りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭5月上席「桂夏丸・神田蘭 真打昇進披露興行」

5/1(火)末廣亭5月上席「桂夏丸神田蘭 真打昇進披露興行」に行ってきた。
夏丸さんの真打披露目大初日ということで有休をとって昼の部から入る。
10時40分ぐらいに末廣亭に着くと、思った以上の大行列。ひぃーー。なんてことーー。
と思ったら、余一会の前売りを買いに来た人も混ざっていたらしく、途中で整理されてどうにか前の席をゲットできた。ほっ。


昼の部
・あら馬 サルの小咄
・竹千代「見世物小屋
・ハッポウくん ハッポウ工芸
・橋蔵「寄合酒」
・京子「与謝野晶子伝」
・山口君と竹田君 コント
三四郎「かずとも」
・米福「幇間腹
ぴろき ウクレレ漫談
・笑遊「堀之内」
・鶴光「試し酒」
Wモアモア 漫才
米丸「タクシーの怪(4話)」
~仲入り~
・昇也「庭蟹」
・京太・ゆめ子 漫才
・好楽「一眼国」
遊雀悋気の独楽
・正二郎 太神楽
・竹丸「西郷隆盛

夜の部
・伸しん「桃太郎」
翔丸「つる」
・コント青年団 コント
・枝太郎 「アンケートの行方」
・米多朗「浮世床(戦争ごっこ、将棋)」
東京ボーイズ 漫談
・松鯉「卵の強請」
・米助「新聞記事」
・今丸 紙切り
・円楽「代書屋」
小遊三「弥次郎」
~仲入り~
・真打披露口上(米助、紅、蘭、夏丸、幸丸、円楽、小遊三
・蘭「樋口一葉一代記」
・紅「桂昌院
・幸丸「米丸の悪口」
ボンボンブラザーズ 曲芸
・夏丸「稲川」

 

三四郎さん「かずとも」
顔は以前から知っていて、面白くないんだろうなと決めつけていたんだけど(すみません!)面白かった!
東京のおばさんが三四郎さんに気が付いた時と大阪のおばさんが気づいた時の反応の仕方。ベタなんだけど、すごくおかしい。
マッサージに行ったとき、並んでマッサージを受けていて、マッサージをしてくれてるおばちゃんとの会話に隣の人もその隣の人もどんどん混ざってくる様子がすごくおかしかった。
そんなまくらから続いた感じで、「かずとも」。
大阪の子どもは東京とはちがいますねん!というまくらからの地続きで、もうこの子どもが…存在だけでうるさいタイプのクソガキで、でも罪がなくて。もうおかしくておかしくて。笑った~。


米丸師匠 「タクシーの怪(4話)」
年をとって落語を喋るスピードが落ちたという話や心臓の手術をした時の話やあれこれ話題が飛んでいくんだけどそれが楽しくてにこにこしてしまう。
まくらだけかなとおもったら、夏はやっぱり怪談、と言いながら…。

噺家3人組がお客様(なのか?)が飲みに連れて行ってくれて珍しく二次会まで行きました、別れるときにはご祝儀もいただいちゃいました、と師匠に報告している。
よかったな、と師匠から言われた3人は、せっかくだからこのままタクシーに乗って飲みなおすか!と盛り上がってタクシーに乗る。
3人だけど一人が太っているのでお前は助手席に行け、と言われて助手席に乗ろうとすると、運転手に「助手席はだめです」と断られる。
仕方なく3人でぎゅうぎゅうで後部座席に乗ってバカ話をして盛り上がっていると、運転手が助手席に向かって「すまない…許してくれ」とぶつぶつ言ってる。のぞいてみると、助手席に白い布に包んだ箱のようなものがあって、それに話しかけている。
気味が悪くなって「なにしてるの?」と聞くと、「これは妹のお骨。東京見物に行きたいと言っていたけど結局連れて行ってやれなかった。せめてと思いお骨を助手席に乗せてあちこち回っているのだが、(お客様方が)うるさいので妹に謝っていた」と。
すっかりしらけてしまった3人は飲みに行くのをよしてそれぞれ家に帰る。
そのあと乗ってきた男が運転手に「そこにある白い布に包まれた箱は何?」と聞くと運転手は…。

…わはははは。
なんかすごいなー。93歳でまだ新作をやっていてこんなに元気で。レジェンドだわ、まさに。


小遊三師匠「弥次郎」
前方の円楽師匠の「代書屋」でさんざんいじられた小遊三師匠。
「ほんとにもうあることないこと…たまーにほんとのことが混ざってるから始末に悪いよ」と言いながら「弥次郎」。
いやぁこれが楽しいんだ。体の使い方がうまくて楽しいんだな、小遊三師匠は。キレがあるの。笑った笑った。


真打披露口上(米助師匠:司会、紅先生、蘭先生、夏丸師匠、幸丸師匠、円楽師匠、小遊三師匠)
司会の米助師匠が無駄にふざけるので(しかも全然おもしろくな…)それにいらっとなりつつ…それでも紅先生、幸丸師匠が本当に嬉しそうで、蘭先生、夏丸師匠がきりっとしていて本当に素敵で、見ていてじーん…。やっぱり師匠が生きていてお披露目の口上に並んでくれるのがなによりだなぁ。
紅先生が「自分の時はこんな風にそうそうたるメンバーが口上に上がってはくれなかった。芸術協会に入れていただいて蘭は幸せ…」とおっしゃっていたけど、本当にそういう気持ちが伝わってきて、見ていてほほえましかった。
幸丸師匠は夏丸さんが高校2年生の時に我が家に「弟子にしてください」と訪ねてきた時は、がりがりに痩せていて「大丈夫か?」と思ったと。自分と違って欲のない芸で、ウケなくても平然としている。自分なんかはいまだにウケようウケようとしているのに、全然違う。最初のうちは直してやろう!と躍起になっていたけど、ある時からそれがいい味になって、まあいいや放っておこう、と思った、と。
確かに芸風全然違うもんなー。師匠と弟子って面白い。

しかし落語協会の口上でも思うんだけど「私はこの人のことを知りません」という人には口上にあがってほしくないなぁ。いくら有名人でもなんでも。
「落語家にはうまい人と下手な人、面白い人とつまらない人、売れてる人と売れてない人、その組み合わせしかない」というのも、正直まぁあなたはそういう考え方なんでしょうね、ふーんって感じ。
そしてきっと自分は全部兼ね備えてると思ってるんだろうけど、私から見るとあなたはただ売れてるだけの人です。あくまで好みの問題だけど。


幸丸師匠「米丸の悪口」
前は苦手だったけどだんだん好きになってきた、この師匠。
真打になってからはアッという間に時が過ぎた、と自分の真打になったばかりのころのことを振り返りつつ、自分の師匠、米丸師匠のことを。
ブランド物が好きで、末廣亭に出た後は必ず伊勢丹で買い物。みなさん、伊勢丹で買い物なんかします?私は伊勢丹はトイレしか入ったことない。
買ったばかりのバーバリーのコートを着る日は天気を気にする。それはピタッと全部ボタンを締めると中の地が見えない。でも全部外してこれ見よがしに見せるのは粋じゃない。
下の3つぐらいボタンをはずして、風でひらっと中の地がのぞくのがかっこいい。
なのにその日は風がなくて、仕方なく師匠は自分で下を持ってパタパタやってました、とか。

米丸師匠、10年前に心臓のバイパス手術をしてそれから3年前ぐらいから急に元気になった。私が思うに…電池を新しくしたからじゃないか、というのに大笑い。
話しながら自分でも思わずといった感じでぷっと笑うのがおかしかった~。

 

夏丸師匠「稲川」
わー、真打になった夏丸さんだー。
思えば真打披露目は何回も行っているけど、真打になる前から応援していて「もうすぐ真打です」「今パーティの準備で大変なんです」なんていう話しを聞いたり、パーティに招待してもらったりしたことのある噺家さんは夏丸さんが初めて。
そのせいか、ああ、いよいよ本当に真打になったんだ!と、身内のような緊張と感動が(笑)。

最初相撲のことを話し始めた時は「阿武松」か?!と思ったのだが、タニマチについてあれこれ話しをしだしたので、お、違う、もしや知らない噺?!とワクワク。

「魚河岸」の名が入った廻しを贈られた力士がいた。これはすごいこと。
というのは「魚河岸」全体から贔屓にされているということで、ふつうはどんなに人気がある力士でも「おれはあいつを嫌いだ」と言い出す人がいて、全体から贈ることはまずない。
これをもらったのが小染川という力士で、しかも太刀山に負けた時に贈られた。

大阪の稲川という力士。
江戸に出てきて勝ち進んだが、なぜか贔屓ができない。贔屓ができなければこの先やってはいけないので、もう大阪に帰ろうと考えていた。
そんな折、外から自分のいる部屋を覗く乞食がいて「稲川と話をしたい」という。
それではと部屋に呼ぶと、自分は稲川関が大好きで贔屓になりたい。自分のような者が贔屓になるのは嫌だろうが、もしいやでなければごちそうしたい、という。
稲川が快諾すると、乞食は自分の使っているふちのかけた茶碗と竹の皮を持って蕎麦屋に行き、そばを持って帰ってくる。
乞食が差し出す茶碗でそばをおいしそうに食べた稲川は「大名でもおこもさんでもご贔屓には変わりはない。自分は江戸に出てきて恥ずかしながら御贔屓が一人もいない。あなたが私のとって初めての御贔屓です。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と頭を下げる。
その姿を見て、乞食が…。

途中、袖からマイマイクを出して「そんな夕子にほれました」を歌い上げたり、地噺っぽく雑談を交えたり…夏丸さん…もとい夏丸師匠らしい自由な高座。
さすがに緊張がちらりと見える場面もあったけど、初日にこういう噺をするって…実に夏丸師匠らしくて素敵。

いろいろな噺をたくさん持っている夏丸師匠、この後のお披露目の興行が楽しみ~。
通うぞ~。