りつこの読書と落語メモ

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選ばれた女

選ばれた女〈1〉 (文学の冒険シリーズ)

選ばれた女〈1〉 (文学の冒険シリーズ)

選ばれた女〈2〉 (文学の冒険シリーズ)

選ばれた女〈2〉 (文学の冒険シリーズ)

★★★★★

1930年代半ばのスイス。国際連盟事務次長のユダヤ人ソラルは、レセプションで見初めた完璧な美女アリアーヌに危険な恋を仕掛ける。ホロコーストの暗雲忍び寄るヨーロッパで、2人の恋は運命の深みにはまっていく…。

国連事務次長のユダヤ人のソラルと絶世の美女で人妻アリアーヌの不倫の物語を中心に、アリアーヌの夫(超俗物!)アドリアンとその母(さらに俗物!)ドゥーム夫人、アリアーヌのお世話をする女中等、醜悪で魅力的な人たちの物語も絡めつつ、ユダヤ人の迫害や戦争や差別についても深く考察するという…。いやもうこれはすごい。お化けみたいな小説だ。

ミュージカルのような大仰なセリフまわしに、改行なしで10ページ以上続く独り言に、これでもかこれでもかと描かれる感情の吐露。
とにかく何もかもが過剰で、呆気にとられたりげらげら笑ったり妙に身につまされたり…読んでるこちら側の感情をとにかく揺さぶってくる。

恋はいつかは冷めるものであるというのは誰もが薄々気付いていることではあるけれど、ここまで詳細に克明にリアルに描いた小説というのはなかったのではないだろうか。
ソラルとアリアーヌは、社会的な交わりを全て断っての純粋すぎるほどの愛の逃避行を行うわけで、最初は情欲に溺れ究極の幸福を手に入れたかのようだったが、それが徐々に勢いをなくし輝きを失い最後は臭気を放ちだすところは、読んでいて目を背けたくなるほどだ。 そしてそこまで読んで、捨てられた俗物の夫アドリアンとハンサムで魅力的な愛人ソラルが実はたいして変わりはないのだ、ということに気付かされる。

2人の最後は悲劇以外の何ものでもないが、ここまでくると、ああやっとこれで終わりが来る…とほっとしないではいられない。

いやもうとにかく凄い小説だ。
元気のある時にどうぞ。