊敬の念もわいてくるという…面白かった。


琴柳先生「祐天吉松 旗本岩田七太夫」「朝鮮軍記」
両方とも初めて聴く話だったので筋を追うのに精いっぱい。
今回は「修羅場」ということで、琴柳先生による「修羅場講義」もあって面白かった。もっと講談がわかるようになりたいなぁ。

柳家小はんの会

10/5(金)、湯島天神参集殿で行われた「柳家小はんの会」に行ってきた。
かわら版にも落語協会のホームページにも出ていないこの会。twitterで見てその情報だけを頼りに。
この日は赤坂で春輔師匠の会、上野広小路亭で遊吉師匠の会があって、なぜ行きたい会は重なってしまうのだ…と迷いつつ、しかし迷った時はより渋い方に行こうと決めているのでこちらの会へ。
予想に反して座布団の席が多かったので前の方に座ることができた。


・さん福「一目上り」
・小はん「禁酒番屋
~仲入り~
・小はん「明烏


小はん師匠「禁酒番屋
お酒のまくらから「禁酒番屋」。
私は小はん師匠は寄席の浅めの出番でしか見たことがなかったので、こういう長い噺をやる師匠は初めてでとても新鮮!
番屋の説明のところで、荷物を改めたり酒を飲んでないか確かめるのに風船をふくらませたり…に大笑い。
番屋の侍は厳格な雰囲気。でも水カステラで相当酔っぱらう。もうべろんべろん。
中身を改めるしぐさが少し大変そう…だったりはしたけど、楽しい「禁酒番屋」だった。
仲入りに入る前に小はん師匠が「ロビーに水カステラもご用意してます」と言ったのがかわいかった~。

 

小はん師匠「明烏
世の中目まぐるしく変わって「携帯電話」なんという結構な物ができて…電話を持って出かけられるんですからまことに便利ですな。
これさえあれば、電車の時間も調べられる、地図にもなる、お財布にもなる…しかも電話もかけられるっていうんですから。

…ぶわははは。

そんなまくらから「明烏」。
大旦那がいかにも大旦那らしく品が良くて威厳があってでもお茶目でまさに小はん師匠そのものでぴったり。
で、帰ってきた若旦那。これが清潔感があって真面目でかわいらしくて…うわーー、なんか意外にもといったら失礼だけどすごく若々しくてチャーミング!
おこわを2杯おかわりして太鼓を叩いて帰ってきた若旦那に大旦那があきれてお説教をすると「でしたら源兵衛と太助さんに誘われたので観音様の裏にあるお稲荷様にお籠りに行ってもよろしいでしょうか」と若旦那。それを聞いてピンときた大旦那のにっこり喜びようがなんともいえずかわいい。
「そうだそうだ。あそこには結構なお稲荷様があって私なんぞ若いときは通いすぎて親父に蔵に放り込まれたことがある」に笑う。

また、源兵衛と太助もいかにも町内の若い者らしくお金持ってなさそう、なのがおかしい。
お茶屋のおばさんが「御巫女頭」と呼ばれて店の女の子たちと笑いをこらえるところもなんともいえずかわいいし、ようやくここがお稲荷様じゃないと気付いた若旦那が「けがらわしい」と本気で嫌がる様もかわいらしい。
若旦那を引き止めるためについた「大門で止められる」を源兵衛がわからなくて「え?いつから?」「え?おれ知らない」と不思議がるのもおかしい。
次の日の甘納豆を食べるところや、若旦那の惚気を聞いて二人がいらっとくるところ。最後のセリフまで、なんともいえずかわいらしくて楽しい。

そして驚いたことに、この噺に入った途端に、小はん師匠の語りのスピードが上がって顔も若々しくなって…なんだ、これは?
びっくりするぐらいチャーミングな「明烏」だった。楽しかった!

 

赤坂倶楽部 さん光百席道

10/4(木)、赤坂会館で行われた「赤坂倶楽部 さん光百席道」に行ってきた。

・さん光「ん廻し」
・さん光「粗忽の釘
~仲入り~
・さん光 (ナイショ)


さん光さん「ん廻し」
私はさん光さんの会に行くようになってまだそれほど日が経っていないのだけれど、常連さんたちにはおなじみの噺らしい。
なぜ「ん廻し」をやったかというと、NHKの新人演芸大賞に今回初めて参加しまして…その時にやったのがこの「ん廻し」でして…見事に落ちましたので…やってみました、と。
この番組の予選は、予選の模様を録画してそれを審査員があとから見て投票するという方式らしい。
で、観客がいないところで落語をやるのはやりづらかろうということで笑い屋さんを集めてるらしいんだけど、何度も出てる人に聞くとこれはこれでやりづらい、と。
というのは、笑うのが仕事なもんだから普段笑いが起きないようなところで笑いがおきるもんだからちょっともたついてしまって時間が伸びてしまうんだとか。
制限時間11分以内というのがルールなので注意しないと。
そうしたら私の高座、この笑い屋さんがしーんとしてしまい、9分で終わっちゃいました。

…ぶわはははは。
いやいや、ちゃんと面白かったよ、「ん廻し」。
早とちりのトメちゃんが素っ頓狂で楽しくて。ま、演芸大賞向きの噺ではないような気はするけど。(もう少しストーリー性があった方が…)


さん光さん「粗忽の釘
九州に帰ったときに甥っ子の保育園に迎えに行ったときのエピソード。
以前は「さん光!」と呼び捨てにしていた甥っ子に「さん光じゃない。さん光様と呼べ」と教えると素直に従う甥っ子。しめしめと思っていたら、保育園に迎えに行って窓から甥っ子の姿を探していると甥っ子の方がさん光さんに気づいてくれて「あ!さん光様だ!先生、さん光様が来た!」。
するとそれを聞いてほかの子たちも「さん光様?」「さん光様!!」。
なんかとってもあやしい感じになってしまった…。子供は素直だから下手なことを教えられないな、と。
と話した後「子どものまくらだからってこの後に初天神とかやるわけじゃありませんよ!小児は白き糸のごとし…とか言いませんから」。
そんなまくらから「粗忽の釘」。
ぴかーっと明るい大工さん。のろけもかわいい。
せっかくだから(?)もう少したっぷりやってほしいような気がしないでもなかったかな。


さん光さん ナイショ
仲入り後はナイショの噺。「もう二度とやらない気がします」と言っていたけど、この日の三席の中で一番よかった!
合ってると思う。
二度とやらないなんておっしゃらず、また何かの機会にぜひ。

さん光さんがまくらで「私はあまのじゃくなので」とおっしゃっていて、思わずふふふと笑った。
私の好きな噺家さんってみんな自分のことを「あまのじゃく」「ひねくれてる」って言うんだよね。私がそういう噺家さんが好みなのか、あるいは噺家になろうというような人はみんなひねくれているのか。
さん光さんは、内向的な感じがありつつ中から湧き出てくる明るさもあって、そこが私は好きなんだけど、多分結構な照れ屋なんだろうなと感じるときが…。
開き直って弾けきったさん光さんが見てみたい。

 

そしてミランダを殺す

 

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

そしてミランダを殺す (創元推理文庫)

 

 ★★★★★

空港のバーで離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに出会う。彼は酔った勢いで、妻のミランダの浮気を知ったことを話し「妻を殺したい」と言ってしまう。リリーはミランダは殺されて当然だと断言し、協力を申し出る。だがふたりの殺人計画が具体化され決行の日が近づいたとき、予想外の事件が起こり……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の策略と攻防を描く傑作ミステリ!

面白かった~!タイトルから「ミランダ殺し」のオマージュ?と思って、予め「ミランダ殺し」を読んでおいたんだけど、関係ありませんでしたね…。むしろ「見知らぬ乗客」を再読しておくべきだったか。

章ごとに視点が変わるので、テッドの章では謎でしかなかったリリーの言動の真意を次の章で知ることができて、それが読むスピードを上げさせる。
第一部の終わりは衝撃的!そうきたか!っていう。

テッド、リリー、ミランダ、ヘンリーそれぞれが危うくて魅力的なのでその吸引力でまた読めてしまう。

展開もラストも鮮やかとしか言いようがない。楽しかった!

TWO 夏丸・萬橘二人会

10/3(水)、らくごカフェで行われた「TWO 夏丸・萬橘二人会」に行ってきた。


・萬橘「マイク・タイソン物語」
・夏丸「甲府ぃ」
~仲入り~
・夏丸「城木屋」
・萬橘「火焔太鼓」


萬橘師匠「マイク・タイソン物語」
「今日はお客様にボクシングを好きになって帰っていただきます」と萬橘師匠。
マイク・タイソンがどんなに凄いかという逸話の前に、そもそもボクシングがわからない人に向けてボクシング講座。これが非常にわかりやすい。萬橘師匠ってすごい説明上手。そしてわからない&全く興味がない私でも、思わず身を乗り出してしまう、熱い語り口。
おもしろい!そしてこれは萬橘師匠の新作なのか?
ボクシングと落語の共通点、という切り口もとても面白かったー。(出囃子と登場のテーマ、羽織とガウン、質の悪いお客!)

夏丸師匠「甲府ぃ」
真打になったお祝いを兼ねた同窓会に行ってきた、という夏丸師匠。
今も実家に帰ると母親が子供の頃と同じようにあれこれ干渉してくる、というのが微笑ましい。
そんなまくらから「甲府ぃ」。
夏丸師匠が「甲府ぃ」って意外!でもとってもはまってる!
夏丸師匠って淡々とした語り口で落語を「お話」として語るようなところが私はとても好みなんだけど、「甲府ぃ」もそういう「お話」らしくてそれがすごくよかった。
親方が夏丸師匠らしくお茶目なところもかわいくてよかったな。


夏丸師匠「城木屋」
またこんな嫌な噺を…なんだけど、夏丸師匠がやるとそんなに嫌な噺にならないのが不思議。
この噺に出てくる番頭、ほんとに迷惑でしかないし気持ち悪いんだけど、夏丸師匠がやるとなんかそういうリアルな感じがなくなってばかばかしさが勝つから、そんなに腹が立たない。
しかもお裁きの席でダジャレ連発の返答。でもこれもなんか唐突さをそれほど感じずに、楽しく聞ける。じ、人徳?(笑)
面白かった。


萬橘師匠「火焔太鼓」
萬橘師匠が「火焔太鼓」って面白くないはずがない!
「太鼓?いくらで買ったの?」
「いちぶ…」
「なに?声が小さい!聞こえない!」
「いちぶだよっ!!!」
「うるさいっ!」
おかみさんの理不尽が最高すぎる。
甚兵衛さんの頭がごちゃごちゃになって意味不明なことを言い出したりするテンションの高さと異様さがもうおかしいおかしい。
最初から最後まで笑いっぱなし。楽しかった~。


夏丸師匠と萬橘師匠ってタイプが全く違うからお互いを邪魔しあわないしとてもバランスがいい。すごく楽しい、この二人会。いいわ~。