りつこの読書と落語メモ

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こんな夜更けにバナナかよ

★★★★★

ボランティアの現場、そこは「戦場」だった――
自分のことを自分でできない生き方には、尊厳がないのだろうか? 介護・福祉の現場で読み継がれる傑作ノンフィクション!

面白かった。これを面白かったと言ってしまうのは不謹慎なのでは?と、読む前の私なら思うところだが、そういう変な遠慮は無意味なのだと気づかされた。

病院で縛られるのは嫌だ、そして妹の介護もあってそれだけで手一杯の両親の手をこれ以上煩わせたくない、そう考えた筋ジストロフィーの鹿野は、ボランティアを募り自宅で生活するという道を選ぶ。
大学や献血会場などにボランティア募集の紙を貼ったり街頭で配ったりしてボランティアを募る。そして彼らに介助の仕方をびっちり教えて24時間体制のシフトを組む。

迷惑をかけない、わがままを言わないというのは、健常者だからできることなのであって、人の介助なしには生きていけない人はそうせざるをえない。
私たちは人に迷惑をかけないことを良しとして生きているから、迷惑をかけるぐらいなら死んだ方がましと鼻の穴を膨らませて言ったりするけれども、それならば寝返りすら打てない誰かの助けなしには1日も生きていられない鹿野のような人は生きる意味がないのか?
そんなことはない。

この本では、鹿野もボランティアも聖人として描かれていない。
お互いに自我をむき出しにしてぶつかり合い、そのまま決別していった人も少なくないだろうことが伺える。
しかしそんな中、介助する人とされる人ではない、強い絆が生まれた人たちもいる。
彼らは鹿野を支え、また逆に支えられ、生きていた。
また長い付き合いではなく一時的にボランティアとして介助した人たちとの間にも確かな絆はあって、それが鹿野を生かしてきたし、また彼らもその経験によってその後の生き方が変わってきている。

彼がどれほど強烈な人だったとしても、生きる意味はあったし短いながらもその生は輝いていた。そのことに励まされる。
そしてボランティアについての考え方もこれを読んでかなり変化した。
すごい本だ。