★★★
ジュリアン・ムーア、渡辺謙、加瀬亮出演の大型映画原作
その夜、南米にある小国の副首相公邸では、日系大企業「ナンセイ」の社長ホソカワの誕生パーティが開かれていた。ホソカワたっての希望で招かれた世界的オペラ歌手ロクサーヌ・コスが6曲目のアリアを歌い終えた瞬間、屋敷の明かりが消え、武装した男たちが乱入してくる。公邸は、人民の解放を求めるゲリラに占拠されてしまったのだ。
交渉が膠着状態に陥り、軟禁生活が長引くにつれ、立てこもり現場である公邸には安らぎのような空気が流れはじめる。幽閉される人質と監視するゲリラの間には不思議な絆が芽生え、彼らは、このまま外界と隔絶された世界で生活を続けられたらとすら願うようになる。だが、この穏やかな日々が永遠に続くはずはないのであった……。
コミュニケーションのあり方、芸術の持つ力、そして人間の根源的な愛を問う、オレンジ小説賞、PEN/フォークナー賞受賞作。
ペルーのリマで起きた日本大使公邸占拠事件を下敷きにして書かれた作品。
日本企業の社長・ホソカワの誕生日を祝うために副大統領宅に招かれた人たちが反政府組織に占拠され人質となる。
その中にはホソカワが心の底から崇拝しているオペラ歌手ロクサーヌ・コスもいた。
その中からロクサーヌ以外の女性と病人、雇われ人は解放され、合計40人が人質として残される。
膠着状態が続く中、「理性的なゲリラ」たちと人質の間に奇妙な絆が生まれる。
家事に目覚めた副大統領とひときわ貧しく小さいイシュマエル。ロクサーヌの歌に感化されて歌いだしたセサル。そして何か国語も話せるために政府側からもゲリラ側からも引っ張りだこのゲンとスペイン語を読めるようになりたい少女カルメン。
生きていくために選択の余地なくゲリラになった子どもたちは、占拠した副大統領宅で安らぎを覚えたり学びたいという気持ちを露にするのが切ない。
交渉人のメスネルが占拠が長引くほどにやつれていくのが、本来の目的を見失ったゲリラたちの未来を暗示していたし、彼らが夢見るような未来は来ないんだろうなということは予想はしていたけれど、結局国は何も譲歩することなく社会は何も変わらなかったことが辛い。
そして世界はこの小説が書かれた時よりも容赦なく救いがなくなっているのも辛い。
