りつこの読書と落語メモ

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石の天使

石の天使 (カナダの文学)

石の天使 (カナダの文学)

★★★★★

スコットランド系移民の子孫である90歳の老女ヘイガーが、自らの人生を振り返る。
ヘイガーはぼけ始めているようで、プライドの高い本人からすれば、ありえないことなのだが、粗相をしたりちょっと前のことをすぐに忘れたり転んだり…。世話をしてくれる長男の嫁ドリスのことも気に入らなくて、感謝をするどころか文句ばかり言っている嫌なおばあさんだ。その彼女の現在と、彼女の回想とが交互に語られていく。

厳格で強烈な父親に育てられ、父の反対を押し切って下品で教養もなくてまともに仕事もしないブラムと結婚するけれど、その結婚も幸せだったとは言えない。何より彼女の堅くなさとプライドと素直になれない性質が彼女自身を縛っていて、自分も幸せになれないばかりかまわりの人のことも幸せにできないのだ。

ああもうなんていやな女なんだろう。そう思う一方で、彼女の心の揺らぎや苦しみや歯がゆさが、まるで自分のことのように突き刺さってきて、胸が熱くなったり涙が出たり…。
年をとるってつらいことなんだな。不自由なことなんだな。でも若いっていうこともそれはそれでまた不自由なことなんだよな…。じゃあいったいどうすれば幸せになれるんだろう。どうすればよかったんだろう。気がつくともうすっかり自分がヘイガーになった気持ちで読みふけっていた…。

「プライドが私の荒野だった」
主人公に共感できたとか、ストーリーの展開に血沸き肉踊ったとかではないのに、心にじーん…と染み入るものがある、とても素晴らしい小説だった。

この本は彩流社の「カナダの文学」シリーズにおさめられている。カナダの作家ってなんかすごいなぁ。マーガレットアトウッドしかり。この間読んだ「パイの物語」しかり。カナダにはフィクションの土壌があるのだろうか…。