りつこの読書と落語メモ

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わが心の子らよ

わが心の子らよ (カナダの文学)

わが心の子らよ (カナダの文学)

★★★★★

朝の満員電車で号泣して鼻水を垂らしたのは誰だい?…あたしだよっ。
いやはやこれは久しぶりの号泣本…。人前で読んではいけない本だった。もともと涙もろいのだが、これは私の心の琴線にやたらと触れる本だった。

「変化」を生きるもの―。移民の地からの、確かなメッセージがここにある。教師と子ども、触れ合いの物語。

…あらま。えらい簡単な説明だな、こりゃ>「BOOK」データベース。
作者ガブリエル・ロワはカナダのマニトバ州でフランス系として生まれ育ち、郷里で小学校の教師をした経験がある。これは彼女がその時の体験を元に書いた自伝的小説である。全部で6つの中短編から成り、その大部分はウクライナ系、ロシア系、イタリア系などの貧しい移民の子どもたちの物語である。

カナダの辺境の地に赴任してきた女性教師。18歳という若さゆえに、大事なことを見落としてしまったり無防備だったり不器用だったりするのだけれど、教育への情熱に燃えている。彼女の教室に来る子どもたちは貧しい移民の子どもがほとんどだ。子どもたちとの交流が描かれているのだが、それは子どもたちだけの話にはとどまらない。その後ろには、貧しさゆえに子どもを家の雑務にしばらなければならない親、人々から疎んじられ暴力でしか気持ちを表すことができない父親、移住先のカナダで言葉もおぼつかない母親がいる。

描かれる子どもたちが本当に尊く美しくそしてとても脆い。この中で最も長い作品である「凍てついた川のます」は、少年と大人の狭間で揺れ動く問題児メデリックの物語なのだが、これはもう本当に今の時代でも十分理解できる普遍的な物語だと思う。

今でも、どこの誰とも知れぬ、師範学校を出てすぐの駆け出しの教師であった私に、この世でもっとも初々しくて、繊細で、だからこそすぐに壊れてしまいかねない存在が託されたということに、私は深い感動を覚えるのであった。

教師が子どもとかかわるのは本当に一時だけで、しかも学校という場所だけだ。それでもそこで一瞬でも心を通わせ、過酷な運命を背負った子どもたちの目を輝かせることができたら…。人生を通して人を導く星のように、遠くから敬愛されることができたら…。そう願って、今自分ができる限りのことをするのだと、不器用ながらも体当たりで子どもに向き合う主人公の姿に、涙を流さずにはいられなかった。