りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

オールド・ドクター ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ短篇集成

オールド・ドクター  ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ短篇集成

オールド・ドクター ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ短篇集成

パウンドやエリオットに比肩し、ギンズバーグらから《アメリカ現代詩の父》と仰がれたウィリアムズ。20世紀を代表する長詩『パターソン』の詩人が書いた哀切でコミカルな傑作短編小説16編を収録。うち8編が本邦初訳。

辛辣に感じるけれど決して冷たいわけではなく、むしろ温かい。しかしその温かさに気付くにはこの文体や語り口に慣れないと難しい。いや慣れてからもあまりにも辛口で思わず目をそらしたくなるような物語も。

作者が産婦人科医だったということも大きく影響しているのだろう。
貧困と無知のために流産したり養える状態ではないのに次々子どもを産んだりダメな結婚を繰り返し自ら不幸を呼び入れたりする人たちが描かれる。
彼らを見つめる作者の視線は温かく、しかし諦めとも受け取れるような無力感もある。

渋くて苦い独特な味わいの短編集だった。