りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小はんの会

2/27(水)、湯島天神参集殿で行われた「柳家小はんの会」に行ってきた。


・さん福「のめる」
・小はん「棒鱈」
~仲入り~
・小はん「火事息子」


さん福師匠「のめる」
のんびりした口調で最初から最後までとても楽しかった。
そもそも「口癖言ったら1円やる」っていうどうでもいいような賭けだから、相談されたご隠居もやる方もやられる方ものんきなもんで、それが「よし言った!」っていうところだけちょっと勢いづくのが面白いんだな。


小はん師匠「棒鱈」
酒癖の悪い男のグズグズ言うのがとてもリアルでほんとに酔っ払ってるみたい!いるいるこういう酔っ払い。
隣の侍が「まぐろのさしみ」のことを「まぎろのさしむぅ」と言うのがすごくおかしくて、それを聞いた男が同じように「まぎーろのさしむぅーって言いやがる」と真似するのもおかしい。
歌うところは驚くような大きな声で動作も激しい。
小のぶ師匠もそうだけど、こういうところをすごく情熱的にやるのがいいなぁ。
酔っ払いの頭が重くなって扉を倒すところも激しくておかしいし、胡椒を持った板前が必死に止める様子もおかしい。
楽しかった。


小はん師匠「火事息子」
町火消しと定火消しのまくらで、「定火消し」またの名を「臥煙」と申しまして、「臥煙」の
「が」は「巨人を一つにしちゃったような字」というのには大笑い。
小はん師匠のこういうところ、大好き。めちゃくちゃチャーミング。
そういえば私も昔、「こざとへん」と言われてわからなかった時に、「棒が一本立っていて、そこに旗が揺れてるの」と説明されたことがあったな。センスいいな。
臥煙は大部屋に集まって寝ていて、部屋の真ん中に丸太のようなものがありそれを枕にして寝ていた。火事が起こるとその丸太の端を槌で叩いて起こした、というのは初耳。
そんなまくらから「火事息子」。

勘当された若旦那が勝手口からこっそり帰ってくる。
女中のお清に小さな声で声をかけ「さっき知らない女中に声をかけたら変な顔をされちゃったよ」と言い、「〇〇はどうした?」「××は?」と様子を聞く。
「おっかさんはどうしてる?」と聞くと、具合が悪くて二階で寝ていると言われ、二階に行き母親に声をかけると、「ああ、お前かい!」と母親。
母親は、お前が勘当になって家にいなくなってからもう生きていてもしょうがないと思うようになり何も食べなくなったら病になってしまったという。
そう言われて若旦那は「じゃあ俺が帰って来なかったらおっかさんの病気は治らないのかい?」と驚き、そんな酷い話があるもんかとうなっていると、他の臥煙に「どうしたんだ?悪い夢でも見ているのか?」と起こされる。

まくらで聞いた臥煙の寝間が目に浮かんでくるし、勘当された若旦那が今も父母を懐かしく思う気持ち、ことに母親に会いたいと思っている気持ちが伝わってきて、じーん…。
そして若旦那を起こした仲間が「さては夢を見ていたな」と言って、自分が見た夢の話をあれこれとするんだけど、これがまたすごくバカバカしくて笑ってしまう。
「お前は珍しく博打嫌いだから」というセリフもあって、おそらく臥煙の中でも浮いているけれど、家にも帰れない若旦那の姿が目に浮かぶ。

それからご近所が火事になった実家の様子。
大旦那が心配して訪ねてくる人たちの応対をしつつ、風向きが変わったからもう安心だ、とほっとしていると、番頭がやってきて「目塗りをしないとしましがつかない」。
そう言われた大旦那が定吉に目塗りに使う土を持ってくるように言い、番頭に梯子に上るように言う。
梯子に上っておっかながっている番頭と、下から不器用に土を放る大旦那が…ほんとにだめそうで大笑い。
駆け抜けてくる臥煙の姿を描写するときは大きな声で迫力がある。

親子の対面のシーンでは、厳しい顔を見せてすぐに「帰れ」と言う父親と、どこまでも甘い母親。
旦那を責めるおかみさんがとてもチャーミングだし、厳しいことを言いながらも息子の身を案じていることが伝わってくる旦那の優しさもいい。
とてもあたたかくてじんわり泣ける「火事息子」。よかったー。