りつこの読書と落語メモ

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曲芸師のハンドブック

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★★★★★

薬物の過剰摂取を繰り返す若者、フレッチャー。人間観察力にすぐれ、人の目を欺くことに長けた彼は、強制入院させるか否かを鑑定する精神科医を相手に、虚々実々の駆け引きを繰り広げる。精神科医とのやりとりで垣間見える複雑な生い立ちと、恋人キアラへの深い愛―。フレッチャーとはいったい何者なのか?幾多の偽名を駆使する謎の患者が、医師へ仕掛ける絶妙な心理戦。曲芸師流仰天のラスト。読むものの心を捉えて離さない、注目作家の衝撃デビュー作。

久しぶりに読んだ翻訳本。
私はほんとに偏った読書をしていると思うんだけど、とにかく翻訳本が好きで、読んでいる本の割合で言ったらおそらく80%ぐらいが翻訳本だ。
いつからそんなに翻訳本が好きになったのかよく覚えていないんだけど…。多分大学生ぐらいからかな。英文学の授業でカポーティを読んで、「うぉーー。面白い!」と思い、それからアーヴィング、アーウィン・ショー、レイモンドカーヴァー、プイグ、ロアルドダール、アンタイラーとどんどん読むようになっていったんだな。
日本の小説が嫌いなわけじゃないんだけど、あまりに叙情的だったり私的だったりするのは苦手だし、あまりにも身近で読みやすいと小説を読んでる気がしなくてちょっと物足りない。

しかし10年に一度ぐらい、日本の小説を読みたいブームが訪れる。
ってそんな大げさなもんでもないんだけど。でも確かに10年ぐらい前にも「日本の最近の作家って面白い!」ということに気付いて、読み漁った時期があったのだ。

で、今また10年ぶりの日本の小説ブームなのだ。(マイブームね)
日本の小説が読みたい!というよりは、翻訳本がちょっと読めなくなってきている、と言ったほうが正しいかも…。
やっぱり読みづらいんだな、翻訳本って。普段はそんなことを思うことないんだけど、最近ちょっと他のことに気をとられているせいもあってか、翻訳本のめくるめく世界がちとつらい。
それよりは自分に身近な小さな物語を読みたい気分なのだ。

って前置きが長いよ!!
これは新刊本でチェックしていて図書館に予約をしていたら届いてしまったので、仕方なく(!)読んだのだ。
いやこれがすごく良かった。このタイトルとこの表紙からは想像できないよなぁ…。でもこの意外性がとても素敵だ。中表紙もすごく素敵。この本の装丁、すごく好き。

薬物の過剰摂取を繰り返す青年フレッチャー。死にかけて救急車で運ばれ助けられるのだが、その後精神鑑定をさせられる。鬱病か否かを鑑定され、その結果によっては強制入院させられてしまうのだ。
何度もこういう経験をしてきたフレッチャーは、精神科医を相手に、駆け引きを繰り広げる。鑑定しているのは実は医者のほうではなくフレッチャーなのだ。

なぜこんなふうに嘘の供述を繰り返すのか?
名前を変えたり経歴を変えたりしながら逃げ続けているのはなぜなのか?
最初はなんだかよくわからずフレッチャーに共感することもできず読んでいた。しかし読み進めるうちに、自信満々で信用できないフレッチャーのことが、だんだんかわいそうになってきた。いや、かわいそうとはちょっと違うか。
最初は必然性を感じなかった彼の行動に、同情と共感を感じられるようになってきた、というかんじ。

ものすごく特異な青春小説、ともいえるかもしれない。
いいものを読んだ。これでまた翻訳本に復帰できるかもしれない?