まずいスープ
- 作者: 戌井昭人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/10/01
- メディア: 単行本
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人間のバカさとダメさが凝縮!本当にまずいものって、世の中にそうそうない。でも、これはかなりまずいかもしれない。サウナへ行くと言ったきり、父が行方不明になった…。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」の鬼才が放つ新潮流小説。
なんじゃこりゃ?
表題作の「まずいスープ」は、ある日父がアメ横で買ってきた魚介で作ったまずいスープ。ふだんは料理上手の父がなんでこんな酷いものを?
「あれか、魚が悪いのか?」
「そんなにまずいなら食うな」
なんて会話をかわしていた父が、次の日ふっと行方不明になる。
この父親、何年か前にも姿をくらましたことがあるのだ。
夫が消えたショックで、母は毎晩飲んだくれ、家計もまずい感じになり、「おれ」は父親を探さざるをえなくなり、あちこち聞きまわったり、父の事務所に侵入したり…。
そこはかとなく不穏ででも基本的には平和でのんきでなにかありそうでたいしたことなくて最後まで読んでも「???」で、ちょっと笑っちゃう感じ。
なんだこれは?
最近新しく出てくる女性作家はいや〜な話を書く人が多いけど、それとは全然違うのだな。
2つ目の「どんぶり」は、バイトをさぼって競輪に行った主人公が大勝して、そのお金で風俗に行ったり家電買ったりして、同棲している彼女に天丼をおごる、という話。
これもまたまた「???」。
なんとなくだるい感じや不穏な感じは伝わってくるけど、いまいちピンとこない。
しかし3つ目の「鮒のためいき」、風邪をひいて一日を怠惰に過ごす主婦の話なんだけど、これがめっちゃいいのだ。
これはなんかすごくよくわかる!
病気して昼間から家でぐだ〜としている倦怠感。
ふと庭を見ると、見知らぬ男がバケツをもって立っていて、ぞぞぞ…。
この侵入者のエピソードが、気持ち悪くて怖いんだけどちょっと間が抜けていておかしくもある。
スナックのカラオケのエピソードも、最後のサックス吹きのにーちゃんとのエピソードも、いちいちなんか良かった。
3つ目まで読んで、1、2作目もなんか許せる気持ちになったな。
結構好きかも、この人の作品。