りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

池袋演芸場9月上席夜の部

9/3(月)、池袋演芸場9月上席夜の部に行ってきた。

・蝠丸「寝床」
~仲入り~
東京ボーイズ 歌謡漫談
・遊史郎「宮戸川(上)」
・笑遊「やかん」
・うめ吉 俗曲
・伸治「らくだ」

蝠丸師匠「寝床」
「それじゃ繁蔵、長屋のみなさんはどなたもいらっしゃらないんだね?」。
おおお、そんな入り方もあるんだ!そう言ったあとに「金物屋は?」と旦那の気になる何人かをピックアップして問いただすという形。多分時間短縮のためなんだろうけど、わかりやすくていいなぁ。
金物屋のおかみさんが臨月と聞いてご隠居が「またかい?あのかみさんはあたしの義太夫の会のたびに孕んでいる…もう都合4人は生まれてるはずだけどそのわりに子どもをみたことがないような気がする」とつぶやくのがおかしい。
「それじゃこうしましょう。今日は店の者に聞かせてあげよう。お前さん方だっていつも仕事ばかりじゃ気の毒だ。たまには楽しみごともなくちゃ」と言われて、えええ?と驚く繁蔵がおかしい。
店の者の言い訳で「あかぎれです」は初めて聞いた。「え?あかぎれあかぎれがあって義太夫が聞けないわけがないじゃないか」と言うと「旦那様の義太夫を聞いていると思わず力が入ってあかぎれの傷が広がってそこから黴菌が入るんです」って…なんて苦しい言い訳なんだ。わはは。

話始めたとたんに席を立ったお客さんがいたんだけど蝠丸師匠が「え?」と驚いて話しかけたのもちょっと面白かった。
「いやあのね、我々はそんなことには驚かないんですよ。慣れてますからね」と言いながらも「どこまでやりましたっけ?…ええと…なにーーー?それじゃあなにかい?…ええと…なにかい?って誰がなにしたって?」。師匠、動揺が隠しきれてない…。

また旦那が繁蔵にぶちきれた後に「はぁ…疲れる…この噺、疲れるんですよ。だからあたしめったにやらないんです。でもね、あんまりやらないでいると忘れちゃうから。こうやって時々思い出すためにやってるんです。こうやって愚痴言いながら息を整えてね…お客さんも一緒にちょっと休んで…驚きのラストに向けてみんなでがんばりましょう」。
…ぶわはははは。こういう力の抜け具合がほんとに楽しい。

怒り狂った旦那をどうにか沈めるシーンも省いて、長屋の連中が集まってくるところから。
旦那の義太夫の会が近づいてくるとこの辺りからネズミが一匹もいなくなる…勘がいいんだね…なんで我々にはその勘が働かないんだろうという嘆き。
そして粋が良くてピチピチしてる刺身が旦那の義太夫が始まったとたん青くなって丸まってしまう。刺身にも防衛本能があるんだね、にも笑う。
客が全員寝ていることに気づいて激怒した旦那が三味線の師匠に「三味線を止めて」と何度言っても全然止めないお師匠さん。旦那の顔に気が付いて、シレっと両耳から耳栓を取り出すしぐさがめちゃくちゃ面白い。
楽しかったー。

笑遊師匠「やかん」
大好きだけど、お客さんの反応が薄かったり、癇に障る笑い声をあげるお客さんがいたりするとみるみる不機嫌になるからちょっと怖い笑遊師匠。今日のお客さんはあんまり好きな感じじゃないのでは?とドキドキしてしまう。
大阪に行って彦六まつりにも行ってきたという笑遊師匠。「やかん」をやってお客さんの反応がよかったとご機嫌で語ってらっしゃってちょっとほっ…。
途中で脱線したり、時計を見ながら本筋に戻したりの自由な「やかん」。♪ローレンローレンローレン♪に大爆笑。面白かった。

伸治師匠「らくだ」
私、お酒弱いんですよ、と伸治師匠。
今日もね、サバランってあるでしょ、あのブランデーにたっぷり浸してあるケーキ。あれを食べてからここに来たんですけどね、顔が赤くてなんかちょっと酔っ払っちゃってるの。情けないよねー。あれっぽっちで。
といって、なんかお酒の噺に入るのかなーと思ったら「あ、ちょっと待った!」と言って、聞いたことがないお酒?の小噺(なんかすごくおかしかったんだけど忘れた…)をして「これが言いたかった!」と言って、兄貴分が家を訪ねてくるところ。わーー「らくだ」!

兄貴分はそんなにドスがきいてるわけじゃないんだけど、でも怖い。「らくだ」は伸治師匠で一度聞いたことがあったんだけどその時よりずっと怖かった。
くず屋さんが「死んだら仏」と言った、その言葉が気に入った!と褒めたあたりから逆に怖かった。なんだろう、そういうやくざな人の独自の理屈がある感じがあって。
くず屋さんは伸治師匠らしくふわっと軽くて、兄貴分をすごく怖がる感じじゃなく、フツウに接してぐわっとやられて「きゃっ」と飛びのく感じ(笑)。この飛びのく感じがなんかとっても楽しい。
「かまの蓋が開かなくなっちゃうんで」と言うと「行かねぇっていうのか?俺は静かに言ってんだぞ!」「いってきまーす!」。この間髪を入れずの「いってきまーす」が楽しい。
かんかんのうをヤケクソで歌うくず屋さんと、死体をほれほれと躍らせる兄貴分が楽しそうなのも楽しいし、八百屋に樽をもらいにいってくず屋さんが「二回目の座敷か」と言うのもおかしい。

すすめられてぐいっと酒を飲むくず屋さんが3杯飲んでいきなり目つきが変わる。
自分から4杯目をもらいにいって一気に柄が悪くなって立場が逆転する楽しさ。
怖いけど怖すぎないから見ていて嫌な気持ちにならないし、テンポもよくて楽しかったー。