りつこの読書と落語メモ

読んだ本と行った落語のメモ

左龍・甚語楼二人会

3/5(木)、お江戸日本橋亭で行われた「左龍・甚語楼二人会」に行ってきた。
 
・ 左龍・甚語楼 トーク
・きよひこ「狸札」
・甚語楼「のめる」
・左龍「鹿政談」
~仲入り~
・左龍「おせつ徳三郎(上)~花見小僧~」
・甚語楼「 おせつ徳三郎(下)~刀屋~」
 
左龍師匠・甚語楼師匠 トーク
こんな時にいらしていただいてありがとうございます、と左龍師匠。
ことごとく会が中止になってヒマになってるんだけど、寄席だけはやってるから毎日寄席にはいかなくちゃいけない、と 甚語楼師匠。
「この人( 甚語楼師匠)は極端な人なんですよ。0か1かしかない。前に会った時は”コロナなんか怖くもなんともない”って言ってたのに、今日会ったらすっかり怯えモードに入っちゃってます」。
そう言われた 甚語楼師匠が「ええ、もうだめです。家から出たくない。人ごみに出るなんてもってのほかです」。
「じゃぁこの会は?」
「これは…人もまばらですから安全です。人ごみじゃない。井戸端会議に毛が生えた程度」。
…ぶわはははは。
 
それから寄席もお客さんが減っていて、前座さんたちが驚いているという話。
「我々は驚かないです。我々が入ったころや自分が見る側だったころは寄席にお客さんなんか入ってなかったですから。志ん朝がトリという日でも客席はガラガラだった。トリの前にお客さんがようやく入ってくるぐらいのもんで」
「お客ゼロで開演できない、なんてざらでしたよね」
10分ぐらい?話したところで「これ以上二人で話してると(感染が)危ない」と言ってトークコーナーおひらき(笑)。
 
甚語楼師匠「のめる」
先ほどのトークでもありましたけど、私は気にしない時は気にしないけど一度気になるととことん気になってしまう性質。これはもう性分だからどうしようもない。
普段健康に気を使ってる方じゃないけど健診で引っかかったりするともう大変。病院の医院長をやってる知り合いがいるのですぐにすっ飛んで行って全部調べてもらわないと居てもたってもいられなくなる。
腸の検査で引っかかったりすると「ああ、腸のがんか膀胱がんだな」と思い始め、そうすると不思議なことに30分おきにトイレに行きたくなってきて、ネットで調べて「ああ、間違いない…」となってしまう。
コロナの件も…ワイドショーなんか見るもんじゃないですね。不安になるようなことばかり言ってくる。
で、免疫力が大事って聞いて…私自家製ヨーグルト製造機買っちゃいました。
 
 
そんなまくらから「のめる」。
甚語楼師匠の「のめる」はもう猛烈に面白い!
「つまらない」が口癖の男と「のめる」が口癖の男の性格の差がくっきり。特にこの「のめる」男が絶妙の間で言う「一杯のめる!」はもうそれだけでおかしい。
分かっていても全部笑っちゃう。楽しい~。
 
左龍師匠「鹿政談」 
とてもよかった。
豆腐屋さんの実直な人柄、鹿を誤って殺してしまったという罪の重さにおののいているのが伝わってくる。
それだけにお奉行様のどうにかして無罪にしてやろうという優しさが身に沁みる…。
鹿守役を諫めるお奉行様の威厳が素敵ー。
また冒頭にこの豆腐屋の夫婦に子どもがなく今はもう結構な年で(と言いながらお奉行様に年齢を聞かれた時に「60歳」…そうかー60歳は結構な年なんだな…(汗))自分が作った豆腐をご近所の人に美味しく食べていただくことがなによりの楽しみ、という言葉があったので、それが「サゲ」のセリフにつながっていて、おおっ!となった。
 
 
左龍師匠「おせつ徳三郎(上)~花見小僧~」
まさに昨日さん助師匠が言っていた、笑いどころの多い「花見小僧」。
聞いていて番頭になんか腹に一物ありそうな気がしてくるのは前に喬太郎師匠の改作を聞いたせいだろうか。
お嬢様と不義密通した徳三郎が許せなくて、なにも気づいていないぼんやりした旦那に耳打ち。小僧の定吉の弱点も知っているから攻略法も事細かく伝授して…。実は番頭がお節に横恋慕していたのでは…と思ってしまうのは「城木屋」の聞きすぎ?
事の次第をきちんと理解しているわけではないけれど「何かまずそうだぞ」ということを察して途中でどうにかごまかそうとしている定吉が哀れ…。
あとばあやはいったいどういうつもりだったんだろう?明らかに二人をそそのかしているみたいだけど…おせつの傍にいておせつの気持ちを分かっていたから応援してやりたかったのか…まさか店や旦那や番頭に反感を抱いていて意趣返しをしてやろうと企てたわけではない…?
さん助師匠が昨日「刀屋」をやったときに、店に行っておせつとばあやの二人を殺して…と言っていた気がするんだけど、そう考えると徳三郎にもばあやに何か含むところがあったのだろうか。
 
甚語楼師匠「 おせつ徳三郎(下)~刀屋~」
昨日聞いたさん助師匠の「刀屋」を補完するようなちゃんとした「刀屋」(笑)。「え?なんで?」と思ったところが丁寧な説明やセリフで納得できた。
おじさんは徳三郎が暇を出された理由を知らないが、徳三郎は察している。しかしおせつとの絆を信じているのでほとぼりが冷めるまで自分がじっとしていればいつか許される日が来ると信じていた?
それがおじさんに「今夜婚礼」「お嬢様も納得済み」と聞いて我を失ってしまう。
 
刀屋の親父は最初は徳三郎に刀を売る気でいるのだが、最初「(値段は)いくらでも構わない」と言っていたのがたいしてお金を持ってなかったり、血走った眼で「切れますか?」と何度も聞くので、「これは売ってはまずい相手」というのを察する。
昨日のさん助師匠の「刀屋」では、刀屋の主の息子が放蕩息子である日ぼろぼろになって帰ってきてそのまま死んでしまったため、徳三郎のことが他人のようには思えず話を聞かせてくれと言うのだが、甚語楼師匠のでは放蕩息子だが今も生きている。
徳三郎の話を聞いて、恩あるお店のお嬢様と不義密通した挙句、結婚することを恨んで刺し違えようとはとんでもない、非常識、という反応。一度は過ちを犯したけれど親を安心させるためにちゃんとした婿をもらう決意をしたお嬢様を褒める。あくまでも「常識的」な反応。
刀屋はむしろ徳三郎がそれほどまでにお嬢様を想うなら見返すために働け、それでお嬢様よりいい女を嫁にもらえ、と勧める。
あともしどうしても死にたいのなら一人で死ね。そこをお嬢様が通りかかって今も同じ気持ちでいるならば後を追ってくれるだろう、と言う。
そこへ頭が飛び込んできたため、心中を勧めたような形になる。
刀屋を飛び出した徳三郎は両国橋でお嬢様と出会う。「迷子やー」の声に追われるように木場の方に移動してそこから川に身を投げ…
サゲは昨日さん助師匠で聞いた形ではなく、何度か聞いているサゲだった。
 
…なるほどーー。たまたまだったけど同じ会場で同じ噺を連日聞くって面白かったなぁー
そして当たり前だけど噺家さんによって印象ががらりと違う。
甚語楼師匠の「刀屋」では徳三郎のいちずな想いが伝わってくる分、刀屋の主の言葉は常識的でそれほど人間味は感じられなかった。
さん助師匠の「刀屋」は徳三郎が破れかぶれ(笑)で、その分刀屋の主に人間味が。
あんまり好きな噺ではないけれど楽しかった。落語って楽しい!