りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

探偵術マニュアル

探偵術マニュアル (創元推理文庫)

探偵術マニュアル (創元推理文庫)

★★★★★

雨が降り続ける名もない都市の“探偵社”に勤める記録員アンウィンは、ある朝急に探偵への昇格を命じられた。抗議のため上司の部屋を訪れるも、そこで彼の死体を発見してしまい、否応なく探偵として捜査を開始するはめに。だが時を同じくして都市随一の探偵が失踪、謎の女が依頼に訪れ…アンウィンは奇々怪々な事件の迷宮へと足を踏み入れる。ハメット賞受賞の驚異のデビュー作。

面白かった〜! 正統派ミステリーだと思って読み始めたので、次々起こる摩訶不思議なエピソードに、最初は「???」となりなかなかなじめなかったが、主人公と同じように読んでる私もいっしょに巻き込まれてしまえばいいのだな!と気付いた。
夢と現実、過去と現在、敵と味方が入り混じり、物語にメタメタにされる喜びを味わった。

主人公のアンウィンは探偵社の記録員。
彼が担当する探偵シヴァートは、探偵社の中で最も有名で優秀な探偵。彼の報告書から重要と思われる部分を抜き出してまとめて記録するのがアンウィンの仕事。
記録員の仕事を愛し誇りをもって仕事をしていたアンウィンだったのだが、ある朝急に探偵への昇格を命じられた。
自分に探偵なんかできるわけない!と上司の部屋を訪れると、そこで死体を発見してしまい、否応なく探偵として捜査しなければならなくなってしまう。

行方不明になったシヴァートのあとを追ううちに、シヴァートが昔手がけた事件が実はまだ進行中であることが明らかになってくる。

これは先入観を持たずに読んでほしい一冊。
というわけで、以下ネタバレ。
















鍵を握るのがサーカスの魔術師っていうのがいい。
サーカスって神秘的で物悲しくてちょっと怖くて魔法の世界とつながっているような感じがする。
物語の最初の方でやたらと夢の話が出てくるなぁと思ったら、途中から夢と現実の世界を行き来して事件を解決していくという、驚きの展開。
なんか読んでいてちょっと「モモ」を思い出したよ。

ハードボイルドチックな不穏な物語なんだけど、主人公のとほほぶりが物語に温かみをあたえていて良い。
助手ちゃんがまたいい味だしてるなぁ。片手に拳銃、片手にランチバスケット。まさにこの物語全体がそんな感じだ。

サーカスとともに去っていくラストシーンがとても素敵。
ミステリーとしては腑に落ちない部分もあるけれど、いいのだこれはファンタジーでもあるのだから。