りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

無垢の博物館

無垢の博物館 上

無垢の博物館 上

無垢の博物館 下

無垢の博物館 下

★★★★★

三十歳のケマルは一族の輸入会社の社長を務め、業績は上々だ。可愛く、気立てのよいスィベルと近々婚約式を挙げる予定で、彼の人生は誰の目にも順風満帆に映った。だが、ケマルはその存在すら忘れかけていた遠縁の娘、十八歳のフュスンと再会してしまう。フュスンの官能的な美しさに抗いがたい磁力を感じ、ケマルは危険な一歩を踏み出すのだった―トルコの近代化を背景に、ただ愛に忠実に生きた男の数奇な一生を描く、オルハン・パムク渾身の長篇。ノーベル文学賞受賞第一作。

主人公のケマル氏は、かわいい婚約者がいるのに遠い親戚の若い娘フュスンに手を出し、2人との情事を重ねていく。
ヒルトンホテルで盛大な婚約式を開いた時には、フュスンを呼んだり(!)、フュスンが自分にやきもちを焼かせようとしてあてつけがましい行為をしたと思って恨みを抱いたり、とにかく最低な男なのだ。
そしてフュスンが去った後には彼女に固執してストーカーのように追い回し、彼女の新居に8年間も通い続け、フュスンの吸ったタバコの吸殻や彼女が使った食器などをこっそり持ち帰り蒐集するという、ド変態ぶり。

もう全く共感できないしこれっぽっちも魅力を感じないんだけど、なんだろう。そのぐずぐずぶりにいらいらしつつも途中からなんかやめられなくなってきて、最後にはなんか感動すら覚えてしまう、という…。

確かに歪んでいるけど、確かにこれは愛なのだ。
不幸に見えるけど、確かに彼は幸福なのだ。
そして、文学というのは、素晴らしい人の崇高な行為を描くものではないんだな。