りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

古典落語を聴く会「藤兵衛会」

5/4(金)、富士見区民館2Fで行われた古典落語を聴く会「藤兵衛会」に行ってきた。
以前から寄席で見ていて好きだーと思っていた師匠。こんな会があったので行ってみた。


・藤兵衛「だくだく」
・藤兵衛「天日裁き」
~仲入り~
・藤兵衛「氏子中」
・藤兵衛「田能久」

 

藤兵衛師匠「だくだく」
ホワイトボードに今日の会の予定が書いてあって、一番最初に「開口一番」と書いてあったのでてっきり前座さんが上がるのかと思ったらそうではなくて、師匠が上がって「開口一番」をつとめるという意味だった!
うっひょーー。ってことは一人で四席?すごい!
しかも「まずは軽いお噺で」と言って「だくだく」って嬉しすぎる!落語の中で一番好きな噺。

「店立て食らっちゃった」「そりゃ大変だったな」「それが大変じゃない」
「店賃棒引きにしてくれるって」「そりゃよかったな」「それがよくない」
いちいち反対のことを言う男と先生のやりとりが楽しい~。
気で気を養うとか、下駄箱に女の下駄が置いてあると色っぽいとか、この男…面白いなぁ。
どろぼうとのやり取りも楽しくて幸せな気持ちに。


藤兵衛師匠「天日裁き」
どういうわけだかこの会はいつの日からか「珍品」をかけないと許されない、という雰囲気になってしまいまして…。
これから申し上げる「天日裁き」はめったにやられる方はいませんな。私以外でやってる人を見たことがない。
別にこれぐらいのお裁きだったら大岡様じゃなくてもいいんじゃないかという気がしないでもないですが、やっぱり大岡様っていうとなんかありがたい感じがするんでしょうね。
そんなまくらから「天日裁き」。

高野(染物屋)「茄子屋」の主人(職人)は生粋の江戸っ子。それに反して隣に住む平兵衛は屑やから始めて小金を貯めて今では立派な質屋を営むようになったケチん坊。この二人が大変仲が悪い。
ある日、茄子屋がいつものように染めた布を干そうとして驚いた。隣の平兵衛の家が蔵を建て増ししていてそれが出来上がると自分の家にお日様の光が入ってこなくなってしまう。
天日に干すことでいい色が出るので、日が当たらなくなると商売ができなくなってしまう。
仕方なく茄子屋は隣家に蔵をもう少しだけ低く建ててくれないかと交渉に行く。
平兵衛の方では「もう工事も終わりかけだしどうすることもできない」とにべもない。
そこをなんとかと頼むと「自分の敷地に建物を建てるのは当然の権利」と怒り出す。
これでは話にならないと大岡様に訴え出る。

大岡様は貧乏人の味方だからいい知恵を授けてくれるに違いないと茄子屋は期待していたのだが、意外にも大岡様は「平兵衛の言う通り、自分の敷地にどんな建物を建てようが自由」と訴えを取り下げさせる。
カンカンに怒る茄子屋に向かって大岡様は「それでお前はどうするつもりだ?」と聞く。
日が当たらなくなったら高野は仕事にならない。もう仕事を辞めるしかない、と答えると「商売替えか。それもよかろう。だったら自分の敷地に深い池を掘って金魚屋をやったらどうだ?」という。
金魚屋だと?!とバカにしやがって!と茄子屋はその日以来仕事もしないで酒を飲むようになる。
心配した大家が聞きに行くと、大岡様に金魚屋でもやれと言われた、と話す。
すると大家は「それはいい考えだ!やってみろ!」と。

渋々茄子屋は庭に深い穴を掘って水を入れて池をこしらえ金魚を泳がす。
するとその日を境に隣の蔵に異変が…。
水が隣から染み出てきて徐々に蔵が傾き始めたのだ。
なんてことをしやがるんだ!と平兵衛が茄子屋に文句を言うがもちろん取り合わない。
それで今度は平兵衛が大岡様に訴え出るのだが、大岡様は「自分の敷地に何を作ろうが本人の勝手だ」と言う。
そんなばかな!と平兵衛が言うと大岡様は「黙れ黙れ!誰もが自分の都合だけ考えたらこういうことになるのだ。茄子屋の商売のために蔵を低めに作り直せ。そうすれば茄子屋も池をどうにかしてくれるだろう」。


大岡様はきっといい裁きをしてくれるはずとおもっていたところ、肩透かしで「えええ?」と思っているところにこの展開。面白い~。
これ、もっと寄席でかかってもいいのに!
落語ファンは喜ぶと思うなー。

 

藤兵衛師匠「氏子中」
膝を痛めているという藤兵衛師匠。
半月板を痛めて手術をした後膝の調子もよかったのが、ここへきてまた痛めてしまった。
年のせいか回復も遅くなっているので、もう一度手術をする気持ちになれず、だましだましやっている。
そういう噺家は多いので職業病のようなもんです。
と言いながら、2席終えて膝がちょっと…と仲入り。になったけど立ち上がるのが難しいらしく高座の上で雑談。痛いところをあんまり見たら申し訳ないと思いつつ、雑談も楽しくてそのまま聞き入ってしまった(笑)。

お客さんが戻ってきたところで「氏子中」。
これは前に一度どなたかで聞いたことがあったような気がするんだけど、ブログを検索したら出てこなかった。

おかみさんのことが大好きな男。
仕事に出かけてる間もおかみさんに会いたくて涙ぐむほど。
そんな男が商用で上方へ4か月ほど行かなければならなくなって大騒ぎ。
おかみさんの方はさっぱりしたもんで「お前さんは仕事を頑張っておくれ。私はその間家を守るから」と送り出す。
仕事が手間取って男が家に帰ってこられたのは2年経ってから。
おかみさんは帰ってきた男を歓迎してくれたのだが話しをしていて気が付いた。おかみさんのお腹が大きくなっている!
これはいったいどうしたことだ?と男が問い詰めるとおかみさんは「お前が子供を欲しがってたからあたしの働きで作っておいた」とおかみさん。
相手は誰だ!と問い詰めるとおかみさんは「一人でこしらえた」「神田大明神に毎日願掛けしたら神様が宿してくれた」とうそぶく。

男が兄貴分のところに相談に行くと、お前が家を空けてからあの家に若い男が家に出入りしていてあぶねぇなと思っていたが下手にそんなことをお前に知らせると思い詰めて自殺しかねないと思って言わずにいた、と。
お前には新しい身持ちのいい女を世話してやるから、あの女房のことはあきらめろ、と。
ついては、出産した後で近所の男たちを集めて祝いをやれ。荒神様のお神酒で胞衣を洗うと、その胞衣に相手の男の紋が浮き出る。集めた連中の羽織の紋と照らし合わせれば相手が誰だかわかる、と言う。

言われた通り若い衆を集めて胞衣を洗ってみると、浮き出た文字が「神田明神」。
おかみさんは「ほら言った通りだろ」と得意顔。
しかしそれに続けて「氏子中」。

…ぶわははは。なるほどこれはバレ噺。
町内の若い衆リアル編だ。すごっ。
面白かった!

 

藤兵衛師匠「田能久」
軽やかで最初から最後までずっと楽しい「田能久」。時々え?と驚くようなクスグリが入るのも意外性があっていいなぁ。

いやぁ想像していた以上にたっぷりで大満足。楽しかった~。また行きたい。