死の記憶
- 作者: トマス・H.クック,Thomas H. Cook,佐藤和彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1999/03
- メディア: 文庫
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これはめちゃくちゃ当たりだった!
父親が家族を殺して失踪。息子だけは外出していて生き残った。彼は成人し、結婚して普通に生活を送っていた。そんな彼のもとに、肉親による殺人事件のルポを書いているという、美しい女性が訪ねてくる。彼女は、彼の体験を記事にしたいと申し出て、彼は最初は気が進まないのだが、彼女のインタビューを受けるうちに、自分が記憶の中に封印していたその事件を掘り起こすことになる、、、という内容。
過去のことは乗り越えたつもりだったのに、昔の記憶を掘り返すほどに危うくなってゆく主人公。彼の心の平穏が徐々に損なわれてゆくのが、非常にリアルに描かれていて、読んでいてつらい。
でも、なにがあったのか知りたい。真相を明らかにしたい。でもすべてがわかったとき、この主人公はどうするんだろう、、、。
真相を明らかにするという面と、心の傷や家族の問題を明らかにするというふたつの面があって、それがこの小説に深みをもたらしていると思う。