★★★
私を阻むものは、私自身にほかならない――ラグビー、筋トレ、恋とセックス。ふたりの女を行き来する、いびつなキャンパスライフ。28歳の鬼才が放つ、新時代の虚無。
【第163回芥川賞受賞作】
主人公は筋トレに打ち込みOBとして休日は部活のコーチを務め公務員試験を目指し毎日真面目に勉強し政治家を目指す彼女がいる何不自由ないリア充(死語?)男子。
なのに彼の日々や思考に漂う不穏な空気はなんだろう。
彼のことを慕う「膝」という友だちはいるものの、誰とも心を通わせていないし、そもそも彼に感情があるのか?相手にどう思われるかを基準に全ての言動を行っているようでその気持ち悪さがある。
彼が街中を歩いていて父娘を見かけた時に注ぐ視線や時折盛り込まれる不穏なニュースも物語に不吉な影を落とすかのよう。
いつか抑止している自分の衝動を解放させて、性犯罪を犯したりしないだろうか。自分はいったい何を見せられているのだろうか。
政治家志望の彼女から乗り換えた新しい彼女。初心なはずの年下の彼女の変容もなんともいえず気持ち悪い。
無感情、虚無、無機質。でも冷たさだけではないユーモアも漂う不思議。
芥川賞ってこういう作品が多い印象があるんだけど、その中では読みやすい作品ではあった。
