りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

末廣亭5月中席夜の部「5代目柳家小さん 17回忌 追善興行」

5/17(木)、末廣亭5月中席夜の部「5代目柳家小さん 17回忌 追善興行」に行ってきた。


・市馬 歌謡曲
・清麿「東急駅長会議」
・権太楼「町内の若い衆」
・南喬「猫の災難」
~仲入り~
・鼎談(小袁治、小里ん、小燕枝)
・小ゑん「フィッ」
・小菊 粋曲
・さん喬「寝床」


市馬師匠 歌謡曲
今日あたしは落語をやらせてもらえないんです、と市馬師匠。
拍手が起きると「最近、歌の方が拍手が多くて、ちょっと気にしてるんです」。
なんたって小さんの弟子の中であたしが一番の年若ですから。花緑さんもいますけど、他では私が若い。
あたしだって外に行けば「会長」とか呼ばれることもあるんですよ。
それが今日なんかは楽屋でお茶入れてるんですから。

…ぶわはははは。そう言いながらもニコニコ楽しそうな市馬師匠。

小さんは相撲が好きでよく見に行ってました。お供したこともあるんですけど、師匠は結びの3つ前ぐらいになると席を立っちゃうんです。それが優勝にかかわる大事な一番でもいつもそう。
それでどうするかっていうと出口のところに立って見てる。
なんでそんなことをするかってぇと、とにかく短気な人ですから。結びまで見て出口が混雑するのが耐えられない。
だったら家でテレビで見ればいいじゃないか、と思ってました。

それからカラオケが出始めた頃、師匠は私を連れてよくカラオケに行きました。
で、当時も映像がついてて、それが昔のチャンバラ映画だったりする。
私もそれを知ってますから、映像がチャンバラの歌をよって歌ったりして。そうすると師匠は機嫌がいいんです。
そんなにチャンバラ映画が好きなら何もカラオケ行かなくても映画を見りゃいいじゃねぇかって話なんですけどね。

そんなまくらから、相撲にまつわる歌。そして呼び出しをやって相撲甚句

もうほんとうにいい声で、明るくて心の底から楽しそうで、聞いていると幸せな気持ちになってくる。
ああっ、いいっ。市馬師匠の歌声。好き好き。今年は久しぶりに年末の歌謡ショーにも行こうかな。
次に出てきた清麿師匠が「ご機嫌な芸ですねぇ」と言ったのがすごくおかしかった。


権太楼師匠「町内の若い衆」
まくらなしで「よう」「大家から呼び出しだって?」と話し始めて、おお、これは「黄金の大黒」!珍しい~。
と思っていたら、猫を食べちゃった一件を話したところで「あ、だめだ、これ。できねぇ」。
この日小さん十八番で南喬師匠が「猫の災難」をやることになってたのだ。
前座さんにネタ帳を持ってこさせて「うーんうーん」。それから「だめだ、切り替えられない…。ちょっと出囃子おねがい」と言って、登場するところから。

…ぶわはははは!楽しい~。こういうの、二倍美味しいよねぇ。権太楼師匠のこんな姿、めったに見られないもの。

で、「町内の若い衆」。短縮版だったけど、おかみさんのふてぶてしいかわいらしさが絶品で笑った笑った。楽しかった。

南喬師匠「猫の災難」
飲みたいけど一文無しのくまさんのところに兄貴が訪ねてきて、ざるをかぶせてある鯛を見て「これを三枚におろしていろんなことをして食おうじゃねぇか」と言った時のくまさんの「え?…ま、食えなくはねぇけど」という困惑した顔がなんともいえずおかしい。
兄貴が酒を買いに行って、その間にくまさんが言い訳を考えて、帰ってきた兄貴にそれを言うと、けろっと信じて「じゃ鯛買ってくるわ」と出て行くのがスピーディーで(笑)それがまたおかしい。

くまさんがちらっと酒を見て吸い寄せられるのが、いかにも酒飲みらしくていいなぁ。
飲んでるうちにどんどん機嫌が良くなって、どんどん酒を飲んじゃうのが楽しいし、言い訳もすぐに「隣の猫」に決めちゃうのもおかしい。

飲みながら何回も「ありがてぇ」って言うのが好き。
そして兄貴分もからっとしていていいなぁ。

楽しい楽しい「猫の災難」。くーーー、いいなぁ、南喬師匠。もっともっといろんな噺を見たくなる。


鼎談(小袁治師匠:司会、小里ん師匠、小燕枝師匠)
小さん師匠の教えを一番聞いている小里ん師匠が芸論を話す、という内容。
内弟子だった小里ん師匠と小燕枝師匠なんだけど、二人が内弟子をやっていた頃はちょうど師匠が遊びを覚えた頃で、あんまり家に帰って来なくなっていた、と。
でも旅のおともに付いて行くことがあり、たいていは師匠はグリーン車で弟子は普通車だったけど、時々師匠と隣り合わせの席をとってもらうことがあって、そういうとき、お互いに無口なので会話が弾まず、耐え切れずに芸のことを聞いたりすることがあったらしい。
小さん師匠は基本的には自分の弟子に稽古をつけたりはしなかったけど、聞けばいろいろ教えてくれた。
また小燕枝師匠は、他の師匠から教わった噺もよく小さん師匠に「見て下さい」と言って見てもらっていた。

あと袖で聞いていてあれこれ言われることもあった。
末廣亭は楽屋が近いから必ずなんか一言言われてあれがいやだった。
たいていは「おめぇの噺はおもしろくねぇな」だった。

…聞けば聞くほど、小さん師匠を好きになるなぁ…。
そしてこうやって弟子が師匠の思い出話を語るのを聞くのって…ほんとに楽しいなぁ。

小ゑん師匠「フィッ」
普通の会話をしていて時折さりげなく「フィッ」と入る可笑しさったら…。もうおかしくておかしくて笑いが止まらない。
「え?先輩、そのフィってなんですか?」
「フィなんて言ってねぇよ」
「気づいてねぇんだな」
という会話のおかしさよ…。

楽しかった~。大好き。


さん喬師匠「寝床」
さん喬師匠の「寝床」は何回も見ているけど、え?まえからこんなだったけ?というぐらい、旦那の義太夫が酷くて、笑った笑った。
「おぇーおぇーーー」で始まって「ぐぇぇえええええ」と激しい調子になったあとに真顔で「声が出ない」って…ぶわはははは!

最後の「寝床」までやらず、病気のおっかさんとのやりとりを若旦那が義太夫調でやるところでサゲたのも面白かったな。