りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

柳家小三治一門会  麻生文化センター

10/13(金)、麻生文化センターで行われた「柳家小三治一門会」に行ってきた。

・小はぜ「たらちね」
・はん治「粗忽長屋
~仲入り~
・そのじ 寄席囃子
小三治「馬の田楽」

小はぜさん「たらちね」
わーい、小はぜさんだ。うれしい!
すっきりとした「たらちね」だけど、前座の時とは明らかに違う。お嫁さんが来ることを喜ぶかわいらしいキャラクターが出てきている。


はん治師匠「粗忽長屋
何度聞いても面白いはん治師匠の「粗忽長屋」。
行き倒れの本人を連れてくる!と走って行く男をおじさんが「おいおい」と声をかけるその言い方が大好き。


小三治「馬の田楽」
一部の方にはご心配をおかけしました、と小三治師匠。
頸椎の手術に至った経緯を。

5月に浅草でトリをつとめていたとき、少し肩や腕が動きにくくなっていたので鍛えようと思って向かいのドンキでダンベル…それも500gとかいう軽いヤツを買った。
それを家で振り回してみたり散歩で歩いている時に振り回してみたり…凝り性なので結構がんばった。
そうしたら何日目かに腕や肩が動かなくなってしまった。
一番困ったのが扇子を使っての仕草…そばを食べたり煙草を吸ったりができないこと。

これは尋常じゃないと思ってすぐに行きつけの病院…東京女子医大に行きました。私、女性好きなもんですから女子医大…。
そうしたら頸椎がやられてるっていうんですね。長年落語をやっていたせいなのかなんなのか…どうも最近頭がもやもやすると思ったらこれも頸椎のせいらしい。
それで手術することになったんですが、女子医大でやるとマスコミが来たりお見舞いがきたり…騒ぎになるのが嫌だったんで、別の場所で…京都のひなびた病院で手術してもらいました。首のところを縦にきってね…どういうことをしたのかはわかりません。見られなかったもんですから。
で、手術の次の日から医者に「京都の町をぶらぶらしてらっしゃい」言われましてね。首にギブスみたいのして…痛いんですよ。だけど歩くのがリハビリだっていうんでね、ずいぶん歩きました。

…こ、これは…私が何かの会に行った時に「ダンベル」をやりすぎて腕が上がらなくなっちゃった、って言ってたあれ。あれが原因だったってこと?師匠~(涙)。だめだよー。
でもわかる。私もだいたいなんでもやりすぎるほうだし、使っちゃいけない時に「鍛えなきゃ」って余計なことしてより痛めるタイプ…。

でも大きな声で「もう大丈夫です」とおっしゃっていたから、よかった…。
なにより、まくらをしゃべっていて「あー今日は調子がいいな」ってにこにこしたのがとてもうれしくて。
師匠が調子がいいならほんとにそれが一番。喋りながら「後で落語もやりますから」と言ったのがおかしかった~。
愚かだと言われようがなんだろうが、好きな人が楽しそうにしているのを見るのが一番幸せだ。

そのあとは選挙の話になり、選挙期間中だからどこかの党を応援したり非難するのは控えますと言いながら…。若い人に任せるべきで我々のような年寄りがどうこう言ったらいけないけれど、でもこれだけは言いたい。私は戦争を体験したし東京が焼け野原になったのもこの目で見ている。とにかく戦争はだめだ。戦争だけはしちゃいけない。そして原発もだめ。もうあれほどの経験をしたじゃないか。それなのにまだ原発をすすめようとする政治家がいる。そういう人を選んじゃいけない。若い人たちが安心して平和に暮らせるように。お願いします。

頭を下げる小三治師匠に大きな拍手。私もほんとに同じ気持ち。だけどネットや何かを見ていると別の考えでいる人がかなりの数いることに驚いてしまう。こうやってまた戦争に向かうんだろうか、と恐ろしくなる。

戦後、車も自転車もリヤカーさえ見ることがほとんどなかった焼け野原になった東京で、馬車を引いてるひとを見たことがある。
栄養が足りないせいか過労のせいか、その馬がばたりと横たわってしまい、馬方が「おい、しっかりしてくれよ。死なないでくれよ」と泣きながら馬に語りかけていた。
子ども心に、あの馬と馬方の間には絆があって一体なんだなぁ…気の毒になぁと思った。

そんなまくらから「馬の田楽」。
小三治師匠の調子が良かったせいなのか、まくらのせいなのか、馬方の馬を想う気持ちが今まで聞いた中で一番胸に響く「馬の田楽」だった。
口の悪い馬方が心底馬のことを心配して申し訳なく思っているのが伝わってくる。
出会う人たちの素朴さや呑気さに笑いながらも、馬が元気で見つかるといいなぁと思う。
そしてこういう平和が続きますように、と思った。
素晴らしかった。