りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯

★★★★★

第二次世界大戦中のロンドン郊外で、足と翼に障碍を持つ一羽の小スズメが老婦人に拾われた。婦人の献身的な愛情に包まれて育った小スズメは、爆撃機の襲来に怯える人々の希望の灯火となっていく―。ヨーロッパやアメリカで空前の大ベストセラーとなった英国老婦人と小スズメの心の交流を描いたストーリーを、梨木香歩が完訳。

まさかスズメの話で泣くとは思っていなかった。
とは言っても、これは決してお涙チョーダイの感動物語ではなく、自然界で生き抜くことができなかった赤ちゃんスズメを保護したキップス夫人が、惜しみない愛を与えながらもスズメの野生を損なうことなくともに暮らした記録なのである。「記録」というだけのことはあって、あくまでもあったことを淡々と記録していてその姿勢にとても好感が持てる。

最近我が家でウサギを飼い始めた。
もともと金魚と沢蟹ぐらいしか飼ったことがなかった私は、生き物との暮らしというものに具体的なイメージがもてていなかった。
頭に浮かぶのはペット愛で盲目になったお馬鹿飼い主、というマイナスのイメージぐらいのものか。

それがこうしてウサギを飼い始めてみると、そのペットとしてのかわいさもさることながら、何よりもこの「生きている感じ」が本当にすばらしくて、生きているものが身近にいるというのはいいなぁ!!としみじみ思うのである。
家族と暮らしている私がそんなことをいまさら言うのもおかしな感じがするけれど、しかし生き物がいる暮らしというのは本当に楽しくて素敵なことなのだよなぁ。
けだるく横になってうとうとしていたり、立ち上がって干草をわしわし食べていたり、おやつを期待してケージの前で存在をアピールしたり、その全てが「生きている」という存在感があってたまらないのだ。
癒されるという言葉をあまり当たり前に使いたくはないのだが、でも確かにこれは癒しなのだろう。それ以外の言葉が見つからない…。

この本を読んでいても、人間とは明らかに違う生き物であるスズメが自然ではない環境の中で懸命に「生きている」所にぐっとくるのだ。
人間とスズメ、全てをわかりあえるわけじゃない。だけど心が触れ合う瞬間というのが時々ご褒美のように与えられて、それは人間だけじゃなくきっとスズメにとっても喜びだったのではないか。お互いがいることで豊かな人生が送れたのではないか。

写真がまたとても素晴らしい。
一家に一冊。とオススメしたくなる素晴らしい本だった。