りつこの読書と落語メモ

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エ/ン/ジ/ン

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★★★★★

身に覚えのない幼稚園の同窓会の招待状を受け取った、葛見隆一。仕事と恋人を失い、長い人生の休暇にさしかかった隆一は、会場でミライと出逢う。ミライは、人嫌いだったという父親の行方を捜していた。手がかりは「厭人」「ゴリ」、二つのあだ名だけ。痕跡を追い始めた隆一の前に、次々と不思議な人物が現れる。記憶の彼方から浮かび上がる、父の消えた70年代。キューブリックベトナム戦争、米軍住宅、そして、特撮ヒーロー番組“宇宙猿人ゴリ”―。

職も彼女も失い暇を持て余していた葛見は、ある日行った覚えのない幼稚園から同窓会のお知らせを受け取る。指定された場所に出かけていくと、そこにはミライという1人の女性がいて、その幼稚園の写真に写ってしまった男に見覚えがないか、と聞いてくる。どうやらそれが彼女の父親らしい。
父の記憶や情報を何も持たない彼女は、父のことが知りたいのだという。
葛見は、なんとなく心を惹かれて、ミライの父親探しを手伝うことになる、というお話。

なんかね。とってもよかった。
ミライのおかあさんの幼稚園や家や町の景色がなぜかとっても懐かしくて…でもそれ以上にミライや葛見がその時々に抱く感情がまるで自分が体験してきたかのように懐かしかった。これはなんかとても不思議な感覚だった。

この小説を読んで一番強く感じたのは、愛し愛されているという確信が自分の居場所を作るのだなぁということ。
全てを分かり合えなくても、心を通わせることができているとお互いに感じられれば相手との絆ができて、そこには自分の場所ができる。
それが人を強くするし優しくもするのだなぁ…。

展望室のシーンが一番好きだ。
全ての謎が解けるわけではないけれど、確実にほどけていったものがあって、そこがとてもいい。