りつこの読書と落語メモ

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二流小説家

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

★★★★

ハリーは冴えない中年作家。シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依頼されたのだ。ベストセラー作家になり周囲を見返すために、殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが……。ポケミスの新時代を担う技巧派作家の登場! アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞候補作

売れない小説家が、死刑が確定している極悪な殺人鬼より告白本の執筆の依頼を受ける。一発逆転のチャンスをねらって殺人鬼へのインタビューをすすめるうちに、事件に巻き込まれて…。
読みはじめはありがちな設定と思ったけど、物語がすすむにつれて加速をつけて面白くなってきた。

冴えない中年作家・主人公ハリーのとほほぶりが実にいい味を出しているのだ。
自分に愛想をつかしたガールフレンドが自分より「食える」作家にくっついてのし上がっていくのを目の当たりにしてうじうじしたり、小遣い稼ぎに始めた高校生の家庭教師で逆に自分が「教育」されたり、また作中には彼がお金の為に書いてきたさまざまな「ジャンル小説」が引用されるのだが、これが彼の精神状態やこれからの事件の行く末を暗示するような内容になっていて、なかなか面白い。
そしてなにより、出てくる女たちの生き生きと魅力的なこと!冴えないわりに、女心はぎゅっと掴むあたりも、いかにも二流小説っぽくて楽しい。

ミステリーとしてみれば100点満点ではないけれど、物語としてはちゃんと落とし前をつけてくれていて(タイトルに対して)、そこがとても良かった。
サービス精神満点で案外丁寧に書かれたエンターティメント小説だった。