★★★★
旅する作家・角田光代による旅エッセイが文庫化!文庫版あとがきも新規収録
ネパールでごはんをおごってくれ「年をとったら若い旅行者におごってあげなさい」と笑ったお坊さん、「この世で一番すばらしいところ」と勧められメキシコ・トゥルムへ行ってみると「すばらしい」とは「なんにもない」という意味だった……旅好き作家・角田光代が行く先々で出会い、食べ、考えたあれこれが詰まった傑作旅エッセイ。出会う誰かの“日常”はこんなにも“非日常”で面白い。ウェブ連載「角田光代の旅行コラム」も収録。
大好きな角田さんの旅エッセイ。
角田さんのエッセイはもう何冊読んだか分からないけれど、いつ読んでも親しい友だちに再会したような気持ちになる。
方向音痴で怖がりだけどバックパッカーで、走るのもマラソンも好きじゃないと言いながら長年マラソンを続けていて大会にも幾つも参加している角田さん。
前にもどこかで読んだことがあったんだけど、ボルドーで行われる仮装をしてワインを飲みながら前菜から肉、魚と食べながら走るマラソン大会が豪快すぎて笑った。すごすぎる!
旅で向かう国や町との縁や、そこで出会った人、目にした風景、訪れた後に気づく自分自身の内面。
そして私は自分のこの先について、明確なビジョンがなかった。そのビジョンとは、どんな仕事をしてどんな家に住んで、ということではない。もっとたましいに近いこと、何を信じて、何を自分に課して、何を嫌って、何を許さず、何を目指して生きていくか。そうしたものがあのときの私には曖昧模糊としていた。それが、あの島でくっきりとしたビジョンを得たのだ。
旅先でビジョンを得ることができるのは余計なものが取っ払われた裸の自分でいられる瞬間だからなのかもしれない。
空想も誇張も含めて、ひとりの心と体と感情ぜんぶを総動員して動くことが、旅なのだなぁと思う。
ここに来ると落ち着くなぁ…だけでなく、なんかここは自分に合わないなぁ…違和感があるなぁ…だったとしても、それもいい旅だったと言える。
歩けるうちにいろんなところに旅したいな。
