りつこの読書と落語メモ

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チョン・セラン「地球でハナだけ (チョン・セランの本 05)」

 

★★★★★

《君に会いたくて、二万光年を飛びこえたんだ。》

人間と宇宙人の、想像を超え、時空を越えた、一途でさわやかなSFラブストーリー。

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やさしい心を持つハナは、つき合って11年になるキョンミンに振り回されてばかり。
この夏休みだってハナを置いて、流星群を見にカナダへひとりで出かけてしまう。

そしてカナダで隕石落下事故が起こり音信不通に。

心配をよそに無事帰国したキョンミンだが、どうも様子がおかしい。
いつもとは違ってハナを思いやり、言葉づかいだってやさしい。
嫌いだったナスも食べている。

ついには……口から青いビームを出しはじめて……。

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もう二度とこれほど甘い話を書くことはできないと思います。
--チョン・セラン

以前は自分のことを雑に扱っていた彼氏・キョンミンがカナダ旅行から帰ってきてからやけに優しい。でもなんかおかしい。カナダで隕石が落ちて来た時に緑の光を浴びたせい?
他の誰も気にしてないようだけど、ハナには分かる。これは異常事態だ。

主人公ハナの生き方や考え方がユニークでとても素敵。なんか今までにないヒロイン像だなぁと思っていたら、チョン・セランが26歳の時に書いた作品を10年後に書き直した作品ということで、あとがきを見るとハナの描写に結構加筆修正されているらしくて、なるほど!となった。
新しいヒロイン!

こんな風に自分の本質を見てくれて一途に想ってくれて、時々は一人にさせてくれて大きな決断をするときも口出しせずに見守ってくれるのだったら、宇宙人でもいい!と思う女性が大勢いるんじゃないかな。
もともとのキョンミンもただの空っぽの男として描かず、後から「そうだったのか」と理解を深めさせてくれるところもこの作者らしい。

ちょっと奇妙でロマンティックで好きな小説だった。やっぱりチョン・セランいいなぁ。