帰れない山
★★★★★
街の少年と山の少年 二人の人生があの山で再び交錯する。山がすべてを教えてくれた。牛飼い少年との出会い、冒険、父の孤独と遺志、心地よい沈黙と信頼、友との別れ――。北イタリア、モンテ・ローザ山麓を舞台に、本当の居場所を求めて彷徨う二人の男の葛藤と友情を描く。イタリア文学の最高峰「ストレーガ賞」を受賞し、世界39言語に翻訳された国際的ベストセラー。
とてもよかった。
主人公もその父もブルーノもこんな風にしか生きられなかったのだろうかと苦い気持ちになるが、美しく壮大で時にものすごく過酷な自然を前に人間が無力なように、人生も思うようにはいかないものなのかもしれない。
それでも少年時代の冒険や再会してからの家作り、恋をして未来を夢見て。一時でも最高に幸せな時間を過ごしたことは自分のなかに残る。決してすべてを失ったのではないしその時間が無為だったのではない。
そう思える後味。素晴らしかった。