★★★★
ロシアを代表する劇作家・チェーホフ円熟期の中短編7作。
演出家の妻になると、夫と共に芝居について語り、材木商と結婚すれば会う人ごとに材木の話ばかり。獣医を恋人にもった魅力的なオーレンカは、恋人との別れと共に自分の意見までなくしてしまう。一人ぼっちになった彼女が見つけた最後の生きがいとは――。
一人のかわいい女の姿を生き生きと描き、トルストイも絶賛した表題作をはじめ、作者が作家として最も円熟した晩年の中・短編7編を収録。目次
中二階のある家
イオーヌイチ
往診中の出来事
かわいい女
犬を連れた奥さん
谷間
いいなずけ
訳者あとがき
独特のユーモアとペーソスに満ちた短編で淡々と描かれていて、読み終わった時に放り出された感。
結局何を言いたかったんだろう?となって訳者あとがきを読むも、自分の読解力が追い付かず何を言っているのかわからないという…。
好きになった男の意見が全て自分の意見になる「かわいい女」、遊び人の男が初めて恋に目覚める「犬を連れた奥さん」も面白かったけど、一番強烈な印象を残したのが「谷間」。
次男の嫁でやり手のアクシーニヤはとんでもない悪女だが「毒を食らわば皿まで」の精神でこの家の中では圧倒的な勝者。
「悪事を働くのも商売というもんだ」という言葉に、金儲けを優先するこの一家の生き方への冷めた視線があると感じた。
赤ん坊を殺され家を追い出されたリーパが朗らかに歌う姿に、貧しい暮らしに戻った彼女は本当の幸せをつかんだのだと思い、慰められた。
