★★★★
少女2人の「遊び」で書かれた小説が刊行されることになり、周囲を巻き込み思わぬ方向に。2023年度ペン/フォークナー賞受賞。
アメリカ人と結婚して今はアメリカに住むアニエスはフランスの片田舎で生まれ育った。母からの電話でかつての親友ファビエンヌの死を知ったアニエスは、少女時代を回想する。
少女時代、彼女たちは本を書くというゲームを始める。ファビエンヌが物語を創りアニエスが書き留める。ゲームを主導するのはいつもファビエンヌだ。アニエスはそんなファビエンヌに振り回されたり時には踏みつけられても彼女といる時間だけが生きる喜びだった。
妻に死なれたばかりの郵便局員ムッシュ・ドゥヴォーに目をつけたファビエンヌは彼を巻き込んで本を出版するところまでこぎつける。
本を書き留めただけのアニエスを作者と偽り、アニエスは「天才少女作家」としてパリに招待され、その後ミセス・タウンゼントが校長を務める英国のフィニッシング・スクールで教育を受けることになる。
アニエスの幸せはファビエンヌとともにあること。一人で英国に留学するなどということはアニエスの望むところではないが、彼女に選択の自由はなく(高圧的なタウンゼントが勝手に両親と話しをつけてしまう。またファビエンヌ自身も留学するようにアニエスを促す)嫌々ながら英国へ。
ひとりぼっちのアニエスの唯一の楽しみはファビエンヌからの手紙。封筒の中にはファビエンヌ自身の手紙と架空の恋人ジャックの手紙が入っているのだが、ファビエンヌがこのゲームに飽きてきたことを手紙から察知したアニエスは…。
物語がアニエス視点で語られるので読んでいる時はファビエンヌの洞察力の鋭さや賢さ、大胆不敵さに無敵な感じを抱いたり、また彼女の残酷さに冷や冷やしたりもしていたのだが、改めて読み返してみるとファビエンヌの痛々しさに気づく。
賢いが故に自分の未来が決して明るくないことも見えるし、今は想像力と知恵を駆使してゲームを楽しむことができるけれどこれも現実に飲み込まれることも分かっている。
一方のアニエスはファビエンヌとの関係が永遠に続くことだけを祈り、二人でパリに行くことを夢見る。相手が何を望んでいるかを察知してそれに合わせることもできるのがアニエスの利点で、ファビエンヌはそれができない自分のこともよく分かっている。
疎遠になった後、サーカス団に紛れて村を出たファビエンヌは何年かしてまた村に戻るが、彼女のサーカス団での日々がどんなだったか知りたかった。
はかなくて苦い結末ではあるけれど、ファビエンヌに「ばかなガチョウ」と呼ばれ続けたアニエスが最後に至った境地に救われた気がする。
