りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史

 

愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史

愛の顚末 純愛とスキャンダルの文学史

 

 ★★★★★

悲恋、秘められた恋、ストーカー的熱情など、文学者たちの知られざる愛のかたちを追った珠玉のノンフィクション。

小林多喜二――沈黙を貫いて亡くなった小林多喜二の恋人、田口タキ。多喜二に深く愛されながらも、自分は彼にふさわしくないと身を引き、それゆえ伝説的な存在になった。
近松秋江――女性に対する尋常でない恋着を描いて明治・大正の文学史に特異な足跡を残した近松秋江。いまでいうストーカーのごとき執着と妄執は、「非常識」「破廉恥」と評された。
三浦綾子――旭川の小学校教師であった三浦綾子は、敗戦による価値観の転倒に打ちのめされ退職、自死を図る。光を与えたのはクリスチャンである一人の青年だったが、彼は結核で逝き――。
中島敦――母の愛、家庭のぬくもりを知らずに育った中島敦が選んだ女性は、ふくよかで母性的な人だった。だが彼女には親同士が決めた婚約者がいた。そこから中島の大奮闘が始まる。
原民喜――最愛の妻を失ったときから、原民喜はその半身を死の側に置いていた。だが広島で被爆しその惨状を目の当たりにしたことで、彼は自らの死を延期したのだった。
他に梶井基次郎中城ふみ子、吉野せい、宮柊二など。

 

 以前は作家の人となりは知りたくないと思っていたけれど今はとても興味がある。

素晴らしい作品を書く作家が素晴らしい夫ではないことを証明するようなエピソードが多いけれど、身勝手さや弱さも含めて文学的だ。

書くことが生きることとも、また死ぬこととも繋がっているように感じる。

愛を持って描きながらも少し距離を置く、作者の作家への距離感がとてもいい。
積んでる「狂うひと」も素晴らしいに違いない。読まなきゃ。