りつこの読書と落語メモ

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青い脂

青い脂

青い脂

★★★★★

2068年、雪に埋もれた東シベリアの遺伝子研究所。トルストイ4号、ドストエフスキー2号、ナボコフ7号など、7体の文学クローンが作品を執筆したのち体内に蓄積される不思議な物質「青脂」。母なるロシアの大地と交合する謎の教団がタイムマシンでこの物質を送りこんだのは、スターリンヒトラーがヨーロッパを二分する1954年のモスクワだった。スターリン、フルシチョフ、ベリヤ、アフマートワ、マンデリシュターム、ブロツキー、ヒトラー、ヘス、ゲーリングリーフェンシュタール…。20世紀の巨頭たちが「青脂」をめぐって繰りひろげる大争奪戦。マルチセックス、拷問、ドラッグ、正体不明な造語が詰めこまれた奇想天外な物語は、やがてオーバーザルツベルクのヒトラーの牙城で究極の大団円を迎えることとなる。現代文学の怪物ソローキンの代表作、ついに翻訳刊行。

ソローキンは以前「愛」を読んでその破壊力にヤラれ「おいらには無理かもしれないでござんす」と思ったものの妙に気になる作家で、さらに新刊が出ると聞き「うぉぉーー」と意味もなく興奮し、「来年の夏休みに読もう」と密かに決め(「一夏に一ソローキン」)、まわりの人たちが次々この「青い脂」を購入し読んでいくのを羨望と尊敬のまなざしで見ていたのだが、ある日「青い脂読書会やります」という呼びかけを目にし、そそそれは行ってみたいかも!と読んでもいないのに脊髄反射的に「参加したいです」と返信してしまい、読まないわけにはいかなくなってしまったのである。

読み始めて最初の数ページがもうわけがわからなくて、読書会キャンセルしなきゃいけないかも…と青ざめた。
だってもう世界がまるで違っていてなんのこっちゃかわからないのだ。
脚注がたくさんついているのだがこれがまた読んでもますます分からない代物。

何度も同じページを読み返してはうんうんうなっていたのだが、でも徐々にこの世界観にも慣れてきて、物語の世界へ身を委ねたらこれが思いのほか楽しい。
これぐらい作りこまれた世界であればエロもグロもスカもOKだ(私は)。

偉大な作家のクローンたちが物語を織り成す過程で採取できる謎の物質・青脂をめぐる物語。
クローンたちが書いた物語は壮大で文学的で下品で破壊的。重厚な名作のイメージを醸し出しつつ、猥褻だったり異様なほどの単語の繰り返しがあったり圧倒的に壊れていたりと、いかにもソローキンらしい。

また後半に入るとスターリン、フルシチョフらをはじめとする政治家や作家や詩人がわんさと出てくるのだが、大胆な歴史改変もソローキン流エログロ暴力お下品の味付けで妙に統一性がとれて説得力があるのがおかしい。

十分理解できたとは言えないけれど十分楽しめた。
すさまじくお下品で破壊的ではあるけれど、偉大な作家であることは間違いない。
が、ソローキンを読むとソロー菌にやられてしばらく本が読めなくなるのであった…。