りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治 独演会

4/12(日)、千葉市民会館で行われた「柳家小三治 独演会」に行ってきた。

・〆治「元犬」
小三治「二人旅」
〜仲入り〜
小三治「猫の災難」

小三治師匠「二人旅」
「今日いらした方は非常にラッキーです」と小三治師匠。
大変貴重なものが見られます。こういうことはめったにありません。
何かと思ったら、実は顔の右側は普通なんですが左側が…前の方に座られた方は分かるかもしれません…歯のせいでとても腫れていて…なんですかね、女が吸い付いてそのままぶら下がってる…吸い付いて噛みついて食いきって…食切っちゃだめですね。
とにかく夕べから歯が痛くて顔の半分が腫れている、と。
だから正直言って今日は落語どころじゃない。痛くて頭がぼーっとしてる。いつもぼーっとしてるけどもっとぼーっとしてる。でもこれも春のなせる業だからいいじゃないですか。

小三治師匠自身が作った二月三月の俳句を紹介。
「意外にも二月の朝はやわらかく」
これは自慢の俳句らしく、前にも聞いたことがある。
それから3月の俳句を紹介し、4月の俳句はほんの数週間前に作ったばかり…。でも思い出せず(笑)。

江戸は武士の町だった。それは徳川家康が地方の武士が反乱を起こしたりすることがないように、奥さんを江戸に置き江戸を「我が家」と思わせるように仕向けたから。
知らなかったでしょ?これを聞けただけでも良かったでしょ?
そんなまくらから「二人旅」。
張り切って歩く男と、もうくたびれた腹が減った休もうよと文句ばかりの男。
張り切ってる方が景色を見ろと言っても「え?景色ってなんだい?」、謎かけをやろうかと言っても「ええ?謎かけってなんだい?」とやる気がない。
しかも小三治師匠が久しぶりにやったせいなのか、噺もあっち行ったりこっち行ったりふわふわ(笑)。
これはこれでなんか面白い〜とふわふわ聞いていたら、「二人旅というお噺でした」と終わっちゃった。
ちょっと申し訳なさそうに頭をかいて引っ込んで行く小三治師匠がおかしい。わははは。

小三治師匠「猫の災難」 昨日は中学の同窓会に行ってきたと小三治師匠。
毎年同窓会行ってるなぁと思っていると「毎年やってるんですよ。お前同窓会が好きだなと言われるんですけどそうじゃないんですよ」。
普通は幹事が日にちを決めて都合がよければ行く、悪ければ欠席ってなるでしょ。それが私の場合は、まず幹事がうちに電話をかけてきて私の都合を聞くんです。1年先の予定なんて分からないよと言っても、いつなら空いてる?って聞かれてその日になっちゃうから、その後仕事の依頼が来ても、先に入った予定だしなぁって仕事の方を断ってるんです。
ほんとにね。こういうのはやめてもらいたい!

そう言いながらも、なんか楽しそうなんだよなぁ、同窓会に行くのが。
同窓会に行ってみると、みんな律儀に75歳なんです。で、昨年までは、男の方が年取っちゃってるなぁと思ってたんですけど、今年は行ってみて、いや女の方だな、と。もうね、しわしわだよ。しわのかたまり。
実は初恋の人が来るかと思って楽しみに行ったんですけど、昨日は来ませんでした。残念なことに。
やっぱり女の子はね、いやみんな75歳なんで普通の人から見たらばばあなんですけど、私から見たらやっぱり女の子なんですね、彼女たちは。みんな奥さんだから土曜の昼間は家事があって出づらいって言うんですよ。でもねぇ75になって家事もなにもねぇだろう!60代ならまだしも。ねぇ?

それから中学時代の初恋の話。
いやぁこれがもうなんか聞いていて照れちゃうぐらい甘酸っぱい。
まわりもみんなお互い想い合ってることは気づいている、そんな女の子がいたらしいんだけど、当時小三治師匠から想いを伝えることはしなくて、そうこうしているうちに彼女が結婚するということを当時の担任の先生から聞かされた。
その時のショックって言ったら…敷布団を丸めてそれで頭をがーーーんと殴られたような衝撃。 そうです、敷布団。あれをこうやって丸めてね、紐で縛って、それで頭をがーん!と。

で、その時に、その場にいた同級生の女の子…頭が良くてちゃんとしてる子…に言われたのが、「郡山君、好きだって言ったことあるの?」。
「いや、ない」
「なんで言わなかったの!」
「だって言わなくたって分かってるだろうよ」
「女はね、分かっていても、ちゃんと言葉で言ってもらわないとだめなの!言われないとだめなんだよ!」

そう言われて「そうなのか」と勉強になりました。そういうものなのか、と。
それから、ちょっといいな、好きだなと思ったら、言うようになりました。なにせ学びましたから。知っちゃいましたから、それを。
そうしたら面白いように女が来るようになったんですね。

…いやぁもう面白すぎる…笑った笑った。
しかも何をおもったか小三治師匠、「今日ここにいる女性のお客様、みんな好きです!」。
何を言いだすのか?!というのがおかしくて、その中に私も含まれてる!というのが嬉しくて。

そんな話からお酒のまくらへ。
いつものようににわとり上戸とか壁塗り上戸とか…これがなんかさっきの恋バナでちょっとどうかしちゃった小三治師匠にマッチしていてやたらとおかしい。
どっかんどっかん小噺でウケて、「猫の災難」へ。

これがもう…ほんとにたまらなくおかしくて最高だった。
特にこの日は最前列のど真ん中にいたので、小三治師匠の表情がしっかり見えていたので、飲みたい飲みたいあーー飲みたいってジタバタしているところから、鯛の頭としっぽが手に入って「ありがてぇ」ってほくそ笑むところから、兄貴分が来て鯛を見て早合点して戸惑うところから…くるくる変わる表情に目が釘付け。
もうなんてチャーミングなんだ…。
お酒を飲まない小三治師匠が酒飲みの意地汚なさや飲んで一人で楽しくなっちゃうところをこんなにも楽しく表現しちゃうのが本当に最高だ。
もう見ているだけで楽しくて幸せになっちゃう、小三治師匠の「猫の災難」。
千葉は遠かったけど、行った甲斐があった。素晴らしかった。