★★★★
母の看病のため実家に戻ってきた32歳の都(みやこ)。アウトレットモールのアパレルで契約社員として働きながら、寿司職人の貫一と付き合いはじめるが、彼との結婚は見えない。職場は頼りない店長、上司のセクハラと問題だらけ。母の具合は一進一退。正社員になるべき? 運命の人は他にいる? ぐるぐると思い悩む都がたどりついた答えは――。揺れる心を優しく包み、あたたかな共感で満たす傑作長編。
久しぶりに読んだ山本文緒さん。
母の看病のために実家に呼び戻された都。憧れのアパレルメーカーの社員になり店長まで昇りつめたものの、店で総スカンを食らい居心地が悪くなったこともあり、実家に戻り、地元のアウトレットモールのアパレルショップのバイトとして働いている。
母は重度の更年期障害なのだが、ほぼ寝たきりになっていて、鬱状態で自殺しようとしていたこともあると父に聞かされ、心配しつつも、「たかが更年期障害で」「いったいいつになったら治るんだろう」という気持ちもぬぐい切れない。
同じモールにある回転寿司の職人・貫一と付き合うようになるが、中卒で元ヤンキーでボロアパートには洗濯機すらなく寝たきりになった父親の施設の費用を毎月6万払っていると聞き、結婚はないのかなぁという不安もある。
仕事先でも実家でも恋人とも明るい未来を描けず自分は幸せになれるのだろうか、自分にとって何が幸せなんだろうと思ってしまう都の気持ちはよくわかる。
自分は自分のためにしか時間を使いたくないんだなぁと思うことは私にもよくあるし、親のために自分が犠牲になるのは嫌だと思う気持ちは自然なことだとも思う。
面白いのは母親側の視点もあることで、母は母で、なんでも自分で決めつけて聞く耳を持たない夫に苛立ったり、嫌々手伝っている都の気持ちも手に取るようにわかっていて、「そんなに嫌ならやらなくていい」と言いたい気持ちと、でもしてもらえると助かるという気持ちで揺れ動いている。
貫一に対して持っている不安を本人にぶつけたり、自分の今の気持ちを正直に告げることができない都だったが、両親が実家を売りに出して賃貸に移るからそれを機に一人暮らしをしてくれと言われ、このタイミングで貫一と結婚を前提に同棲するか、話し合ってみようと決心する。
貫一は確かになんか危うさもあるし何を考えてるか分からないところもあるのだが、都の父親に一方的に学歴がないことや今の仕事を揶揄されたり、都に責められたりして、気の毒だなぁ…と思ったり、個人的には読書家なところに「それなら大丈夫でしょ」と意味もなく肩を持ちたくなったり…。
プロローグとエピローグは後から足したそうなんだけど、面白い仕掛けで好きだった。
以下ネタバレ。
プロローグでベトナムで結婚式とあったので、え?ニャンくんと?と思ったんだけど、都は貫一と結婚。ベトナムで結婚したのは都の娘。
エピローグで都の娘から母について辛辣な評価がされていて、そこが面白かった。
子どもって親に手厳しいなぁ。
