りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

恐怖の館―世にも不思議な物語

恐怖の館―世にも不思議な物語

恐怖の館―世にも不思議な物語

★★★★

マックス・エルンストとの交流によって知られ、シュルレアリストの先駆の一人とブルトンに認められた著者の短編集の初の完訳。ケルトの伝統に根ざした、魔術と神秘のイメージに満ちた作品集。

一言で言えばシュール、かな。
奇想が好きな人なら、前半に収められた短編は楽しめると思う。
私も以前読んだ「耳ラッパ」よりも、こちらの方が全然楽しめた。

馬と一緒に訪れた恐怖の館で行われるパーティに行くと、そこの女主人は「恐怖」だった、という「恐怖の館」。
社交界へのデビューに友だちのハイエナに代わりに行ってもらう「デビュタント」。 叔父と甥の愛の逃避行?を描いた「リトルフランシス」。これは作者自身の恋愛が投影されているらしい。

シュールが過ぎると狂気になるのだな…というのが最後に収められた「ダウンビロウ」を読むとわかる。
恋人であるエルンストが強制収容所に連行され、徐々に精神のバランスを崩していったレオノーラは精神病院に収容されるのだが、そのときの体験を描いたのが「ダウンビロウ」。これは、狂気の世界に連れていかれそうで怖かった…。