りつこの読書と落語メモ

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ボラード病

ボラード病

ボラード病

★★★★★

生れ育った町が忘れられず、人々は長い避難生活から海塚に戻ってきました。心を一つに強く結び合い、「海塚讃歌」を声を合わせて歌い、新鮮で安全な地元の魚を食べ、ずっと健康に暮らすことができる故郷―。密かにはびこるファシズム、打ち砕かれるヒューマニズム。批評家を驚愕・震撼させた、ディストピア小説の傑作。

面白い。でも面白いと言って満足してる自分がここに描かれている海塚の人たちと同じように、現実から目をそらして何事もなかったふりをしているのかもしれないと思うと、気持ちの悪い虫が身体を這い上がってくるような気味悪さを感じる。

原発事故を思わせる「なにか」が起こったあとの日本が描かれている。
現実を見ずに安全だ大丈夫だ幸せだと言い合い、そうじゃないという考えを持つ人間を逮捕し閉じ込める。
絆とか一つになろうというスローガンの気持ち悪さ、お互いに監視しあい異質なものを抹殺するフツウの人たちの恐ろしさ、それは今の私たちが日常で感じていることだ。

怖いけれど文学にはほんとのことを描き出す力が、人の心を動かす力があるのだということを教えてくれる。
すごい作品だ。