村に火をつけ,白痴になれ 伊藤野枝伝
★★★★
ほとばしる情熱、躍動する文体で迫る、人間・野枝。筆一本を武器に、結婚制度や社会道徳と対決した伊藤野枝。彼女が生涯をかけて燃やそうとしたものは何なのか。恋も、仕事も、わがまま上等。お金がなくても、なんとかなる。100年前を疾走した彼女が、現代の閉塞を打ち破る。
わざとなのかな。軽すぎる文体がやや鼻につく。でもこの文体による疾走感があったからこそ読みきれたともいえる。
結婚制度や社会道徳と戦い続けた伊藤野枝。社会主義者の大杉栄と出会ってそれまで一緒に暮らしていた夫を捨て出奔。子どもをもうけるが結婚制度にはあくまでも反対。
家庭でも仕事でも誰かの奴隷になるのはやめろ。腐った社会に怒りの火の玉をぶつけろ、とその主張は単純明快だ。
今の時代でも受け入れられることはないだろうし、この時代ならなおのこと。
官軍から目を付けられた二人は壮絶な最期をとげるのだが、それも覚悟の上だったようにも感じられる。
こうして読むと彼女の生き様は爽快とも思えるけれど、自分勝手といったらこれ以上の自分勝手はないわけで、身近にいたら迷惑だろうな…。
彼女の言うこと、全てに同意するわけではないけれど、確かに…と思う部分もある。でもそうは言ってもねぇ…と思ってしまう私は彼女らに言わせれば奴隷根性に冒されているのか。
結局その結果が今なのだから彼らの言ってたことはあながち間違っていたわけでもなかったのかもしれない。