りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

暴行

暴行 (新潮文庫)

暴行 (新潮文庫)

★★★

夜勤から戻ったキャットは、自宅のあるアパートメントの中庭で暴漢に襲われる。幾多の住人が犯行の模様を目撃しながら、誰も通報しない。彼らもそれぞれ、己の人生の岐路に立たされていたのだ――。“傍観者効果“という用語を定着させた現実の事件をベースに、人間の内なる闇と1960年代ニューヨークの病巣を鮮やかに抉り出す迫真の同時進行サスペンス。CWA賞最優秀新人賞受賞作。

実際にあった事件をベースに書かれた作品らしい。
深夜に女性が襲われ悲鳴をあげ、アパートの住人が悲鳴に気付き窓を開けたのにも関わらず、誰も警察に通報しない。
これだけの人が気付いたのだから誰かが通報するだろう。
目撃者となったことで自分のプライバシーが暴かれたり不当な目にあうかもしれない。
そんな都会の「無関心」は私たちにとったら決して他人事ではない。そんな酷いことが…と思うけれど、自分が同じように「誰かがするだろう」と窓を閉めてその場を離れる可能性がないと言い切れるだろうか…。

目撃者たちがことさら冷酷な人達だったわけではない。彼らは彼らでのっぴきならない状況があったのだ。
いやしかしなぁ…うーん…。
被害者の女性の隣に住む黒人フランクと救急隊員のデイヴィッドが、この陰惨な物語の中で唯一の救いを与えてくれている。

リアルなだけに読んでいて非常に辛い。逆に言えばこれだけ嫌な気持ちにさせる、すごい小説だ。
でもこういう小説を好んで読もうという気持ちには正直なれない。