りつこの読書と落語メモ

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グランド・マザーズ

グランド・マザーズ (集英社文庫)

グランド・マザーズ (集英社文庫)

★★★★

幼い頃から双子の姉妹のように育ったロズとリル。二人は今、各々息子と孫娘を連れて、光る海の見えるレストランのテラスで、昼下がりの幸福なひと時を過ごしている。だがこの何気ない家族の風景にはある秘密が隠されていた…。互いに相手の息子との恋(?)に落ちた二人の女性の心の葛藤を描いた表題作の他に、「ヴィクトリアの運命」、「最後の賢者」、「愛の結晶」の三つの作品を収録した傑作短編集。

これで4冊目ぐらいだろうか…ドリス・レッシングの作品を読んだのは。
ノーベル賞を受賞したというニュースを聞いて興味を持ち読み始めた作家さんなんだけど。つかみづらい作家だなぁというのが正直な感想だ。
人に紹介するときに「こういう作品を書く人だよ」と説明しづらい…。というか、どういう作品がこの人の持ち味なのかいまだわからない…。
でもものすごく魅了されている。自分に理解できるかわからないけれど、翻訳されている作品は少しずつ大切に読んでいきたいと思っている。

これは4作を収めた中篇集。
表題作の「グランド・マザーズ」は親友同士がお互いの息子と恋仲になるという結構ショッキングな物語なのだが、女性の弱さと強さがしっかりと描かれていて、読後感は決して悪くない。
あとがきを読むと、本書に関するインタビューの中でレッシングはこう語ったという。

それぞれの母親は相手の息子とすばらしい時間を持った。それこそが人生のすばらしさでなくて何だろう。

そうか。だからこの小説には清清しさがあるのだなぁ…。なんかものすごく好きだ。この感じ。

「ヴィクトリアの運命」もかなり過酷な物語だが、女性のしたたかさと強さが根底に流れていて、気持ちいい。 「最後の賢者」はものすごくメッセージ性の高い作品。SFのようでもあり神話のようでもあり。
「愛の結晶」は、第二次世界大戦に召集された青年と既婚女性との恋の物語なのだが、これはもう長編にしてもいいのではないかと思うような、ドラマティックなストーリーが繰り広げられる。
4編とも全く毛色が違っていて、同じ作家の作品とは思えない。この懐のひろさがレッシングの持ち味なのだろうか。