りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

J亭落語会 花鳥風月 期末スペシャル三人

3/28(金)、JTアートホールで行われた「J亭落語会 花鳥風月 期末スペシャル三人会」に行ってきた。
この会、ホールがフラットで縦長だし全然いい席がとれないしそのわりに前の方は空席が目立つし、チケットも手数料も高いし、あんまり積極的に行きたい会じゃないんだけど、今回は独演会じゃなくて3人全員が揃うということで行ってみた。

・小太郎「いもりの黒焼き」
・一之輔「愛宕山
・三三「締め込み」
〜仲入〜
・白酒「幾代餅」

小太郎さん「いもりの黒焼き」
いつものように高座に上がるなりピースサイン。
なんとなくアウェイっぽい雰囲気だけど大丈夫かなと思っていたのだが、これが素晴らしかった。
前にも一度出させてもらったことがあるんです、という小太郎さん。前に見たことあるよという方と言って客席を見て「ああ、そんなにいらっしゃるんですね。ありがとうございます。それじゃ前とは違う噺をします」

そう言って、コスタリカの鳥の話。
コスタリカにいる鳥が自分の師匠と一緒にメスに求愛行動をする。2羽で協力してメスに迫るのだが、メスが選ぶのは決まって師匠の方。同じように見えてもやはりちょっとしたしぐさとかで師匠の方が優れているらしい。そうやって3年師匠にメスを取られ続けるというのだからこの鳥も気が長い。
そうこうしているうちに師匠はどこかに行ってしまい、また師匠を見つけて一門(?)に入る。
そうしているうちに「弟子にしてください」と言ってくる鳥がいて自分も師匠になってようやくメスを娶ることができるようになる、と。

師匠の方がもてるっていうのはほんとによくわかります、という小太郎さん。
さん喬師匠について地方に行ったりして打ち上げに参加したりすると、パーパー喋ってる小太郎さんはあくまでも引き立て役で、その場でもてるのはいつも師匠、と笑わせる。

そんなまくらから「いもりの黒焼き」。
初めて聞いた噺だったのだが、もてない男がご隠居さんのところに行ってもてる極意を聞く。顔もよくないし着ているものもぼろだし金も持ってないしセンスのいい趣味もない。お前さんはだめだ、絶対もてないよ、と太鼓判を押されるのだが、どうしてもおれはもてたい!なんとかしてください!と言うと、ご隠居さんは惚れ薬であるいもりの黒焼きを使え、という。
オスの黒焼きの粉を自分にふりかけ、メスの黒焼きの粉を意中の女にかければ絶対に両思いになれる、と。
男は自分にふりかけたあと、意中の女性がいるお店の前で粉をかけようと待ち構えるのだが、ここぞ!というときに粉が女じゃなくて米俵にかかってしまい…。

なんとなく冷ややかに見ていたおじさんたちもまくらでぐいっと前に乗り出し、落語にも大爆笑。
会場があたたまるってこういうことをいうんだな、と実感。素晴らしかった。
小太郎・小んぶ二人会を見に行ったりもしていて応援しているので、なんかとっても嬉しかったなぁ。

一之輔師匠「愛宕山
九州で独演会をしてきたというまくら。
会場に着くと駐車場にばーんとでかいハーレーが。あれはどなたのですか?と係りの人に聞くと、お客様のです、というこたえ。
どんな客がああいうものに乗ってくるんだろうと始まる前に袖から覗いてみると、確かに最前列に「いかにもヒッピー風」な35歳ぐらいの男と若い女性のカップルがいる。
いかにもヒッピーって言いながら一之輔師匠のヒッピー理解がすごくもやもやで大笑い。
「え?なにあの人たち」と言うと「わかりません。なんか突然来ました」と係りの人。突然来ましたって…。

落語が始まってからもついつい彼らに目が行ってしまうのだが、斜めから口をひんまげてにらんでいてまったく笑わない。もう気になって気になってその二人に向かって落語をやってしまった。
仲入になったら「あの人たちのことわかりました」と係りの人。「なんでも落語は一度も聞いたことがないんだけど旅の途中でたまたま見かけて入ってみたらしいです」。
旅の途中でたまたま入ったって…おかしすぎる!
結局後半も笑ってもらえずほぼ心が折れかけた状態で会が終了。
小さな会だったので出口でお客様を見送っていると、そのヒッピーが一之輔師匠を見て近寄ってきて握手を求めてきた。握手をしながら「初めて見たけど面白かったし!」。
もう会場は大爆笑。ほんとにどこまで本当かわからないけど一之輔師匠のまくらは面白い。

一之輔師匠の「愛宕山」は初めて見たんだけど、面白かった!
こういうアクションがあるような噺は本当に一之輔師匠に合ってるなぁ。関西弁はちょっと酷かったけど(わははは!)、「かわらけ投げ」をしてみせる旦那のしぐさや、一八が小判を拾いに飛び込もうとしながら怖くて踏み出せないところ、小判をがつがつひろう様子、もうたまらなくおかしい。
特に着物を裂いて縄をこしらえるところがおかしくて楽しかった。よかった。

三三師匠「締め込み」
寄席の太鼓の話。これがもうリズム感があって聞いていてなんとも楽しい心地よい。口調がなめらかでテンポがいい。上手だわ〜。いいわ〜。
三三師匠の「締め込み」は前にも聞いたことがあるのだけれど、安定の面白さ。おふくさんがかわいいなぁ。酒?お湯?を何回も聞くのが実にかわいらしい。こんな奥さんがいたらいいだろうなぁ、といつも思う。

白酒師匠「幾夜餅」
落語好きというのを最近はおおっぴらに言えるようになりましたね。芸能人でも「落語が好き」というようになった。前は好きでも言えなかった、事務所から止められていた、と。
前は友達いないんだろうなという男しかこなかったけど今は女性の方が多いくらい。それで何回か会場で顔を合わせているうちに、落語のあと飲みに行ったりして仲良くなって付き合うようになったなんていう人たちもいるらしく腹立たしい。

それから、新しく始まるテレビ番組の裏話。
一之輔師匠がかっちんかっちんに緊張していたというのを談春師匠が話していたというのをブログで読んだのだが、実は談春師匠も相当なあがり症でかちんかちんだったらしい。
「ぷっ、あがってやがる」と思っていたら「お前は心に思ってることを言うな。表に出すな」と言われたらしい。
一之輔が愛宕山なんかをきっちりやるからすごいプレッシャーだ、やりづらい、と言いながら「幾夜餅」。

白酒師匠の「幾夜餅」は前に聞いたことがあるんだけど、ひどいんだ、これが(笑)。雲助師匠が泣くぜよ…。でも面白い。べらぼうに面白い。きっと雲助師匠なら「お前のはひどいな」と言いながら「でも面白いな」と許してくれそうだ。と勝手に妄想してにやにや…。
恋煩いと聞いて大爆笑するおかみさん。そしておかみさんから話を聞いて大爆笑する親方。これがまんまるの白酒師匠がやると気のいいおかみさんと親方が悪気なく笑ってるって感じでもう楽しくてしょうがない。
人情っぽさを100%排除した「幾夜餅」なのだが、上滑りしてる感じはないので、「ひでぇ」と思いながらも腹の底から笑える。
好きだわ、白酒師匠の「幾夜餅」。楽しかった。