りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

都甲幸治さん×岸本佐知子さんトークショー「絶望したら小説を読もう—モヤモヤしているあなたのための世界文学」

6/14、三省堂書店神保町本店で行われた都甲幸治さん×岸本佐知子さんのトークイベントに行ってきたのである。

これがもうメチャクチャ楽しかったのだ。
なにこれお笑い?ってくらい話が面白くておかしくて笑いっぱなしの一時間であった。

ぶっちゃけトークがめちゃくちゃ楽しい都甲幸治さん。こんな先生の講義を私も大学時代に受けてみたかったなぁ!
三年ぐらいほんとにちゃんと教えられなくてしんどかったとおっしゃりながら、この本自体も講義をする中で得たリズムや起承転結がいかされているし、話をするのがとても上手で普段の講義でもハイテンションで生徒の注意をひきつけながら、緩急つけた授業をされているのだろうなということが伺われる。

そして自分の興味があることがらを翻訳、講義、執筆、研究と全てに活用しているから、多岐にわたって仕事が成立しているといるということを、ネタをばらすようにちょっと「悪い感じ」で語る都甲さんがとてもチャーミングだった。

また、聞き手の岸本さん(←美人だ美人だとは聞いていたけれど、スタイルが良くておしゃれでナチュラルな本当に素敵な女性!)が「ねえねえ、前から聞きたかったんだけど…」と都甲さんにぶつける質問がどれも、そうそう!それ聞きたかった!という内容でとってもナイス。

私は本当に昔から海外の小説が大好きで、それなのに原文で読めないが故に翻訳本でしかその世界を知ることができないのが残念で悔しくてならなくて。
そんな私からすれば、「翻訳されたものは本物じゃない」「訳されていないけど面白い本はたっくさんある!」という都甲さんの言葉はまさに歯軋りもの。きぃーーーくやしいーーー。
で、そんな翻訳されてない本を原文で読んで「こんなにすばらしいんだぜぃ!」と紹介するというのが、この企画なのである。

都甲さんによれば、翻訳本を出版するに当たってはそれを原文で読んで評価する「読み屋(reader)」という人たちがいてそれらの人たちによる評価、また売れるかどうかの判断など、あらゆるところから分析してようやく翻訳して出版できるということで、「これサイコーっすからぜひ出版しましょうよー!」「おーーいいっすね!やってみましょう!」みたいな軽いノリは全くないのだそう。
現に都甲さんが「これはチョー面白い!」と思って翻訳しましょうよー!とイチオシしているコミックは、出版社の人に「うーん…都甲さんのイチオシって言っても正直弱いっすねぇ。(都甲さんじゃなくて)綿矢りさならイケるんっすけどねー」と一蹴されたらしい。わはははは。

それから岸本さんが「私は原文で小説を読んでこれ面白い!とかこれはイイ!とかって感じることはできるしそれを日本語に置き換えることはできるけど、その面白さや素晴らしさを表現することができない。都甲さんは、きちんとそれが出来ているのがすごい。いったいどうすればそういうことができるのか?」と質問した時の都甲さんのこたえがとてもイカしていた。

「多分出発点が違うんですね。あのね。僕はね。言いたいことがたくさんあるんです。みんなに僕の話や僕の思いを聞いて欲しいんです。でもね。例えば僕がね、”雨が降ってる時に窓に水滴がつくでしょ?それを見ていると僕はね…”なんてことを言い出しても、聞きたいと思ってくれる人なんていないんです。そんな語りが許されるのは女優だけなんです。でも僕は女優じゃないんです」
「で、柴田(元幸)先生に、僕は語りたいことがたくさんあるんだけど、誰も僕の話を聞きたがらないし聞いてくれない」って話したら先生に言われたんです。「そりゃお前が勉強してないからだ」って。「話をきいてもらいたかったらまず勉強しろ」と。

なんか素敵だよねぇ?
そしてそう言われて素直に塾の講師をやったり、渡米して泣きながら大学に通って英語の勉強をする都甲さんが素敵だし、言われるがまま大学で教え始めてできなくて、だけど3年ぐらいやってだんだんコツがわかるようになって面白くなってきて道が開けてきた、っていうのも素敵。

お二人の話を聞いているととても愉快で楽しくて、いつまでも聞いていたい!という気持ちでいっぱいになった。
それとともに、私もこういうひとたちの近くにいたかったなぁ、というえもいわれぬ寂しさもあって…。なんてこと思ってもしょうがないんだけどさ。

というわけで、トークショーのあとはしっかり並んでサインをしていただいたのであった。

わーいわーいわーーーい!
ほとんどの人たちがフルネームで書いていただいてる中、「りつこ」でお願いしたもんで、都甲さんに「うお?い、いいんですか?ぶわははは」とちょっと驚かれて笑っていただいた。
まるでお店のねーちゃんみたいでしたかね?まだお店はないんですけど、持てた暁にはぜひ来てくださいませ〜サービスしまっせ、おほほほほ。