りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

凍りのくじら

 

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う1人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすとき――。

★★★★★

高校生の理帆子は、5年前に写真家だった父が失踪し、一人で育ててくれた母も癌で現在入院中。

進学校に通い自分を好いてくれる友だちを少し冷めた目で見ながらも適度な距離感で付き合い、学校外ではちょっと不良(パリピ?全部死語?)の集まりにも顔を出す。

彼女が周りを見る時の自分自身の冷めた部分を「冷たい」と思っているその感じも、彼女の若さがにじみ出ているようで愛おしくなる。

冷たいわけじゃないよ。その逆だよ。どうでもよくないから冷静に見てしまうわけだし、少し距離を置いてしまうのは傷つくのが怖いからなんじゃないの?

そんな彼女に声をかけてきた3年生の別所。最初から彼の言動や現れ方に少しの違和感を感じていたんだけど、最後まで読んで納得。

「SF(少し不思議)」がこんな風に回収されていくとは。見事。 

ドラえもん愛が凄くてそこかしこにドラえもんがちりばめられているので、ドラえもん好きにはたまらないだろうなぁとも思った。

 

ところで最近読んだ作品の中には少なからず「助けてくれる大人」が出てきて(「琥珀の夏」「明るい夜」「タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース」)、自分もそんな風に助けてあげられる大人になりたいなぁと思うなど。