富士日記〈中〉
★★★★★
並はずれて奇抜で誰も思い及ばぬ発想のなかで、事物の核心をすべて喝破する、いわば生まれながらの天性の無垢な芸術者が、一瞬一瞬の生を澄明な感性でとらえ、また昭和期を代表する質実な生活をあますところなく克明に記録する。
大事に読んでいる「富士日記」。
淡々とつづっているだけの日記なのに、読んでいてとても楽しくて気持ちが爽やかになる。
中巻ではやはり愛犬ポコの衝撃的な死。その時は言葉少なく描かれているけれど、その死が長いこと影を落としていたことが伺える。
泣いたり極端な行動をとろうとしたり宥められたりしながら家族でその死を乗り越えていったのだなと感じた。
印象的だったのは百合子さんが事故に遭ったと思って探しに来た時の泰淳氏の様子。思い浮かべると涙が出てくる。
附記が苦い